「2時間以上車の中で泣いて籠城」
当時から福音寮の職員で、現在は福音寮の理事長の飯田政人さんは、田中さんの入所当時の様子をこう振り返る。
「当日は児童相談所から車で児童福祉司さんと一緒にきたんですが、2時間以上車の中で泣いて籠城しちゃって出てこなかったんです。すごく手ごわい子だなと思いました。家庭で色々あったにしても、そこを離れて施設で生活をするというのは、友達関係も含めて今までの縁が全て切れてしまうわけです。れいかちゃんを見ていて、子どもながらに大変だなと、我々もあらためて思い知らされた感じでした」
田中さんの育った福音寮は、児童養護施設としては規模の大きな方で、子どもの定員は57名。子どもたちは、6人から8人のグループに分けられ、ホームと呼ばれるスペースで一緒に生活する。それぞれのホームには玄関、リビングルーム、ダイニングキッチン、風呂、そして、子供たちの個室があり、まさに1つの家のような環境だ。
それぞれのホームでは、約3人の専属職員が子どもたちの面倒を見ていて、年齢の小さい子どもとは一緒にお風呂に入ったりするという。筆者が訪ねた時には、職員の1人が昼食を作っていて、子どもたちが喜ぶようにオムライスの上に、一つ一つ丁寧に子どもたちの名前をケチャップで書いていた。
田中さんもホームから近くの小学校に通うようになり、だんだんと施設の生活に慣れていったという。地元の中学を卒業後は、都立高校に進学。その先の進路のことは高2ぐらいから考えていたという。
2018の厚生労働省の調査によると、児童養護施設に入所する子どもの約93%は両親かひとり親がいて、施設にいる約70%の子どもがメールや電話、面会や一時帰宅などという形で親と交流している。
田中さんも父親、母親とは定期的に連絡をとっていた。ただ、親からの資金的援助は見込めず、18歳で施設を出た後の学費、生活費は全部自分でまかなわなければならないと施設から言われたそうだ。そこで、高校時代にアルバイトをして60万円を貯め、子どもに関わる仕事がしたいと、なるべく短い期間で保育士と幼稚園の先生の資格が両方とれる短大の保育科に進学した。
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