児童養護施設と聞いて、みなさんは何を思うだろうか。
『児童養護施設という私のおうち 知ることからはじまる子どものためのフェアスタート』という著書のある田中れいかさんは、親が健在な中、小学校2年生の時に児童養護施設に入所した。ジャーナリストで情報番組「DayDay.」の月曜コメンテーターもつとめる大門小百合さんが田中さんや児童養護施設関係者などにインタビュー。「児童養護施設で育つ」リアルと問題点、そして少子高齢化で労働力も不足する今、誰もがそれぞれの能力を生かして生き生きと自立するのに必要なことを考える。
「私は児童養護施設出身です」
「私は児童養護施設出身です。児童養護施設を退所した後、モデルになり自分の夢をかなえました」
そんな風に語る28歳の田中れいかさんと出会ったのは、2023年11月に都内で開かれたあるチャリティイベントだ。 NPO法人BLUE FOR JAPANという団体が東北の被災地の児童養護施設にスマホやPCなど、IT機器を届けるために開いたチャリティイベントで、参加者の前で自分の生い立ちを明るく堂々と語っていた。
一般的に児童養護施設といえば、「虐待を受けたかわいそうな子」「なんらかの理由で親が育てられない子」がいる施設という負のイメージが付きまとう。実際、親からの虐待を理由に入所してくる子は年々増えている。そして、18歳になり、施設を退所し独り立ちした後も、「社会の中で苦労している人」という印象がありはしないだろうか。
日本では、約600カ所の児童養護施設に約2万5000人が暮らす。しかし、プライバシー保護の観点から、それらの施設に住む子どもたちにほとんど出会うこともなく、子どもたちがどのような生活を送っているのかはあまり知られていない。
今でこそ田中さんは、その負のイメージを吹き飛ばす存在だが、彼女の児童養護施設での経験から見えてくる課題もたくさんある。彼女に、児童養護施設のことや退所してから多くの児童養護施設出身者が直面することなどについて訊いた。
施設で育った子ども
田中さんは小学2年の7歳から18歳の高校卒業までの11年間、世田谷区にある児童養護施設で暮らした。施設を18歳で出た後、モデル、弁護士事務所での事務のアルバイトなどを経て、現在は二つの団体の代表理事をしている。一つは一般社団法人「たすけあい」で、YouTube、ウェブメディア、講演や研修などを通じて社会的養護についての情報発信をしたり、さまざまな事情から親と暮らせなくなった子どもがいる児童養護施設や里親家庭、乳児院、自立援助ホームなど「社会的擁護」の施設向けの寄付サイト、「ナカソラ」の運営もしている。もう一つは、児童養護施設や里親家庭から進学する子たちの受験費用をサポートする一般社団法人「ゆめさぽ」だ 。
もともと両親と3つ年上の兄、4つ年上の姉との5人家族だった田中さんだが、小学1年生の頃から両親の喧嘩が激しくなり、父親の暴力もあって母親が家を出てしまった。その後、姉が家事で失敗してしまった際、父親に「出ていけ!」と怒られたことがきっかけで、パジャマ姿のれいかさんを連れて本当に家出してしまったという。
「深夜0時過ぎに歩道橋でしゃがんで、お姉ちゃんがこれからどうするみたいに私に聞いたそうなんです。私はどう答えたか覚えていなかったんですが、お姉ちゃんが近くに交番があるから行こうって決めて行って、そこで緊急保護。警察の車ですぐ児童相談所に連れて行かれました」と田中さんは語る。
2人の姉妹は、その後一時保護所で1ヵ月半生活をし、空きが出ていた世田谷区にある福音寮という、児童養護施設に移った。ちなみに田中さんの兄も、その1月後に福音寮に入所した。
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