透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
前回の大ポカから、これまで以上にバッタ達の制御や行動に気をつけるようになったこと以外はいつもと変わらず社長業としての書類仕事や各仕事への根回しや斡旋。契約先との定期連絡などを行ったりしていた。
そしてまたもや纏まった時間が取れたので、少し前から考えていた作業を実行する。
以前俺に依頼を持ちかけてきた、ジュリという生徒がいただろう。そう、あのパンちゃんとかいう謎生命を錬成し、挙句の果てには巨大化して暴れ回った最早メシマズとかいう概念を超えた何か。あれが神秘というやつか…。
とにかく、あんな感じで気軽に生命を創り出している所を見るに、俺が知らないだけで意外とその手の概念はあるのかもしれない。
そして、異形の生物が事故とはいえ生み出され、失敗作扱いとはいえ“そうである”と受け入れられているのを見て、かねて前から考えてはいたものの、様々な要因から避けていたとある案が思い浮かぶ。
「―――同族、か」
ポツリ、誰に問うでもなく、口から言葉が漏れる。
もとより、ここは防諜の心配もない地下8階。これはただの独り言。
絶対的な種族の違い。自身でも理解している自身の肉体の損傷への頓着のなさ。人型でいればいようとするほどかかるストレスにより、己の本性がヒトではないことを思い知らされる。
怪人、ロボ、機械、獣人。多種多様な外見のキヴォトスにおいても、己ほど浮いている存在はいないだろう。そも、他の生物が構造上生命体としてあり得る存在であるのに対し、自身はその真逆。脳を破壊されて尚、思考が出来る肉体。中途半端に千切れた腹からは何故か中身が溢れず、異常な数の節を持つ背骨のみで下半身と繋がっている。
加えて、最近知ったことだが己の常識ではかなりの戦力を保有するキヴォトスにおいても自身は肉体のみで中々やれる方らしい。威力の増した銃火器を装備した相手と比較して。だ。
とはいえ、完全に分けているわけでもない。何なら、普通の子達よりも交流のあった部下たちにはいい社長として導いてあげられればいいと思うし、何度も顔を合わせたネル達C&C、反応が一々大袈裟でこちらとしても遊んだり連れ回し甲斐のあるツルギちゃん。
みんな大切に思っている。この世界に生まれ落ちた時に感じていた寂しさはなかった。でも、いくら外側を取り繕った所で、生き物としての線引きはあった。
愛犬を育てることも愛でることも、何なら一緒に遊んだりすることもできる。でも、犬に「人間という生き物を解ってもらおう」なんて思わないだろ。
結局の所、俺はどこまでも孤独だったのだ。如何に誤魔化し、地位を築き、信頼と親愛を集めようと、本性を知ればその全ての感情が反転する。己が築き上げた夢のような立場は崩れ、残されるのは迫害される怪物が一匹。結局、一人きりの理想郷か。
――――などということは一切ない!このアホ、ただの思いつきである!!
先の記述は全てリアンの意志とは欠片もない。具体的には「―――同族、か」の後からは大体関係ない。
単にこいつ、パンちゃんを見てから(そういうのもアリか…)と感化されただけである。バカなのか?
そして無駄に行動力がある。早速とばかりに原種のアビドスサバクトビバッタを集め、当然のように社会道徳を無視した実験を開始した。
とはいえ、そこまで性根は腐っていない。妙に自分だけ下に見ている節があるリアンは、人体実験に近しい細胞の採取元は基本的に己である。
そして、無駄に特撮やサブカル好きな性格と、最近の繁殖成功、自身の真の姿という点が相まって、最初の設計は改造飛蝗人間*1。どうでもいいけどこういう時って大体バッタが出されるよね。
最初はバッタそのものを弄る方向性で行っていたが、それは既に試しており、巨大化させたところで某ジュラシック○ワールドの巨大イナゴ*2のサイズと大きさにしかならず、それ以上を目指すならば知能の欠片もなく、自らの自重によって動けず、餌を得ることも出来ない死ぬだけの欠陥生物が出来上がる。
そこで、リアンはアレが一種の完成形だと判断してアプローチ方法を変えた。
要は、既に成体のバッタを弄るから異常な反応が起こるのである。新生アビドスサバクトビバッタの例もあるように、子の代で進化先が派生していく様に、生殖前の遺伝子を弄ることにしたのだ。
加えて、素体がバッタでは目立った変化がないと見たリアンはある暴挙に出た。
あくまで試作段階。成功するかしないかも分からない。その好奇心の為に、リアンは己の腹を裂いた*3。
その内部、産卵管の奥にある卵母細胞*4を採取し、中から三つの極体*5を摘出する。
本来ならば、受精や発生の有無に関わらずアポトーシスで消えゆく細胞だが、こと単為生殖の生物であれば極体が卵子と結びつき、そのまま子を為すことが出来る。
それを知識や経験ではなく、本能で理解していたリアンだが、あえてその極体のみを取り除き、代わりに支配下に置いたアビドスサバクトビバッタ。閉所でもストレスなく活動でき、音を聞き分ける能力とコミュニケーションを持つコオロギ。そして社会性と高い知能。そして統率力にあやかった軍隊アリ。
それぞれの精子を培養して卵細胞内の極体に入れ替わるように移植。暫く馴染ませてから清潔な毛布に置いて経過観察。
受精し、高速で細胞分裂を繰り返す過程を細かにメモに取りながら、30分程でヒト型の昆虫の様なものが出来上がる。幼体だろうか。半透明でまだ脆そうだがサイズは1m20cmを超え、肉体構造は人に近く、4本の腕と脚でゆっくりと立ち上がる。
「おはよう。……創ったトハいえ、イチ応俺の子になるのか?」
異形に声を掛けると、触覚と頭をキョロキョロと動かし、こちらを認識すると近づいてくる。
あまりにも早すぎる成長。恐らくこれは自分の卵細胞のせいだろうなと確信しながら、取り敢えずこの新たな怪人のような生命体を迎え入れる。
外見は思っていたよりは忌避感がなく、どちらかと言うとアリ要素が見えるバッタ怪人。というのが近いか。
よく見ると、体は甲殻に覆われているように見えたが継ぎ目がない。どうやら硬質な皮膚で柔軟性を確保しながらも防御を固めているらしい。そのため一見光沢のある殻に見えて、その内に秘めているのは筋肉だ。
赤子のこれは明確な意思疎通。それこそ言葉を発したり、細かな機微などは見られないものの、感覚的に意思を伝えることは可能だった。こちらの命令や言葉もある程度介しているようで、何よりヒト型故に道具なども扱える。
そして早熟。面倒を見てから1時間半で少しずつ背を伸ばし、皮膚を固め、最終的には黒と砂漠色の皮膚を持つ185cm程の成体になった。
知能自体はそれなりにあり、教えさえすれば俺以外とのコミュニケーションも取れる。試しにペンの使い方や銃器の扱いを教えれば、苦戦しながらも何とか最低限の形には出来た。……まあ、初期の飲み込みが恐ろしく早いということくらいで、その後の練習での上達速度まで早かった訳ではなかったが…。それでも既に結構上手いなこいつ…。
あと割とそういったのは伝わるようで少しひらひらと手を振って合図してくれた。結構自我あるね君。
お互い何となく意思は伝わるので、こいつがそんなに凶暴な感じではないことは分かった。それに、俺のことはリーダーと思っており、またその命令はアビドスサバクトビバッタ同様に絶対であることも確認出来た。
その他様々な検証や悪影響、知能の発達などにも踏み込み、何なら色々と教育したり、情報の判別なども理解した。丸二日ほどかけて、あまり危険なものではないと分かったので思い切って量産体制に入る。
一度やって慣れてしまえば簡単なもので、少し手間がかかるものの、容易に複数の個体を製造することが出来た。
だが、量産した個体は最初のに比べれば自我というものが希薄だった。ないわけではないけど、無感情、無感動。やはり昆虫的。外見もこちらのほうが小さめな170cm程度で、顔も怖い。
中途半端に人のような構造を虫の肉体でやっているような顔つき。顔の側面までかかるような大きい複眼が一対、正面に人の目ほどの大きさの複眼がもう一対。しかし前の時ほど自我を読み取ることが出来ない。
肝心の超音波や脳波でコミュニケーションも取れるけど、ほんとに必要なときにしかしないし、してきたとしても端的すぎて個性が全く無い。初期のAIかってくらい質問や答えが淡々としている。
成程……。プロトタイプの方が強いっていうよくあるやつか…。納得したわ*6。
取り敢えず最初の奴…。何か勉強熱心だし訓練も自主的にやろうとしてる…。成長早くない?
とにかく、最低限のコミュニケーション能力や知識を身に着けさせるようにする。子供用の本から、雑誌や漫画、銃の扱い方や戦術書、近接戦闘術書。書庫から多くの本を学習用に持ってきて、特に頭の良いこいつに学ばせる。
あっちの後発の個体も、一応何もしなくとも大きな問題にはならない。最低限銃器の扱い方とかは教えられるよう、ブラックマーケットに売却されていた中等部向けのBDを見させているし、分かりにくいが必要なことはちゃんとやっているからね。それこそ、一度命令すれば虫側俺側双方の本能で役割達成までの技能は覚えるようにはなってるが……。
まあ、それはいい。思っていたものと少し違うものの、こうして自意識はあまりにも薄いが、その分群れとして運用した場合の支障が出にくいと捉えられる。
仲間……というよりは子分に近いが、まあこうして当初の目的に掠っている分成功でいいだろう。俺には及ばないものの、それぞれの虫の形質は備えてるし。
むしろ、見た目から不安定なのに統率と支配は完璧なのは流石俺。用意していた保険も使わなくてよさそうだ。
取り敢えず、ここのことは最初の奴を指揮官級…。隊長でいっか。隊長にここでの学習や報告は任せ、いざとなれば遠隔で処分することも出来るようにする。
こいつらが様々な役割をこなせるよう、もう少し個体数を増やしたり求められた行為を実践可能か、どの程度まで判断して活動できるのか等、考えることは山程あるがそれを考えるのも今は楽しい。
ただ、少し残念なのが言葉を発することが出来ないという点だろうか。せめて生み出した者なりに会話をしてみたかった。他の個体は自我が薄く期待できないが、隊長は普通に活動してるし。
にしても、より虫に近い外見の方が人間らしさを持っているのは意外だ。何か原因があるのだろうか……。
「……全ク、お前は俺にとッて何なのヤら」
「雄ダカラ息子トイウ存在ガ近イノデハ?」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!??
思わず飛び退り、天井横の壁に着地。
「………話せたのか*7」
「今シガタ。ソレヨリモ、俺ハ貴方ヲ何ト呼ベバイイ。親デアルコトハ理解シテイルガ、違ウ種、外見的特徴モ当てニナラナイ。母ナノカ、父ナノカ。又ハ配下トシテナノカ。教エテ貰エレバ嬉シイ」
………驚いた。辿々しいながらも人語を意味を持って発することが出来ている。虫の成長は早いというが、流石にこれは予想外。まさか他の奴らもこんなのじゃないだろうな?
そう思って徘徊している個体に目をやると、本人から自分が異常だと明かされた。……そういうのも本人からすれば分かるのか。知能進化しすぎでは?
っていうか、人語を発することが出来る可能性のある細胞なんて俺の卵子しかないんだけど。なのにこの短時間で発音まで覚えたの?待って凄すぎ。俺でさえ発声器官の関係で意味ある言葉を発するのに1週間くらいかかったのに。
「……そう、ダナ。俺としてハどちらも実感が湧かないが、呼びたければ好キに呼んでいい。父でも、母でも。どうせ単為生殖の発展。何ヨリ自分の性別に今更興味ナド無いしな。……そうだな。お前の呼び方も味気ない。 ……お前ほどの自我があれバ、子として名付けるのも吝かデないが」
「………イヤ、人間社会デ言ウ部下トシテ扱ッテクレ。アル程度分カルガ、貴方ハ関ワッタ者ニ愛着ヲ持ツ方ダロウ。俺ノ様ナ存在ガ負担ニナルノナラ、俺ハソレヲ望マナイ」
「……生後間もないのニ、よく出来た子だ。そう望むなら、俺ハそうしよう。…それはそれとして区別トして名はつけサセて貰ウガ」
そうだな……。遺伝子組み換えや配合によって産まれ、中でも一際賢く強い個体。
「ベクター…というのはどうだろう?」
「vector…成程。遺伝子ノ運ビ屋カ」
「力の向きや大きさを表すベクトルにもかけている。お前がリーダーとしてあいつらを扱うコトになるダロウからな。……どうだ?」
「……ベクター、ベクター…。イイ名前ダ。気ニ入ッタ」
バッタ人間、ベクターは反芻するように名を繰り返し、ストンと納得がいったかのように頷いた。その身振りだけで考えが分かる。
気に入ってもらえて良かったと思う中、そういえばとベクターに向き直る。
「ベクター、俺ハこれからアビドス自治区デの依頼だ。どうやら砂でインフラの調子が悪いらしいト来た。あいつらの世話を任せてもイイか?」
「了解シタ。任セテクレオーナー」
早速オーナー呼びか…。いや、確かに部下だけども。一体どうやって他のみんながオーナー呼びしてるの学んだんだ…?
まあ、叛意も無さそうだし優秀そうで嬉しい限りだよ。かっこいいし。……………ほんとに大丈夫だよね?
試験管ベイビーとはいえ作中で子供作ったブルアカ二次なんてこの作品くらいでは?
主人公がちょっと何でも出来すぎてクリーチャー要素を出せない(ストレスに強い。透明化で隠れるくらいの倫理観があるので化け物状態で外を迂闊に出歩かない。人の社会で暮らそうとするから基本ヒト型)ので新しいのを生やせば解決するよなぁ!?
『ベクター』
顔はZOのドラスの形状で、複眼はSICウヴァの目を黒くし、繋がってる部分がなくなり、ドラスの鼻先で覆ったようなスマートなバッタ型。口元はアギトのアントロード。
皮膚の質感はバイオハザード4系列のノビスタドールで、そこに昆虫らしい鉤爪や刺々しさがある。
因みに何故こいつだけこんなに凄いのかというと、こいつの祖先が神秘のある生物の遺骸を食べ、生物濃縮で神秘が溜まった個体がたまたま使われたから。
『飛蝗蟻蟋蟀混合型被検体』
ローカストアンデッドの顔つきを現実向けにし、その下に大量発生型相変異バッタオーグの素顔の目があるようなイメージ。口はアリアマゾン。外骨格というよりは生々しく、知性はないようであるものの、自我は然程ない。必要なことだったり命令されればそれに準じた行動を行う。それ以外では自衛や周囲の警戒を行う。
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