透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
いずれ1万を超えるのも夢ではないかも?
――――連邦捜査部S.C.H.A.L.E.に、外の世界から先生が着任してから早くも一週間が経過した。
とはいってもこれまでの期間は先生がこちらの状況や各校の情報や主要な業務内容などの説明や、簡単な事務作業で終わっているらしく、その活動理念に本格的に取り組むことができるのにもう少しはかかるだろう。
そしてシャーレの先生のお陰で行政機関を取り戻した連邦生徒会は、今までの停滞を取り戻すように精力的に他校への事情説明や業務を再開――――――
――――――していないのである!(マジ)
何も、全てを放りだしているわけではない。というよりも通常よりも増えた仕事にも何とか取り組んでいるようだが、いなくなった連邦生徒会長捜索の為に人員を割いていることもあり、その活動は非常に消極的。
正直、ただでさえ連邦生徒会長の失踪による業務停滞と遅れが出ているのに、そちらに力を割いて他の仕事に関われなくなっているのは不味いと思う。
連邦生徒会長失踪の原因がわからないので何とも言えないが、このままどっちつかずで後手後手の対応をするなら、ただでさえ落ちていた権威は失われ、全自治区を統制するという立ち位置すら能力不足とせっつかれると思う。だというのにそれに対してはあまり真剣に議論したりしている様子はない。強いて言えば他校からの追及や余計な仕事の増加を予期して辟易としているくらいか…。……あまりに楽観的に過ぎる。
元々連邦生徒会というよりは連邦生徒会長の比重が大きかっただけに、他からの侮りは避けられない。そしてこれを更に駄目にするのが連邦生徒会長捜索に力を入れたことで業務に専念できていないこと。
連邦生徒会長が戻ってきて、仮に問題が解決したとしよう。
そうなったら何が起こると思う?そう、連邦生徒会の存在意義への疑問だ。
連邦生徒会長捜索により全霊を注げたとは言えないが、その力の比率は他校からは分からない。となると、『連邦生徒会長がいない上に力を割けなかった連邦生徒会』という今の実力が連邦生徒会への認識になる。
これで連邦生徒会長が国王や天皇の様に君臨するならともかく、情報の限りでは3年生。来年には卒業してその威光は失われる。
残された者はこれまでのフラストレーションや混乱期の実績を比較に出され、その思考は『このような組織に自分たちの管理を任せてもいいのか?』となりかねない。
もちろん、そうならない可能性もあるし、何ならここから連邦生徒会がとんでもない一手で巻き返す可能性もある。
ただ、それを信じるには組織運営の現実と人の善性は儚すぎる。
……でもなぁ、連邦生徒会も頑張ってるんだよな…。ちょっと態度とか不真面目な部分はあるかもしれないけど、それでもキヴォトスの統治をこんな子ども達が一手に担ってるんだよなぁ…。仕事も責任も、他からの重圧もあるのに、それでも報われないのはなんかなあ……。
だからこそ、俺はシャーレの先生により現状打破出来るのかが気になっている訳だが…。
まあ、予防策はないこともないが……その前に確認すべきことも多いしな。これはあくまで最悪の事態に一か八かでやる程度か。
幸い、心配していた様な事態には未だ陥ってないと見える。基本的に善性の存在だし、この治安や銃撃戦等の不安へのストレス耐性もある。……これは何で?何か対策でもあんのかね。
どうやら噂は既にキヴォトス中に広がっているらしく、既にあらゆる勢力がシャーレ、ひいては先生に注目しているらしい。それは学校に限らず、裏組織やカイザーなどの大企業も然りだ。
さて、どうしたものか。ブラックマーケットでも耳聡い者は知っているようだし、このままではその立場を狙った何者かが事件を起こす可能性もなくは…ない。
一応そっちは予め対策してるんだけどね。U.B.C.S.の隊員の一部をローテーションでD.U.勤務にして治安維持の助けをしたり、暇な時は奉仕活動として地区の清掃や困ってる人の助けになってやれとかも言ったけど。
ブラックマーケットでも最低限他から訪れる一般の方向けの護衛や安全地帯のルート案内も主要目的に加えてから、ウチの社名は評判と共に広まっていった。エゴサしたら割といい感じに言ってたし。
ウチの子たちは連携や戦略的思考をメインにして、同じ戦力でも効率的かつ消耗を抑えて鎮圧するように育てた。とはいえ俺自身は連携とかは上手いとは言えないし、特に銃器での連隊行動はちょっと教えられないため、少し不甲斐なく思う。
……どこかにフリーで戦術的な思考が出来て連隊行動に慣れて教導が上手くて強い人がいればなぁ……。まあ、そんな贅沢は言ってられないか。
最近は噂を聞きつけたのか、散らばってた不良や手の届かなかった地域のグループも取り込んで、既に初期のメンバーの倍くらいになっている。
一から教育する必要もあるのでそれは各班長達に任せているが、成果はそこそこといった所。……まあ、噂話で集まった人員だし…。ぶっちゃけ、最初からいる子達に比べれば無鉄砲で棘のある子たちだ。そういう相談を受けたため、模擬戦をしてほしいとの要請もいくらか届いている。人が増えるのはいいことばかりではないということである。
まあ、やるけど。何なら新兵器試したいからバリバリ実験台にするけど。前作ったクラゲの刺胞の構造をもとに作ったテーザーガンはかなり不評だった。
普通のテーザーガンとしても使えて、一番の特徴が刺さったら内部で展開し、無理に外すと電極が体内に残って内部バッテリーが切れるまで高電圧を流し続けるという代物。ミレニアムのレールガンの充電機構を試したくて初見殺しに作ったけど、みんな咄嗟にワイヤーを外すから殆どが罠に引っかかって痺れたまんまになっていた。
ただ制御を外れるせいで気絶した後も流れ続けるのはとんでもなくキツかった様で、これは不味いと摘出すると、少し前まで典型的な不良みたいな態度だった子達がギャン泣きしながら撃った張本人である俺に縋り付いてきたのはちょっとやり過ぎだと思った。
見ていた部下からも異常に見えたようで、流石にやり過ぎと叱られた。……うん、頑丈だからってやりすぎたね。これは封印しよう。……実は本体にも電極内部にもバッテリーを入れなきゃいけないから結構コストかかるんだよね。
それはともかく。新人研修とかもしてるし、あまり過度に関わらなくても回せているのはいいことだ。何より俺が自分の時間も作れるからね。
中々連絡のないツルギちゃんに悪いと思いながらも遊びに誘ったり、ネルのリベンジに付き合ったり。ツルギちゃんは遊ぶ時にブローチをつけてくれてたし、ネルはネルであのスカジャンをローテーションで着ているとアカネに聞いている。
最近本格的に始動した給食部への派遣では、初日に謎の超巨大パンちゃんが発生したため容赦なく叩き潰させて貰った。何か無駄に強かった。駆け寄ってきた風紀委員と呼ばれていた子達がやられてたし。……その時俺は思い至ったよ。俺、結構強いなと。
まあ、風の噂によると風紀委員長抜きの風紀委員は取るに足らないと言われてるらしいから、上澄みがどの程度かわからないんだけども…。
どうだろ…、武装組織としての側面も最近はあるし、各校の治安組織と蟠りもないようにコネを作っていたほうがいいのかな…。
今言ったようにゲヘナなら風紀委員会、ミレニアムなら、保安部。そしてトリニティは正義実現委員会。
でもやっぱ一企業、それもブラックマーケットのがそういうのに関わるって怪しいよな…。
裏社会のマフィアとかが警察と絡むようなものだしな…。俺はともかく向こうの組織の面子とウチの子たちにそういうイメージがつくのはちょっとね…。今はまだ見送りでいいかな。
さて、これだけ色々と手を尽くしたし、通常業務以外の風通しとか、対外的なアピールもやった。
出来る限りのことはしたつもりだし、何かトラブルが起こってもそれは仕方のないことだと割り切れる。……だが、何だ。何を見逃している。俺の
書類以外にも、情報端末でのデータを眺め、一人唸る。
うーん、窮屈に閉じこもってるから頭が晴れていないだけか?ストレスのせいで不安になってる?
仕方ない。一度本来の姿に戻ってリセットだ。
地下7、8階を貫く空間で服を脱ぎ、亀裂を立てて膨張する肉体の高鳴りを感じる。
ああ、普段はあまり感じないけど、こっちの方が余程気持ちがいい。何ていうんだろう。普段が嫌な訳じゃなくて、今が特別清々しいというか…。風呂上がりの気分が近いかも?
擬態の形に収まってないと人類の声帯にならないから鳴き声くらいしか上げられないけど、人もいないのだから関係ないな。
っていうか変形行程ちょっとシモンズ*1っぽいな。
俺も形態変化出来んのかな。人間形態、竈馬形態、ファンタジー生物的な形態みたいな感じで。ビーストモード欲しい。……あー、でも巨大化するには他の質量取り込まないとか。実質他に依存してるし巨大化は負けフラグだしな…。
ん?虫の群れ……。虫……群れ……バッタ……。
「あっ」
アビドスサバクトビバッタのこと、完全に忘れてた……。
本来の予定よりも長い時間放置してしまったため、予め繁殖指令を取り下げてアビドス砂漠に向かう。
あの研究所は俺の個人的な研究と、扱っている技術や中身の関係上、照明や換気、餌やりと水分など、世話以外のことは全て手動でしか動かないようになっている。
そのため遠隔からどうこうすることもできずに道なりに進むしか無い。
しまったな…。餌は多分大丈夫だろうけど。感覚を共有したり、繋がりから色々辿ることもできるが、それは常に行っている訳じゃないし、情報量が多すぎてシャットダウンしているのが殆ど。
どのくらい増えているのだろうかと少しだけ期待を寄せながら研究棟に立ち入ると、そこには驚きの光景が待ち受けていた。
「な」
10m四方のビオトープの床一面を埋め尽くすどころか、ギチギチに積み重なり、部屋のあらゆる方向に飛び張り付いている小型のバッタの群れ。
小型のバッタは体長約3cmになるかという程度で、面積と比較して、ここだけで400万匹はいかねない。
慌てて他の区画も見るが、どこも同様にバッタの層が積み重なっている。
どういう事!?何でこんなに増えてんの!?そもそも小型化しているのは何!?
その衝撃的な絵面と予想外の変化に、本気で焦る。
ひとまずバッタ達に指示を出し、それぞれ分散するようにして、中の様子を確認する。
うわ、土が荒らされまくっている。これ全て産卵跡か…。
流石に、この原因を放置してはいられない。緊急の要件で少し戻れないと通達して、俺はここでの大量発生の謎に迫るのであった。
――――…
あー、はいはい。なるほど。そういうことね。
気の抜けた様な言葉を脳内で反芻し、この新生アビドスサバクトビバッタの生態を確認する。
あれからしばらく、原因を調べるためもう一度2匹から始めてその産卵過程を眺めていたが、驚くべきことが判明した。
まず、サイズの変化。これは最初に遺伝子改良した個体の子世代から徐々に小型になっていったらしく、3世代目にはこのサイズで固定されていた。
そして、それを支えていたのが恐ろしいほどの繁殖、成長速度だ。産卵後、20時間で孵化。9時間で成体に。個体やそれぞれの位置によって最大1時間程の差はあったが、そこはあまり大きな差にはならない。
ここで普通のバッタと違うのが、俺が繁殖指示を出し続けたままだったので、成体になったバッタ同士が即座に交尾して産卵。
弄った結果か、このバッタ達は一匹あたり平均25個程の卵を産み、その中から無事産まれてくるのが15匹程度。それが9時間後には繁殖するのだ。
つまり、誤差を入れても約30時間で次の世代になる。一回目で2匹が15匹に。15匹が約225匹ほどに。1650。12600。94500と、交尾の度に死亡する雄雌を考えても倍々ゲームで増殖している。
ここまで増えて尚、こちらの指令が優先されているのか、繁殖をやめることはなく個体数を増やしていく。そのくせ、円滑に繁殖をするために土をだめにするほど一度に産卵するのではなく、地面の殆どが卵で埋め尽くされたら、その世代が孵るまでは前の世代が待機し、空いた瞬間に卵を生み出すという、どこまでも機械的に増殖していくらしい。
土の面積と卵が占める面積を考えて、約21万のバッタが一度に産卵できる。個体数は5代目で142万となるので、ここから産卵制限が始まった。
6世代目からは番を含めて約42万減って320万増えるため、計算としては現在の大人の数から42万引き算して約320万ずつ足す。よって、20時間の孵化期間をnとして、基本的に320万✕n匹+100万匹。という風に増えていくことになる。
俺が停止指令を出したのが繁殖指令を出して7日と8時間。時間にして176時間。5世代目が成体になるまで約150時間だから、増加数がストップ高になる6世代目を産んだ少し後に停止したことになる。
………あっぶねぇ!!!
放置してたらそれこそ際限なく増え続けていたことだろう。幸いにも、俺の命令が優先されるのはいいことだけどさ。
どうすんのこれ。3万匹くらい増えればいいかなくらいと思ってたら桁が3つとんで6300万増えたんだけど。放置してたら次の代で1億超えてたんだけど……。
…ポ、ポジティブに考えよう!捉え方によっては頭数を揃えるのに時間がかからないし、その操作も全て俺の意思一つで出来る…。……そう考えるとすごいな。やろうと思えば国くらい落とせるんじゃないか?
ともかく、今後は一定以上繁殖したら停止をするように命令して、少しずつ規模を広げていくことにした。60のビオトープに増加数が最大になる42万の番。計2520万匹を格納し、残りの4000万弱を広範囲に散らばらせる。
予想だにしていなかった結果ではあるものの、手駒が増えたことには変わりない。今後は、様々な自治区で起こった出来事や、こちらの有利になるような情報を得ることも出来るだろう。
結果オーライ!
ってことじゃ駄目…?駄目かぁ…そっか…。
後書きは計算中の纏めをそのまま載せときます
・10✕10✕3.5mのビオトープが60
・子供の代は小さくなっており、約3cm
・アビドスサバクトビバッタ3cm✕1cm。面積は100万平方cm。ギッチギチにすれば1億1500万。✕60なので最大収容数69億匹。
・卵は縦に1.5mmほどなので、一匹につき25。つまり約3、5平方cm。少しの隙間を合わせて75万平方cmに生むとして、上下を入れ替われば21万4000匹が一度に321万匹、最大で産める。
・自然に放している個体は放しても良いように外部での生殖行動を禁止している。
・一面で一回の産卵で約25。改造の結果無事産まれるのは平均15匹。
・一回目の産卵で15匹。産卵後は死亡するため二代目が225匹。次の代は約1680。更に次の代が12600。4代目が94500。5代目が142万。ここから産卵制限。次の代が生まれた後に即座に補填。今までは時間に15倍になっていたが、この代から約42万減って320万増えるため、現在の大人の数から42万ひいて約320万ずつ増える。よって、基本的に320万✕n匹+100万匹。
・産卵後、20時間で孵化。9時間で成体に。そして指令に盲目に従うため即座に増殖。時間差を考えて+1時間
停止指令が出されたのは7日と5時間後。173時間。5回目になると……?
・よってうっかリアンのポカは辛うじてヤバい周回に入る瞬間に止められたが、それでも約6300万匹の群れが出来た。
・産卵後の死体は子どもの食料兼肥沃な土にしてくれるため異常なほど増える。
・ちなみに最大まで行った状態から調整すると、20時間毎に320万n+100万。分かりやすく5日で120時間。よって6回の産卵を60ビオトープ全てで行えばたった5日で12億1200万匹作れる。誤差や時間によって、11億4514万1919匹生み出せる。
・ロッキートビバッタのアルバート大群(12兆5千億)まではこれを1万313回繰り返す必要があり、施設内に限るならば最大効率でやっても5万1565日。単純計算で141年と少しかかる。自然ってしゅごい
今は3兆5000億匹だったのではないかという説も有力視されているが、そちらにしても1万4440日。約40年ほどかかる。
ただし、これはあくまでも生きていたらの話で、一度に増やせるように上限が限られている以上、外に放して自由に増やさない限りはありえない。
対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます
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