透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
……疑問に思えよっ!モササウルスだぞモササウルス!何でいるんだよ!
因みに例のボス演出っぽいやつはクラーケンの方は初代ジュラシック・パークのロゴを意識しています。
さて、この剣先ツルギちゃん*1の話を聞いていく内に、少しずつ俺の勘違いに気づくことが出来た。それは、色々と然りげ無くを装って悩みを聞き出そうとしていた最中のこと。
「…何故、線路内に?」
「……ぁう…ギヒッ、いや、違う。すみません。…ちょっと、嫌なことがあって…」
「……辛いナら、言わなくてもいイ。何せ、身を投げるほどのコとだ」
「…ぅ、ゔぇははぁぁ……、その、これで…」
「映画の半券…?」
これって純愛もの風な予告とタイトルしておいて実は滅茶苦茶NTR要素があるっていうことで社員の一人が休憩室で嘆いていたやつか。コメントもすごい荒れてた記憶。
俺も軽く伝え聞いたくらいだが、前半で甘酸っぱい恋とその成就を描いた後、後半で大人になった二人に対してそれはもう酷いくらいに滅多打ちにしてくるらしい。
かなりバッシングを受けたらしく現在も色々と制作側への不満がネットでは投げられているらしい。
「……キヒヒヒヒヒッッ!……ゔぁぁぁぁぁぁぁぁあっ、お、思い出したくない…!たっ、楽しみで寝れなかったのにっ…!」
「……あー、成程」
つまり、今目の前でものすごい顔をしながら唸っているツルギちゃんはドキドキしながら純愛モノを観にいったのに唐突なNTRに脳を破壊。唐突な脳破壊によって茫然自失としている間に線路に落ちてしまったと。
ってことは自殺とか、いじめとかじゃなくて、うっかり?
あ〜〜〜〜!!恥ずかしっ!うわ恥ずっ!めっちゃ勘違い!誰だよいじめとか真面目に考えてた奴〜!俺だわ。
ってかさりげなく聞いたけどそっち方面はマジで気にしてなさそう。いや、自覚はあるけどそれはそれ的な感じだったし。これ一番悪く思ってるの俺では?
「……何か、スまん」
「あっ、い、いえ。こちらこそ……すみませんっ!」
うおびっくりした。テンションの落差すごいね君。
いや、にしてもまあ勘違いで助かった。どうやって説得しようかと考えてたけどない方がいいもんね。再びツルギちゃんの顔を見て、嘘じゃなさそうなことを確認してから、話題を切り替える。
「……何はともあれ、自殺や自傷行為でなくて良かったよ」
「そ、そそ、そうです。誤解させた挙げ句、巻き込んでしまってすみません……」
「気にする必要はなイ。衝撃は殆ど殺してるからな。……それよりも、怪我は本当にナイね?異常や痛みも?抱き方で負担は少なくしたつもりだが……万が一があってはイケない」
これはマジな話、衝撃で潰されたり挟まれたりした後は本当に酷いことになる。こっちでは銃弾やミサイルなんかではそこまで深刻な後遺症が遺るといったことはそう無いけど、流石に重量物に挟まれたり潰されたりしてしまった後は分からない。
っていうのも、生徒って体はやたら頑丈だけど身体能力とかはその強化幅に比べれば穏やかというか…。明らかに通常の人体に比べて比率が可笑しいんだよね。こっちでも異常な筋力を持つ子はいるけどそれはかなり特殊な例だし。
で、そんな筋力なもので、電車に轢き潰されれば、仮に死ななくとも傷は酷いものになることは分かるだろう。
「……抱き方。………っ!!??」
再三の確認を取ると、ツルギちゃんは一瞬呟いたかと思うと顔を真赤にしてばたばたと羽と視線を動かし両手の指をもじもじと動かしている。
この子ほんとすごい表情がころころ変わるな…。声音も同一人物か疑うくらい変わるし、怖いように見えて常識はあるし。
なんかこう、分かる?こう、犬が淋しそうな顔で唸って擦り寄ってるような…。不思議な可愛さがある。
「…可愛いな」
「かっ、かかっ、かわっ!?」
おっと。漏れてたらしい。確か最近はこういうのでもセクハラになるって誰かが言ってたか…?それに言われるのが嫌な人もいるしな…。あんまりそういうのは良くないかも…。
「……いや、口が滑った。イヤだったら申し訳ない」
「あ…、うぁ…そんなことッ、ないです」
許された*2。
とはいえ、本人が思ってもないことをあれこれと深読みしてしまったのは申し訳ないな。何か詫びになること、あるいはその脳破壊の苦痛を和らげる方法…。
うーん、脳破壊(物理)ならしたことあるけどな…。一回目はジャンプの調節ミスって上半身ごとミンチになり、何回かはそのまま頭ぶつけて半液状に潰れたり、ゲブラに吹き飛ばされたりした経験がある*3。最近はちょっと脳味噌いじれないか掻き回したりしたこともあるけど、絶対この経験役立たないしな…。
うーん。俺がクソみたいな経験をしたあとは何をするか。ストレス発散、絵描き、機械弄りに運動とか色々あるけど、それらに共通することは――――思い出の上書きだな。
今日は金曜日だし、確かトリニティって門限とかなかったよな?
「……この後、時間はあルか?」
「あぁ?」
◆
(な、なななな、な、なんでこんなことにぃ…!?)
この日、剣先ツルギにとっては予想外の連続だった。
折角早く学校を終え、予告から楽しみに待ち望んでいた映画はとんでもない代物で裏切られ、ふらふらと帰路につこうとしていたら線路に落ち、次は電車から…お、お姫様だっこで抱えて助けてくれた*4人物。
助かった後も、一緒に駅員に怒られてくれ、挙げ句これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと立ち去ろうとした所を呼び止められ、今度は一対一での対談。
何やらどこかの企業の社長のようでまた驚き*5、悩み相談というべきか、軽い雑談は案外上手くいった*6。
それだけであれば、とても親切な人に出会ったという思い出と、悪いことをしてしまったという僅かな後悔が残るだけだったのだが――――
「こういう経験モ、中々」
「がぇ…そう、ですね?」
「ふふ、無理に返さなくてもいい」
――――どういうわけか、初めて会った筈の人物と夜の街中をぶらついているのである。
最初は、断るつもりだった。それ以上迷惑をかける云々以外にも、そもそも初対面の人と遊び歩くというのはツルギにとってハードルが高かった。相応の警戒心と常識も相まって、普通なら謝りながら帰宅する一択だったものの、鬱々とした気持ちを抱えていたことは否定できない。
加えて、ツルギも年頃の乙女。正義実現委員会としての仕事に追われながらも趣味に没頭していた彼女にとって、こういった一期一会の交流にも憧れがないではない。
最近は妙に治安が悪化し、ストレスや考えることが増えてきた彼女のリフレッシュタイムが、
因みに、悪い大人で自分を騙そうとしているという可能性は考えなくはなかったが、そんな人物は線路上に身を投げ出してまで身を挺して庇おうとしない。リスクとリターンがあまりにも釣り合わなすぎる。
それに、何だかんだで一組織の主であり調停役としてバランサーになっている人物。人を見る目もそれなり以上だと自負している己が見ても、言葉や態度の端々から本当にこちらのためを思ってくれていると理解することが出来た。……万が一、本当に万が一、それら全てがまやかしであり、己を食い物にしようとしている人物であったなら、その時は素直に自分の眼力はまだまだだったと諦め、実力行使も辞さない心構えであった。
などと、つらつらと理由は押し並べられるが、いざ始まってみたら色々と考え出して物騒な思考はどこへやら。
緊張しながら、少しのウキウキと初めての体験に心を踊らせている初心な少女が出来上がりだ。
因みにそこに至るまで、色々とあった。
例えば、身長から歩幅にはかなりの差があるにも関わらず速度は合わせ、然りげ無く車道側を陣取り、歩道側でも当たりそうなものには気を配り手繰り寄せる。
汚れが飛んできたら庇い、姿勢のせいで胸元がちらちらと見られていたときには、自然な仕草のようにコートで隠しつつ耳打ち。
自発的な会話が多いわけではないものの、様々な話題や退屈しない程度の話を移動中も投げかけ、逆にこちらが話す時には黙して耳を傾ける。*7
あとはシンプルに顔と声がいい。身長がとても高く、スタイルも良い。その態度に反比例するかのように光の差さない切れ長の黒い目に、更に顔の下半分を覆うマスクがミステリアスな魅力を引き立てる。
ツルギには同委員会のハスミという長身の学友もいるが*8、身体バランスやその貫禄が違う。これはあまり声を大にして言えないが、正直ハスミよりもプライベートの関係では楽しいかもしれない。
そして今、例の映画の口直しに、夜間上映中の恋愛映画を楽しんできた帰りである。こちらは今まで見てきた映画の中で最高とは言い難いものであったものの、初めての出会い、いつもと違う夜中に映画館に行くという体験が、代え難い思い出として鮮明に記憶される。
「……悪くなかった。やや演出がチープだった点は否めないが…まあ、予算の問題か。…むしろ感情表現への力の入れ具合が丁寧だったナ。見ていて、疑問に思う点が少なかった」
「そ、そうですね…。昼間のリベンジ出来たので……嬉しかったです。……ケヒッ、まさか、主人公が人間じゃないとは……」
最初の方にあげていた奇声や発狂も、素晴らしい映画を見た直後ということもあってか抑え気味。やや上気した頬で先程の映画の感想を語り合う。
これも、何気にしばらくぶりの反応だ。ツルギはその表情や行動、言葉などから敵対勢力だけでなく味方側からも一歩遠巻きに見られており、険悪という訳では無いが、後輩などは先輩への敬意とツルギという大戦力への畏敬から、ツルギ側からは自身の行動を理解しているため無理に近づくのも負担になるだろうという気遣いから、自然体で映画の感想を言い合う、というのはあまりなかった。
唯一、物怖じしない友人としてはハスミやイチカなどが挙げられるが……ハスミは映画に誘ってもあまり興味がないのかよく見ていないことがあり、イチカは纏め役として後輩たちに慕われているため、こちらも中々遊ぶ機会はない。
あと、ツルギはどちらかというと気を遣う方ではあるのだが、リアン相手にはその気遣いも特に必要ない。勿論、雑に扱っていいというわけではなくこちらが気遣うまでもなく堂々としているためである。
「……そうだな。もし、俺があの映画のように人間の皮を被った化け物だとしたら――――――いや、やめテおくか。何でもない」
「…あ、その…何か?」
「…ただの妄想だ。気にシなくてモいい」
ネオンと照明に照らされる夜景。空高く浮かび上がる光輪が地を睥睨する都市。街路樹を肌寒い風が揺らし、人通り、特に生徒の数は目に見えて少なくなる。
既に、ディナーは済ませた。とはいっても、そこまで上等なものでなく、行きずりの店で済ませたが、その冒険が却って特別なものに思えてくる。
あっという間に、一時の冒険は終わり、特別に感じていた時間は終わりを告げる。
再び、今回の冒険の出発点である公園に戻ってきた二人。
ツルギをベンチに座らせ、近くの自販機で二人分の缶コーヒーを買ったリアン。
「……ああ、事後承諾ですまないが、コーヒーで良かったかな?」
「ぁ…あ、は、はい」(これって、あの小説で見た―――!!?)
受け取ったツルギは愛読する小説のシーンに似たシチュエーションに思考を茹であげ、緊張のままに熱々のコーヒー缶を上にする。
「ごッ!?…キェェェェェエェェッ!!?」
「…ああモう、一気に呷るから…」
すごい形相で咽るツルギを手のかかる子どものように宥め、口元から溢れるコーヒーを拭いていく。
「……さテ、連れ回して悪かった。楽しんで貰えていたら幸いだケど…」
「…そうですね。ちょっと、憧れていた事が出来た気分です。わ、私は、いつもはこういう遊び方はしていなかったので………。れ、恋愛小説で見たような、青春みたいな感じで、楽しかったです」
「……それなラ良かった」
しどろもどろになりながら答えると、表情はかけらも変わらないものの、緊張の糸がふっと緩んだように感じられる。それが何だか、少しだけ嬉しくて、恥ずかしげな顔のまま謝礼を告げる。
「…きょ、今日はありがとうございました。み、見ず知らずの私に…」
「ン?……ああ、俺がやりたくテやったんだ。趣味みタいなものだ。気にしないでくれ」
「で、ですが…。その、私はどうだったでしょうか? う、うるさかったり…変なことを口走って……」
「………いや、それも個性の一ツ。人様に危害を加えるようであレば諫めはするが、そうではないだロウ?なら、俺は気にしない。……無論、TPOはあるがな。………君に言う必要はなイだろうが」
接していれば分かる。彼女、一部の行動や突飛な発言はあるが、基本的に大人しく常識を備えた子である。闇マリクみたいな顔になったりもするが、それは表情を作るのが下手なだけだ。そもそも表情筋が存在せず、意図的に表面の筋肉を動かさなければ一切顔が変わらないリアンの方が、そちらの面では劣っているとも言えるだろう。
「……もし良けレば、家まで送ろうか?」
「はい…。はっ…!? い、いえ! 大丈夫です。私は一人で帰れますので……」
「そうか、警戒心があって何より*9」
「あ、そ、そういう意味ではなく…」
慌てて否定するも、そもそもその気がなかったリアンには伝わらない。話が終わる頃には、熱々だった缶コーヒーは一息に飲み干せる程度の温さになっていた。
いい時間だ。解散するべきだろう。リアンはおもむろに立ち上がると、最後にと贈り物を渡す。
「そ、そんな悪いです。これまでも出してもらって…」
「アれは誘った者として、年長者として当然のことだ。……ただ、今回は俺も楽しマセて貰った。その礼とでも思って欲しい」
押しに負け、受け取った箱から取り出したのは、三種の宝石をあしらった小さなブローチ。真ん中に白、その左右を黒い宝石と赤い宝石が支えているような代物。
「あ…?」
ふと、既視感を覚える。かと言っても、家や知人に似たようなものをつけている人物はいない。どこで見かけたのかと記憶を掻き分け……その箱が、街を歩いている際目についたアクセサリーショップの店名であることに気がついた。
そうして首を傾げていたのを宝石の種類への疑問と捉えたのか、リアンは続ける。
「……ブラックダイヤ、ルビー、そしてムーンストーンだ。誕生月は6月と言っテいたカらな…。誕生石に合わせて、黒と赤が映えそうだと思ッてな。……君ガ欲しい物とは、違うと思うが。知り合って間もない人間にあまり高価なものを贈られても、怖イだろう?*10」
「で、ですが私なんかには、こういったものは…似合わない、と思うのですが」
「…俺にとっては、十分見目麗しいと思ウが*11」
「な、な、な、なな何を…」
「…まア、嗜好やセンスは人それぞれか。要らなかったら、肥やしニスるなり、質に入れるなリしてくれ。……まあ、価格はアマり期待しないで欲しいが」
すっかり要らないと捉えられたのか、そう発せられる言葉を慌てて否定したら、ならいいかと手渡された。ここまで押されては断ることも出来ず、素直に受け取ることにした。
「―――そうだ。要らないかも知れナいが、これヲ渡してオく」
今度は何か、と貰いすぎて逆に身構えるようになってしまったツルギを微笑ましく思いながら、一枚の紙切れを差し出した。そこには、アドレスと番号が簡易的に書き留められている。
「これでも、何でも屋もやっていてな。仕事の依頼は歓迎だ。余程あこぎナものでもなケれば、大抵のことはやルさ。……上のアドレスだな」
「……下はおれ個人の番号だ。……仕事関係なく、今回のようなことデモ、何気ないことでも、こっちにかけてくれ。自惚れでなケレば、友人として付き合ってやれる。………ふふ、何気にこちらを渡すのは君が初めてダナ」
「初め………っ!?」
その言葉の意味を噛み砕いて、ボッと顔が赤くなるツルギ。そちらの様子には気づいていないのか、上機嫌そうにリアンは去っていく。
軽く振られた手を呆然と振り返しながら、ツルギはそのブローチと紙切れを荷物に仕舞い込んだのだった。
●
―――後日、正義実現委員会部室にて。
「ツルギ先輩、ずっとブローチを眺めてます…」
「……記憶が確かなら、前までは持ってなかったっすよね?」
「……何があったんでしょうか」
ツルギの後輩であるマシロとイチカが、いつにも増して上機嫌なツルギの様子を噂する。
別に、悪い意味はないし、そういった類のものを咎めているわけではない。そうではなく、普段はそういったものに興味があったとしても、学校内では抑えているツルギの珍しい姿に、ひそひそ話をせずにはいられなかった。
そこに同学年であり、副委員長でもある羽川ハスミが入室。即座にツルギと、その手元のブローチに気がついた。
「おや、そのブローチは?ツルギが校内でお洒落とは、珍しいですね。つけないのですか?」
「いや…いい。…壊したくないから」
「ですが、ブローチは装飾。つけなければ………もしや、貰い物ですか?」
「………」
何かに気づいたハスミの問いに、コクンと頷く。
「誰に貰ったのです?イチカかマシロか…、それとも他の後輩ですか?」
「(本拠を調べたらブラックマーケットだったけど、正直に話しても不安がるだろう)…………クヒッ…ひ、秘密…」
「!?」
リアンは普通にエンジョイしております。この子、殆ど仕事してたから……。最近ストレス発散したり趣味に没頭する時間が出来ましたが、それも資金集めだったり、一人でこもったり頭使ったりするやつなので、街を一緒にぶらぶら、特に反応がいいツルギと遊ぶのは楽しかったと思っています。
第3話でもある通り、友達と遊びたい気持ちはあるので…。
あと、もう大体理解した方もいるかと思いますが、このアホは自分のことになると倫理観がどっかいきます。それはそれとして常識も恐怖も据え置きなのが一番怖いです。
対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます
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C&Cリベンジ!
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ツルギとのデート回
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カニー・クッターと近所のヌシ
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全部!