透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
やったぞ!ついにだ…!ついに完成したぞ…!全地下8階、廊下幅3.2m、総室数83…! 地下に電気設備やインフラを張り巡らせ、道も全て整備して出来た夢の地下施設……!
RE:flector本社(一応地上の別エリアにダミー兼窓口扱いの本社はある。ただそちらでは会社の経営に携わる重要なものは配置されていない)にして俺の趣味用スペース…!
その内容はB5までを社員用スペースとして解放し、子会社の経営管理や通常業務、あるいは技能の習熟に励んで貰う予定だ。B1は基本的に社員入口や自由スペースだけどね。
俺の事務所からしか入れないという不便な点も途中で解消した。何せここは地下100mから始まる施設。色々な地下道に隠し通路を備えており様々な方向からの訪問も可能。
その分侵入経路も増えるかもしれないが、そこはまあ仕方ないと割り切ろう。いつかは門番や途中の経路でのガードもつけたい。出来れば費用がかからないもので。
さて、勢い余って無駄に部屋数は多くなったため、正直B2までしか埋まっていないが、後々増えることもあるだろう。それに、上だけでも運動が出来るスペースや食堂に開発室など、今すぐにでも運用できる程度には形になっている。
そしてお次がB6以降の……というかこっちが元々本命。俺の趣味スペース。会社としてではない好奇心故の研究や開発、もの作りに遊びなど、あまり人様に見せられないような代物を扱う場所となっている。
俺の正体が正体だけに、翅を伸ばす時間や見られていない場所が欲しい。……ということで、エレベーターでは直接地下6階以降には来れないようになっているため、一度地下5階まで移動してから更に階段で下る必要がある。まあ事務所からは直接行けるけどね。そのことは言ってないので多分大丈夫だろう。
……そんな訳で、外では色々と気を遣ってたこともこっちでは出来るわけだ。
早速貸倉庫に預けていた趣味の品や様々な方法で隠していた素材なんかを持ち込むと、それらを決めていた部屋にそれっぽく配置する。机にフラスコ、その他様々な設備も持ち込み、好きにレイアウトする。
あ〜、いいわこの感じ。分かりやすく言うならマ●クラでめっちゃ凝った城の内装に手を付けてる感じ。或いはゲームの模様替え系で理想の配置を見つけたとき並の快感…。
更にこれを稼働させるとなるとどれほどワクワクしているか、分かるでしょ?
銃器開発に薬品作成、音楽に実験…。普通にいい感じの倉庫としてもいいし、色々と夢は広がる…。
ふふ、何から手を付けようか。これまで長かった…!欲望を発散したくとも、どうせなら地下でやったほうがいいという理性で抑制し続けて我慢に我慢を重ねたんだ。はっちゃけてやるぜ…!
prrrrr
『オーナー!今大丈夫ですか!?農業系学校から食料輸送中のトラックが不良に…』『オーナー!船長が船を守るため一人でイカに…!』『オーナー、その、この決算ってあたしがやっていいやつっすかね…?』
…………まあ、彼女たちが優先だよね!オーナーとして常識的に!
――――…
ふう、何とかなった…。
あれから数日、問題が発生した件やこっちの不手際の後始末に駆け回りながら、改善点や今後の目安なども言っておいた。これはまだ開始して間もないため仕方がない。出来るできない以前に分からない者には教えなければ育たないからね…。
んで、とった対処として、まず食料品輸送トラックを襲った不良には、後日カメラで確認した顔からブラックマーケットの伝とトラック自体に付着させていたフェロモンから探り、本人の家に社章付きのお気持ち手紙を届けておいた。*1漏れはいるが、少なくとも同時に襲撃した集団には伝わるだろうから、こうして少しずつ躊躇させていく。まあ、それまでに襲われるのは必要経費ということで。我ながらキヴォトスに染まったものだ。
そんで、勝手に子会社の社長にしちゃった割にはよく働いている。というか、良く働けるから抜擢したんだけどさ。それは一緒に書類仕事を片したり、仕事に慣れていないだけだから一緒に学んでいけば問題は無さそうだった。優秀な部下である。何故不良に落ちぶれていたのか不思議なくらいすっきりした性格だし。
……一番の問題は…うん。漁に行ってる班だったね…。
特に蟹漁船の所は何故か遠洋に潜むクラーケン(明らかに40mを超えていた為そう呼称する)に遭遇。甲殻類を捕食する烏賊の仲間なだけに付近の蟹を食らっていたクラーケンに漁獲量を下げられると見た船長が突貫。
まさかの漁船で
だが当然のごとく捉えられ危機に陥った所を別の漁船を誘導中のゲブラが合流し交戦。
対象は1本の触腕と4本の腕を失い逃走。対するゲブラ側も少なくないダメージを受け撤退を余儀なくされ、痛み分けとなった。……強くない?
結構な命の危機だったはずなのだが、本人たちは至って真面目に奴に対抗する術を身に着けようとしているらしい…。うん、前向きなのはいいけど危なくない程度にね…。何か後で対抗策とかありそうなら渡すから…。
回収されたクラーケンの足は非常に美味で、バター炒めにして彼女たちに振る舞っておいた。それでも結構な量が残り、切り分けたあとは冷凍して輸出予定である。
ゲブラにもよく頑張ったと労っておいた。何かチカチカしてたし多分喜んでいるんだろう。
キヴォトスならではのトラブルが多くあったが、それも目立った被害もなく収めることが出来、最近は依頼もないということで、自由時間が出来た俺は考えた。
これ俺一人じゃカバー出来んな。と。
キヴォトスは広い。それに加えて様々な土地、様々な思惑がある中で更に仕事にも追われていると正直情報を集める時間がない。もっと言えば、物量が足りない。
マシンやドローンを扱おうにも、普通に怪しいしその道のプロフェッショナルが多数いる以上、大量生産品では怪しんでくださいと言っているようなもの。
そこで、俺はある一つの作品の真似事をしてみることにした。
みなさんご存知、あの傑作映画。ジ●ラシック・パーク…!
あれは遺伝子工学的にちょっと無理なことはあるが、ここキヴォトスならば割と無茶も通る…!というより環境も俺も既存の常識からは考えられないものが多いからなんか行ける気がする*3。
でも、恐竜とかそういうのではない。その後継作品にしてラストを飾ったあのタイトルに出てきた遺伝子改良バッタ。
要は、虫が己の意思でコントロール出来るなら、便利だろうなぁ、と*4。
そのため、様々な直翅目を買ったり集めたりして、B7にて本格的に研究することにした。
最初、通常の遺伝子操作で何とかならないかと考えたが、何をしても思ったように上手くいかない。もういっそ異常なくらいが丁度いいかと思い、ショウリョウバッタ、イナゴ、トノサマバッタ、カマドウマなど様々な種類の直翅目のゲノムの一部を俺の髄液から採取したものと入れ替える。
最初の内は配列を間違って死亡したり、数秒で歪な異常発達を遂げて死亡してしまったが、次第にコツを掴んでいき、一部の細胞片のみを入れ替えることで安定した状態でコントロール出来る個体が生まれ始めた。
この中で最も適性があったのはアビドスサバクトビバッタというキヴォトスの固有種。それはもう優秀でこちらの命令をある程度聞いたりするのに加えて相変異の様に肉体の変容を及ぼしたのだ。具体的には顎が鋭くなったり基礎能力の上昇など。
そうなるようにしたのは俺だけど、こちらの命令を遵守するようで、余計な指示さえしなければ大人しいのも高ポイント。
他の種類でも似たような真似は出来たし、それならではの利点もあるが、やはり使っていて一番使いやすい。雑に使えて雑に強い感じ。
今は二匹の被検体へ特定の波長を送って指示通りの動きをどの程度の精度で出来るのか、どの程度離れても大丈夫か。その場合の齟齬や精確性はどの程度かを確認中。
……そこでジャンプ。そのまま飛行体勢に入って迂回、壁にぶつかる前にUターンして着地、からの前方への飛びかかり…。っと。
こんな感じで、少ない数なら結構出来る。まだ試していないから分からないが、恐らく数が増えれば増えるほど大雑把になっていくと思うこれ。
一回試験的に連邦生徒会まで飛ばしてみたが、その場合でも何らかのネットワークに繋がっているかのような感覚で情報を手に入れることもできた。
連邦生徒会長の失踪にシャーレ、先生…。興味深い…。
まあ、それは今は置いておく。今はこいつらのことだ。
ある程度の知能もあるし、銃弾には流石に耐えられないけど、こう、アントマン的に戦うことも出来るポテンシャルはあると個人的には思っている。
正直、例の映画のように他所の農地を食い荒らして契約中の学校の株を上げることはできるけど、それは流石にちょっと気が引ける。
……というより、まだ試作段階と言うか、やっと実用できるかも…?程度なので足踏みしている状態である。観察期間を長くしてデメリットや影響なんかを見とかないと、いざ大量に作って後で致命的な欠陥が見つかりました、では話にならない。
ので、これらの確認を済ませるまで、新たに手を出すのは渋られた。こっちに時間を割きすぎてちょっと仕事も溜まってきた。
とりあえず、大規模な諸々が出来るまでは確実性を上げる程度に抑えて、今は他の研究や仕事に勤しむとしよう。
●
「早めに片付いたな…」
その日、リアンは簡単な依頼を終わらせて帰路についていた。その依頼というのも、とある物を指定の人物に届けてほしいとのこと。念の為確認をとったが非合法なものではなく、一部のオーパーツや貴重品を知人に譲り渡す目的だったのだが、最近の治安悪化の煽りを受けて外出を控えようかと思った所で噂を耳にしたらしい。
その程度ならと比較的安価で引き受け、やってきたのはトリニティ自治区。
無事決められた時刻以内に届けたリアンは、初めて訪れたトリニティ自治区を物珍しそうに眺めていた。
……ゲヘナをドイツ風とするならこっちはイギリス風。ゲヘナ程騒がしくはないし、大半は上品なお嬢様的な生徒や穏やかな自治区といった感じだが、稀に生徒の中から向けられる視線がミョウに敵意の籠もったものであることに感づいていた。
(歓迎されてないっぽいな…)
遠巻きに見たり、微かに嫌そうな顔をするのみで実害はないため放っておく。あんなの気にしてたら際限ないしね。
まあ、それなりにスイーツを味わったことだしプラマイプラスということにしておこう。特に、自治区ぎりぎりにあるソルート川──溶液中の溶質に非ず──沿いのミラクル5000とやらはこれまで食べた中でもかなりのもの。
開店時間直後、学校終わり直前くらいの時間帯に訪れたため待ち時間もなく買うことが出来たが、調べてみると相当な人気を持っていた。何でもこれのためにお嬢様方ですらマナーを捨て去るレベルらしい。怖。
まあ食べてみた感覚としてはそういった依存物質や薬物反応は無かったから純粋にその美味しさにつられただけだろう。
……再現出来るか?使われている材料や調理手順なんかは大体分かったが……どうも、肝心なピースが足りない様に思える。
あの犬の店主、パティシエとしての腕は俺以上。多分全力を尽くしても八割程度の再現が限界。それ以上を目指すなら直接師事したほうがいい。
まあ個人で作って人に出せるレベルではあるが、分かる人が食えばその物足りなさに気づく。……マジで一体どんな要素を見落としているんだ…。いつか、機会があったら聞いてみたいな。
さて、そんな訳で事務所へ帰るべく駅に向かう。それで自治区間を結ぶ電車……ではなく裏道が目当て。
入り組んだ市街地から建物の間を抜けていくと、ブラックマーケットへの入口に繋がる。多分ここからトリニティの生徒がブラックマーケットに行ったり、逆にブラックマーケットの不良が張っていたりするんだろう。
さて、それではトリニティ自治区よさらばと身を翻そうとした直後、線路上に何者かが踏み入った。体勢からして落ちた?いや、自分から降りたのか?
「不味い…!」
咄嗟に見るも、駅員室のロボ市民は咄嗟に指示を飛ばしているが、周囲の人物が慌てていて冷静な行動が出来ずにいる。
迫る電車は快速。向こうも突然の闖入者に慌ててブレーキをかけているが、ここで止まるつもりのなかった電車の急ブレーキでは間に合わない。最早、彼女が轢かれるまで2秒と猶予はない。
俺は咄嗟に駆け出し、一飛びでフェンスを超えその支柱を壁に跳び、線路内に侵入する。
「お、おいっ、アンタ!」
時間的はギリギリ。彼女の負担にならない速度での離脱は不可能。電車を止めようにもここで無理やり止めたら衝撃が後部車両に伝わり周囲の人にも被害が出る。
なら、彼女に負担がなく、それでいて電車のエネルギーを減衰させる方法…。
つまり、これしかない。
「口を閉じろ!」
「ぃっ!?」
ギイイイィィィン!
と車輪と線路上に火花が上がる。それは全力のブレーキであるという証左であるものの、その勢いはそう簡単には止まらない。
ようやく止まったのは、疾うにその位置を過ぎ去ってからだった。
その場に居合わせた人々は誰もがその凄惨な末路を想像し青褪める。
車掌や駅員が駆けつけ、警察に通報しようと携帯に手をかけたその時、線路上からひらひらと黒い手袋が明確な意思を持って振られる。
誰もがまさかと思いつつ眺めると、そこには、一人の生徒を姫抱きにし、五体満足で線路から身を乗り出すリアンの姿があった。
一言で分かるように説明すると、サム・ライミ版のスパイダーマンだ。
線路に割り込んだリアンは直撃寸前の生徒を抱きかかえると、衝撃がいかないように庇った上で足を踏ん張って衝撃を殺しながら電車の勢いも衰えさせる。
その証拠として、停止位置までの枕木は全て破壊され、代わりに電車の顔へのダメージは少ない。
人々からの心配と称賛の声をBGMに、相応の手続きとお叱りをその生徒と一緒に受けたリアンは、立ち去ろうとするその生徒を呼び止め、人気のない公園のベンチに腰を下ろした。
「………」
「………ぁう…」
「………何か、悩みガあるのか?」
互いに無言。緊張したような空気が流れるも、最初に口を開いたのはリアンだ。
というのも、女子生徒が飛び込んだ理由として挙げられるのが、所謂いじめなどによる自殺だと勘繰ったからだ。
何せ、該当の少女は一言で言ってしまえば猫背で顔が怖く、時折口に出す声も女子生徒にしては低めだ。ヘイローも言ってしまっては悪いが不気味と形容するのが相応しく、色々と濃い特徴を持っていた。
人は、己と違うものを恐れ、排斥する生き物だ。加えて嫉妬や暗い愉悦など、多感な時期の学生であったりすると尚更。
トリニティの陰湿な部分や女のいじめは怖いという点を部分的に知っていたこともあり、外見的特徴、あるいは何かしらの問題によって心身に負担を負っていると考えたリアンは、何か悩みがあるのかと彼女に問いかけた。
「…おっト、すまない。素性も知らない人間は怪しいか。……遊星リアンだ。……一応社長をしている」
証拠として名刺を差し出し、その反応を待つ。
受け取った名刺と顔をまじまじと見つめた彼女は、少し吃ったように声もらすと、顔を赤らめながら「剣先ツルギ」と名乗ったのであった。
サム・ライミ版のスパイディいいよね…。
※誤解のないように明記しますが、リアンの考えているような事実は一切ございません。すべて勝手な思い込みと勘違いです
『遺伝子改良バッタ』
バッタとはいうが、一部の直翅目にて成功している。特殊な波長やフェロモンで意のままに操ることができ、実際に連邦生徒会から情報を抜くことに成功。現在は経過観察中。
『カニ道楽ちゃん』
なんかみんなが感想で言うから定着したネームドモブ。無謀にもクラーケンに水中戦を挑み無事死にかけた。リベンジを誓っている。
『クラーケン』
デカグラマトンの預言者と真正面から渡り合える野生の頂点捕食者。強い上に戦局を見て撤退する知能がある。めっちゃ美味い。ライバルはモササウルス。
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