透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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タイトル詐欺2回目ー!
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9の評価も赤色に…!っていうか、あの、怖い。俺が色の順番を勘違いしてたからもう少しで赤色〜とか言ってたけど、まさか一日で100人以上増えるとは思わないよ…。言ってみるもんだね。その、ありがとうございました。


第15話 リアン死す

 

 人の手の入らぬ凍土にて、人知れず行われていた超越存在との交戦。分厚い氷はその巨体を支えて余りあるようで、二脚と双腕を地に突いたゲブラが戦闘態勢を取る。

 

 先に動いたのはゲブラだった。

 

 眼前の侵入者を撃滅せんと、双肩に位置するバルカン砲が唸りを上げる。潜水をするだけあってか防水機構は十分なようで、陸上兵装であるそれらが弾丸を発射するのに、何の弊害もない。

 

 乱射されるそれをステップで躱し、砕氷が舞い氷の足場に不細工な轍が刻みつけられる。滑らかな氷上を軽やかに滑るリアンは、爪をスパイクに急停止。挙動を予測して放たれた弾幕の裏をかく。

 

 尚ここまでで両手はマカジキで埋まっているものとする。なんかビチビチしてる。

 

 そんな訳で距離を取ったリアンだが、装備にいつものアサルトライフルはない。

 

 それも当然、そもそも交戦を想定していない領海の下見に来ていたのだから。第一遊泳中に銃器などまず扱えず、故障するので他の服などと共に港に置いてきている。

 

 そも、今回着ているダイビングスーツも丈夫に出来ているが、普段着ている戦闘用に色々と手を加えた軍服に比べれば耐久性は些か劣る。

 

 氷上とあって投擲物にも恵まれず、肝心の氷は強度不足で武器とするには頼りない。これが生物相手ならば効果はあっただろうが、戦闘用の機械となれば碌な活躍は期待できないだろう。

 

 そうこうしているうちにバルカンの雨あられは止み、八門のポッドからミサイルが放たれる。不規則に動き回り大きな爆発を起こすそれらを遮蔽物の少ない中回避することは難しい。

 

 一斉に向かってくるそれらに対し、こちらは両手が塞がってしまっており*1、的確に撃ち落とすことは困難。

 

 その判断を一瞬で済ませたリアンは爆発直前、氷盤を割り砕き海中へ潜る。爆風と爆炎が海中からも見える中、リアンは直ぐ様地上に復帰してこちらを見失ったゲブラへと攻勢に出る。

 

「…脚を、貰ウッ!」

 

 飛び出した勢いのまま、本体に生えている左脚を蹴り払う。踏ん張りが利かず一撃で破壊とまではいかなかったが、衝撃は伝わったようで、片脚が地を離れ右腕で倒れ込む機体を支える。

 

「…ふっ!!」

 

 破壊に至らないことを感覚で理解したリアンは、空中で身を捻り視線をゲブラの右腕へ向ける。今は付近に何の障害もない。

 故に、リアンは口腔で圧縮した溶解液をその周辺の氷を囲って放出する。

 

 分厚い氷盤もしゅうしゅうと瞬く間に融解し、踏ん張っている右腕が海面に落ちる。

 

 二段構えの姿勢崩しに、ゲブラは何とか残った右脚で踏ん張るも、逆関節に吸い込まれるように放たれた蹴りが膝を折る。

 

 ガシャンと、巨体が倒れ伏す。

 

 稼げる時間は長くない。機械に痛覚はなく、同時に焦りもない。ただ崩れた体勢を戻すために動くのみだ。

 だがしかし、その僅かな隙を最もわかっているのもリアンだ。

 

 センサーである顔を蹴り上げ、まだ足りぬと回し蹴りの体勢に移るも、瞬間触覚が下から迫る魚雷を知覚する。数は六。足場を破壊するには十分な数が迫っている。

 

 ゲブラは目の前の相手を脅威と判断。このまま体勢を直していれば追撃を喰らい続けると考え、その修正よりも先に攻勢に出たのだ。

 海中に浸かったままの右腕は、地上のリアンに察知させずに魚雷を撃ち込むことに成功していたのだ。

 

 このまま蹴りを入れても足場が崩されては威力が殺される。どころか遠距離攻撃手段の薄いまま海中戦に持ち込まれる可能性がある。

 

 それは好ましくはない。

 

 だが、ここで引くのではない。むしろ、爆風に合わせて前に飛ぶ。背後に着地、目論見の外れたゲブラが海中に逃げようとするのを咄嗟に出した中脚*2で掴む。

 

「ヌッ、おぉっ…!」

 

 海に飛び込む形のゲブラを完全に抑えるには至らず、されど、半分浸かったままその身体を引き止める。

 

 鉤爪を地面に撃ち込み、踏ん張りをきかせたリアンがその巨体を引き揚げようと力を込める。

 

 ゲブラも予想外の抵抗に驚いたのか、必死にバーニアを吹かせて海中へ逃げようとするが、リアンがそれを許さない。

 

 一見その綱引きは拮抗しているかのように見えるが、時間がかかればかかるほどゲブラの優位が目立ってくる。その理由は、偏にゲブラが既に着水していることと、リアンの足場が不安定なことに尽きる。

 デカグラマトンの預言者として選ばれるほどのAIを持つ古代の超技術なだけあって、その馬力は馬鹿にならない。潜水艦としての機能と軍用機顔負けの推進力による加速は並大抵のものではない。

 ゲブラは力の許す限り進むだけでいいが、リアンはそうもいかない。ただでさえ足場の悪い氷上、いかにスパイクで踏ん張りを利かせているとはいえ、その力に足場が耐えられない。更に、先程の魚雷の掃射や度重なる衝撃によって脆くなっていた流氷になりかけている。

 

(足場が悪いなあ…。長期戦になると負けはせずともこのまま流される)

 

 引っ張り合いの中、そう判断したリアンはようやく右手のカジキを下ろし、肋骨の内側にかけているホルスターから4本のナイフを取り出した。

 

「…余リ、使い捨てタクはないケど…」

 

 それは、覚める様な蒼色の刀身を持つナイフ。当然、ただのナイフではない。

 

 リアンは常々思っていたのだ。キヴォトス人はやたらと頑丈であり、それらと対応する武装の類も強力だ。大量生産品らしからぬ威力の差を持つ銃器。銃弾はおろか大砲の一撃を食らって気絶で済む一般スケバン。

 

 それらにはキヴォトスで稀に目にする神秘というものが関与している可能性が高いと。一般に生徒が神秘たる象徴とされているが、それとマトモに戦えるオートマタがいるあたり一概にその力の源とするには不確定要素が残るが、少なくとも並の武器をただ扱っただけでは十分な効果を得ることができないのではないか?と。

 

 確かに、己の人外じみた筋力でナイフを突き出せば、生徒に痛痒を与えることも不可能ではない。だが、それはあくまで使用者の性能。己以外にヘイローを持たない、所謂普通の人が振った所で、キヴォトスの民と戦闘できるほどの威力にはならない。どころか、神秘などを持たない己ではその耐久性にも不安が残る。銃撃を受けて貫通しない耐久性の物体に、人外の膂力でぶつけられれば、ナイフが先に折れるのも容易に想像できる。

 

 神秘がどの程度、どのような性能に直結しているのかは未だ模索中だが、要はその庇護にない己が対キヴォトス戦闘に向けて造ったものがこれだ。

 

 ヴォルフスエッグの熔鋼に、エーテルの粉を練り込んだものを幾重にも重ねて鍛えたもの。ちょっとした工夫として、焼入れ時にはファイストス円盤を崩した特殊粘土を塗布することで熱膨張係数を調節し、熟成したマンドレイクから搾り取った油で冷やすことで更なる性能の向上に努めた特注品。

 

 故に、キヴォトス全土を見てもリアンの手打ちの本数しか無い超貴重品。リアンが取り出したのは鋳型*3で造ったものだが、中でも出来の良い12本は聖書になぞらえ12使徒の銘をつけて市井に出品。どれもマニアに人気でかなりの高額で売買されている*4

 

 惜しみながらも狙いをつけて4本全てを投擲。海面を突き進むそれらは、見事ゲブラのバーニアへ直撃しショートさせることに成功した。

 

「…かぁッ!!」

 

 抵抗の弱まったゲブラを掴み、なりふり構わず振り上げる。機械の怪獣が、放物線を描いて空を舞う。それはさながら巨大な怪物(モンスター)が一本釣りされたかのよう*5

 

 打ち揚げられた魚のようにゲブラは氷上に落ちる。

 

 そのAIは、預言者(セフィラ)の座を担って以降初めての危機感を覚えていた。

 たった一人の人類に、デカグラマトンの預言者たる己が脅かされている。このままでは、神の証明も天路歴程もあったものではない。

 

 排除すべき侵入者、群れなす妨害者ではなく、個の生態でもって明確に己を害する天敵として認識を改めた。

 

 向かうリアンに、ゲブラはなりふり構わず武装を打ち込みまくる。追い詰められたと自覚しているゲブラが、己の身を守るため、ひいては神の証明への障害として、初めて生まれた生存本能。ゲブラは形容する感情を抱いたことはないものの、それは我武者羅といった単語が最も近しくなるのだろう。

 バルカン砲が縦横無尽に空を舞い、魚雷とミサイルが上下から爆発の連鎖を発生させる。氷面が砕け、爆発が木霊し、右肩二門の大砲が反動を無視して暴れまわる。

 

 大地が揺れ、海が爆発し、地獄のような雨あられが四方八方に撒き散らされる。

 リアンもこの乱射は流石に回避しきれない様だが、その地獄に晒されながらも進撃を止めることはない。時に斬り捨て、時に脚で受け、割れた氷上を跳び跳ねながらゲブラへと迫る。

 

 距離はどんどん詰められる。近づけば近づくほど弾幕は厚くなるが、それも意に介さないといった風に進み続ける。

 

 そして、最早砲塔の何れも向けられぬほどの至近距離にリアンが現れた。

 大砲とバルカン砲は可動域の問題で、魚雷とミサイルは己とその地面を巻き込むために誘導できない。

 

 飛び退ろうとも、打ち揚げられ体勢を整えるほどの時間すら与えられなかったゲブラは動けない。焦ったゲブラが咄嗟に選んだのは、徒手空拳。武の心得も概念もないそれだが、己の質量と馬力による物理攻撃が武器になることは理解していた。

 

 思い切り突き出された左腕。太い剛腕が寒空の風を切りリアンの目の前へと突き出される。

 が、それはリアンに直撃することはなく、突き出した腕ギリギリに手を当ていなされる。

 ゲブラがそもそも物理的に殴ることを想定した設計構造をしていないことであるとか、一度もそのような事がなかったため経験不足であったとか、様々な要因は挙げられるだろうが、それでも、至近距離から予想外である殴打を紙一重で抑えるのは流石というべきか。

 

 突き出された左腕は内側に空振りし……。焦ったゲブラは何を思ったか、左腕に搭載された機能を解放した。

 

 ズガシャッ!!!

 

「ガッ…!?」

 

 躱したはずのリアンの顔面に、それが突き立てられる。

 炸裂音と同時、とてつもない勢いで射出された鏃のような返しのついた巨大な杭。

 

 それは、ゲブラに搭載された兵装の中で、対人装備としては想定されていないもの。元々は己と同じ様な高精度な兵器や装甲を破壊したり、水陸両用運行として障害物を破壊するための杭打ち機であったもの。

 

 当然、その他の武装や己の力で突破することが難しい際に使われるもので、射程は非常に短いがその貫通力は何よりも高い。

 

 それを、至近距離で人型生命の頭部に直撃したのだ。

 

 真っ白のパイルはリアンの左目から侵入し、白色の髪を頭皮ごと引き千切りながら左上頭部を粉砕した。完全に貫通したパイルが反対側に突き出ており、散らばった破片が杭を汚す。損壊した頭部の孔からは脳漿がこぼれ落ち、冷たい氷にぼとぼとと落ちてはほかほかと蒸気を上げている。

 

 頭の上に浮かんでいた光輪も消滅し、間違いなく死んでいる。

 

 むしろ、これだけで済んだのが奇跡なのだ。そもそもこのパイルのサイズも人体をマトモに狙えば腹に巨大な風穴を穿つほど。発射されてから咄嗟に顔を動かしていなければ、頭部そのものが巨大な杭に消し飛ばされていたことだろう。

 

 だからといって、頭部を吹き飛ばされては最早意味もないが。

 

 頭部を損壊し、脳漿を撒き散らした状態で生存できる人間などあり得ない。それも、何の装置や処置もなしにこの極寒の地で生き残る確率は0%だ。

 

 ゲブラも流石にその様子を見て、兵装を下ろし、ようやく警戒を緩めようとして――――

 

 

―――ピクリと、何かが動いた。

 

 

*1
カジキを置け

*2
ゴテゴテした装飾の一つが蓋になっている。まだカジキは持ってる

*3
これもファイストス円盤を戻したもの

*4
後に12番目のナイフがある概念と結びついてLibrary of Loreに昇華してしまった

*5
モンスターハンター20周年おめでとう!




あーあ、リアンちゃんの頭部が半分飛ばされて脳髄が零れちゃいました。ゲブラ君のせいです。

ちなみに痛覚とかは人並みにあります。治るだけです。

対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます

  • C&Cリベンジ!
  • ツルギとのデート回
  • カニー・クッターと近所のヌシ
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