透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

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新年初投稿です。ことよろ〜。
突然ですが重大な設定ミスに気づきました。
最初の登場シーンでは青白い肌だったのですが、2話の後書きでは褐色にしております。あんまり深く考えずに詰めたいものを詰め込んだ弊害ですね…。
このせいで皆様方に定まらないイメージを与えてしまいました…。
ので、やっぱり最初の人外描写にのっとって、リアンの肌は血の気のない生物的な白色にします。
たまにこんな感じで設定が変わってしまうことがありますが、その時は「こいつあのとき深く考えてなかったな…」と生暖かい目で見逃してくださいませ。

それと、原作:ブルーアーカイブ ページで総合評価順にすると上から7番目に拙作が来るようになっておりました。これもひとえに皆様に愛読していただけるおかげです。この場を借りて謝礼を申し上げます。ありがとうございました。……ただ、これ殆ど原作のキャラとか場所に全然関わってないで独自路線爆走してるけどいいのか?

今回は注釈多めです。出来れば全部見ていただけると幸いです


第14話 瞬間レイトウ本マグロ

 

 給食部の依頼(あれ)から更に数日後。地下増設計画は一層の進展を見せた。バイトの娘たちが掘って整備した道を、俺が深夜帯丸々用いて床や壁を取り付けていく。

 作業や図面の読み取りにも慣れたのか、これまでよりかなりハイペースで進んでいる。何ならもう4階も半分以上出来ている。早くない?

 

 因みに翌日には掘った道に壁が張られているのは驚いたらしく*1、むしろそれが追いつかないくらい進めてやる…!と一部の意欲的な少女たち*2が頑張っている。

 

 それと、最近の大きな出来事として、社長に就任したことが挙げられる。

 

 うん、会社創っちゃった。

 

 一応前から名義とかはやってたけどね。つい先日、大型の食料庫とか倉庫とかを買い取った。元々使われていたらしいけど、何か大本の会社の不祥事があったとかで差し押さえられた所らしく、とりあえずの土地の管理自体はされていたものの、次第に建っていた土地がブラックマーケットに飲まれてからは管理自体もあまりされていなかったらしい。

 

 ので、急いで実用に耐えられる程度に補修して、ついでに買っておいた様々な設備なんかを設置。本社を事務所にして、色々と手続きしておいたのだ。

 

 前々から興味はあったし、給食部との約束も守らなきゃだし、何より、バイトの娘らの境遇を聞く限り、ああやって放されるよりは企業で囲い込んだほうがいいな…。というのもある。

 

 っていうか、ぶっちゃけ、ここ、学籍ない娘には優しくない。

 

 ここ、キヴォトスは学園都市だ。それぞれの学園が自治権を持ち、生徒たる彼女たちによって統治がされる、まさに子供たちの国。……いやまあ、それにしては割とガチめだけどね。

 まあ、そんなわけで、ここでは学校というものの力は凄まじく、所属の表明から、様々な恩恵まで与えられる。

 

 が、それはあくまで学園に所属している生徒のみ。不良生徒や停学中の生徒などもいて、同じく学園にして警察機構となるヴァルキューレ警察学校や連邦矯正局などによって身柄が拘束されることもあるが……。あくまで、それも生徒としての身分は残されたまま。

 ブラックマーケットでその日暮らしを強制される彼女たちは、最早国家の庇護をなくしたに等しい。学園が管理している口座は即凍結、住居や寮も場合によっては使用不可になり、学生身分が剥奪され、まともに働くことも困難になる。

 そんな生徒を食い物にする大人は多い。学園の庇護がなければ訴えた所で助けはなく、またそれを相手も分かっているため、企業も強気で酷使することが出来る。

 必死に受けた依頼からあらゆる理由での天引き、理不尽なタダ働きに教訓を得る。というのはドロップアウト組は誰もが通った道である。

 

 搾取されたらされっぱなし。頼れる組織はなく、戻る方法もない。僅かな成功例としては、企業に認められ、その下について忠実に働くか、あるいは余程いい人に拾ってもらうか。

 一回落ちたら、余程運が良くなければ、殆どの場合落ちっぱなし。

 

 それはこう、あんまりにあんまりだ。なので、今回食料品系の会社を建てる前に、更生施設兼職業斡旋所としても登録しておいた。食料の方は子会社にあたるね。因みにバイトリーダーちゃんが一応の社長になってる*3

 

 そんな訳で、俺の所で働く意欲とか、まともな生活を送らせて、生活水準を引き上げつつ、他所で働けるようになったら斡旋。うちで働きたいならそのまま審議して雇うことにする…。

 

 という計画をこの前立てた。

 

 割とガバガバでまだまだ精査の至らない部分はあるが、取り敢えずの方向性はコレで行く。一応ブラックマーケットの有力者とかにも釘を刺しといた*4し、今の段階で邪魔をされることはないはず。

 

 このことはまだ他のバイトの子たちには話していない。あくまで予定だし、未だに他の事業で成功できるかは分かっていないからだ。

 

 とはいえ、今回のアレコレでかなり金を使ってしまった*5。いくらオーパーツの貯蓄があるとはいえ、あれも時価が変動するもの。加えて売れなければ意味がない。

 

 これからの運営に向けても、先立つものが必要だ。

 

 それはコネしかり、金しかり。

 

 食料品関係は既にブラックマーケットと卸業者のパイプが強く、割り込む隙が無かったから、各自治区の中小規模の農業畜産系の学校に資金・技術提供を持ちかけて格安での仕入れを約束しているが、どうも海産物や肉との縁が薄い。

 

 まあ、まだ本格稼働しておらず、むしろ海産物の扱いが出来るわけではないけども。それでも、やっぱり品は潤沢に揃えなければならない。

 

 そんな訳で、一つの妙案を思いついた。

 

 

 

 

――――…

 

 

 

 

「とうの昔に放棄された区画。……ヤハり、資源は潤沢か」

 

 ザバリ、そう音を立てながら海中から上がるリアン。軽々しく語っているが、その身に装備と言える装備は何一つ纏っていない。

 強いて言えばややゴテゴテした装飾のついたダイビングスーツ*6は着けているが、肝心のゴーグルやボンベ、フィンといったものはない。

 更に、その過酷さに拍車をかけるのは、一面に広がる銀世界。

 

 ここは、レッドウィンター領から更に北方に離れた先にある「氷海地域」。海すら凍らせる極寒の地にして、あまりの極地にある地域ということで、最早自治区も存在しない破棄された区域でもある。

 

 長らく管理するものもいないここに、リアンは目をつけた。自治区の撤退した地域には、最早管理するものはいない。要は漁業権と土地代が超格安で交渉の必要なく入手することが出来たのだ。

 ここで漁を行う者はなく、豊富な生態系と確認された情報から余計なしがらみもない。

 かつてこの地を所有しようとした者もいるが、防寒対策をしてなお過酷な環境。何より、現在所有できる海域においても十分な漁獲量を有していたため、人員派遣や設備関係など諸々の事情とここで得られる利益では、明らかに損失が目立っていた。

 これにより早々に撤退。先駆者はここが放棄された由縁を思い知らされるのであった。

 

 ……でも、俺には関係ないね。え、寒いの弱点だろって?

 それはそうだけど、ちょっとニュアンスが違う。あくまで、俺の肉体の再生速度が落ちるだけ。別に我慢できないわけでもないし、寒さが苦手な訳でもない。肉体の再生には周囲の熱を吸収して高速で治すから、辺りが寒いと効率が悪くなるだけだし。そりゃ直接凍結させられたりしたなら分からないけど、熱さえ吸収出来れば理論上は無限に治せるっぽいからね。だから逆に熱には強かった。

 

 この前ゲヘナのヒノム火山に寄ったときは溶岩の中でも泳げたし。温かかったです。はい。

 

 さて、そんな訳で、今は下見をしてます。

 

 実際に船を浮かべるにあたって、ルートの確認は必須。普通の海路でもそうなのに、詳しい資料も少ない氷海地帯ともなれば重要性は上る。

 実際に漁を行う場所はもっと遠洋だし、港だって氷じゃない普通の陸地にある*7。それでもやっぱり隠れた氷山とか、潮の流れを確認したりしなきゃいけない。不慮の事故があってからでは遅いからね。

 ついでに魚群を見たり、こっちでの狙い目の場所なんかを確認してる。意外と楽しい。昔やったダイビングもこんな感じだったけどやっぱ幻想的だわ。あ、アザラシ。

 

 なんかこう、本当に人の手が入っていないんだなと感じる。マグロの群れもいるし…。何でいるんだ?暖流がここを通ってるとかか?……あ、いろんな海流が通じてるなこれ。だから意外と種類も豊富…。まあ、たまにこんな氷海にいちゃいけないような魚もいるけど、ゴールデンマグロとかいう固有種もいるくらいだし、キヴォトスの魚も例に漏れずタフなんでしょ。牡蠣もめっちゃデカかったし。

 あれはオオシャコガイ*8では? こっち(キヴォトス)じゃ絶滅危惧種でもなかったし、記念に何個か持って帰ろう。味もイケるし。

 やっぱり人の手がないだけあって長生きしてる個体が多い。1m超えがいくつも見つかる。でかい(1.2m)。でかい(1.12m)。でかい(1.3m)。

 うお…それは流石にでかすぎ…(2.03m)*9

 

 加えてカニも発見した。タラバガニもズワイガニもどちらもわんさかいたので、健康状態の良い肉付きのいい個体をいくつか選んで体内に格納。

 

 とりあえずこれらは一旦冷蔵しておいて、もう少し氷結した地面の方も見てみよう。ひょっとしたら氷の大地の下に貴重な食材が群生してる可能性もある。

 

 そんなわけで、氷の大地を天井に、透過された光が刺す海へと身体を投げ出した。いやー、呼吸する必要がないって楽だね。

 

 ……そんなこんなで、2時間くらいかけて泳いで見たけど、特に群生地なんかは変わりなさそう。無理にここまで獲る必要はないね。あんま効率変わんないし。むしろ大地がある分難易度は格段に上がる。ここは無視でいいだろう。

 

 途中でマカジキも2匹捕まえたし*10、そろそろ調査も終わりにして帰ろうかな…。

 

 そう思った瞬間、俺の触覚が海の微かなゆらぎを捉えた。

 

(何だ…?高エネルギーを有する何かが高速で向かって来ている。進路変更はなく直進、速度は約50ノット*11、返って来る音波から船じゃない。振り切れるが、相手の最高速度かは分からんな)

 

 よって、リアンは接近するその下手人を待ち構えることにした。身体を捻り、対象の方向を向いた瞬間、それが視界に収まる。

 

 氷海の下を高速で泳ぐ白い機械の姿。

 

 鋭角的なフォルムが目立ち、ミサイルポッドらしきものや左右の砲門に4基のバルカンと、それはそれは穏当な目的で製造されたものではないことをこれでもかと表していた。

 

 その突進を避け、泳ぎを再開。再び向かってきたそれが俺を捉えた所で下方向へ逆宙返り。戦闘機と人体という決定的な差こそあるものの、その動きは紛れもなくスプリットS*12だった。

 

 背後を取ったリアンはそのまま同等の速度でそれに追い縋る。すれ違う一瞬、その機体にある紋様が描かれていることを目視していた。

 

((雄記号)…、何の意味が…。待て、何か構造に既視感がある。そこらのオートマタや戦闘マシンを超える異質な機械)

 

 似たような存在を知っていた筈だ。そう、それはあの水浸しの廃墟に徘徊していた4脚戦車。

 思えば、カラーリングや電波の波長が似ている。設計思想は異なるが、製造前か後か、同一、少なくとも同じ技術を有する何者かの手を加えられている。

 

 前の戦車は設計図も入手したが、確か設計図にはない記号がボディにあった筈だ。あのときはただの装飾と思っていたけど、思い返せばあれは冥王星の惑星記号だ。

 

 …ってなると、こいつの♂は性別を指すものでなく火星の記号である可能性が高い。

 

 共通点は何だ。太陽系惑星…じゃないな。冥王星は準惑星だし基準から外された。いや、昔の常識のままにつけられた場合もあるから安易に外すことは出来ないけども。

 

 他に火星と冥王星が関係するもの。いや、そもそもそれならば記号でなくとも他の形容があった筈。となると、それは記号で識別されるか、そもそも記号自体に何らかの意味があるか。

 

 ……天体にしては根拠が薄い。あ、そういえば、前の戦車は生徒たちにしかない筈のヘイローがあった。この世界独自の神秘というものが関与している?

 ヘイローとは光輪、なら天使か?いや、ゲヘナでは悪魔っぽいのとかミレニアムは電子機器っぽいのまでいたけど、そう仮定すると…。

 

 生命(セフィロト)の樹か。

 

 ユダヤ教の神秘思想。10の球体(セフィラ)と22の経路(パス)によって図式化された創世の象徴。

 

 惑星記号と関与する神秘的存在。記号に意味を持つその椅子。同系統と考えれば納得はいく。

 

 じゃああの戦車に対応するのはダアトか?分からん、隠されたセフィラがあんな堂々と現れて……。そもそもダアト自体対応する番号が明確にわかっていないどころか本当にセフィラと同一のものなのかも怪しい。それにセフィロトの樹成立以降に発見された冥王星、海王星、天王星に対する解釈は様々。決めつけは良くないな。日本やタロットなんかでは冥王星といえばダアトだが、他所の国じゃケテルって所もある。

 

 まあ、そこは今はいい。

 

 目の前の相手は火星の惑星記号。ゲブラと仮定しよう。

 

 鋭角的なフォルムと多種の兵装は明らかに前に戦った戦車よりも戦闘に特化したものであると予想出来る。

 

 おっと、腕のアレは魚雷発射管か。カジキを持ったままじゃ厳しいか。

 

 一発を海面スレスレまで引き寄せて誘爆し、もう一発は単純に振り切る。

 

 が、相手にとってはその程度で排除出来るとは思っていなかったのか、即座に旋回して追撃に移る。

 バルカンなどは海中用に出来ていないのか使用する素振りはなく、腕から発射される魚雷を向けて襲いかかる。

 

 続けて放たれた4発の魚雷。内2発を蹴り割った氷塊を障害物にして回避。反対から迫る魚雷へはその場でバク宙。回避と同時に足元を通ったそれを鉤爪状の素足で掴む。

 

「お返しだ」

 

 勢いを失った魚雷を、こちらに迫る機体へと勢いをつけて投げ返す。水の抵抗を受け失速しながらも、尋常でない脚力で放たれた魚雷が直撃し、激しい爆発を起こす。

 

 が、対象に目立った損傷はない。

 

 どころかさらなる加速を経てこちらへと猛突進を開始した。

 

 天板に当たる氷海を割り砕くほどの加速。その突進を避け、その勢いのまま分厚い氷を突き破って地上に着地する。

 向き直ると同時に、それは氷の大地を揺らしながらその威容を顕にする。

 

 海中を進むために折り畳まれていた砲塔を前に倒し、逆関節の手脚を持つ預言者のヘイローが大気を震わせた。

 

 

―――それは第5の預言者(セフィラ)「ゲブラ」。訳されし名は峻厳。繋がる経路(パス)は“理解”“慈悲”“美”“栄光”。象徴惑星、火星。

 

 

―――今、凍土の絶海に潜むデカグラマトンの預言者が不遜なる侵入者へと牙を剥く。

 

 

 

////////GEBURAH////////

DECAGRAMMATON

 

 

 

 

 

*1
因みに外観は清潔感のある白亜の材質。バイオRE:3の研究所まんまである

*2
ドロップアウト生活に苦しんでいたその日暮らし組

*3
言ってない

*4
相手からすれば突然自身の安全圏に音もなく侵入されていたため気が気でない

*5
残高は未だに8桁

*6
市販品ではラインが出るので、人体の構造ではあり得ない突起や凹みを隠すためのもの。自作

*7
先述の漁師がかつて使用したもの。放棄されていたものを再利用。嬉しいね

*8
世界最大サイズの二枚貝の仲間

*9
記録上最大は長さ1.35m、重さ230kg 多分現実にいない

*10
素手。因みにマカジキの最大速度は時速80kmと言われている

*11
約90km/h

*12
みんな大好きインメルマンターンの下向きバージョン




やめて!出所不明の謎知識で、デカグラマトンのセフィラを疑われたら、古代の技術でオーパーツを使われている他の預言者まで奪われちゃう!

お願い、死なないでゲブラ!

あんたが今ここで倒れたら、デカグラマトンとの証明はどうなっちゃうの?

ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、リアンに勝てるんだから!


次回「ゲブラ死す」デュエルスタンバイ!


あと感想がもうすぐ500件、9評価がもう少しで橙色になりそうなので、どうかそちらの方もよろしくお願いします。チラッ

今日の一枚
『海底50m』
海底から氷の天井に向けて撮影された、厳しくも豊かな海中の写真。
そこには大小種族様々な生物がひしめき合い、氷の天井から指す微かな太陽光と合わせて大自然の雄大さと神秘が感じられる。
他にも様々な様式で複数枚撮影されており、その内の一枚はマグロの群れに混ざる形で撮影されていた。。

対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます

  • C&Cリベンジ!
  • ツルギとのデート回
  • カニー・クッターと近所のヌシ
  • 全部!
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