ありふれたアフターⅡ ティオ編 星降る朝に
あけましておめでとうございます。
ティオが掲げる片手の先には渦巻く美しい漆黒の障壁がある。その障壁が天から墜ちてきた極大の閃光を受け止めている。
威力を散らしているとはいえ、先程のクワイベルのブレスにも匹敵する威力を有するそれはティオの障壁に直ぐ亀裂を生じさせるが、一瞬輝いたかと思うとすぐに何事もなかったかのように修復される。再生魔法による障壁の復元だ。神代魔法という反則を前に、天罰の一撃は通らない。
「ティオ様!」
『母上!』
「う、うぅむ。坊やよ、ものすごくナチュラルに母上と呼んでくれるのじゃなぁ。あ~ぅ~、なんだかすんごく照れくさいのぅ~」
もじもじしているティオさん。母を知らないクワイベルにとって、絶大にして、優しく教え導いてくれたティオは、まさに想像の中の母親そのもの。故に、無意識レベルでそう呼んでいたのだが、ティオの態度に今更ながらに自分の呼び方に気が付いて同じようにもじもじし始める。
一応、現在進行形で並みの存在なら軽く消し飛ばせる死の閃光が降り注いでいるのだが……シリアスさんが休憩に入ったらしい。
シリアスよ、戻ってこい! というわけではないだろうが、閃光が消えると同時に変化が現れた。
何もない空中に瘴気が集まり出したのだ。
四方八方から集まってくる瘴気は次第に密度を増していき形を作っていく。そう、竜の形に。ヘルムートの形に!
『そんな……』
「ヘルムートは……不死身だというの?」
瘴気の中から復活を果たしたヘルムートを、ローゼとクワイベルは呆然と見つめる。
「うぅむ、流石に不死身ということはないじゃろう。おそらく、あれも奴の力の本質が生み出す技の一つなんじゃろう」
話の内容は絶望的でありながら平然とした様子でそう分析するティオに、どうにか二人は呆然自失から復帰した。
そして、クワイベルが焦燥を浮かべながら【真竜の涙泉】へと飛ぼうとする。が、無理をした代償か、全身を襲った激痛によりローゼの腕の中から落ちかける。翼は痙攣しまともに動かない。
そんなクワイベルを見て、ティオはほんのり微笑む。そっと手を伸ばし呻くクワイベルの頭を優しく撫でた。
「幼い身でよう頑張った。ローゼ殿の言う通り、立派で格好良かったぞ? だから、もう休んでおれ」
『でも……』
クワイベルの視線が周囲から更に瘴気のようなものを取り込んでいくヘルムートを捉える。王として、あれを討滅するのは使命であると、その眼差しが訴えている。
「気持ちは分からんでもない。じゃが、少なくとも今の坊やに、あれは荷が重すぎる。忘れておらんか? 元々、あれを滅するは妾の望みじゃぞ?」
確かに、そういう話だった。実をいうと、主力艦隊を撃滅したあと、ティオとハジメの二人は対ヘルムート戦を見ていたのだ。姿と気配を隠してかなり遠方から。
同じ竜に連なる者として、同じような境遇を持つ者として、邪竜と呼ばれる存在に落ちた彼の者に引導を渡してやりたいとティオは願った。だが、それはティオ自身がやらねばならないことではない。
艦隊打破が黒竜達のすべきことであったのと同じように、王として、あるいは兄弟としてヘルムートを討つのは本来的にクワイベルがすべきことだ。
だから、ヘルムートの存在を確認した後も、ハジメとティオは戦い始めたクワイベルを見ているだけで手を出さなかった。恨み辛みがあるわけでもなく、敵対したわけでもない。戦う理由は本来的にないのだ。
だが、そのクワイベルが既に限界を超えている。既に概念の域に片足を突っ込んでいそうなヘルムートの相手は無理がありすぎる。自然災害を相手にするようなものなのだから。
「救って、くださるのですか?」
ローゼが問うた。
「いいや。救わんよ。ただ、ご主人様の都合に、この世界が付き合わされるだけじゃ」
ティオは、そんな風に答えた。
首を傾げるローゼとクワイベル。彼等の背後では歓声を上げて駆け付けたものの邪竜の復活を目の当たりにして硬直している人々の姿がある。
そんな彼等の耳に、再び呪いの言葉が響いてきた。
――絶滅せよ。
――苦しみ、喘ぎ、絶望しろ
――生きる価値などない
――生まれ出るは害悪
――全て滅べ
――虚無こそ最善
――新たなる世界を
――創世のために死ね
『死ね』と、直接脳内に木霊する呪言。何度も何度も、繰り返し刷り込むように反響する。頭を抱え膝を突く者が続出する。完全に姿を取り戻したヘルムートを中心に広がる瘴気が人々を覆っていく。
あるいは――ヘルムートとはこの世界そのものが下した審判の具現ではないのか。ヘルムートの絶望と憎悪に呼応して世界の調和を崩す人間に罰を与えんとする世界の意思。
「多くの同族が殺されていく」
世界の意思そのもののようなヘルムートを前に、ローゼ達が苦しそうに喘ぐ中、ふと、そんな言葉が聞こえた。
「かつてを取り戻せるはずだとそう信じていたのに、同族は家畜へと成り下がった」
ヘルムートの声ではない。人の、男の声だ。呟くような声量なのに、どういうわけか掻き消されることもなくするりと耳に入ってくる。
「大事な兄弟を殺され、信頼は踏み躙られた」
今なお頭に響く死の呪言。苦しいのは変わらない。だが、人々はその男の声を探してキョロキョロと視線を彷徨わせる。ただの言葉なのに、何故か無視できない存在感を感じたのだ。
「全てを置いて世界の果てへ。そう決断したのに、お前が目にしたのは、同族と家族が蹂躙されている光景……」
あ、と誰かが呟いた。空を見上げれば、そこには真紅の波紋を広げながら宙に立つ男がいる。
真紅のオーラを纏い、ポケットに手を入れたまま悠然と佇むその姿に、人々の視線がヘルムートから剥がれて注がれていく。ヘルムートもまた、その虚ろで濁った竜眼を、彼――ハジメへと向けた。
「救いがねぇよな。あんまりだよな。そんな光景を目にしちまったら、そりゃあ正気じゃいられなくなる。俺も、きっと世界を呪わずにはいられなくなるだろう」
同情と、憐憫と、そんな感情が伝わる声音で、どこか優しさすら感じさせながらヘルムートへと語りかけるハジメ。
クワイベルの視線が堕ちた兄へと向けられる。ローゼが痛みと罪悪を感じているような表情をヘルムートへ向けた。人々も、あれこそ人の業なのだと突きつけられて、その表情を歪めている。
ローゼが言った、未来のために世界と戦うのだという言葉の意味を、彼等はこの時、強く実感しているに違いない。
ハジメの言葉を聞いているのかいないのか、ヘルムートは今なお瘴気を取り込み続けている。それが、世界の全てに対する無言の訴えのようだった。絶対に許しはしない、と。
そんな彼に、ハジメは慈愛すら感じさせる優しい微笑みを向けて――
「取り敢えず、死ね」
こっそりチャージしていたシュラーゲン・AAによる砲弾をぶち込んだ!
真紅の閃光がヘルムートさんの頭部を一撃で消し飛ばした!
ヘルムートさん、頑張って頭を再生!
そこへアグニ・オルカンの追撃!
総数千二百発、摂氏三千度、一発一発が対艦ミサイル並みの破壊力を持つペンシルミサイルが殺到する!
ヘルムートさんは再生する端からフルボッコ状態だ!
空に咲き乱れる真紅の衝撃波と爆炎のお花。それを半分白目を剥きながら呆然と眺めていたローゼを含む全ての人々は見事にシンクロしながら叫んだ。
「「「「「取り敢えず、どうしてそうなったッ!?」」」」」
前後の文脈が致命的に噛み合っていない。というか、なんで優しい表情になったんだ。取り敢えず、死ねってなんだ!?
敵味方の区別なく、全ての人がツッコミを入れた。
そんな地上の人々のツッコミなど華麗にスルーして、ハジメは細めた眼差しでじっくりと再生と破壊を繰り返すヘルムートを観察する。片手でアグニ・オルカンを操作し、世界の意思を滅多打ちにしながら、もう片方の手を顎にやって「ふむふむ、なるほど。やっぱりエネルギーの循環はそういう感じか……」などと呟いている。
――ガァアアアアアアアアアアアアッ!!!
ヘルムートから凄まじい咆哮が放たれた。それは衝撃波となってミサイルを吹き飛ばしハジメ達の方へ津波となって襲い来る。先程、クワイベルと戦っていたときに見せたものより遥かに強力な衝撃波だ。
取り敢えず、クロス・ヴェルトの空間遮断結界を張って防いでおく。
ヘルムートから更にブレスが放たれる。規模はまさに極大。クワイベル渾身の一撃を上回る威力。
取り敢えず、クロス・ヴェルトの空間遮断結界を多重掛けにして防いでおく。
『……僕、あれを防ぐのに命を賭けたんだけど』
「く、くーちゃん……」
竜なのに、死んだ魚みたいな目になっているくーちゃん。竜なのに……
一国を軽く滅ぼせるだけの攻撃を、容易く防いでいる障壁に、誰もが「うぼぉぁ」と口から変な声を漏らしている中、ジッとヘルムートを観察していたハジメは次第にニヤァ~~と口元を歪めていく。
まるで、楽しい楽しい時間の始まりだとでもいうかのように。玩具を目の前に与えられた子供のように。
「見えたぜ、この世界の循環の仕組み。理解したぞ、竜核エネルギーの本質を。さぁ、人類の命題を一つ、クリアしてやろう」
小さくそう呟いたハジメの興味は、既にヘルムートから逸れて別の何かに移っているようだ。もっとも、それを察しているのはティオくらいのもので、他の人々は、ヘルムートのブレスを前に悪魔みたいな笑みを浮かべているハジメにドン引きしている。
「ティオ。本当に、お前がやらなくていいんだな?」
「うむ。妾はただ、この憐れむべき存在を終わらせてやりたいだけじゃ。神龍モードになったせいでちときついしな。ご主人様に任せるのじゃ」
最後の確認をしたハジメは、ガトリングパイルバンカーを取り出した。電磁加速された超重量の巨杭は、たかだか咆哮程度の衝撃波では軌道を逸らすことも叶わない。
しかも、弾幕の如き物量だ。果たして、どこまで回避できるか……
「やはり、そうくるか。邪竜ヘルムート、分かっているぞ? お前、ここにいないな?」
ハジメの冷静な呟きとは裏腹に、地上ではどよめきが起きた。それも仕方のないことだ。何せ、ヘルムートが攻撃を受ける前に霧散したのだから。
それこそがヘルムートの力の本質。天候を操る力でも、黒い雨を降らせる力でもない。
竜核を元に、負のエネルギーそのものを操る力。それこそがヘルムートが絶望と憎悪の果てに覚醒した力の本質。壊れた世界に蔓延する負のエネルギーは、ヘルムートにほとんど無限に近い力を与える。離れた場所にいながら、遠隔で負のエネルギーを凝縮し形を成すこともできる。
「あんな存在を、どうやって倒せと……」
ローゼが絶望を滲ませて呟いた。
まさに不死身だ。どんな攻撃も、負のエネルギーを分解してしまえば容易く回避できる。どれだけダメージを受けても、それは仮初の肉体。
ヘルムートが、嗤った気がした。
ハジメさんはも~~と嗤った。
「よぉ、にやついている暇なんてあるのかよ?」
すっと掲げられたハジメの片手。指を一本伸ばして天を指す。
釣られるように、人々が、そしてヘルムートが天を仰いだ。あるのは当然、負のエネルギーを凝縮して作られた暗雲のみ――
『……』
「あ、あれは?」
ヘルムートが暗雲を凝視する。ローゼが呆然と呟く。人々が目を点にして絶句する。
空の一点が、赤く燃えているように見えた。最初はうっすらと。次第に大きく、煌々と……
轟ッ
暗雲が吹き飛んだ。原因は一つ。
「覚えておくといい。天罰気取りってのはなぁ、こうやるんだ」
ハジメの背後の空から、赫灼たる輝きを以て斜めに落下してくるそれ。成層圏外より重力制御により軌道だけを修正されて自由落下してくる……
――メテオインパクト
邪竜が自然災害と同義? よろしい。では、こちらも天変地異で対抗だ。
天より降ってきた直径五十メートルはありそうな真っ赤に燃える巨石は、ヘルムートをして一瞬硬直させる。
当然、その一瞬は致命的。メテオはヘルムートのエネルギー体を丸ごと消し飛ばして地上へと落下していく。重力に引っ張られて斜めに飛翔する軌道なのは幸いだ。とてもではないが浮島が無事であるとは思えない。
隕石は、そのまま雲海を衝撃波で円状に吹き飛ばすと、遥か彼方の大地に落下した。
世界が激震する。落下速度をある程度調整して威力を減衰させたとはいえ、直径五十メートルの巨石が成層圏外より落ちたのだ。その衝撃は計り知れず、出現したのは巨大なきのこ雲。それにより、更に雲海が放射状に吹き飛んでいく。
観測する者がいたのなら、きっと波打つように隆起してめくれ上がる大地を目撃したことだろう。
ヘルムートが瘴気を集めて復活する。
どれだけ常識外の破壊力を有していても、この世界が負のエネルギーで満たされている限り、エネルギー体はいくらでも生成できるのだ。そう、無言で訴えるように、ハジメをギロリと睨みつけるヘルムートだったが、
「あれで終わりとは言ってないぞ?」
曇天が、次々と明かりを灯す。燃え盛る赤の斑点が、曇天のいたるところに生まれていく!
青褪めたのはローゼ達。あまりに常識外な現象に呆然自失していたが、これから起きるだろう厄災を前に、血の気が一気に引いていく。
――魔王流嫌がらせ百八式 〝星に願いを〟
さぁ、みんな願いましょう! 生き残れることを!
やっていることは単純。メテオインパクトの乱れ撃ち。大小さまざまな隕石を成層圏外にて放り出し、重力操作で軌道と速度を修正して適当な流星群にする。ミスると星が壊れてしまう素敵な嫌がらせだ!
暗雲を突破した流星群が撒き散らす衝撃波により、天の暗雲が次々と吹き飛んでいく。
地上では絶え間ない激震と衝撃により大地が耕され、海には巨大な津波が発生していく。
きっと宇宙からこの星を見たのなら、穴だらけになった雲海と次々に噴き上がるきのこ雲が、星の半面全体に見えたことだろう。
消し飛ばされては再生し、また消し飛ばされ再生するヘルムートのエネルギー体。攻撃する暇などあるわけもなく、暗雲から竜巻を呼ぼうにもその暗雲が吹き飛んで霧散していく。
熱波と衝撃波に負のエネルギーも吹き飛ばされ、次第に集束も覚束なくなる。
「そろそろか?」
ハジメの呟きに応えるように、微かな咆哮が轟いた。相当な距離から、先程までのヘルムートのエネルギー体ですら霞むような存在感を放つものが凄まじい速度で迫っている。
本体のおでましだ。エネルギー体を生成できず、雲海も暗雲も吹き飛ばされ、現在進行形で星そのものが破壊されている。その事実にとうとう、本体が出てきたのだ。離れていても感じるプレッシャーは、あるいは黒神龍モードのティオに匹敵するのでは、と思わせるほど。
なので、メテオインパクトの集中砲火で対応する。
てんでばらばらに世界各地へと散っていく流星群の一部が、クイッと進路を曲げて同じ方角へと飛んでいく。
――グルァアアアアアアッ!!
咆哮が轟いた。
――ガァアアアアアアッ!!
また、咆哮が響いてきた。
――グ、グルァアアアアッ!!
咆哮が伝わって……
――ァアアアアアアアアッ!!
咆哮、だろうか?
どれほどの距離を、どれほどの速度で進んできたのか。ついに姿を見せた瘴気を纏うヘルムートの本体は――なんだかとてもボロボロだった。
『殺すっ、殺すっ、殺すっ』
「おお、随分と感情的じゃぁねぇの」
殺意と憎悪が物理的な圧力を伴って迸る。ヘルムートからブレスが放たれた。
可変式円月輪のゲートに返された。ギャアアアアアアッという咆哮(?)が響き渡った。
エネルギー体とは集束率が違うのか、直ちに超広範囲から負のエネルギーを集めて自分の傷を癒していくヘルムート。そして、遠距離攻撃が返されるなら直接ということか、制止状態からの超加速でハジメに食らいつこうとする。
なので、ハジメは、
「おいおい、いいのか? あっちには大切なものがあるんじゃないのか?」
なんてことを言って、流星群の一部をまたクイッとした。構わずハジメを殺そうと接近したヘルムートだったが、飛んできた巨石が自分の頭上を通りすぎ背後の彼方へ飛んでいこうとしているのを一瞬意識して、ハッとした表情をすると急激に進路を変えた。
そうして、巨石に向けてブレスを放てば、見事、その巨石は空中で木っ端微塵に吹き飛んだ。先程までとは比較にならない殺意が解き放たれる。
振り返ったヘルムートが再びハジメに意識を向けて――次々と軌道を曲げて飛んでいく流星群に大きく目を見開いた。
『ガァアアアアアアアッ』
特大の咆哮が迸り、ヘルムートはブレスをもって流星群の撃墜に集中し出す。それでも間に合わないときはその身をもって体当たりを行い、とにかく流星の軌道を逸らそうとする。
そんなどこか必死なヘルムートを見て、
「どうした。なぜ、避けない? まるで何かを守っているようじゃねぇか。そう、たとえば、兄弟の竜核を安置している場所、とかなぁ?」
やけに明瞭に響いたその言葉。激震する世界の悲鳴の合間からするりと人々の耳へ入った。
そうして、人々は察する。なぜ、ヘルムートは流星群を回避しないのか。そもそも遠方から飛んできた流星群を、なぜこちらに来るまでの間にあんなにボロボロになるまで食らったのか。
その理由は一つ。ヘルムートの背後――彼が隠れていた場所には、かつて空母艦アーヴェンストの力の源として犠牲になった兄弟の竜核が安置されていたからだ。メテオインパクトにより、兄弟の形見が失われることをヘルムートは許せなかったのである。
つまり、
「……人質、いえ、形見質を取った?」
はい、その通り。ハジメさんは、ヘルムートの大切な宝物を質に取ったのでした。メテオインパクトを避けてもいいよ? ただし、後ろの大切なものは大地に還るけどね? と。
ローゼの言葉を聞いて、人々がツ~~と視線をハジメへ戻す。
そこには、人類の滅亡を望む邪竜を相手に、実に邪悪な笑みを浮かべながら次々と流星群を撃ち込む悪魔がいた。
邪悪な竜? いやいや、大切なものを守ろうと必死に流星群を撃墜している彼に比べれば、世界規模の破壊活動を行いながら、逃げられない状況で相手をボッコボコにしているあいつの方が遥かに邪悪だ。
ヘルムートは、この世界においてはもはや、世界の意思の代行者ともいうべき存在。それすなわち神に等しい存在ということ。ならば、その神を踏み躙るあれは……
悪魔? いいや、そんな可愛げのあるレベルじゃない。
魔王? 死ぬ気で自分達を守ってくれた女王様や王竜様と同じ王? マジやめて。
人々の心は、このとき見事にシンクロした。
あれは、真紅を纏い、世界を破壊し、邪悪を更なる邪悪と理不尽で蹂躙するあれは……
「「「「「「……魔神だ」」」」」」
この日、天空の世界に魔神の伝説が生まれたのだった。
『ユルサナイッ。ユルサナイッ!!』
既に満身創痍の邪竜ヘルムートさんが、強烈な殺意と憎悪をハジメにぶつけるが、
「許しなんぞいらん。死ね」
影が差す。天空より現れたのは直径五百メートルはありそうな超巨大な岩石。
ヘルムートは直ぐに巨大隕石の陰に隠れて見えなくなった。後に残ったのは断末魔の絶叫と、世界に響き渡った激震、そして……
『こんなのって、あんまりだよぉ』
く~ちゃんの、そんな悲哀の篭った言葉だけだった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。
今年、最初の一日。さっそくやらかした白米。
すみません。
もうちょい、ペースを見つめ直しやす。