表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありふれた職業で世界最強  作者: 厨二好き/白米良
ありふれた番外編 世界のアビスゲート卿から
221/545

ポチッとな

 小太刀を片手に、エミリーとダウンの間に降り立ったのは浩介だ。


 浩介は、正面に(・・・)エミリーを見据えている。


 そう、放たれた弾丸を空中で叩き斬ったのは浩介であり、彼が庇ったのは背後のダウンで、斬ったのはエミリーの放った弾丸だった。


「こ、こうすけ……どうしてっ」


 カタカタと震える銃を構えたまま、エミリーが問いかける。


 浩介は、無言で、背後のダウンなど見向きもせず、ゆっくりと歩き出した。そして、イヤイヤと首を振るエミリーの目の前までくると、そっと銃身に手を置いて優しく下げさせる。


「やめとけって、エミリー。これは、お前の役目じゃないよ」


 落ちついた声音と、静かな眼差しがエミリーを包み込む。


 だが、銃身の上に置いた手に、浩介は僅かな抵抗を覚えた。エミリーが拒んでいるのだ。いやいやと首を振るエミリーの瞳には悲壮な覚悟が見える。


 浩介は知らない。エミリーとダウンの交わした言葉を。


 それでも察することはできた。いったい、どんな気持ちで、エミリーが引き金を引いたのか。どんな気持ちで、今なお、恩師であり父親代わりでもあった男に殺意を向けるのか。


 憎しみはあるだろう。恨みもあるだろう。だが、そんな負の感情だけに囚われた狂気の末の行動ではない。


 そこにあるのは使命感。あるいは義務感。そして、責任感だ。


 エミリーらしいと、浩介は内心で苦笑いしながら、それでも抵抗するエミリーの銃から手を離さなかった。


「こうすけっ、これは私が始めてしまったことだからっ。だからっ」

「そうかな? 俺はそうは思わないけど。まぁ、それでもエミリー自身がそう思うってんなら、別に否定はしない。ただ、この道の先はダメだ。エミリーは行くべきじゃない」


 人殺しの道など、進ませはしない。エミリーの抱く気持ちと同等以上の、強い気持ちが返された。


 それでもと、反論しかけたエミリーに、浩介は言葉を重ねる。


「だって、それはエミリーの兄貴や姉貴達の願いに反することだろう?」

「っ」


 そう、誰も、こんな結末をエミリーに求めていない。会ったことはなくとも、言葉を交わしたことはなくとも、エミリーに聞いた話だけで、浩介にとっては明白なことだった。


 身命を賭して大切な妹分を守ろうとした彼等が、望むはずがないのだ。


「エミリーの夢は、病に苦しむ人を救うことだろう?」


 祖母を癒したい。そんな願いから始まったエミリーの歩みを、きっと誰よりも応援していたのは彼等。


「誰よりも、信じていたはずだ。エミリーの手は、誰かを傷つけるためのものじゃない。誰かを癒し、救うためのものだって」


 だから、狂気の薬を生み出してしまったエミリーを、彼等は誰一人として責めなかった。自分は関係などないと逃げ出したりはしなかった。とてつもない事態だと理解していながら、決してエミリーの傍から離れなかった。


 だから、


「悪いけど、認めないぜ? こればかりは絶対に認めない。たとえ、どれだけエミリーの意志が強くても、俺は全力で阻止する。遠藤浩介が、魔王の右腕で君の守護者であるこの俺が、全身全霊で阻止する。誰かを救うために頑張ってきたエミリー=グラントが、家族だった人間を殺して幕引きなんて、俺がさせない」

「こう、すけ……」


 エミリーの手から力が抜けた。ガタンッと音が鳴る。エミリーの手からするりと抜け落ちた銃が、床に落ちた。


 溢れる感情に、きっと表現の方法などありはしない。この世に存在する言葉では、あまりに力不足だ。いったい何度、この身を、心を、守られただろうか。必要なときに、必ずそこにいて助けてくれる、エミリー=グラントのヒーロー。


 こてんっと、もたれかかるようにしてエミリーの頭が浩介の胸へと収まった。床に、ポタリ、ポタリと落ちる雫は、言葉にできない感情が形をもって現れた結果だろう。


 顔を埋め震えるエミリーの頭に、浩介はそっと手を置きつつ、倒れたままホッとしたように力を抜くヴァネッサと視線を交わし、頷き合う。


「……あのベルセルクでも止められないとは。つくづく、君という存在の理不尽さを痛感するよ」


 呆れたような表情で、そう言ったのはダウンだ。浩介とエミリーのやり取りを、逃げるでもなく、発砲するでもなく黙って見ていた彼に、浩介は胡乱な眼差しを向ける。


「逃げないのか?」

「逃がしてくれるのかい?」


 苦笑いしながらそう返したダウン。そこには敵意も、追い詰められた者特有の焦りや自棄も見えない。いったい、なにを考えているのかと浩介の視線が細まる。なにより気になるのは、何故、彼が撃たなかったのか(・・・・・・・・)、ということ。


 あのとき、浩介が斬ったのはエミリーの弾丸だけだ。重力魔法により刀身に吸い寄せるという、ちょっとズルをした弾丸切り。当然、背後から迫るだろう弾丸も、苦無で弾くつもりだったのだが……


 そもそも、あのときダウンは引き金を引かなかった。ダウンに、エミリーを殺すつもりはなかったのだ。


「いったい、なにを考えているんだ?」

「もちろん、私のことさ。私は、ベルセルクを盗み出したときから、私のことだけを考えている」


 もしや、本当はエミリーに対する情愛が彼を躊躇わせたのかとも思った浩介だったが、どうやらそうではないらしい。落ち着き払った静かな眼差しと声音は、いっそ不気味であった。


「……あんたが何を考えているのか知らないが、取り敢えず、投降しろ」

「おや、殺さないのかい?」

「これ以上、エミリーから親しい人間を失わせたくないだけだ。……たとえ、それが〝元〟であっても、許し難い裏切り者であっても」


 ついでに言うなら、事件の首謀者をマグダネス局長に引き渡したいという打算もあった。既に世間を騒がせた【ベルセルク事件】において、〝犯人が捕まる〟という結末は、今後のエミリーの人生にとっても必要なことだろうと思ったのだ。


 浩介の言葉に、胸元のエミリーは顔を上げてダウンを見た。その眼差しは、確かに、ダウンの死ではなく、司法の裁きを望んでいるようだった。


 ダウンは、浩介の言葉を聞いて、そしてエミリーの眼差しを受けると深い溜息を吐いた。


「はぁ、本当に、何もかも上手くいかないな。これも、私が凡人だからか」


 そう呟くと一歩、二歩と下がっていくダウン。浩介は問答無用に飛び出した。取り押さえ、意識を奪うのだ。ベルセルク化の恐れがある以上、最初の呼びかけだけでも最大限に配慮したのだ。


 浩介が二階の通路に足をかけたのと、ダウンが背中から背後の貯水場に落ちたのは同時だった。思わず、エミリーが「先生っ」と叫ぶ。


 浩介はダウンを追うように飛び込み、空中でダウンを捕まえた。が、空中で止まろうとしたところで、ガクンッと体が傾ぐ。慌てて袖口から鋼糸を飛ばし、通路の手摺に絡ませてぶら下がった。


 精彩を欠く浩介の動き。本来なら、ダウンが通路から飛び降りる前に意識を奪うこともできたはずだが、それができなかったのは、先の戦いの影響だ。


 ラスト・ゼーレによる急激な限界突破。当然、その副作用からは逃れられない。浩介は現在、著しく弱体化中なのだ。分身は出せないし、身体能力は六割減。このまま眠りに落ちてしまいたいほどの倦怠感に襲われている。正直、銃弾を吸い寄せた重力魔法を使った時点で意識が遠のきかけたくらいなのだ。


「自殺のつもりか!」

「そうだよ。本当は、エミリーに殺してほしかったのだけどね。どうせ、逃げ切れないと分かっていたし。でなければ、君のような化け物がいると分かっていて、ああも長ったらしく語ったりするものか」


 空中で、浩介に掴まれてぶら下がった状態で、ダウンはいとも簡単に自分の終わりを告げる。


「もっとも、流石にあのベルセルクをこうも早く倒してしまうとは思わなかったけれどね」

「先生っ、どうしてですか!? 歴史に名を残したかったんじゃないんですか!?」


 エミリーの言葉に、ダウンは諦念と狂気が入り混じった、不思議な表情で答える。


「そうだよ。私は名を残す。もはや逃げ切れないのなら、この世に厄災をばら撒いた少女を止めようとした悲劇の父として!」


 浩介は、その言葉でダウンが何をしようとしていたのか、その考えをようやく察した。そして、「この馬鹿野郎っ」と言いながら、ダウンを床の上に投げ込もうとする。


 だが、その前に、


「それすら叶わないなら! ああ、いいさ。私が、厄災そのものになろう! 偉業ではなく、大罪をもって歴史に名を残そう!」


 そう言って、浩介に放り投げられた瞬間に、爆発した。


 ドォンッとくぐもった音が響いた瞬間、ダウンの腹が爆発したのだ。当然、飛び散る血肉。あまりに凄惨かつ異常な事態に、エミリーは動けない。


 浩介は、軋む体と飛びそうになる意識を死ぬ気で耐えて、重力魔法を発動しつつ一気にエミリーへと飛び込んだ。


 十全に効果を発揮できない重力魔法でも、飛んでくる血肉を叩き落とすくらいのことはできる。


 だが、今の浩介にはそれが限界だった。弾かれたように進路を変えたダウンは、飛び散った血肉と一緒に貯水場へと落下する。


 盛大に水しぶきがあがり、貯水場に激しい波紋を作り出した。同時に、透明感あふれる水が、インクを垂らしたように赤く染まっていく。


「……」

「くそっ、やられたっ」


 言葉もないエミリーが呆然と赤く染まった貯水場を見つめる中、浩介が焦燥をあらわにする。


「コウスケさんっ、これを!」


 倒れているヴァネッサが無線機を浩介に投げた。意図を察した浩介はそれを受け取り声を張り上げる。


『バーナード! 聞こえるか!?』

『む、アビィか。どうした?』

『水路にベルセルクが流れ込んだ! 水門が開いていてどこかに流れ込んでいる! 配水施設を越える前に、どこでもいいから流れを止めろ!』

『っ。少し待て! ――制御室っ。水路を全て閉鎖しろ!』


 連絡を受けたバーナードが、制御室を制圧している部下に指示を出す。


 浩介の言葉通り、ダウンはただ自爆したわけではない。〝厄災を撒き散らす〟――その言葉通り、彼は自身がベルセルク化するためではなく、その腹に収めたベルセルクを、自爆することで飛散させ、水路に流し込んだのだ。


 おそらく、浩介というイレギュラーがいたが故の常軌を逸した策。何をしようと阻止される可能性を考えたダウンの、まさに身命を賭した最期の攻撃。


 いつだって、それがどんな理由であろうと、身命を賭す人間は恐ろしい。してやられた浩介は、歯噛みしながらそれを改めて痛感していた。


 と、そこへ無線機から悲鳴じみた声が響く。


『隊長っ、制御不能です! 浄水施設も配水施設も全て開門状態から動かせません! 完全にバグってます!』

『なんだとっ。どういうことだ!』

『奴等、ウイルスでも流し込んだのかもしれませんっ。時間があれば、制御を取り戻すことも可能だと思いますが』

『どれくらいかかる』

『……十分。いえ、八分いただければ、どうにか……』

『っ、直ぐにかかってくれ』

『イエッサーッ』


 僅かな間、沈黙が場を支配した。このままでは、ベルセルクに汚染された利水が都市へと流れ込んでしまう。その前にも、いくつかの町を通るだろう。そうなれば、まるで端から浸蝕されていくように、ベルセルクの波は広がっていくはずだ。


 配水施設を通過するのに、おそらく五分はかからない。圧倒的悲劇までのタイムリミットは、たったの五分。


「こうすけ……」

「コウスケさん……」


 貯水場を呆然と見つめていたエミリーと、険しい表情のヴァネッサが浩介へ呼びかける。


 浩介は険しい表情で何かを考えたあと、ふと肩から力を抜いて苦笑いした。そして、エミリーやヴァネッサに視線を巡らせながら、無線を手に取る。


『バーナード。なんとかする。まぁ、派手なことになるから、誰も配水施設には行かせないでくれ』

『! アビィ。分かった。お前に任せるっ。この国を、救ってくれ!』


 無線からバーナードの信頼と、僅かな懇願が含まれた声音が届いた。


 それは、エミリーとヴァネッサの眼差しに宿っているものと同じ。


 そんな彼女達に、浩介は苦笑いしたまま口を開く。


「本当は、頼りたくなかったし、最後の最後で情けない話なんだけど……ちょっくら、魔王陛下に手助け願おうか」


 キョトンとするエミリーとヴァネッサに、浩介は苦笑いを深めるのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~



 ヴァネッサに肩を貸しつつ、浄水施設の屋上に出た浩介達。


 下流には配水施設が、その更に下流には町が見える。


「こうすけ、どうするの?」


 エミリーの問いかけに、浩介は「こうするんだ」といってスマホを取り出した。そして、コール。何回かのコール音の後、不機嫌そうな声音の相手が出る。


『……なんだ、えんど――』

「南雲! 悪いんだけど時間がない! 何も聞かずに、俺の近くにある配水施設を吹き飛ばしてくれ!」

『……』


 電話の相手は、今まさに愛娘と夕食作りという楽しいひと時を過ごしていた魔王陛下だった。ミュウが作ってくれたピンクでふりふりのエプロンを身に着けて、ユエ達に笑いを堪えさせている楽しい楽しい時間を過ごしていた魔王陛下だった!


 普通、いきなり電話をしてきて、いきなり理由も話さず公共施設の破壊を依頼されれば、相手の正気を疑うか、冗談の類としてさくっと電話を切り、家族団らんの時間に戻るところだ。


 だが、相手は普通ではない。むしろ、異常で理不尽の代名詞。


 故に、


『あいよ。そこを動くなよ』

「っ。恩に着るぜ、南雲!」


 電話の向こうから、苦笑いするような気配が伝わった。


 同時に、


「あ、あの、こうすけ? 電話の相手は誰なの? とか、なにをするの? とか、いろいろ聞きたいことはあるんだけど、取り敢えず、聞いていい? ――あれ、なに?」

「コウスケさん……まさかと思いますが……」


 完全に引き攣った表情で、エミリーが天を仰ぎながら浩介に尋ねれば、ヴァネッサは珍しくも狼狽えたような表情で同じように空の一点を見つめた。


 そんな彼女達に、浩介は肩を竦めて言う。


「ベルセルクは空気感染しない。液体状態でも、蒸発させれば無効化できる。なら、圧倒的熱量で丸ごと吹き飛ばしちまおう。――まぁ、そんなこと、魔王にしかできねぇけどな」


 そう言った直後だった。


 遥か上空で、曇天越しでも分かる、もう一つの太陽が生まれたかのように煌々と輝き出した一点の光。それが一瞬膨張したかと思った次の瞬間、天より光の柱が降り注いだ。


 曇天を吹き飛ばし、空に巨大な雲海の穴を出現させ、大気を焼き払う。轟音と共に配水施設に突き立ったそれは、一瞬で施設を灼滅させ、地面を融解し、あっという間に尋常ならざるクレーターを作り出す。


 光が世界を満たした。


 曇天で薄暗かった世界が、真っ白に染まっていく。熱波と衝撃が波紋のように広がっていき、施設周辺を円状に更地へと変えていった。


――太陽光集束型レーザー バルスヒュベリオン


 浩介を基点にして配水施設の位置を〝導越の羅針盤〟で探知し、その上空へ、衛星軌道上に飛ばしている空間入れ替えのアーティファクトによりバルスヒュベリオンを転移させる。


 あとはポチッとな。それだけで太陽光を集束したレーザー砲が、一切合切を消滅させる。


 まさに天の裁き。神話の顕現。


 引き金を引いた本人は、自宅でピンクのふりふりエプロン姿だが。


「……」

「……」


 エミリーとヴァネッサが、とても人様には見せられない顔になっている。白目を剥いて、端から涎を垂らしたまま口をぽかんっと開けっ放しにし、言葉一つ零さない。


 そんな中、配水施設を綺麗に消滅させ、ついでとばかりに地形も変えた光の柱は少しずつ細くなって、やがて宙に溶け込むようにして消えていった。


 世界に色が戻り、深いクレーターに流れ込む滝の音が響く。


『どうだ、遠藤。こんなもんでいいか?』

「ああ、ありがとな、南雲。いきなり、無茶な頼みをしちまって悪い」

『お前が、俺に頼らないようにしているのは分かっている。そんなお前が、理由も言わず頼んできたんだ。それだけの理由があんだろ? その辺は、まぁ、信用してる。だから、謝罪はいらねぇよ』

「ははっ。やっぱり、魔王は身内に甘すぎるぜ。だから、余計に頼れないんだ」


 頬をポリポリと掻きながら、浩介は苦笑いを浮かべた。そして、数日中には帰国する旨と、帰国したら事情を話すことを伝えて電話を切る。


 浩介は大きく息を吐いた。


 ハジメからの依頼ならともかく、自ら首を突っ込んだ事件で、あれもこれもと頼ることはしないと、自らに約束している浩介は、結局、頼ってしまったことにガクリと肩を落としつつ、大惨事(クレーターは除く)を避けられたことに胸を撫で下ろした。


 そして、ゆっくりと、未だに無言のまま固まっているエミリーとヴァネッサに視線を転じる。


「あぁ、エミリー、ヴァネッサ――」

「ひゅぅわ!?」

「あふっ」


 声をかけた瞬間、呪縛から解放たれたように声を上げ、ビクリッと震えたエミリーは、そのまま腰を抜かして倒れ込んだ。同時に、エミリーに肩を借りていたヴァネッサも転んでお尻を強打する。


 浩介は、無理もないと思いつつ、倒れた二人に手を貸そうとして――硬直した。


 ちょろちょろちょろ~


 滝の音に紛れて、直ぐ近くから水音がする。


 発信源はもちろん、尻餅をついたままガクブルしているエミリーちゃん。どうやら、人知を超えた事態に、股が緩んでしまったようだ。そういえば、ヘリに乗る前、緊張からかコーヒーをがぶ飲みしていたなぁ、と浩介は思い出す。


「……コウスケさん。私もしちゃいそうです。いいですか?」

「いいわけないだろ」


 エミリーの醜態に気が付いたヴァネッサが、乾いた笑みを浮かべながら浩介に話しかけると、そこでようやくエミリーは正気を取り戻したらしい。当然、今の自分の状態にも気が付き――


「ひぃいいいいいっ。止まってぇええええっ。というか、見ないでぇえええっ、こんな私を見ないで、こうすけぇえええっ」


 半泣きで股をキュッとしながら、白衣で必死に隠しつつ、頭を抱えて小っちゃくなった。


 エミリーの絶叫が響く中、


『おい、アビィ! 今のはなんだ!? なんか出たぞ!? 空から! なんか出た!』


 今度は無線機からバーナードの声が伝播する。どうやら、バーナード達もバルスヒュベリオンの光を目撃していたらしい。


「見ないでェええええっ! お願い、止まってぇえええ!」

『おい、アビィ! 応答しろ! 説明プリーズ!』

「コウスケさん、〝ピー〟の代わりに、血が止まりません。さっきの転倒で傷口が開いたようです。助けて下さい」


 小っちゃくなって絶叫するエミリー。無線機から部下共々説明を求めて怒声を上げるバーナード。割と瀕死のヴァネッサ。


 浩介は、今度は違う種類の溜息を吐きつつ、


「さて、後始末、どうすっかな……」


 全てが終わってなお、混沌とする現場で天を仰ぐのだった。


いつも読んで下さりありがとうございます。

感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。


長らく、この番外編にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。

次回、エピローグで、この番外編は終わりです。

あの人達も出て来る予定ですよ~


今後の詳しいことなどは、エピローグのあとがきか、活動報告でさせていただきます。


次の更新は、きっとたぶん、土曜日の18時にできると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
導越の羅針盤の使い方ってGoogleマップみたいに最初こうすけの位置を検索してからそこに近い施設を検索したンかね?
ヒュペリオン、地球を回ってやがんのか………。 極大レーザーを撃てる軍事衛星みたいなモンが………。
[良い点] 知りたいです。 はじめがユエの肉を食べたらどうなったのか。 ユエは良く怪我して肉片とんでますし 肉片食った結果、左手と右目が再生したという 路線が見たいです できれば外伝でもお願いします
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ