透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
あとリアンくんちゃんは切れ長で細い目のイケ女です。声はハスキーボイスなイケボ
―――目にした光景は、悲惨そのものだった。
生徒の体にはヘイローにより守られているのか傷はない。だが、それ以上に虚ろに天井を見つめ、半開きの口から涎を垂らしたままに放置されている。
中には体が異常に震えていたり血管が浮き出るなど、薬物の弊害らしき症状まで出ている。
「―――クソッ!」
荒々しく、ネルが怒りを拳に乗せ壁を叩きつける。
ひび割れる壁。憤怒に震えるネルに、かける言葉はない。通信機を通して知ったカリンもあまりの所業に言葉を失っていた。
「……ひとまず、ここカら出してヤろう。いつマでもこんな場所ニいては気が狂ッテしまう」
「……………わかってるよ」
三人は極力この空間の空気を吸わないようにして、彼女たちの拘束を解き外に連れ出してやることにした。
禁断症状と過剰摂取を繰り返し、抵抗力と理性を奪っていったのだろう。特に、出品前などは
そんな真似をした鬼畜外道を、必ずや己の手でぶちのめしてやろう。捕まっていようと関係ない。こんなクソ野郎にはそれでも足りない。
そうネルが意気込んで、彼女たちとこの案件を白日のもとに晒すために思考を切り替えて連絡を取る。
「あー、取り敢えず、現場は確認したし……被害者も保護した。場所のデータは送る。瓦礫をどけて回収に来てくれ」
『了解した。すぐに保安部も総動員して―――
「―――そノ必要はナい」
「ここの地形ハ、最初ニ確認していル。この商品庫は最も堅牢デ、そちラからでも音ガ聞こえテいるだロう? 勿論扉などナいし、構造も別ダ。………だが、二つの構造物の立地を確認シて見ロ。この裏側が、オークション会場になっている」
『――? あ、ああ。確かにそうなっているけど…。壁の分厚さは…』
次の瞬間、カリンのいるオークション会場までクレーン車の鉄球でも当てたような衝撃が走る。
そのあまりの轟音に保安部も咄嗟に銃を構えて壁へと向ける。
遅れて、ゴン、ゴン、と数度の衝撃が走り、その音源は少しずつ近づいてくる。
警戒と困惑が上がる中、一際大きく揺れ、パラパラと天井から粉塵が舞い降り、停止。それぞれが顔を見合わせ近づこうとした瞬間、壁から足が生えた。
「―――な」
「きゃぁっ!?」
「何アレ!?」
驚きに言葉を失っている間に、足が空けた穴に黒い手袋が見え掴んだかと思うと、まるでポスターを剥ぐような手軽さで壁を引き剥がした。
「―――短縮完了だ」
粉塵の奥から現れる巨体に瞠目しながらも構え、遅れて姿を表したネル達に説明を求めるような視線が飛ぶ。
それを煩わしそうに受け止めたネルは、逃げるように指示を出す。
「……この先が商品庫だ。さっさと作業に移れ」
「は、はあ…」
各々思うことはあれど、今やるべきことは理解しているのだろう。それぞれが手袋などを装備して開通した穴へと歩みを進めていく。
「リーダー、アスナ先輩!」
「お、カリンか。こっちは駄目だったが…よくやったな」
「やっほーカリンちゃん」
「あ、うん。それと、そっちのが…」
「……何でも屋、遊星リアンだ。知らなかったトは言エ、邪魔して悪カッタ」
「い、いや、その…腕は大丈夫なのか…ですか?」
初対面で目にした身長と、ボロボロの外見に思わずといった様子で敬語が出るも、言われたリアンは気にした風もなく「気にするナ」といい追及をバッサリと切り捨てていた。
「んで、例のクソ野郎はどこだ」
「クソ…。…オークショニアならすぐそこに他の客と纏めて拘束してある」
そう言われて見れば、護送車と思わしき車に手錠や縄で拘束された人々が乗せられていた。ただその多さから護送車が足りないらしく、まだオークショニアは連れられていないらしい。
ネルは怒りのままにそのクソ野郎の面を拝もうとし…。
「………いや待て、誰だ、オ前は?」
後ろから掛けられた言葉に、水を浴びせられたように頭が冷える。
「っカリン!」
「そんな筈は…! 姿格好も同じ、撃ち抜いたのだって…!」
「…………………ネクタイピンの色が数度違ウな。指の長さもヤや短い。靴も見かけ上は同じだが、微調整のためか本物ヨリも厚底だな。見事な替エ玉を用意したモノだが、流石にそこまで一致すルのはいなかったカ」
「っ呑気に話してんじゃねぇよ! クソっ、本物はどこ行きやがった!!」
ネルが見抜かれたことに動揺する替え玉の胸ぐらへと掴みかかり揺するが、何度脅した所で答えは出てこない。
「し、知らない! 私達はあいつの素性も何も知らないんだ! 逃げ道だって本当に知らないんだよ!」
「…ちっ!」
本気の懇願に嘘はないと見たのか、投げ捨てるように替え玉を放すと、何としてでも見つけ出さんと鬼気迫る表情を見せる。カリンも己の射撃への信頼から本物を逃がしてしまったことに責任を感じているのか唇をぎゅっと固く結び―――
「これかな?」
「これだな」
その裏で抜け道をあっさり見つけ出したアスナとリアンにより水を差された。
それは、巧妙に隠された地下へ開かれた空間。とても整備されているようには見えない穴には縄梯子がかけられていたのか、僅かに藁が穴の縁に付着している。
実は商品庫の地下室に似た仕掛けが同様に施されていたのだが…、人間の目では見えない波長も目視できるリアンにより痕跡を追われ、興味本位で付いてきたアスナによって仕掛けが秒で解除されてしまっていた。
何とも気の抜ける話だが、こうして抜け道は見つかった。ならば完全に雲隠れされる前に捕らえなければいけない。
だが既に時間も経過している上、ここから見るだけでも相当に入り組んでいるものと推測できる。
最早、痕跡が入手できれば御の字かという状況で、リアンが納得したように呟いた。
「……ああ、成程。どうやら心配はしなくテもいい様だ。……とっクに起きていルダろうとは思っていタがね」
その真意を問うまでもなく、C&Cの通信機に新たな声が届いた。
『―――こちらコールサイン・ゼロスリー。地下通路にて不審なアンドロイドを拘束しました。応答を願います』
「………何で分かるんだよ」
●
あれから、事件自体は収束したっぽい。
検挙目的で攻めてきていたメイド部と戦闘した件は俺が知らされていなかったことと結果的に解決の一助になったからか、特に責められることもなかった。いや、本当に邪魔してすみませんでした。
逃げたオークショニアは最初に仕留めた後、アスナちゃんが地下へ転がしておいたアカネちゃんが無事拘束。
オークショニアはあの大爆発で攻め込まれていることを察したのか即座に地下通路に向かったらしいけど、時を同じくしてアカネちゃんもあまりの音に起きて、自力で抜けられそうになかったから他の出口を探索していたら逃亡中のオークショニアを見かけたとのこと。
一瞬そんなことある?って思ったけど実際起こってるのだから事実は小説より奇なりだ。
これを踏まえるとアカネちゃんが爆発に巻き込まれない位置に隠した上にそんな地下通路に放置していたアスナちゃんが今回のMVPなのかもしれない。
え、お前なんでオークショニアが逃げた地下通路が同じだとかアカネちゃんがいるのが分かったのか、だって?
まず地下通路が同じだって気づいたのは音の響き方とか材質が同じだったこと、後は地下のこもった空気に混じって倒壊した建物の方でしかしなかった匂いがしてたりとか。
後はこれ、誰にも言うつもりはないんだけど、あのオークショニアにはフェロモンつけてたんだよね。いや、ブラックマーケットだし踏み倒されたり逃げられたりする可能性もなくはないからつけてたらこれだよ。
だからぶっちゃけ替え玉見破れたのもこっちのがデカい。他は良く見ないと分かんなかったわ。この体の視力と記憶力のお陰で何とかなったけどな!
だから匂いの独特なアカネちゃんとフェロモンをつけられたオークショニアが近づけば、匂いが混ざって何となく分かるってわけ。いや、それでも出来すぎた話だとは思うし、そこまで正確に判断するのは今回の地下通路みたいに匂いの混ざらない空間だったりしないとなんだけども。下水道とかだと絶対無理。
因みに捕まったオークショニアや客はヴァルキューレ警察学校とやらに引き渡されて豚箱行きだそう。特にキヴォトスでも稀に見る凶悪犯罪とのことでまず大事になるだろうことが予測されたらしい。
いや、あの時見つかって本当に良かった。司法の手で刑罰が執行されるんだからね。うんうん、もしダメだったらオレが追うつもりじゃあったけど、
さて、違法薬物も全て回収されて、その総量は現在確認されているだけでも400kg以上はあるらしい。過去の事例を振り返ればそれ以上は確実。
薬物は厳重に回収されたものの、問題は重度の中毒症状を患った7人の生徒たちだ。これは流石に回収してハイ終わり、という話でも終わらず、どう対応していくかという話になったから俺が声を上げた。
「……その7人は、オレが預かロう。……無事に帰すことヲ約束する」
って感じで。だから、今俺の目の前には7人が転がっている。
今は俺の睡眠ガスで眠っているが、起きてしまえば禁断症状に悩まされることだろう。
……いやまあ、解決方法が無いわけじゃない。
俺は摂取した成分なんかを弄ったり濃縮出来る。実際それで睡眠薬をガスにして利用してるわけだし。うん。だからまあ、特定の成分や脳への信号なんかに細工することも、出来るっちゃ出来る。
程度はまだやったことがないから分からないし効果次第だが、日常生活に支障が出ない程度、最低でも軽度の症状に抑えることは可能だという自信がある。
……ただ、なあ…。これ、俺の口弁を体に刺さなきゃそもそも体液を吸えないしこっちから注入するのも出来ないんだよな…。
うん。ただでさえ俺が預かるって言ってバレてるのに、それで急に改善したら何をしたか疑われることだろう。企業秘密だとは言ったが調べられないとも限らない。
うーん、刺した箇所が調べられないような場所なら……。股間……いやいやいや、年頃の少女にそれはあんまりだ。それにどうせなら頭に近い場所がいいんだけど…。目に見える箇所だと不審に思われる可能性もあって……。
どうするべきか、他の方法はないかと思案していると。
「う…んぁ…」
一人起きちゃった。やばい。この子は……えっと、ミレニアムの子か。一番最近に捕まったからか他より睡眠薬の効き目が薄かったのか?
いや、起きてしまったからには症状も出るだろうし、早く眠らせてあげて…。
あ、運ぶ時に使った分で睡眠成分のストックがないわ。
「ここ、は…あれ、わたし…」
やばい。もう意識が覚醒しかかっている。
不味い不味い! いくらなんでも口弁で突き刺す瞬間なんて見られたら普通にアウト。下手に不信感を与えてもアウト。だからって目を瞑ってもらって…ってのも信用の関係で無理。
いや待てよ……軽々しく人に言えないような場所なら……!*1
「えっ、ここどこ。頭痛っ」
完全に覚醒する前に、不意を打って。
ホントにごめん。ええいままよっ!
「んっ、んむっ…!?」
―――悩んだ末にリアンが選んだのは、口吸いであった。
半覚醒状態の彼女の口を貪る。……というよりこっそりと伸ばした口弁で口内を一刺し。
これならば、要望通り頭にも近く、口元はまず見えない。それに、唇を奪われたとあれば乙女的にはそう軽々しく他人には言えまい*2。ともあれ最初はその刺激に驚き抵抗するが、吸い出し、与える関係上それなりの時間が必要。加えて今離れられたら口弁が却って相手を傷つける。
「ん゙ん〜〜〜〜っっ!!?」
そのため強く押さえつけて抵抗を封じる。内心でものすごく謝りながら、やがて相手の頬が赤みを帯び、次第に体を支える力も失っていく。
抵抗が消えたのをいいことに、優しく抱きとめたリアンは配分の調節と配合、抽出に必死に脳を働かせ、ゆっくりと、傷つけないようにその作業を終わらせたのであった。
「〜〜っ!!……? あ……」
「………ふう」
そして今しがた完了し口を離す。長い間塞いでいたためか目は潤み、息も絶え絶え。
ここでリアンはしょうきにもどった。
(アカン…消される…)
呼吸器が停止したわけでもあるまいし、ぶっちゃけ唇を奪っただけだ。このことがバレたらクリーチャー云々関係なく終わる。
未だこちらをぼうっと見つめる彼女を誤魔化すべく、リアンは苦し紛れに相手の唇を人差し指で塞ぎ、囁くように言った。
「しー………。……このことは、内密に、な」
何も言わずにコクコクと頷いたのを確認。ヨシ!言質*3取った!
そのあとも顔を合わせるのは気不味く、一階の事務所に温かいココアと毛布を与えて他の6人の処置に移る。
結局突き刺す衝撃で目が覚めてしまったけど寝ぼけ眼だったしさっきので要領は掴んだので手早く処置は終わった。全員もれなく言質は取ったので多分セーフだ。
こうして完治、とまでは行かずとも短期間の療養で済む程度には軽く出来た。7人は精神的なショックもあるだろうからと、ひとまずここに泊まらせ、身の回りのことなんかは俺がやることにした。
いや、そりゃ俺怖いよね。うん。起きがけにいるしでかいし、そんな奴の家に泊まれって言われてもね。うん。俺は淡々と家事をするマシーンになろう。会話は必要最低限で、後はこう、被害にあった彼女達で傷を舐め合って貰うとしよう。
家具を揃える金がないだけで最低限の生活分くらいは残していて良かった。
あ、コンビニ行くけど欲しいものあったら言ってね。付いてくるって?いやいや、ここブラックマーケットだし治安悪いよ。待ってて待ってて。
あったかい料理と、暫く放置された体を清めるための風呂。雑魚寝になってしまって悪いけど、寝床での睡眠。
途中不安からか起きてしまう子もいたけど、途中買い足した睡眠薬で自然な感じに宥めて眠らせる。
うん、そのあとは特に何事もなく朝を迎えられた。早めに朝食を作って、食べたらそれぞれを自治区に連れて、解散。
あ、ちゃんと別れ際にあのことは内緒だって念押ししておいたから多分大丈夫だと思う。多分。
最後にミレニアムの子をメイド部の元に届けて、俺の役割は終わった。
後は経過観察とかは必要だろうけど、まあ、その辺りの事情は伝わってる筈。
後ろから向けられる視線を背中に、俺は事務所へと帰還するのであった。
今回の依頼で学んだこと。なんか妙に報酬が良かったり、怪しい依頼は背景を自分で確認してから受けるべき。まあそれはそれとして何か手軽に稼げる依頼とかこないかな。
そんな風に思いながら、新たな稼ぎ口を求めるのであった。まる。あー、空から10億くらい降ってこないかな…。
余談
セミナーの子「あの、無事戻ってきたのはよかったんですが、様子がおかしいんですよね。あの…例の何でも屋のことを聞いてきたり、なんか顔が赤かったり…」
ネル「知らねぇよ」
プロのヒモムーブとスパダリムーブを同時に起こすクリーチャー。ちなみに口弁ぶっ刺しによる快楽物質と依存性については本人は知りません。生物で試したこと無いので。
まあ、依存性といっても体に害のある成分ではなく、あくまで獲物の抵抗力を奪うためのものなので暫く同じ成分を打ち込まれなければ治ります。……つまり、やられた側からするとものっそい気持ちいいだけという…。
リアンくんちゃんは大抵のことは何とかなるぞ!家事炊事に始まり清掃、失せ物探し、護衛や運転、戦闘から確定申告代行まで何でもござれだ!
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