透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する   作:食卓の英雄

6 / 66
UA3万突破とお気に入り2000人を感謝してたらその翌日にUA5万、お気に入り3000人になっていた作者の心境を答えよ
(配点 30点くらいの配点にしようと思ったら1145141919点になってしまいました)
あとキャラの口調は間違ってるかもしれん…。新任先生なので大体の知識が二次創作由来なんだよな…。


第5話 遭遇

 

「―――ああ? オークションの調査だ?」

「はい。明日にブラックマーケットで行われるオークションへ出向してほしいのです」

 

 その日、ミレニアムサイエンススクール所属の部活であるCleaning&Clearing、通称C&Cにある依頼が舞い込んだ。

 

 その内容とは、あるオークション会場への潜入、及び調査であった。依頼人は確かセミナーの役員だった筈だ。

 

 …ならば当然、ここがどのような部かも知っているはずである。そのことを誰もが思い、現にアカネが問うている。

 

「オークション、ということは物品の押収が目的でしょうか。 ……失礼ですが、依頼先を間違えているのでは…?」

 

 依頼人相手にあんまりな言い様だが、この問いにはある理由があった。

 彼女たち、C&Cはミレニアムきっての戦闘力を誇る凄腕エージェント集団である。メンバーはリーダーの00 美甘ネル、01 一之瀬アスナ、02 角楯カリン、03 室笠アカネ。

 このようにコールナンバーが割り当てられており、特にリーダーであるネルの00(ダブルオー)はミレニアムにおいて圧倒的実力に基づいた“約束された勝利”を意味している程である。加えてエージェントとしての依頼成功率は100%。ならば、何を口籠ることがあるのか。

 

 そう思うのが普通なのだろうが、原因はそのスタイルにあった。

 

 結果的に依頼を達成しはするのだが、任務をこなすたびに建物や精密機械などを吹っ飛ばして戻って来るので、所謂敵の排除や人物の救出ならばともかく、巻き込まれて壊れかねない物品の回収を頼まれても…ということだ。

 これらの損害はネルの破壊衝動によるものが多いが、何かと爆弾を仕掛ける癖が染み付いてしまっているアカネのせいでもある。おまいう案件である。

 

 他にもネルの性格的に向いていなかったりと、色々理由はあるがそんなものだ。

 

 まあ、それだけならば何の問題もない。ただの物品回収であれば多少の文句は言うだろうが、失敗などとは誰も思っていない。ただ、よりにもよって疑問なのが、ブラックマーケット開催のオークション、という点だ。

 

 ミレニアム自治区で起こったことならばお膝元ということでその任務が課せられるのも納得できるが、他学区どころかブラックマーケット。

 

「…ごめん。まだ目的が見えてこないんだけど」

「ああそうだな。何でブラックマーケットのオークションにあたしらが関わんだよ。そんだけのもんが出品されてんなら、既にこっちの耳にも入ってくる筈だろ」

 

 彼女たちが他所へ出向くような場合は技術の流出やミレニアム生徒が関わっている案件になるが、そのような外に出しては不味いものが出品されている場合、セミナー直属の組織であるC&Cが知らないなどということは無いハズだ。

 

 そう思ってのことだったが、相手方は言いにくそうに目を背ける。それを見逃す彼女たちではない。

 

(…ああ、こりゃこいつの不始末が原因か)

(セミナーに叱責を受ける前に回収しようってことでしょうか)

 

「……実は、そのオークショニアの卸している商品に違法薬物が検出されたのです」

「ん?」

「ことの始まりは私の友人が偶然その商品を手にしたことです。調度品や絵画の売買と称して、内部に隠した違法薬物を売り捌いていたらしいことが分かりました。初めは正義感といいますか、気になって追ってみたのですが、ある日を境にその友人と連絡が取れなくなってしまったんです」

 

(全然違った)

(全然違いましたね…)

 

 最初は少しずつ、けれど次第にぼろぼろと言葉が溢れ出してくる。

 

「…それで、そのオークションが関わっていると思い、調べてみたのですが足取りは掴めず、小鈎さんに個人的に依頼をしてようやくその足跡を辿ることが出来ました」

「小鈎? ヴェリタスの?」

「はい。それで入手できたのは、過去にも同じ様なオークションが行われていて恐らく同様の手口で違法薬物の売買が行われていたことと、オークション日から少し経過した生徒が同じ様に不登校になっている…ということです」

 

 瞬間、部屋に満ちる空気が一変する。彼女はその空気の変化に戸惑うが、続けろという無言の催促に言葉を繋ぐ。

 

「そ、それで、向こうにとって都合の悪い生徒は、こ、殺すか捕縛してその、()()()()に売りつけている可能性があるんです」

 

 やはりか、と嫌な予想が当たったと顔を顰め、キヴォトスでもそうは見ない外道行為に各々の激情も昂るばかり。

 その静かに燃える怒りに水を差すように、けれど話題を戻すように快活な声が挙げられた。

 

「はいはーい! 質問!」

「あ、アスナさん」

 

 場違いなほどに明るい声を上げたのは、C&Cではネルと同じく3年の一之瀬アスナ。その空気の読まなさに呆れると同時、それで沈静化したお陰で冷静に戻れた。

 

「それってさ、わたしたちよりもヴァルキューレのお仕事じゃない? それに他の学校でもそんなことが起きてるならそっちのもっと大きい所で突入も出来たでしょ?」

 

 言われてみれば、というよりその通りだ。確かにC&Cは一流エージェントの集まりであり、その質はトリニティの“正義実現委員会”やゲヘナの“風紀委員会”にも劣らない、それどころか平均の質で言えば凌駕しているとも言えよう。

 

 相手のホームグラウンドはブラックマーケット。加えて被害からして無関係とも言い切れない。であれば流石に勢力間の垣根を超えて協力を頼めないか、ということであろう。

 

「それが、その、今の時期はトリニティもゲヘナも少しピリピリしているといいますか、何のコネもない私が出向いた所で門前払いにあってしまい…」

「それに、過去の例を見ても妙に逃げ足が早いというか、やたらと撤収後の雲隠れが上手いようで、オークション開催時以外の痕跡がほぼないんです。なのでヴァルキューレの準備を待っていますと…その、間に合わない可能性が」

 

 と、にべもない。両校の排他的な関係性と法執行機関という書類手続きの問題ですぐには動けない等の動きの鈍さがネックとなったらしい。

 同様に、あまり大人数で準備をして動いても早期に気づかれ尻尾切りに遭うかもしれない、とのことだ。

 

 だからこそ、少数精鋭の短期決戦である必要があるのだ。動きの早い少数で、かつ高い実力を持つ彼女たちが証拠と身柄を捉え、逃れられない状況を作ってから保安部を突入させて一気に制圧するとのことだ。

 

 そういうことならば、自分達以上の適任はいないだろう。ニッと凶悪に嗤ったリーダーを見て、各々得意げに視線を合わせる。

 

「いいぜ、引き受けてやる」

「あ、ありがとうございます。それで、その…最重要目標はオークショニアと物品の確保と制圧なのですが、もし、もし無事であれば、私の友人や、行方不明の生徒達を…」

 

 

「―――言われなくても。その糞野郎どもには、誰を敵に回したのか、はっきり分からせてやるよ」

 

 

 

 

 

――――――…

 

 

 

 

 

 こうして、ネル率いるC&Cはオークション会場に侵入することとなった。

 振り分けは会場でオークショニアの動向を見張り逐一報告する角楯カリン(ゼロツー)、残りの美甘ネル(ダブルオー)一ノ瀬アスナ(ゼロワン)室笠アカネ(ゼロスリー)以上3名が商品庫を差し押さえる実働部隊だ。

 

 振り分けの理由は、入り組んだルートを越えた先にあるという商品庫ではスナイパーとしての本分を発揮し辛く、元々オークション会場の監視役も必要だったため、目のいいカリンに一任されることになったのが背景だ。

 

 ブラックマーケットによくいるようなタイプの生徒に変装したカリンは、テキパキと指示を出すオークショニアから視線を離さず、けれど胸中に不安を覚えていた。

 

(よりによってあの3人か…)

 

 戦闘力はピカイチだが抑えの利かないネル。何かと成果は出すが時折ふらりと消えてしまうアスナ。本人は常識人ぶっているがその実一番キヴォトスに染まった思考の持ち主であるアカネ。

 

 あの中では自分が一番常識があると悲しいながらに実感しているカリンは、今回の肝である速さと強さに信頼を寄せているが、こと隠密性に関しては無条件で信用できないと思っている。

 

 万が一にも失敗するとは思っていないが、これだけの規模のオークションを開いておきながらヴェリタスに協力を求めるほど情報の集められない相手だ。逃げ足の速さというのもどれだけかは分からない。

 何なら、商品を全て囮にして本人だけ逃げ果せるという選択肢もなくはないのだ。

 

(―――だからこそ、私がいるんだけど)

 

 そう、カリンは監視が主目的で、得た情報を実働部隊に与える役割がある。もし気づかれ逃げようとした場合や、何かおかしな動きを見せた時は彼女の出番となる。

 敢えて目につくように腰に下げた拳銃はギターケースの中の愛銃(ホークアイ)から目を逸らさせるダミー。

 オークショナーが仮に逃げた時、それが彼女のライフルが火を吹く瞬間だ。

 

 背中の重さを再認識し、それでもリーダー達なら達成できるだろう、と気の迷いのような思考を打ち切る。

 客層やその狙いをよく見、どこかおかしな箇所はないかと聞き耳を立て情報収集。大半が己のマウント取りやかつて入手したと思わしき商品の蘊蓄などと辟易するような内容だったが、その中に一つ、気になる情報が紛れていた。

 

「そういえば、今回はやけに警備が多いな」

(!)

「ああ、何でも今回は収集した物品の希少性からか、特に気をつけてるとかなんとか。あの不眠蟲(インセクニア)も警備に入っているらしい」

(インセクニア…? 聞き覚えが、あるような、ないような…)

 

 少なくとも、完全に無名というわけではない。あの、とわざわざ評された辺り、裏の世界では有名だったりするのだろう。これも目的達成への障害として通達しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちらゼロツー。

……―――――との事。また状況に変化があったら連絡する。またね』

 

 カリンから開始の合図を待つ間、計画を練り潜入の機を伺っていた3人に、追加の情報が告げられる。それは、ここの警備に不眠蟲(インセクニア)なる人物が雇われているということだった。

 

「インセクニアぁ? 誰だそいつ?」

 

 しかし、ネルには聞き覚えのない名前らしい。アスナも同様に首を傾げるが、その問にはメガネをくいっとしてアカネが答えた。

 

「私、知っています。―――不眠蟲(インセクニア)。三カ月程前にブラックマーケットに現れたという何でも屋です」

「何でも屋?」

「はい。女性でありながらかなりの長身で、男物の軍服を着ている特徴的な見た目をした方らしく、金さえ払えばどんな依頼でも確実に完遂する凄腕と噂されています。依頼達成率は現在100%だとか…」

「はっ、たかが3カ月で随分と大層だな」

 

 こちとら3年間100%だぞ、とネル。

 

「いえそれが、異名にある通り眠らないと言われているんです。確かいつどんな時でも仕事をしている姿が確認されているとかで、ええと、三カ月の活動期間の内に達成した依頼の数は……さ、387件!!?」

「……は? 何だそりゃ」

「特に直近の目撃情報では3週間続けて朝昼夜傭兵業、鎮圧活動をしていますが…目撃場所と移動時間を考えれば休憩の時間は…その、合計で1時間もないかと…」

「わお、すっご〜い」

 

 いくら頑丈で無茶の出来るキヴォトス人といえど、それだけの無茶をしていれば過労死すること間違いなし。あまりのデスマーチに逆に心配してしまうほどであるが、そこまで言われてしまえば警戒に値する相手であるとは認めたようだ。

 

 しかし、闘志は衰えるどころか増していく。

 

「…面白え。どの道ぶっ倒すことには変わらねえんだ」

 

 小さな龍が、牙をむき出しにしニヤリと笑う。その姿に一層の頼もしさを感じた二人も、今回の任務に対しての思考を続けていく。

 

『―――リーダー、たった今オークションが始まった』

 

 と、皆の士気の上がったタイミングを見計らったかのように、端末から開始の合図が流れる。

 

「お前ら準備はいいな?」

「ゼロワン、おっけー!」

「ゼロスリー、完了です」

 

 今まで耐え忍んだ鬱憤を晴らすように、愛銃携え商品庫へ続く道を駆け出した。

 

「ダブルオー、やってやるよ!」

 

 ―――そこからの、彼女たちの動きは迅速だった。

 

 入り組んだ道を走り抜け、途中接敵したマーケットガードは成すすべもなく瞬殺。荒事に慣れたマーケットガードもミレニアム最高戦力の前には烏合の衆でしかない。

 

 圧倒的な個人と高練度の連携が組み合わさった疾風迅雷の電撃戦によりフロアは瞬く間に制圧されていき、アスナの勘もあり苦も無く最奥の部屋に続くと思われる通路を発見した。

 そこは今までの枝分かれした通路とは異なり、ある一部屋の前の広間があり、そこに繋がる道は一つしか存在しない。つまり、正面突破以外の選択肢はないのだ。

 

 僅かにその先を見ると、やたら頑丈そうな一室の前に立ちはだかる長身の女の姿。

 

(成る程、あれが例のヤツか)

(相手は一人。……ですが最も大事な箇所を一人で任されている以上、油断は出来ません)

 

 先程の情報は知っていても、肝心要の戦闘力は対峙してみなければ分からない。見たところアサルトライフルを二丁担いでいるが、もしや両方扱うのだろうか。

 

 その戦闘力やスタイルの予測を立て、どう対応するかと脳内で思考を働かせる中、アスナのみは不可解そうに眉を曲げていた。

 

(…うーん、あれ…私たちとは何かが違うような。……何だろう?)

 

 頬に手を当て、その正体を探ろうとするものの、頭痛が思考を断ち切る。

 

 とはいえ、今回の作戦は速さが肝心。どんな相手であろうとも負けるつもりの微塵もない彼女達は、最後にもう一度様子を窺って奇襲を仕掛けるつもりで広間に顔を覗かせた。

 

「…いねぇ」

 

 ところが、どういうわけかそこに陣取っていた筈の女の姿は見当たらない。

 広間に繋がる道は一つしかなく、自分たちが控えていた以上気づかれずに出ることは不可能。ならば、自分たちが気づいていないだけで秘密の通路でもあるのかと思考し……。

 

 そんな考えは性に合わないと心の内で吐き捨てる。いないならばそのまま向かえばいい。どんな相手が待ち受けていようと突破してやると意気込んで、背後の二人に突撃指令を出すために振り返った。

 

「っ避けろ!」

「「っ!?」」

 

 咄嗟に叫んだネルに、二人は同時にその場から飛び退いた。

 しかしながら、ネルの後ろについていたアスナはともかく、この中では最も遅く最後尾であったためにアカネの対応が数瞬遅れてしまった。

 

「うあ…っ」

 

 頭を痛烈に壁に叩きつけられ、同時に下手人が顔を近づける。

 するとアカネはその状態のまま沈黙。―――ヘイローは、消えている。

 

「っテメェ!!」

 

 その光景を目にした瞬間、ネルは銃体に黄金の竜の文様が刻まれた二丁のサブマシンガン──ツイン・ドラゴンを向けると、アカネからずらして引鉄を引いた。

 恐ろしいほどの炸裂音と共に数えるのも馬鹿らしくなるような銃弾の雨あられに、下手人は身を翻して対処していく。

 

「ゼロワンッ!」

「うんっ!」

 

 その僅かな隙に、アスナが倒れているアカネを回収する。

 ちらりと顔を向け容態を確認する。頭は切ったのか血が流れており、ヘイローの消えている姿と相まってネルの頭に最悪の予想が過る。

 

「……安心しろ。寝テいるだけだ」

「うん、息はしてる!」

「らしいな…!」

 

 相手方からの言葉とすうすうと上下する胸に安堵を覚え、それでいてこちらに気づかせずに接近し一人を落としたのだ。警戒レベルが跳ね上がる。

 

 そして、近づかれたからこそ分かる。

 

(でけぇ…!)

 

 ネルの身長は146cm、相対する敵は210cm。ネルの背が低いということもあるが、感じる威圧感は相当のもの。

 

「…オイ、アカネを安全圏に下がらせろ。あいつの相手はあたしがやる」

「りょーかいリーダー! でも、何か…上手く言えないけど、気をつけてね!」

 

 ネルの指示に従い、ヘイローの消えたアカネを背負い離脱していくアスナを尻目に、ネルは全力で地を駆け出した。

 

「はっ―――誰に言ってやがる!!」

 

 その答えは容赦のない銃撃の嵐だ。

 

 今この瞬間、ミレニアム最強の“00(ダブルオー)”と新進気鋭の何でも屋不眠蟲(インセクニア)の戦いが幕を開けた。

 





リアンくんちゃん、気配も姿も消せる上に飛んだり壁に張り付いたり出来るんだよね…。
みんなフィジカルで言ってるけど能力が最大限発揮されるのが奇襲、暗殺のときなんだよね…

対策委員会編が終わったら幕間を書こうと思います。選ばれなかったものは作中や前書き、後書きでサラッと乗せます。因みに全部を選ぶと本編が遅れますがちゃんと読めます

  • C&Cリベンジ!
  • ツルギとのデート回
  • カニー・クッターと近所のヌシ
  • 全部!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。