透き通るような世界観にいちゃいけないタイプのクリーチャーに成ったけど今日も元気に擬態する 作:食卓の英雄
っていうか気づいたら日刊ランキング3位になってますね…(2023/08/31 0:15現在)
加えてUA3万突破とお気に入り件数2000人突破。
本当に、ただの見切り発車作品にここまで好評が頂けるとは思っておりませんでした。本当に感謝を申し上げます…!
俺がブラックマーケットに到着してから早三カ月の時間が経過した
早いって?いや、だってここ三カ月ほぼずっと雇われの仕事してただけだし。見所ないよ?
うん、正直傭兵的なことから雑事までかたっぱしから幅広くやった。世界が違えば賃金も違う。傭兵とか工事現場とかの仕事でも危険手当とかは無かった。ぴえん。
加えてこっちじゃ安定した仕事もない。だから今ある仕事をひたすらやるしかないのだよ。幸い俺は生きるだけなら下水道の虫と水さえあればよかったから食費は抑えられたし、睡眠時間も前言った理由で仕事に充てることが出来た。
ずっと仕事漬けだったけどこの肉体の脳は特に疲労感とか訴えなかった。むしろ擬態を維持する方が負担になったくらい。
この辺りの感覚がやっぱ人間とは違うんだよなあ。まあ不便はしないからいいんだけどね。
あ、そうそう。その話で問題が見つかった。
俺はどうやら擬態をしすぎると負担になるらしい。ほんとに些細な程度なんだけど、擬態するだけなら一週間、人と話したり人間らしい活動をしてたら3日くらいでムズムズしてくる。
今思えばブラックマーケット初日に疲れてたのもこれが原因だろう。
一回元の姿に戻って羽を伸ばせばリセットされるみたいだからいいんだけどね。あんまり無理しすぎると擬態の精度が低下するのがネック。これは早口も同様だけどね。
前あったのは傭兵業で泊まり込みになった時。いざ実行って時もマスクの中ずっと開きっぱなしだったから危なかった。高速で片付けて誰も見てないところで元に戻った。
服を傷つけたくないから脱いでたんだけど、その間いつ誰の目に留まるか分かんなくてメッチャ冷々した。
んで話戻すけど、そんな感じで怪物ボディのゴリ押しで需要を壊すレベルで働いた結果、誰が名付けたか“
二週間前に仕事で一緒になった相手がひそひそ話で漏らしてた。
聞き耳を立ててみたところ、毎日昼夜問わずずっと仕事してるところから不眠症を表すインソムニアを、無表情で言われた仕事を淡々と熟す所を虫のようだと思い、インセクトを合わせた造語らしい。
いや、表情筋ないしあんまり喋っても擬態バレするから最低限の会話でやれることやってただけなんだけどね。
でも嬉しい。いや、悪い意味かもしんないけどさ、そのくらい名前を知られるようになったってことでしょ? 無名の一労働者ならともかく、名が売れてるってことはそれだけその分野において信頼できるということ。現に最近は名指しでの依頼が多くなっていた。CMの意味をこんなになってから実感するとは思わなかったぜ。
少なくとも、今のところ受けた仕事の達成率は100%、このまま軌道に乗らせて頂こう。
その一歩として、ここに事務所設立を宣言する!
ウオオオオォォォォォォ――――――!!!
うん。ずっと貯金して事務所として使えそうな二階建てを買いました。借金は保証が必要そうかなって思ったから、一括払い出来るまで結構かかっちゃったけど、拠点は入手できた。
因みに二階が居住スペースで一階が事務所だ。事務所としての面目を保つために、テーブルやソファとか装飾品には気を遣った。
お陰で中々見れるような見た目にはなったけど、そのせいで傭兵業のデスマーチで貯めたお金もすっからかんだ。
そのため居住スペースである二階に家具はない。人に見せる所が最優先だったから仕方ないね。
……で、何が言いたいのかというと、折角看板を上げたはいいものの金がないということである。
事務所のために金を注ぎ込んだ結果、色々凝りだして余計に金を使ったのも不味かった。このままでは仕事のための弾薬代や娯楽のためのお金がない。
拠点を入手したのに、また虫を食うのは嫌だ。問題は無いとはいえ、これでも文明人。この三カ月そこらで食われている料理やスイーツにどれだけよだれを垂らしたことか。あとゲームしたい。
おっと、設立したばっかの事務所に依頼なんてこないと思うだろ?でもそこは考えている。
ホームページです。前にブラックマーケットで絡まれてた人を助けた時にお礼がしたいっていうから、仕事を集めやすいように作ってもらってたんだよね。
結構いい出来になっていると思うし、必要最低限度のことは書いてある。ブラックマーケット住みとはいえ、別に積極的に法を犯すつもりはないから残していても問題はないしね。
そう思い愛銃を整備していると、早速メールが届いた。
急に喋るのは厳しいし、仕事内容の確認とか話す可能性があるので、依頼はメールか直接事務所を訪れるかの二つのみ。
依頼主はあるオークショナー。内容は、自分達の開催するオークションで商品の警備、とのこと。
……何か妙に報酬が高いな。似たようなバイトは受けたことはあるものの、それと比べても3倍以上の価格だ。今は金が欲しいから気にはなるけど……一応確認を取っておこう。ブラックマーケットじゃ舐められたら搾取されるので強気で…と。
『依頼内容は承知した。だが何故警備のみでこれほど報酬がいい? 何か隠し事をしているのか? 備考にもあるが、殺人、拉致、人身売買など外道働きに加担するつもりはない』
そう打って暫く待って見ると、反応が返ってきた。
『そのような筈がございません! 実は今回のオークションには名のある方も複数参加される予定で、決して失敗してはならないのです。掘り出し物の名画や調度品は狙われやすく、襲撃を受ける可能性があるのです。そこで、最近巷で話題の“不眠蟲”様に依頼を頼んだ次第です。報酬額は絶対に守り抜いてほしいという我々のお気持ちでございます』
『分かった。引き受けよう』
『ありがとうございます。次は現地でお会い致しましょう』
「……ヨし、行くか」
俺は最初期から持っている二丁のアサルトライフルを改造した『シャイニングホッパー』と『アサルトホッパー』を肩にかけ、弾薬を用意する。想定戦力は不明。そもそも戦う機会があるのかも分からないが、準備しておくに越したことはないだろう。いやー、こういう時腹が空洞なの便利だわ。色々道具を収納できるからね。ちょっとした弾薬庫だ。
服を着回して仕事をしていたからか、すっかり俺のトレードマークとなった灰色の軍服に袖を通す。鏡で自身の擬態の精度を確認。
最後に、睡眠薬を瓶ごとひっくり返してボリボリと砕きながら摂取する。3瓶もあれば十分かな。
「コレが、事務所設立後の初仕事か」
何だか、初めての仕事を思い起こさせる。こういうときほど、初心に帰って慎重に。浮かれて依頼失敗とか洒落にならないからね。
そんじゃ、出発〜進行〜!
―――…
という訳で、オークション会場についた。
中々広いな。メールで言っていた通り、相応の規模らしい。
既に一部の客は1時間も前だと言うのに席に着いており、優雅に話に花を咲かせている。いや、あれはマウントを取り合ってるだけか…。
その構造なんかに軽く目を通し、俺は依頼主の元へと向かう。
依頼主であるオートマタのオークショナーは忙しそうにスタッフや同じく雇われらしき生徒に指示を出し、様々な物品が流れていく。
その姿に声をかけようか迷っていると、先にこちらに気づいたのか愛想のいい顔(ディスプレイの顔なのでイマイチ信用できない)で声をかけてくる。
「おお! その姿はもしや“不眠蟲”様ではありませんか!」
「…遊星リアンだ。よろしく頼む」
無駄に大きな声に眉を顰めつつ、挨拶は返しておく。
「不眠蟲…?」「それって、あの頼まれればどんな仕事でも確実に完遂するって噂の…?」「どんなに過酷でどんなに長時間の依頼でも顔色一つ変えないらしい」「それがここの警備を?」
ああ、なるほど。敢えて大きな声で名前を出してアピールすることで周囲に知らせる感じのやつね。納得。
誰アレ?よりも予め名前知ってた方が信頼できるもん。まあ実際俺の噂がどんな風に伝わってるかは知らないけど、二つ名みたいなのがあるってだけで何かちょっと特別に見えるよね。
っていうかさっきの人、俺は外道働きはしないからどんな依頼でもってのは違うから。
おっと、いけないいけない。とりあえずは仕事の確認だ。
「……オレの仕事は商品の警備。……オークション会場の、警備はいいのか?」
「ええ、それに関してはこちらで雇っております。オークション会場という広い場ならば多く配置でき、奇襲にも対応できますからね。ただ、大事な商品を収めている金庫室だけは決して狙われてはいけないのです。道中も警備のロボットは配置していますが、万が一ということもあります。そこで、名のある貴方様に金庫室前の最後の番人となって頂きたいのです」
そういう形になるのか。一応聞いてみたけど、俺はそこで固定らしい。一人で。いや、まあ俺としては有り難いんだけど、そんなに大事ならもっと人置いとけよとは思う。
まあそれだけ信頼されてるのかな? それなら名が売れてて嬉しいんだけど…。
「……しかし、随分と備えるが」
「………分かりますか。実のところ、ここまで大規模な警備を雇うつもりは無かったのです。しかし、あるツテでミレニアムのC&Cがこちらの商品を狙っているとの情報を頂き、急遽予定の5倍の人員と貴方様に依頼を出すことにしたのです」
「C&C?」
「ええ、ご存知でしたか」
いや、知らんけど。ミレニアムってあれだよね。あの、何か凄い技術持ってるっていうインテリ集団みたいなとこ。多分あそこならレールガンとかも開発してるんだろうな。
そこのC&Cって所が来るんだ。……後で調べとこ。
「……なのです」
あ、聞いてなかった。ま、まあそんなに仕事には影響しないでしょ。何となく分かった風に頷いとく。こういう時もポーカーフェイス*1は便利だ。
「……見取り図はないのか?」
これも忘れとかない。俺は地形把握の大事さを何よりも知ってるんだ。初めてやる現場ではまず地形の把握と道の確認は必須級だ。例えそれが一箇所を守るための配置であっても、だ。
そうして地図を確認し、念のため写真にも写してから持ち場につく。まだ何もないけど早めにいるに越したことはないからな。
チラチラとこっちを伺う様なスタッフの視線を感じながらも、さっき聞いたC&Cってのを調べてみる。
検索してみると、ミレニアムの学校紹介サイトにも詳細が書いてあった。
えーと、ミレニアム所属の部活動の一つで、正式名称は“Cleaning&Clearing”。部員数は4人。何かメイド部っても書いてある。
その名前の通りに、メイド活動をしている…?メイド活動って何だ…?そもそも部活動でやることなのか…? いや、まあいいや。キヴォトスはそういう所で疑問持ってたら生きてけない。ここはそういうものだと納得しておこう。
後は学生掲示板とかでもヒットしたな。
こっちではその活動に対する愚痴みたいなのもある。何々? 背のちっこい奴が凄く喧嘩っ早くてめちゃ強い。……メイドって、そういうのだっけ。
あ、今度出てきたのはマトモだ。えーと、その中の部員の一人がいい茶葉の紅茶を集めてたり、調度品を買っていた…。
ははーん、分かったぞ。C&Cはメイドとしての活動をすべく、それっぽい調度品を必要としていた。でも4人しかいない上に、小さな部長が問題行動を起こすせいで少ない部費もその補償に充てられた。その中でも満足できるような調度品を揃える手段は限られている。
メイドが務める屋敷に置かれているような、ヴィクトリア朝のアンティークが欲しい。でもそういうのは高いし、部費も少ない。ならば、どうにかして手に入る場所を探せばいいのだ。
そして見つけたのだろう。ブラックマーケットで行われるこのオークションの存在を。ブラックマーケットでやるってことは襲われても文句は言えねぇよな!的な感じで。
うーん…前の常識で考えるとありえないと一蹴出来るんだけど、ここキヴォトスだからなぁ…。正規の学校所属でもそういった問題行動はたまに耳に入ってくるし、そんなもんでしょ。
悲しいけど、こっちに来てから俺の常識はボロボロだ。銃撃戦が口論レベルで行われるってのは知ってたけど、まさかその理由が朝はパン派かご飯派かで行われたと知ったときには心底くっだらねぇと思ったわ。
まあ、俺がやるのはここの警備で、万が一ここまで来る侵入者がいれば迎撃する。それさえ頭に置いとけばいい。相手はメイド部。それも4人。傭兵業デスマーチ中の連続戦闘に比べれば容易い相手だろう。
オークションが始まるまでもまだ時間あるし暇だな…。自販機で買った紙パックのカフェオレ飲も。俺擬態してる時コップから飲み物飲みにくいんだよね。だから専らストローつきのやつ。これ美味しいんだよな。金欠でも思わず買っちゃう。
結局、それだけでは足りなかったのか、スタッフの一人にお使いと称して小銭を渡し追加のカフェオレを頼むリアンの姿がそこにあった。
因みに「ニア=Near」でインセクトニア(虫のようで虫ではない)という意味も隠れているのだが、このアホは表面上の意味しか知らない。
追記(2023/08/31 1:17)
因みにアホが知らないだけで二つ名の由来はいくつかあります。
・眠らない
・目が無機質
・無表情で淡々としすぎて虫の反応みたい
・どこにでも来る
・角がマコトと同じく虫の足のよう
・羽の見た目
とかですかね
喋るとパカパカなる可能性があるので、人と関わる場合は「……」と間を置くことで負担を軽減しております。別にこれなくても喋れるけどもごもごしちゃう。本人的には意思疎通は出来るしまあいっか、とのこと
本人はそんなに気にしてませんが、結構名が売れて武闘派と知られています。何故知らなかったかというと本人ずっと各地を転々として仕事漬けだったので…。
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