万博でも走る中国製EVバス、トラブル続発 販売元に国が総点検指示

興津洋樹 飯島健太
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 大阪・関西万博をはじめ各地を走る「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市、EVMJ)の中国製の電気自動車(EV)バスをめぐり、トラブルが相次いでいる。原因がわからず、運行を中止するケースも。国土交通省は販売したバスを総点検するよう異例の指示を出している。

 EVMJは2019年に設立。複数の中国メーカーにバスの製造を委託し、輸入販売している。万博向けのほか、各地のバス会社、自治体などに数百台が導入されている。

 大阪メトロ大阪市)によると、同社はEVMJのバス約190台を保有。9月1日に予約相乗り制のEVバスが回送中、中央分離帯に乗り上げた。運転手はメトロの聞き取りに対し、「ハンドルが利かなかった」と説明しているという。

 原因についてメトロはEVMJから、車体の横滑り防止装置が働き、右前輪がロックしたという趣旨の説明を受けたという。一方、メトロは車体に不具合がなかったかどうか調査を続けている。

 福岡県筑後市では4月にEVMJからスクールバス4台を導入。同市によると、導入当初から信号待ち中に動かなくなったり、ハンドルの反応が悪かったりするトラブルが相次ぎ、運行を中断。点検後、6月に運行再開したが、再びトラブルが起き、7月から別のバスに置き換えたという。

 阪急バス(大阪府豊中市)では、新大阪駅と万博会場を結ぶEVバスが6月6日、走行中に運転席の画面に故障を示す警告が点灯。バスを止めて点検したが、故障は確認できなかったという。同社は「原因究明を続けている」として、全便を別のバスで運行している。

 国交省は9月3日、道路運送車両法にもとづき、EVMJに総点検を指示。中野洋昌国交相も、その後の閣議後会見で「対応状況を確認しつつ、必要な指導を行いたい」と述べた。

 同省審査・リコール課によると、EVMJのバスは、海外の自動車メーカーが製造し、正規ディーラーを通したものではないため、「並行輸入車」に分類され、制度上、リコールの対象にならない。ただ、点検などで重大な問題が見つかった場合、運行を控えるよう求めたり、回収を指示したりする可能性もあるという。

 EVMJは朝日新聞の取材に対し「速やかに安全を確保できるよう、全社をあげて全車両の総点検を実施している」などと説明する一方、トラブルの詳細は総点検後に答えるとしている。

 脱炭素に取り組むバス会社などが増え、EVバスはじわりと広がりを見せている。自動車検査登録情報協会によると、2020年3月末に101台だったが、24年3月末には580台に。中国の自動車大手BYDが先行してきたが、いすゞ自動車トヨタ自動車なども参入している。

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この記事を書いた人
興津洋樹
西部報道センター|交通、労働、福祉、くらし
専門・関心分野
人権、福祉、平和、歴史、戦争遺跡
飯島健太
西部報道センター
専門・関心分野
イランを中心とした中東政治、国際政治、核問題、事件、災害