クルド人からも悲痛な叫び JICA(国際協力機構)が国内4市をアフリカ諸国の「ホームタウン」認定で大炎上
■社会の側が引き金を引いている 「正確なデータにもとづく議論がまず必要です。そのうえで、例えば、経済的に追い込まれたり、差別を受けて社会とのつながりを持ちにくくなったりすると、結果として犯罪へのハードルは下がります。つまり、外国人の受け入れがもたらす影響は、『社会がどう外国人を受け入れ、扱うか』にかかっているのです。重要なのは、『社会の側が引き金を引いている部分もある』と、立ち止まって考えることです」 外国人を取り巻く環境は厳しいが、存在感は年々大きくなっている。人口減少が進む日本では、外国人はすでに様々な分野で日本社会を支えている。今年6月末時点で在留外国人数は395万6619人と過去最多を更新し、日本の総人口に占める割合は3.21%となった。このままのペースが進めば、70年には10%を超えるという予測もある。多様な人々がともに暮らす社会に向けて、いま何が必要なのか。 先のワッカスさんは「対話や会話が必要」と強調する。 例えば、ごみの出し方で住民との摩擦や迷惑行為といったトラブルは起きているが、それは自分たちの日本文化の理解不足。話しあい、学ぶことで解決できるはずと言う。 「一部で『外国人とは共生できない』という声がありますが、外国人も同じ人間です。フレンドリーにあいさつをしたり『お茶でも飲みましょう』と声をかけ合ったりすることで、分かり合えると思います。日本政府には、差別を厳しく取り締まる法整備を早急に進めてほしいと思います」(ワッカスさん) ■ヘイトを絶つには「交流」と「共生」を 前述の温井さんも、ヘイトを絶つには「交流が重要」と語る。掲げるのが「共生」だ。 「共生には、安心できる環境で交流できる場と機会をつくることが必要。そうすれば、何かトラブルが起きたとしても、日頃からの交流があれば事実を確認したり対処法を話したりできます」 「在日クルド人と共に」は、毎週日曜に日本語教室を開催。クルド人の子どもも大人も参加し、日本人ボランティアが日本語を教える。教室は単なる語学学習の場ではなく、お互いの文化や生活について知り、顔の見える関係を築くための貴重な交流の場となっている。ほかにも、写真展やシンポジウムなどを積極的に主催。クルド人の文化や日常を日本の人々に知ってもらうきっかけとなり、双方向の理解を促すことを目指している。 「我々がやっているのは限定されたことかもしれません。だけど、何もやらなければ悪化していくだけです。共生社会の実現は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。粘り強く継続的にやっていかなければいけないと思います」(温井さん) こうした草の根の取り組みが広がる一方で、社会全体として「共生」をどう実現していくのかも問われている。 東京大学教授の永吉さんは、「共生には相互理解が大切」と話す。 「お互いに交流する機会があるかどうかが外国人に対する見方に大きく影響すると、多くの国で確認されています。例えば、犯罪との関係でいえば、外国人が地域活動に参加することで、コミュニティー機能が回復し、犯罪抑止を含む様々な問題の解決につながる可能性があります」 ただ現段階ではそれ以前に、外国人受け入れの是非について、社会全体でより丁寧な議論を尽くす必要があると言う。 「現在、『労働力が足りないから外国人の受け入れは避けられない』という前提で議論が進んでいますが、これに疑問を持つ人もいます。外国人の受け入れについては、議論がないままに促進されてきました。議論のステップを丁寧に踏み、合意を得たうえで、『共生』を考えていくことが重要です」(永吉さん) 排除ではなく共生へ――。恐れではなく理解から、未来を築けるかが問われている。 (AERA編集部・野村昌二)
野村昌二