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堕天使ルシファーに沼って、18年後モンペリエ行きが確定した話

私はアカデミックにも美術にも興味はない。
美術館よりも動物園の方が好きだ。

だって美術って難しいんだもん、宗教画ってやたら天使でてくるし、聖書の背景をしらないと理解できないじゃん?
受胎告知?最後の晩餐?くらいなら知ってるけど…え?イエス様が神様ってわけじゃないの?え?ラファエル?有名YouTuberの名前?アダムとイブ?あーはいはい、リンゴ食べた人たちね。

そんなレベルの私が、ある一枚の絵画に心奪われ、18年後にフランスのモンペリエに行くという決意を固めた話をします。

「この絵画が好き」という感覚


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ピエール=オーギュスト・ルノワール作《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》


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クロード・モネ作《散歩、日傘をさす女性》

ある日、友人と食事をしているとおもむろに
「私、モネとかルノワールの絵がすきなんだよね」
と言ってきた。

それはモネの「日傘を指す女」とルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」

どちらもなんとなく目にしたことのある絵画だった。

「光の感じとか、女の子の楽しそうな表情とかが好き」と話す友人を横目に、わたしは「ほーん」程度の感想しか抱けない。

確かに女の子の表情は素敵だ。光の感じも幻想的で、素直にきれいだとおもう。しかしそのときの私は「ある特定の絵画が好き」という感情が理解できないでいた。

絵画はもっと教養のある人々が楽しむもの、という思い込みがあったのかもしれない。

自分の推し絵画があったら楽しいのでは?と探してみる

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推し絵画探しの旅へ…

「この絵画が好きなんだよね」とさらっといってのけた友人は正直かっこよかった。

なんだか、とてもスマートで大人っぽく、「わかってる側の人間」という感じがしたのだ。

私もそっち側の人間になりてぇな!と邪な気持ちで、好きな絵画はないか~とネットで検索を始めた。

好きなる絵画というのは偶然の出会いや、運命的な出会いをした方がいいのだが、絵画にふれあう機会がない私は自分から行動しないと好きな絵画に出会えないのだ。

「絵画」で検索すると、モナリザやゴッホ、友人の言っていたモネの睡蓮など、様々な絵画が出てくる。

「あ、美術の教科書に載ってたやつ」くらいの感想しか抱けず、やっぱり好きな絵画なんてそうそうないか…と諦めかけていたそのとき。

私は、彼に出会ってしまったのだ。

出会ってしまった、ルシファーたんに。


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アレクサンドル・カバネル作《堕天使》


一枚の絵画に、私の目は奪われた。

全裸の美青年が、顔の前で手を組み、口元を隠している。
太ももから膝にかけての筋、血管の透け具合。

体の柔らかさも、筋肉の固さも感じられるような生々しい質感。
それに似つかわしくない美しい翼は羽先が黒にそまり、美しいグラデーションを描いていた。

なにより…その美青年は、怒り…と一言で表すこともできない、悔しそうな、悲しそうな表情を浮かべていた。目頭には、堪えていたであろう涙がこぼれている。

私は、彼の顔をみてこう思ったのだ。

「やだ…泣いちゃってるじゃん…どしたん?話きこか?」


ルシファーたん、君なにがあったの?


調べてみたら、この美青年は「ルシファー」
描いたのは、アレクサンドル・カバネルというフランスの画家。作品名は《堕天使》。

ルシファーは天界で最も強く美しい天使だった。
ルシファー自身も、完璧で強く美しい自分を、神に近い存在だと思っていた。
しかし、ある日神が
「人間っていう、神の私に姿を似せた存在を作ったからね。人間、まじで不完全で愛おしいのよ。天使たちも人間を愛して導いてあげてね〜」と言ってきた。

ほとんどの天使は、神の言うままに人間を愛した。しかし、ルシファーは違った。

「なんで俺じゃなくて人間?」
「なんで神は俺を愛してくれないの?」
「俺が神になる方が正しくね?」

そう考えたルシファーは、天界の3分の1の天使を引き連れ神に反乱を起こした。
しかし、残りの3分の2の天使たちにボコボコにされて、反乱は失敗。

この絵画のシーンは、ルシファーが神に天国から追い出すからね!と告げられた直後のシーン…ということだった。

そりゃ泣くよな…
反に乱失敗して、天国から追い出されて、悲しくて悔しかったんだね、ルシファーたん…

宗教に関して批判などはないが、神サイドにも問題がある気がする



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私のなかの神様のイメージ

なぜ神は天使を愛さなかったのか?という疑問があるが、天使はあくまで神の意志を実行するもの、というものらしい。

よくわからないが、日常的に電気とネットが使えてなんでもオンラインで完結できるが、別にネットも電気も愛していない…といった感覚が近いだろうか。

調べたところによると「神は全知全能」らしい。

ならばなぜルシファーが反乱を起こす前に対処しなかった?それとも、わかっていて何もしなかった?そもそも全体の3分の1が反乱を起こすって、あまりにも天使たちとの信頼関係なくない?

会社だったら一気に社員の3分の1がやめたら相当やばいよ?

全知全能なら、ルシファーのメンタルケア、もうちょっとやってあげてよ…ホストの方が、もうちょっとメンタルケアしてくれるのでは?という気持ちになった。

ちなみに、堕天したルシファーは、魔界で一番力を持つサタンになります。

サタンというのは誰しも聞いたことがあるのではないだろうか。悪魔でとても強そうなあれです。悪魔のなかでも一番階級の高いすごく強い悪魔です。
さすがルシファー、堕天してもただじゃ落ちないね!すごいよ!

ルシファー…いや、ルシファーたん、あまりにBig LOVEすぎる



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アレクサンドル・カバネル作《ヴィーナスの誕生》

「愛されたいのに愛されなくて」
「完璧な自分が愛されないのに不完全な人間が愛されることが理解できなくて」
「勝利を信じて反乱を起こしたのに、負けちゃって」
「怒りや悔しさの混じった表情で顔を隠しながら涙を堪えて」
「それでも、堪えきれない一粒の涙を流す」

……ルシファーたん、あまりに愛だな?????
と、ルシファーたんの涙の背景をしった私は、一気にルシファーたんの虜になった。
かわいいよルシファーたん。魔界でサタンになってもきっと美しいんでしょうね…!
と、今度は「サタン 絵画」「ルシファー 絵画」で検索をかけたが、解釈違いを起こしてしまう絵画も多々あった。

ルシファーたんは神への反逆者なので、美しく描くことがタブーだった時代があるようだった。

私の中のルシファーたんは、アレクサンドル・カバネル先生のルシファーたんに決定した。キリスト教の信者でもなく、特に信仰があるわけではないが、ルシファーたんを私の推し絵画にさせていただくことにした。

そして、その堕天使の絵画を描いたのは「アレクサンドル・カバネル」というフランス人画家で、1823年生まれ。今から約200年前である。

有名な絵画に「ヴィーナスの誕生」などがあり、女性を描くことが多かったようだ。

ルシファーたんのような美青年の絵は、カバネル先生の中でも異質に感じる。

しかし、共通しているのはどこまでも現実的に、しかしリアルより美しい表現と人体に対する変態的までな細かい描写である。血管や関節や肌の質感など、リアルなのにどこかフェチズム的で、カバネル先生って絶対人体フェチだっただろ…と思わせるようなものばかりだ。


やっぱり推しって深く理解したいじゃん?



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ラファエロ・サンティ作《悪魔を倒す聖ミカエル》


推しに関して深く理解したい。全オタクが共通して願うことだろう。
私は、ルシファーたんやカバネル先生、ルシファーたんを取り巻く天使たちについて調べた。

~ここからオタクの個人の妄想タイム~

ルシファーたんは4兄弟天使の次男である。

長男はミカエル。
ミカエルは神の剣だ。「神の御心のままに」が口癖で、あまり深く考えない脳筋気味の天使だ。
絵画ではルシファーたんを踏みつけたり、戦いに勝利しているシーンがよく描かれる。

三男のガブリエル。
ガブリエルは神の声を聞くことができる、神の伝達役でもある。
「受胎告知」のシーンでマリアと描かれるのはガブリエルだ。
神と天使たちの板挟みにあう苦労人ポジション。慢性的に胃が痛いのが悩み(個人の妄想)

末っ子のラファエル。
YouTuberではない。
天使は癒やしの天使であり、傷ついた天使たちを癒やす役目がある。お菓子大好きゆるふわ愛され不思議ちゃんな末っ子である。


そんな個性豊かな兄弟の次男であるルシファーたん。
ルシファーたんの役割は天界の象徴…だったっぽい?が、具体的に何をしていたかはよくわからない。

なんとなく天界をウロウロしたり、好きなことして何もしてないほうがルシファーたんっぽくてかわいいのである。

「俺は存在してるだけで完璧で強くて美しくて尊いから、だって神がそう作ったんだし」という感じで、自己肯定感青天井天使である。

~オタクの個人の妄想タイム終わり~


いろいろ調べていくうちに、とあるひとつの疑問が浮かんだ。
「カバネル先生のルシファーたんは、どこにいるんだろう?」
というものだ。
ルシファーたんはどこの美術館にいるのだろう?モナリザみたいに日本に来たりすることもあるんだろうか?もし、ルシファーたんに会える機会があるのなら、絶対に逃したくない。

ルシファーたんって、どこにいるの?


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フランス・モンペリエの路面電車

調べてみるとルシファーたんはフランスのモンペリエにある「ファーブル美術館」に所属されているようだ。カバネル先生の弟が寄贈してくれたらしい。

私はカバネル先生の弟さんに深く感謝した。
美術館ではなく、個人に売ってしまっていたら、どうやっても見られなかったのだ。
そもそも200年前の絵画が現存しているということが奇跡だ。

「ルシファーたんに、一度生で会ってみたい」

フランスのモンペリエまでいけば、ルシファーたんに会えるのだ。

国内旅行どころか、家の外にでることすら苦手な私が、フランスへの旅を決めた瞬間だった。

フランス旅行を目指して、18年計画始動
その日、私は決めた。

「フランスのモンペリエ、いくしかないわ」

2043年、ルシファーたんに会いにモンペリエに行くために


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パスポートをとったこともない私の決意

子どもも成人して数年たち、私が50歳になる年。
そのタイミングで、人生で初めての海外旅行に行くと決めた。

 旅程の計画

  1. パリで2泊(ルーヴル美術館)

  2. モンペリエで3泊(ルシファーたんに最低3回会う)

  3. イタリアに移動、ヴェネツィアで2泊(寂しさを紛らわす観光)

語学の目標

  1. 英語・フランス語・イタリア語、全部ネイティブレベルに!

  2. ラテン語もちょっと触れたい(聖書を原語で読む用)

貯金スタート

2025年5月から、毎月2,500円の「ルシファーの羽共同募金」を開始。
2043年には50万円くらいたまる予定。それを旅費の頭金にする!

人生の大きな夢を抱くきっかけになった友人に感謝


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18年後の自分はどうなっているのだろう


ほんの数ヶ月前まで「この絵画が好き」という感覚すら知らなかった私。

「私、モネとかルノワールの絵がすきなんだよね」

という友人の一言がなかったら、私はルシファーたんに出会うことはなかった。

18年後、50歳という人生の節目に向けての大きな目標を立て、それに向かって満身することもなく、ただ過ぎる日々をなんとなく過ごしていただけだった。

人生の大きな転機をくれた友人にお礼の気持ちを兼ねて報告をした。

「この前モネとかルノワールの話を聞いて、私も好きな絵画をみつけたよ」

「フランスのモンペリエってところにあるの。18年後、実物を見に行くって決めたんだ」

そう告げた私に、友人は少し驚いた表情を浮かべて、一瞬の間をおいてこういった。

「私の好きなモネの絵はワシントンにあるけど、さすがにワシントンは行かなくて良いかな。おいしいものなさそうだし」

おわりに



ルシファーたんに会う18年後まで、語学も貯金も頑張る。

私の人生のひとつの軸が、できてしまった。

とりあえず英語から、オンラインレッスンを申し込むことが始まりの一歩だ。

https://x.com/Rio_takada86/status/1913554332085326224

↑うまれてはじめての動画編集で、拙いながらもルシファーたんについて語ってるのでよければ見てやってください。50秒くらいなので!

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堕天使ルシファーに沼って、18年後モンペリエ行きが確定した話|高田莉緒
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