傍に立つ君は完璧で究極のアイドル   作:カミキヒカラナイ

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今回でJIF編は終了となります。次回から東京ブレイド編に入る予定ですので、引き続きよろしくお願いいたします。



18.超能力少年シオン

「改めて礼を言わせてくれ、シオン君。もう一度アイと会わせてくれて、本当にありがとう」

 

 壱護さんはそう言って深々と頭を下げる。

 あれからしばらくアイとスマホを介して旧交を温めた壱護さんの表情は、数時間前とは別人かと思えるほど晴れ晴れとしたものだった。

 

「君には返し切れないほどの恩ができてしまったな。何か俺にできることはないか? 困っていることがあれば何でも言ってくれ」

「そんな、恩だなんて……僕もアイにはたくさん助けてもらっていますから、お互い様ですよ」

 

 これは本当のことだ。アイが傍にいてくれたからこそ今の僕がある。彼女がいなければ僕は今とは全く違う人間になっていたことだろう。グレて非行に走っていても何も不思議ではなかった。

 

「だが聞いた話だと、君は……生命力? みたいなものをアイに分け与えているらしいじゃないか。それがどういうものかは分からないが、疲れたりはしないのか?」

「特には。分け与えていると言っても、これといって僕から何かしてるわけではないんです」

 

 体内に収まり切らなかった余剰エネルギーをアイが勝手に取り込んで糧にしている、というのが構図としては正しいだろう。僕の方から能動的に何かをする、ということは基本的にない。

 

「なら、そうだな……施設の出というからには金銭面で不自由することも多いんじゃないか? 見ての通り今の俺は住所不定無職のオッサンだが、蓄えが全くないわけじゃない。少しでも生活費の足しになるのなら受け取ってほしいんだが……」

「いやいや、流石にお金は受け取れませんよ! これでも特待生枠で通学してるので学費には困ってませんし、寮暮らしなので光熱費もかかってませんから」

 

 生活費なんて食事代ぐらいのものだ。それにしたってアイと二人分でしかないため大した金額ではない。読モの仕事で稼いだお金もあるし、施設の出とはいえ実のところそこまで赤貧に喘いでいるわけでもないのだ。

 

「……ん? アイと二人分? アイは幽霊なのに食事代がかかってるのか?」

『ギクッ』

「ええ、アイは幽霊ですけど食事ができるんです。あれは物質に干渉できるようになった頃だったから……だいたい五年前ぐらいですかね。それ以降は普通の人と同じように食事をするようにしています」

 

 といっても、お昼は学校だと周囲の目もあるので抜いてもらうことが多い。なので代わりに学校帰りにコンビニ等でおやつを買うことで埋め合わせをしたりはしている。

 やはり幽霊とはいえ女の子。甘い物には目がないようで、特にアイスを買ってあげると喜んでくれるのだ。

 

「……アイ、お前……確か今年でもう三十二だろ? なに年下の男におやつ買ってもらって喜んでるんだよ……」

『違いますぅー二十歳ですぅー! 二十歳で死んだから永遠の二十歳なんですぅー!』

「どのみち年下だろうが! まさか生前のノリでハーゲ〇ダッツのお高いアイスなんて食ってるんじゃないだろうな!?」

『…………ハーゲン〇ッツって結構頻繁に新作出すよね。私、期間限定って言葉に弱いんだぁ』

「生命力もらって食事の面倒も見てもらって挙句嗜好品まで買い与えられてるってお前、ただの穀潰しじゃねぇか! すみませんねウチのバカがヒモで! これでも昔は立派なアイドルだったんですホントに!」

 

 別におやつ代ぐらい構いはしない。アイにはそれ以上のものを貰ってきたのだ。たかがハーゲンダ〇ツぐらいで彼女が笑顔になってくれるのなら安い買い物である。プライスレス。

 それにヒモというのは心身共に健康であるにもかかわらず金銭面でパートナーに依存している人物のことを指す。その点、アイは幽霊であるため働きたくとも働けないのだから、彼女を指してヒモというのは不適当であると言えるだろう。

 

『ホラホラホラホラホラ、シオンもこう言ってる! 私は! 断じて! ヒモではありませえええええん!!』

「やべぇ、さっきとは別の意味で涙が出てきた……本当にかつてのトップアイドルの姿か? これが?」

『それにこれからは私もシオンのお金稼ぎに協力するんだから、なおのことヒモじゃないよ! 共働き!』

「協力ぅ? どういうことだ?」

 

 壱護さんはアイの共働き発言に不思議そうに首を傾げる。

 

「実は、アイに協力してもらって霊能力者として売り出していこうと考えてるんです」

『いつか私が実体化できた時のための下準備としてね』

 

 壱護さんに僕とアイの計画を語って聞かせる。

 アイは僕の生命エネルギーを得ることで年々力を増していっている。このまま順調に行けば遠からず常人の目にも映る程のエネルギー密度を獲得できるだろう。その際、予め僕が死者の魂とも触れ合える優れた霊能力者であると世間に浸透していれば、既に故人であるアイが現れても忌避感なく受け入れてもらえるかもしれない。

 せっかく実体化できても人目を忍ぶような窮屈な生活を強いることになるのでは意味がない。誰憚ることなく大手を振って表を歩けるよう、この計画をアイと二人で考え出したのだ。

 

「なるほどなぁ。恐らく相当な騒ぎになるだろうが……面白い。どんなことをするつもりなんだ?」

「えっと、手で触れずに物を動かしてみたり、遮蔽物の向こう側のものを見透かしたり……というのを考えてます」

『私がちょちょっと物を持ち上げたりすれば、普通の人からはシオンが念動力で動かしたように見えるってわけ。私なら壁を抜けるのも簡単だし、透視したように見せかけるのもお茶の子さいさい!』

 

 僕の周囲五メートル圏内であればアイは自由に動き回れる。その範囲内でアイに動いてもらい、さも僕が神通力を使っているように見せかけるという寸法である。

 

「うーむ……」

 

 これを聞いた壱護さんは微妙な顔をして首を捻った。

 

「……それ、霊能力じゃなくて超能力っぽくない?」

「……ええ、まあ……はい」

『やっぱりそう思うよねぇ』

 

 知ってた。手で触れずに物を動かすのも、物体を透過して物を見るのも、サイコキネシスやクレヤボヤンスという名前で超能力の括りに入っている。これらを披露して得られるのはサイキッカーやエスパーの名声だけだろう。

 

「まあ、あくまでエンターテインメントとして売り込むわけだからな。分かりやすさは大切だ。霊視とかは余人には分かりにくいし、派手さもない」

「そうなんですよ。そもそも僕やアイが近付くと幽霊って大抵逃げるか逆に寄ってきて勝手に消滅しちゃうので、『そこに幽霊がいます』って証明する方法がないんですよね」

「駄目じゃん」

 

 駄目なんです。幽霊を捕まえて連れて来ようにも僕が触れると消し飛ばしてしまうし、アイに至っては目を合わせただけで消滅させてしまう。こんな様では人前で幽霊の実在を証明することなどできようはずもない。

 

「むしろ何でアイは消えないんだ?」

「多分、恨み辛みなどの負の感情が一切なかったからではないかと。そういうマイナスの思念を持つ悪霊や怨霊なんかは、逆に僕の生命エネルギーが強過ぎて毒になるみたいです」

 

 大抵の場合、人間は正の感情より負の感情の方が大きく強くなりやすく、そういった思念の強さがそのまま幽霊を現世に縛り付ける(くびき)になる。対して負の思念を抱くことがなかった……つまり未練なく死んだ人の魂は幽霊になるまでもなく雲散霧消してしまうのだ。俗に成仏する、というやつである。

 その点、アイは実に稀有な例だった。負の感情を抱くことなく死に、しかし即座に消えることもなくしばらくの間現世に留まれるだけの魂の強さがあった。その魂の強さが消滅するまでの猶予を生み、その猶予があったからこそ僕と出会い、悪霊でない故に僕の生命力を糧に永らえることができたのだ。

 

「偶然に偶然が重なった結果ってことか……というか、シオン君は人と比べてどのぐらい魂が大きいんだ? 消えてなくなる筈だったアイの魂を今の今まで維持してたわけだし、相当デカいんじゃないか?」

「うーん、その辺の感覚は僕よりアイの方が鋭いんですよね。前は野球ボールと太陽に例えてなかったっけ?」

『そうそう、大体そのぐらい? シオンの魂がデカすぎて他に例えようがないってのが正直なところなんだけどね』

「えっと……太陽って確か地球と比較しても33万倍ぐらいの質量があったよな……? え? 野球ボール……? えぇ……?」

 

 背後に宇宙を背負って困惑顔を浮かべる壱護さん。うん、まあ普通そういう反応になる。正直、僕自身も我がことながらスケールが違い過ぎて実感が湧かない。

 

「そんだけ魂がデカいんなら君のそのオーラも納得だが……むしろよくその程度で済んでるな?」

『でも中学生ぐらいの時、一瞬だけ危ない時期があったよね』

 

 そう、中学生に上がりたての頃……成長期に差し掛かったあたりだ。まるで成長する肉体に合わせるかのように急激に魂が大きくなった時があったのだ。

 その頃には既に魂のオーラを誤魔化す振る舞いを身に付けていたため事なきを得たが、そうでなければ危なかっただろう。結局、数日も経てば肉体の方がより強く成長してくれたため大事にならずに済んだわけだが。

 あれはまるで、内側から溢れ出そうとする魂のエネルギーで自壊するのを防ぐために、肉体がそれに適応したかのような異様な成長速度だった。しばらくは急激に増したパワーを制御するのに苦労したものである。

 

「……もしかしてシオン君ってフィジカルやばい系?」

『やばいよ。マジでヤバい』

「まあ、はい」

 

 ボロボロに崩れた廃墟の壁の一部……剥き出しになったコンクリートから覗く鉄筋を指で摘んで毟り取る。それを手の平で包み込み、握力に任せて握り潰した。

 粉砕され手の中で弾け飛ぶ異形鉄筋。同時に断熱圧縮により生じた高熱が一瞬で鉄筋を蒸発させ、鉄臭い蒸気が指の隙間から立ち昇った。

 

「えぇ…………」

「どうでしょう。霊能力者として売っていくに当たってこれも良い武器(ネタ)になると思うんですけど」

『神通力(物理)みたいな』

「いやこれで霊能力は無理があるだろ。イメージと違いすぎる」

 

 まあ確かに、どうしても霊能力というと超感覚的知覚(ESP)方面に偏っているイメージがある。なのに僕はアイ以外の幽霊とはまともに交信できないし、やはりちょっと無理がある設定だったのかもしれない。

 

「それに霊能力者っていうと、オカルトに偏り過ぎてるというか、霊感商法の被害もあって社会的なイメージがイマイチ良くない。その点、超能力者ならマジシャンの類型としてある程度エンタメとの親和性が見込めるだろう。実際、サイキッカーを名乗る手品師は世界的にも珍しくないしな」

 

 やはりその方が無難だろうか。壱護さんは芸能プロダクションの社長だった人だ。僕などよりよほど世相には詳しいだろう。そんな彼がそう言うということは、僕が思っている以上に霊能力者という存在は胡散臭くて社会的信用がないのかもしれない。

 言われてみれば確かに、同じオカルトでも超能力者を名乗る有名人は多い一方でその逆はあまりないように思える。自称超能力者による詐欺事件もないわけではない筈だが、やはり浸透しているイメージというものは無視できるものではない。

 

「アイの復活を堂々と世間に受け入れさせるために霊能力者としての社会的信用を事前に築いておく、という発想は悪くないと俺も思う。いや、痛快だしむしろ積極的に応援したいぐらいだ。だが、それは別に霊能力者である必要もないんじゃないか?」

「というと?」

「どうせ本物の超能力者なんてこの世にはいないんだ。いや、いるのかもしれないがシオン君ほど飛び抜けた“本物”は絶対にいないだろう。いたらとっくに話題になってる。超能力については色々な国が大真面目に研究していた時代もあったが、結局今日に至るまでこれといった成果は上がっていない。つまり、シオン君だけが唯一にして絶対の超能力者……君こそがこの世の超能力者の“基準”になれるんだよ」

 

「スプーン曲げぐらいで得意顔をしている超能力者なんて時代遅れにするだけの力が君にはある。これから超能力者とは、手で触れずに物を動かし、遮蔽物を透視し、金属を手で潰して溶かし、大人一人を抱えて空を駆けることができる者を指す言葉に変わるだろう。

 分かるか? 君こそが定義者なんだ。なら、超能力者が故人を(よみがえ)らせたとて何も不思議じゃない。“超能力者シオン”が“そう”だと言えば、それは何であれ超能力になる。そう納得させるだけの力とオーラ、何よりカリスマが君にはあるんだからな」

 

 興奮したようにそう捲し立てる壱護さん。

 なるほど……目から鱗とはまさにこのことだ。僕が超能力を定義するなんて、そんな大それた発想は全くなかった。流石は海千山千の芸能界を生き抜いてアイを地下からドームまで押し上げた実力者、発想が柔軟だ。これで十年のブランクがあるというのだから驚くばかりである。

 

「……っと、すまない、つい興奮して声を大きくしちまった」

「いえ、とても勉強になりました。壱護さんが良ければ、今の考えを使わせて頂いてもいいですか? 宮田さん……僕をスカウトしてくれたプロデューサーの方にも相談してみたいと思います」

「おう、こんなのオッサンの浅知恵で良ければいくらでも使ってくれ! ……しかし君をプロデュースできる事務所が羨ましいぜ。芸能関係者であればこれほど唯一性のある逸材、誰もが喉から手が出るほど欲しいだろうさ」

「そうでしょうか? それなら嬉しいのですが」

「そりゃもう。芸能の歴史は古い。今の時代、誰もが何かの二番煎じかそのアレンジに甘んじなければならない中、君のように完全無欠の“唯一無二”を持つ者は稀少を通り越して幻みたいなものだからな。世界中の誰もが真似したくともできないシオン君のその力は、君が芸能界で戦うための強力な武器になるだろう」

『だから昔から言ってるじゃない! シオンは絶対芸能人に向いてるって! 私の言った通りだったでしょー?』

「ビジュアル良し、声良し、魅力的なオーラもあって、超能力という唯一無二の個性もある。五感に訴えかけるあらゆる全てにおいて完璧という他ない。芸能人としては非の打ち所がないな。事務所がよほど下手なプロデュースをしない限りは間違いなく売れるだろう。自信を持っていい」

 

 なんと言うかベタ褒めで照れてしまうが、壱護さんにそう言ってもらえるのであれば自信が持てる。

 やはり自社のアイドルをドームの舞台まで至らしめた実績のある社長の言葉には重みがあった。別にアイの言葉に信用がなかったわけではないが、身内故の贔屓目が多少はあるのではないかと勘繰ってしまっていたことは否めない。結果的にはアイの言う通りだったわけだが。

 

「確か君をスカウトしたのはリーベック・プロダクションだったな。あそこは最大手の芸プロだし下手な売り方はしないと思うが、何かあったらいつでも相談してくれ」

「はい、その時はよろしくお願いします」

「それと……アイ。お前、アクアとルビーにはどうするつもりなんだ? その様子だとまだ自分のことを明かしていないようだが、俺みたいに説明してやらないのか?」

『うーん、そうしたいのは山々なんだけどねー』

 

 タッチペンをクルクルと手元で回しながら渋るように唸るアイ。

 

 確かにアイが幽霊とはいえしっかりとした自意識を保ったまま健在であると知れれば、アクアとルビーは喜ぶだろう。しかし今にも死にそうだった壱護さんと違い、二人は──少なくとも表面上は──前を向いて元気に今を生きている。そんなところに「十年以上前に死んでしまった母親が幽霊になってここにいます」なんて突然言われても困惑するだけだろう。

 それに転生者であった僕のような例外であればいざ知らず、普通の人間である二人は四歳なんて幼い頃のことはあまりよく覚えていないだろう。そこへ姿も見えなければ声も聞こえない、推定母親の幽霊なんて存在を聞かされてもすぐには信じられないのではないだろうか。

 

 それに何より──

 

『今は向こうから認識されてないから何とか我慢できてるけど、もしアクアとルビーに認知されて話しかけられちゃったら……うん、爆発するね。間違いない』

「爆発!?」

『あれだよあれ、限界化ってやつ。推しに認知された衝撃で尊みがビッグバンでやばたにえんってカンジ?』

「何だその微妙に流行を外したワードのチョイス……」

 

 まあ確かに、今の時点でも二人を前にすると結構アレだからな。そんなところに愛する子供に構われてしまったら、本当に感情が爆発してどうにかなってしまうかもしれない。

 

『こうやってスマホに文字を打ってそれを見せてーなんて焦れったくてやってられないよ。やっぱりアクアとルビーとは直に言葉を交わして触れ合いたいの! それができるようになるまでは我慢!』

「はあ……? まあ、お前がそれで良いなら俺からは何も言わねぇけどよ」

『てゆーか私なんかより、社長は自分のこと考えなよ。とりま夫人にはどう言い訳するつもり?』

「ゔっ……!」

 

 アイに指摘され胸を押さえてよろめく壱護さん。

 そう、事情があったとはいえ壱護さんは十二年もの長きに渡ってミヤコさん一人に事務所とアクアとルビーを任せて放置していたのだ。世間一般にはこういう男を人間のクズという。

 許されるかはさて置いて、取り敢えず会って謝らないことには始まらないだろう。聞けば当時はアイの葬儀まで全てミヤコさんに任せ切りだったという。彼の罪は相応に重い。

 

「すぐにお会いになりますか? 僕の足ならここから苺プロの事務所まで二歩ですけど」

「歩!? ……い、いや、今ミヤコは記念すべきルビーのファーストステージを見届けた余韻に浸っているはず。それを邪魔するわけにはいかん……」

『おー、社長のクセに空気読んだ。すごい進歩』

 

 結局、壱護さんは後日改めてミヤコさんに謝罪することにしたそうだ。確かに今の彼は髭も髪の毛も伸び放題で服もヨレヨレだし、正直少しみっともない。最低限身なりを整える時間ぐらいは必要だろう。

 上手い言い訳を考える時間が欲しかったというのが本当のところだろうが。

 

 

 後日、壱護さんが大怪我を負って入院したという話をアクアから聞かされることになるのだが、それはまた別のお話。……ちょっとミヤコさんを強化しすぎたかもしれない。

 




桐生(きりゅう)紫音(シオン)
 オールマイトが助走をつけて髪の毛食わせにくるレベルのフィジカルモンスター。小学生の頃まではまだ辛うじて呉爾羅(ごじら)(恐竜)だったが、成長期の急成長に伴ってGODZILLA(エヴォルヴ)にワープ進化した。その時は危うく器から宇宙規模の魂が溢れ出しかけて世界と疫病神ちゃんの危機だったが、「まだだ、まだ終わらんよ!」と器の方が魂に合わせて進化したことで事なきを得た。
 で、俺が生まれたってワケ(ゲッター)

星野(ほしの)アイ】
 推しに認知されると死んじゃう系アイドル。もう死んでるけど(幽霊ジョーク)
 実は普通に食事ができることが判明した。食っても太らないため割と容赦なく食べる。好きな物は特上カルビと期間限定のハーゲンダッ〇。遠慮? 完璧で究極のアイドルにそんなものはないよ。なお戦犯(シオン)は推しに貢ぐ感覚でいっぱい食べさせてニコニコしてる模様。

斉藤(さいとう)壱護(いちご)
 アイにとっても自分にとっても大恩人であるシオンに感謝しきりだったが、そのあまりのわがままボディ(オブラート表現)ぶりに絶句する。その身体(フィジカル)で霊能力者は無理でしょ。
 後日菓子折り持って苺プロを訪れ、渾身の土下座を披露してミヤコさんに許しを乞うことになる。原作同様馬乗りで顔面を滅多打ちにされることになるが、霊能マッサージの影響で強化されたミヤコさんのフィジカルは並の成人男性を病院送りにして余りあるものだった。これがマッチポンプってやつですかアインズ様?

 斉藤壱護はアイを守れなかったことをずっと後悔していた。そして後悔と同じだけの憎悪を、アイの命を奪った何者かに抱いていた。
 しかし、アイは魂だけの幽霊となってこの世にいた。姿は見えず声は聞こえずとも、壱護を導いた地上の星は変わらぬ輝きのまま健在だった。
 文字を通じてしか意思の疎通は叶わないが、アイが楽しそうに今を生きていることは十分に伝わってきた。ならばそれでいい。壱護は己の憎悪に蓋をする。少なくとも復讐の“ふ”の字もなく傍らの少年と楽しそうにしている彼女の前で、ましてや感動の再会を果たした直後の空気の中で己の憎悪を露わにすることは憚られた。

 アイを死に追いやった男……アクアとルビーの父親たる人物は何者なのか? いつかは問い質すにしても、それは今でなくていい。そう断じた壱護は、その問いを胸の内にしまった。

 ──その男が今なお同じ凶行に手を染め続ける連続殺人鬼であることを、壱護は元より、アイもシオンも知る由はなかった。

【芸能事務所リーベック】
 捏造事務所。いつまでも「某大手」とか「不知火フリルの所属事務所」呼びだと不便すぎるため、Wiki片手に十秒で考えた。
 名前の由来はアスベスト。不知火フリルの姉、不知火ころもは竹取物語における難題の一つ「火鼠の(かわごろも)」がモチーフのキャラクターであり、

 火鼠の裘 → 石綿(アスベスト) → リーベック閃石 → リーベック・プロダクション

 という連想ゲーム。リーベック閃石という鉱石が繊維状に変質したものが石綿(アスベスト)と呼ばれるらしい。どういう神経してたらアスベスト(発癌性あり)を芸能事務所の名前にするんだ……
 なお発見者であるドイツの探検家エミール・リーベックの名に因んで命名されたそう。人名だと思えばそこまで変でもないのかもしれない。
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