娘からの衝撃のひと言
「パパ、最近ずっと家にいるよね。なんで? 髪も髭もボサボサで汚いし……嫌い」
以前は、自分の休みの日、いっしょに出かけるのを楽しみにしてくれていた娘。だらしない生活をしているうちに、何よりも大切な存在から嫌われてしまった事実に、情けなくなったといいます。
「娘にとって、僕は誇れる父親じゃなくなっていたんです。どれだけお金があっても、だらしない父親を、娘が尊敬できるはずがない」
その夜、妻に相談すると、あっさりとこう言われました。
「こんな風になると思っていたよ。あなたのこと大学時代から知ってるんだもの(笑)。外に出るって大事だと思うよ。フルタイムじゃなくていいから、また働いてみたら?」
妻のその一言に背中を押され、Aさんは再び働く決意をします。 ただし、以前のような“がむしゃらな働き方”は望みませんでした。
「条件は家から近いことと、定時で帰れること。年収は求めませんでした」 前職の知人の紹介で、中小企業のサポート業務に再就職。週4勤務、17時退社というペースです。FIREをして1年半後のことでした。
一度仕事を離れて気づいた「FIREの本質」
それから生活はすっかり変わりました。 朝は決まった時間に起き、身だしなみを整え、夜は家族で食卓を囲む。土日はしっかり家族と過ごす。メリハリができたことで、人生はいっそう充実するようになったといいます。
「二度と働くもんかと思っていたのに、自分のだらしなさを通して色んなことに気づきました。好きなように働けることが僕にとっての自由なんだと思うようになりました。もちろん資産があることが心の余裕になっています。誰にでもちょうどいいバランスがあるんですよね」
何より嬉しかったのは、娘との関係です。
「この前、娘が“パパ、仕事決まってよかったね。かっこよくなったね”って言ってくれたんです。何より嬉しかったですよ」
働くことに疲れたとき、「もう辞めたい」と思うのは自然なこと。 けれども、働くことを完全に手放してみて初めて、人とのつながりや日常のリズムの大切さに気づく人も少なくありません。
FIREとは、“社会と距離を置くこと”ではなく、自分らしい働き方を選べるようになること。 Aさんの姿は、それを物語っています。
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