年間約6000棟を供給する住宅会社A社で、秘密情報の流出騒動が巻き起こった。支店長を任せていた人物が同業の新会社を立ち上げ、社内の基幹システムに登録された見込み客を自分の会社へ送っていた。(日経クロステック)
今回取り上げるのは、中堅住宅会社で起こった情報漏洩問題だ。
概要を見ていこう。舞台となったのは注文住宅を中心として、全国で年間約6000棟を供給するA社。同社で支店長を任されていたX氏は、よりローコストな住宅を消費者に届けたいと考え、独立を思い立った。2020年ごろのことだ。
A社は1つの支店が4つから5つの営業所をまとめる体制を取っていた。X氏は15年に入社後、翌16年には営業所長に、20年ごろには支店長に昇格していたというから、やり手の人物だ。X氏は独立について上司に相談したが、慰留され、当面は会社に残ることにした。
しかしX氏は上司に相談する以前に、親しい間柄だった不動産会社B社の経営者であるY氏に持ちかけ、新会社の設立構想を進めていた。部下3人も賛同。X氏と部下3人は、見込み客をA社の基幹システムに登録しつつ、自らの営業活動も独自に行っていた。X氏はA社を退職しないまま、Y氏を取締役として21年にC社を設立、見込み客がB社やC社に流れることも実際にあった。
会社側が「不正」と見なした
X氏らの行いが問題視されたのは23年になってからだ。A社は社内に不正調査チームを立ち上げ、X氏と部下にヒアリングを実施。事実関係を把握した上で、23年3月にX氏と部下のうち1人を懲戒解雇、残る2人を降格とする処分を下した。この頃、Y氏はC社の取締役を辞任した。
A社は23年7月ごろ、X氏とY氏、Y氏が代表を務めるB社、X氏が代表を務めるC社の計4者を相手取り、大阪地方裁判所へ提訴した。
A社は、被告側が基幹システムに登録された情報を不正に持ち出し、利用したという不正競争防止法違反があると主張。約4800万円の損害賠償を請求した。被告側は不競法違反ではないと反論して争った。














































