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抑えてもむくわれず…本拠地未勝利で今季終える中日・柳「柳しか勝たん」少年たちの思いがとどく日はいつ

2023年9月25日 10時28分

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って=24日 中日0―0阪神(バンテリン)
 今季の柳は11度も本拠地で先発しながら、ついに未勝利のまま終える(6敗)。ただし防御率は2・64。それなのに勝てなかった理由は、ファンならよく知っていると思う。

試合前、スタンドの子どもと話をする柳(右)


 今季の中日で5イニング以上を無失点のまま降板した先発投手は、この日の柳でのべ20人目だ。ところが白星にありつけたのは11人しかいない。無援護に泣いた筆頭が、5試合で1勝しかできなかった柳である。極め付きは無安打無得点で9イニングを投げきりながら、味方も無得点に封じられた8月13日の広島戦(バンテリン)だ。
 それでもこの試合は延長10回にマルティネスが取られた1点を、石川昂、宇佐見の本塁打でひっくり返したからまだいい。実は無失点の先発に白星がついていない9試合で、チームが勝ったのはこの1度きり。6敗とスコアレスドローが2度。信じ難い数字である。ドラゴンズは投手力のチームだからこそ、投手戦は勝たなければいけない。「ドラゴンズらしいロースコアの試合ができたからよし」ではないのだ。それこそ全勝するくらいの気構えがなければ、来季以降の浮上もあり得ない。
 抑えても抑えても報われず。だけど、優勝決定日となる期待を込めてチケットを購入した、たくさんの阪神ファンもいたにせよ、この日のスタンドには3万6311人が詰め掛けていた。開始直前にウオーミングアップする柳は、ネット越しにドラゴンズの帽子をかぶった少年に声をかけていた。前回の登板(17日の広島戦)でも、同じ年ごろの少年と交流。「柳しか勝たん」「僕のイケメン柳」と書いた手書きボードを持ち、背番号が見えるようにレプリカユニホームを前後逆に着ていた。柳はキャッチボールを終えたボールをプレゼントし、少年は黙って手紙を差し出した。
 「僕に渡せるかどうかはわからないのに、手紙を書いて、持っていてくれたんです。そう思うと、うれしくって…」
 観客がいて、プロ野球は成立する。最後まで援護はなかったが、いつかは少年たちの思いが届き、柳が報われることを願いたい。

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