「本人の意向を聴取」 胎児性患者の申請却下取り消しで水俣市長

今村建二
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 胎児性水俣病患者の金子雄二さん(70)が申し込んだ訪問入浴介護の利用申請を却下した熊本県水俣市の決定を、手続きに不備があり違法として市自らが取り消した問題で、高岡利治市長は20日、今後の対応について「まずはご本人の意向を聴取して検討したい」と話した。

 定例会見で報道陣の質問に答えた。

 却下した決定を取り消す裁決が出た後、金子さんは「本人の意向を十分に聴取した上で、サービスの利用を認める」ことを求める要望書を提出している。

 高岡市長は「担当課が本人の意向を聴取した上で検討する」と話し、時期については「なるべく早いうちに」とした。

 ただ、金子さん側は今回の裁決によって「改めて審査をやり直す義務を市は負うことになった」と主張しているが、高岡市長は「裁決はあくまで説明不足を指摘されたもの」と述べるにとどめた。

 金子さんは、市の障害者支援事業としての訪問入浴介護の利用を2024年3月26日に申請したが、市はわずか2日後に却下した。この際に、却下すると判断した理由が本人に示されていないことが、今回の取り消し裁決につながった。

 金子さんは「自らの障害は水俣病が原因で、高齢で生じたものではない」と主張し、介護保険を利用しないで生活しており、今回の申請もその延長線上にある。そうした「個人の尊厳」「思想信条の自由」なども根拠の一つとして、訪問入浴介護の利用を求めているが、裁決ではその点には触れられていない。

 金子さんの保佐人を務める中島潤史弁護士は「却下理由を書き直した上で再び却下するような形式的対応は許されない」と釘を刺している。

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この記事を書いた人
今村建二
水俣支局長|水俣病・環境担当
専門・関心分野
地方政治、環境