透き通った世界に鏡を通して   作:紙吹雪

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8章終わらせたので投下します
頭の中でラスボス戦BGMがループするのぜ〜……



今作はリンバスからブルアカに入った人間が思い付くままに書いています
リンバスもブルアカもメインストーリーは最新まで全部履修済み
取り敢えずアルちゃんが可愛いです


【読まなくても良い余談】
ナグサガチャ引いたらすり抜けで通常アル(リセマラで既に引いててほぼ育成済み)が出ました
仕方なく天井(200連)まで引いたら通常ヒナ(配布されてる)と水着ヒフミ(任務で神名文字が貰える)が出ました
他に星3は一切出ませんでした


絶対に許さんぞ、これもお前の所為だな陸八魔アル……!


欲は言わないからすり抜けでキャンプハレと通常アコとキサキとミカと臨戦ホシノと水着ホシノを寄越せ(強欲)




夢をなくす
あらぬ噂 〜依頼〜


 

 この学園都市において、半ば怪談のような噂はありふれている。

 それらの真偽を全て判別するのは荒唐無稽な手段でも使わなければ不可能だろう。

 まず、噂なんて不確かで不透明な代物だ。

 わざわざそのような事をするのは無益でしかない。

 

 所詮はあらぬ噂……そう切って捨てられる。

 路傍の石を誰も気に留めないように、無いも同然の物を誰も気にしたりはしない。

 誰にも知られずに記憶にも残らず忘れ去られて行く。

 一時だけ関心を持たれたとしても、それはほんの僅かな間なだけ。

 また別の噂に関心は移ろうだろう。

 

 こうして、大半の噂は生まれてすぐに虚無へと還ってはまた新しい噂が生まれる。

 百の物語が延々と語り継がれる連鎖。

 それは生命の営みと同じだ。

 生まれ、やがて死ぬ事は変わらぬ摂理……

 

 

 

 

 

 しかし、ほんの一部……その中に()()が混じっていたとしたら。

 

 

 

 

 

 水面に波紋が広がり、鏡に映る姿すらも歪め。

 

 

 それは、やがて学園都市にて語り継がれる怪談となるだろう。

 

 

 全ての者が恐るるべき百物語(怪談)として。

 

 

 何故なら、恐怖を振り撒く禍の中心にあるのは純粋な悪意ではなく。

 

 

 人の欲望だけが淡々と渦巻いているのだから。

 

 

 誰かの書いた絵よりも醜悪でより悪い方へと転がって行く。

 

 

 でも、そこに悪意は無くて……だからこそ容易に人の心を掻き乱すんだ。

 

 

 この世界の君は、きっとそれを思い知るだろう。

 

 

 ねぇ、先生?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 

 

 

「鏡を覗くと、別の世界の自分に人格を乗っ取られてしまう……でしたか」

 

"そんな噂が出回っているんだね"

 

「ええ。仮に真実だとしたら、恐ろしい話ですよね」

 

 シャーレの執務室、もしくは先生の仕事部屋。

 今日、シャーレの当番としてミレニアムのセミナー会計である早瀬ユウカがこの場に訪れていた。

 

 当番とは言え、この部屋の主は特に仕事を強制する事はない。

 その為、半分くらいはただ一緒に会話したりお茶菓子を楽しんだりするものと化していた。

 無論、ユウカのように全員がそうとも限らないが。

 

 仕事机に腰掛けながらお菓子を摘んでいる大人……先生はニコニコと生徒の話に耳を傾けている。

 目の下には隈がくっきりと見えており、疲れが溜まっているのは明らかだ。

 仕事の手は完全に止まっており、仕事部屋なのに寛ぐ気しかないのは明らかだった。

 ユウカは何度も苦言を呈したが……本人の気質までは変えられないらしい。

 

"うーん、たしかに……"

 

「自分が無くなってしまうとか……考えてみると怖いですよね」

 

"いきなりそんな話をするなんて、どうしたの?"

 

「……実は」

 

 不穏な話の気配を感じ取ったのか、先生は姿勢を正して話を聞く姿勢を整えた。

 今までがあくまでお茶会のような調子は自然と消え失せた。

 ユウカの口調も表情も……よくよく見れば、普段よりも強張っていた。

 

"もしかして、何か事件?"

 

「そうとも言えるかもしれませんね。詳しい事情を話すと長くなるのですが……」

 

 ユウカは自らの通う学園であるミレニアムにて起こった事件の報告書について話し出した。

 

 その事件は、キヴォトスでは良くある……それも、ミレニアムなら週に一度は起こるようなそれだ。

 実験室を無許可しようして問題を起こした。

 見る価値すらも薄そうな、見過ごしてしまってもおかしくない空気よりも軽そうな内容。

 

 まだキヴォトスに来てそこまで経っていない先生にだって、このくらいの事件が特別だとは思わなかった。

 当然過去に起こった事件を全て知っている訳でもないが。

 しかし……

 

"その事件……何か裏があるの?"

 

「はい、実は事件を起こした問題の生徒なんですが……以前までとは別人のような話し方だったって」

 

"……それ、本当?"

 

「私じゃなくて、セミナーの書記担当……えっと、先生はまだ会った事なかったっけ。その子が言ってたのよ……正直、私も半信半疑なんだけど」

 

 そこまで聞き、先生は納得した。

 荒唐無稽な……いや、荒唐無稽でなければならない、あの噂を。

 何故、普段ならそんな馬鹿げた噂話なんて興味を持たないだろうユウカがそれを口にしたのかも……

 その理由が分かってしまったから。

 

"とある鏡を覗くと、別の世界の自分に人格を乗っ取られる……"

 

「常識的に考えたらあり得ない話だとは思うわ。でも、万が一もあると言うか……」

 

 ユウカの不安はセミナーの書記……生塩ノアに対する信頼から生まれている。

 彼女の記憶力は人並外れている事を、彼女はよく知っていたのだ。

 そして、ノアがつまらない冗談を言うような性格では無い事も分かっている。

 

 だからこそ……生じたのだ。

 荒唐無稽な怪談が実際にあったかもしれない……そんな不安が。

 

 

 

 ユウカが部屋から退出するのを見届け、先生は仕事を再開した。

 生徒の頼まれ事は基本絶対に断らない彼だが、今日は不運にも仕事が溜まっている。

 このままでは主席行政官にお小言を貰ってしまうだろう。

 仕事を幾つか片付け、ユウカの依頼について考え出したのは夕暮れ時だった。

 

 

 

◻️ ◻️ ◻️

 

 

 

 ゲヘナ地区……その片隅にて。

 

 お金次第でどんな仕事も請け負うと噂の便利屋68。

 その社長、陸八魔アルは悩み悩んでいた。

 常日頃から付き纏う忌々しい問題……

 

 

 

 

 

 

 そう——金欠である。

 

 

 

 

 

 

 今週の依頼は奇跡的に最後までトラブルもなくこなす事が出来た。

 

 しかし、今回は依頼者側に問題があり……報酬金の事で揉めた。

 結果、いつものようにハルカが爆弾を使い……報酬金ごと依頼者は爆破した。

 

 と、彼女達についていつもよく知っているシャーレの先生なら「またか」と苦笑するだろう。

 お金に困っているなら、コンビニの廃棄予定の弁当をプレゼントするくらいは日常だったから。

 先生と最初に出会った時は敵対していたが、今では彼女達の良き理解者なのだ。

 

 しかし、今回は少しだけ事情が違う。

 それが何かと言うと……

 

「……社長。それは何?」

 

「拾ったのよ。なんかこう、高そうだったし!」

 

「アルちゃんったら、誰かの落とし物を売ってお金にしようとしてる〜?」

 

「べ、別にそこまでは考えてないわ!」

 

 アルは帰り際に気になる物を発見し、事務所(先日ようやくまた確保出来た)に持ち帰っていたのだ。

 それは……平たく言えば箱だ。

 一目で高級そうだと分かるような見た目の。

 開封はされていない状態だ。

 

「……うーん」

 

「どうしたの、カヨコ? 気になる事でもあるの?」

 

「パッと見だけど、箱の材質が私もよく知らない物だと思って……ごめん、気の所為かも」

 

「そうなの? じゃあ、大切に扱わないとね」

 

「……」

 

 少しだけウキウキしている社長を見て財布を届けて中身の一割をねだる子供を連想したカヨコだったが、口にはしなかった。

 まあ、以前札束の入ったカバンを拾った時も結局はあのラーメン屋に寄付したのだから……

 結局は彼女の望み通りに行く展開にはならないだろうと考えた。

 

「それにしても中身は何かな〜。ねぇねぇ、見てもいい?」

 

「うーん、流石に元の持ち主に対して失礼じゃないかしら……」

 

「バレなきゃ問題ないって!」

 

「だ、駄目よ! 一割貰えなくなっちゃうかもしれないわ!」

 

 ……そう言う問題だろうか?

 カヨコはいつも通りの社長達の様子を眺めながら溜め息を吐く。

 決して富んだ生活ではないが、彼女は程々に今の生活に満足していた。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 プルルルル。

 

 

「ん、電話だ。この番号は……先生?」

 

「あら、先生から?」

 

 やや不思議そうにアルは首を傾げた。

 今日は既に一度、先生からの電話は掛かっていたのだ。

 その時は今日の仕事はどうだった? と、聞いたくらいだったが……

 

「もしもし、先生?」

 

"カヨコ、元気? って、今日はもう二度目だね"

 

「うん。珍しいね、一日に何度も電話をかける事になるなんて」

 

"実は、頼みたい事があるんだ。結構危険な事かもしれないけど……"

 

 先生の話を聞いているカヨコを尻目に、ムツキはこっそりと落とし物の箱を開けようとする。

 アルは電話が気になって机の上に置いた箱の方を見ていなかった。

 ハルカも同様だ。

 

「くふふ、さぁて中身は……」

 

 誰にも気付かれず、ムツキは箱を縛っている紐をするりと解いた。

 この場でそれに気付いたのは電話中のカヨコだけだった。

 話し相手に聞こえないように溜め息を溢す。

 もう止めるのも馬鹿馬鹿しかったので、そのまま先生の話を聞く姿勢へと入った。

 

「頼み事って?」

 

"カヨコは噂に詳しい方?"

 

「いや、最近は事務所に引っ越したり仕事で忙しかったかな」

 

"じゃあ、説明した方がいいかな。実はこんな噂があるんだけど……"

 

 二人の電話越しの会話の背後で、ムツキの魔の手がついに主不明の落とし物へとかけられる。

 その段になって、アルとハルカはようやく彼女の行動に気が付いた。

 

「あ、ちょっとムツキ!?」

 

「あわわ……」

 

「くふふ、もう遅いよ〜っと」

 

 あっさりと箱の蓋は開かれた。

 中に入っていたのは……

 

 

"それで、鏡を見て実際に人が変わったって生徒が居るみたいなんだ"

 

「鏡、ねぇ……」

 

 カヨコはふと後ろへと目を逸らした。

 そこで目にしたのは……

 

 

 

「何コレ、鏡?」

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 カヨコは嫌な予感が背筋を走った。

 今先生の話に出て来た鏡と、今そこにある鏡。

 いや、鏡と言うには明らかにおかしい点があった。

 

 まず、単なる平面で構成されていない。

 荒削りの宝石のような表面でおよそ鏡として使えるようには思えない。

 しかし材質は鏡にしか見えない。

 持ち手は剣の柄にも似ていて、全体を俯瞰すると不恰好な剣にも見えなくはない。

 

 この奇妙な形をした鏡がもし、たった今話題に出た同じ物だとしたら……!

 

「鏡? それも、手鏡かしら?」

 

「駄目っ、社長!」

 

「え、何!?」

 

 普段は物静かなカヨコの大声にその場にいる三人は勿論、電話越しの先生も驚いた。

 

 しかし……その注意は、既に遅かったようだ。

 

「……あれ、鏡に映った私、何かおかしいよう……な?」

 

 突如として揺らぐ視界。

 バランスを取れなくなる足。

 迫る地面。

 空間に亀裂が走ったような不快な耳鳴りの音。

 

 身体に力が全く入らなかった。

 自分の身体では無くなってしまったかのように、言う事を聞いてくれない。

 最早、抵抗する事すら敵わず……アルは何も置かれていない床へ倒れ込んでしまった。

 

「アル様!?」

 

「アルちゃん!?」

 

「社長!」

 

 

 

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 

 

 

 真面目に過ごす日々が退屈だった。

 

 

 でも、私が望んだ刺激を欲するにはこの学園には混沌に満ちていたから。

 

 

 それが見過ごせなかったから、誰かが治めなければならないと思ったから。

 

 

 だから私は夢を手放したの。

 

 

 この選択が愚かだったのか、もう自分でもよく分からなくなっちゃったの……

 

 

 どうか教えて頂戴、先生。

 

 

 私の夢に、一体どれ程の価値があったのかしら……

 

 

 

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

「う、ん……私は何を……」

 

 いつの間にか倒れていた身体を起こす。

 寝起きな所為か頭がぼんやりして前後の記憶がよく思い出せない。

 何か、願い事をしていたような……そんな気がしたのだが。

 

 目に入ったのは、真新しい事務室と知っている顔が()()

 

「良かった、アル様……!」

「ごめんねアルちゃん、私の所為でこんな事に……」

「一安心だけど……色々と質問していい?」

 

 ……何故カヨコはこんなにも険しい顔をしているのかしら?

 アルは疑問を覚えたが、それを口に出せる空気ではなかった。

 

「まず、自分の名前は言える?」

「り、陸八魔アル……」

「私の名前は? 所属している部の名前は?」

 

 なんでそんな質問をするのだろうか。

 どうやらいきなり倒れちゃったみたいだけど、頭を打った訳じゃないのに。

 別に頭に痛みはないし、まるで記憶を失った人みたいに扱って。

 

「鬼方カヨコよ。私の頼もしい右腕」

 

「そ、そう……」

 

 カヨコは素直な褒め言葉に少したじろいだ。

 アルが使うには少し違和感のある褒め言葉だったからだ。

 何と言うか……普段よりも距離が近いような。

 

「(右腕って……ん?)」

 

 ふと、カヨコはアルの左腕に腕章が付いているのに気が付いた。

 それどころか……倒れる前とは服装が違う。

 普段着ている服以外に持っている服なんて数える程もない。

 だから、この服はアルが持っていない服だと分かった。

 

 だとすれば、この服は誰のものか。

 それについて考えだした時……カヨコの思考が止まった。

 一人だけ、心当たりがあったからだ。

 アルの左腕に付けられた腕章が、その考えを補強していた。

 

 絶対にあり得ない筈の人物が脳裏に思い浮かび。

 カヨコは更なる嫌な予感を感じ取ってしまった。

 

「えっと、所属している部活だったかしら。それは勿論——

 

 そう、頭の回る彼女だったからこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——ゲヘナ風紀委員よ」

 

 この回答が、予想出来てしまったのだ。

 





第一章、副題『夢をなくす』


ここの先生の性別に関しては公式のお達し通りご自由に想像ください
私は褪せ人よろしく性別可変の存在だと思っています(適当)

次回はカンリジャナリの主菜(※個人の感想です)のお話になります
正直最後に入れるのと迷ったんですが、多分皆読みたいんじゃないかなぁと思い……早めに投下してみます。

リンバスとブルアカのプレイ経験はありますか?

  • リンバスだけプレイしている
  • ブルアカだけプレイしている
  • 両方プレイしている
  • 両方プレイしたことがない
  • プロムンの過去作はプレイしたことがある
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