風紀委員やめてカフェでも開こうかな   作:臨海線上

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コーヒーの匂い

 

「...」

 

取り寄せたお高めのコーヒー豆をミルで挽き

それを自腹で買った物凄く高いコーヒーメーカーにセット

お湯を注ぎ、出て来たコーヒーをカップに注ぐ

 

「今日のは自信作..味はどうだろう」

 

OPENと書かれた看板が扉に掛かったカフェの中で一人呟く少女

今回のは自信作__カフェのマスターとして働くなら毎度自信作であれよとツッコミを入れたくなるが、そう呟くのも仕方がない

 

彼女がこのカフェを建てたのはつい最近の出来事

 

 

「....!いらっしゃいませ..って」

 

カランカラン..とドアベルが鳴り入って来たお客さんの方へと目を向けるとカフェを開く前に活動していた組織の上司がいつもと違う服装を着こなしてそこに立っていた。

 

「ヒナさん、珍しいですね」

「ええ、今日は久しぶりに休日を貰えて..お昼から先生とお出かけだから」

「いいですね、ヒナさんにはそういうのが必要ですから」

 

「好きな席に座って貰って、決まったら呼んでください」

「うん、ありがとう」

 

横長のカウンターテーブルに並ぶ椅子に腰かけて座るヒナ

モーニングと書かれたメニューブックを開いて目を動かし、一覧を見ていく

 

「注文いいかしら?」

「はーい、お伺いします」

「このモーニングセットのAをお願いしてもいいかしら?」

 

「大丈夫ですよ、モーニングAですね。少々お待ちを~」

 

小さな正方形に切り取られた白のメモ用紙に注文内容をメモしてさっそく提供するために調理を開始する。丁寧に食材を切り、トースターで食パンを焼いていけば段々と良い匂いが鼻の中に流れてきた

 

テキパキと準備をする彼女を見て、ヒナが話しかける

 

「..それにしても、貴方が辞めるって辞表を持ってきたときは驚いたわ」

「確かに皆さん驚いてましたけど、そんなにですか?」

「もしかしたら、私が何か気を使わせていたり気に障る事をしたんじゃないかって少し焦ったけれど..貴方の趣味って聞いて少しホッとした」

 

「それは無いので大丈夫ですよ。ヒナさんよく頑張ってますから、もっと自分に自信もってください。私も応援してますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミオさん!お疲れ様です!」

 

とても優しくて優秀な『夜朝(よあさ)ミオ』と呼ばれる風紀委員がいた。

上司からはよく動いてくれると評価され、同期や後輩からは尊敬されているような人だった。

 

性格も穏やかで、誰とでも丁寧かつフレンドリーに接していた

勿論、それはトリニティの生徒も例外ではない。犬猿の仲と言う言葉なんて関係なしに困っている人がいれば助けて、友達になれるのなら友達になる。

 

 

「やべぇ!副委員長(・・・・)が出っ張ってきやがった!!」

「に、逃げ..れねぇ..からもうやるしかねぇ!!全員撃ちまくれ!!」

 

 

ゲヘナの不良や問題児たちの間で一つの話が流れていた

風紀委員長と副委員長は相手にしたら逃げられない..なんて話が

 

それほどに彼女の実力は風紀委員長の次に..いや、ヒナと同じくらいに恐れられている。その辺の不良や問題児、並大抵の相手じゃ銃撃戦も肉弾戦もお手の物の彼女の強さでただ一方的に蹂躙されて牢屋送りにされるだけだった

 

因みに..副委員長と言う役職はゲヘナの風紀委員には存在しないが、その実力のせいで不良たちが勝手に勘違いして付けだしたのだという

 

 

仕事も他人の気遣いも出来て、尊敬されている

ゲヘナ学園の少ない良心を持ち、実力もあって人望も厚い。風紀委員に入ってたった一年で彼女は次期風紀委員長・第二の風紀委員長なんて呼ばれる程の実績を重ねていた

 

 

 

しかし、ある日

 

「た、退部届..?」

「はい。覚悟はできてますので」

「....理由を、聞いてもいいかしら..?」

「理由ですか」

 

「まあ、ちょっとした趣味が出来まして」

 

風紀委員をやめて、戦いから離れてカフェでも開こうかな__

彼女はそう言って空崎ヒナへ直々に退部届を提出し、風紀委員から帰宅部になった

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、ご注文のモーニングAセットです」

「それじゃ、ごゆっくり~」

 

「美味しそう..」

 

いつもの風紀委員の堅苦しい服装じゃない

ラフな普段着を着たヒナの前へと料理が運ばれてきた

 

レタス、焼かれたベーコンが二枚、そして黒コショウの振り掛けられた目玉焼きの乗った分厚めのトーストに焼き林檎、そしてカップに入ったコーヒー

 

「いただきます」

 

ヒナが食べる間に、カウンター越しの彼女は包丁やまな板をサッと洗う

次の支度をしながらちょくちょく目線をヒナの方へと向けて、美味しそうに食べているヒナの顔を見てホッとし、また視線を落とす

 

「このコーヒー、凄く美味しい..」

「ありがとうございます。今日のは自信作でしたので、そう言っていただけると嬉しい限りです」

「..そういえば、アコが貴方にコーヒーの淹れ方を教わってみたいとか言ってた気が..」

「あー..機会があればいつでもいいですよ」

 

「アコが淹れてくれたコーヒー..私は美味しいと思うのだけれど、周りのみんなは何処か反応が微妙な気がするのよね。貴方がコーヒーを淹れて皆に振舞った時と反応が違うと言えばいいのかしら..?」

「ま、まあ..全員が納得するものを提供する方が難しいですし、アコさんのコーヒーも私は好きですけどね」

 

そのまま他愛ない話をしながらヒナは食事を終えた

 

「今日はありがとう、また来てもいいかしら?」

「いつでも大歓迎ですよ、OPENしている間だったら好きな時に来てください」

 

「ふふっ、そうさせて貰うわ。ごちそうさまでした」

 

会計を終え可愛らしい小さなカバンを肩から下げたヒナは

カランカラン..とドアベルの音を鳴らして扉から外に出ていった

 

「ありがとうございました~」

 

 

元風紀委員、夜朝ミオが営むこじんまりとしたカフェ『雛菊』

今日もひっそりと営業中です

 

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