三笠宮家の再編は単なる親子の確執や財政の話ではない

 今回の分裂によって、最も注目すべき点は彬子さまが宮家の当主となり、また親王妃であった信子さまが新たに宮家を創設した点にある。

 現行法では問題ないとされるが、女性皇族が宮家を継ぐのは、実に162年ぶりのことであることから考えても、画期的かつ女性皇族の立場を大幅に見直す動きが出ている証左でもある。

 では、162年前の江戸末期、何があったのかというと、当時の仁孝天皇が世襲宮家の名門・桂宮家が当主不在に陥り、宮家廃絶の危機に陥った際、第三皇女の淑子内親王(孝明天皇や皇女和宮の姉)が、天皇の命によって便宜的に当主となった。

 おそらく緊急避難的な対応であり、いずれ他の宮家から養子を得るなどで、再興する考えだったのだろう。しかし、結局、淑子内親王はおひとりのまま亡くなり、桂宮家は断絶した。

 戦後の皇室では、妃が当主となった前例(秩父宮妃、高松宮妃、高円宮妃、三笠宮妃)はあるが、独身の女王が宮家の当主となるのは今回が初めてだ。

 側室制度がなくなり、男子の皇族が減る中で、女性が家を守るしかないという現実的な流れによって、制度の“想定外”が制度の壁を突き破ったとも言える今回の処遇。

「そもそも、宮家の定義自体が法律で明文化されていません。独立して生計を営む皇族として認められれば、男女を問わず、“いわゆる”宮家の当主になることは現行法のままで可能です。彬子女王殿下はその“実例”を国民に示されたわけです」(山下氏)

 つまり、今回の「継承」と「創設」は、皇室典範や皇室経済法を改正せずに女性皇族が世帯主となることを示し、これは将来、佳子さまや愛子さまにも同様の可能性が開かれたことを意味する。

秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月13日撮影、写真:ロイター/アフロ)
天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年6月5日撮影、写真:工藤直通/アフロ)

 しかし、彬子さまや瑶子さまが皇族以外の男性と結婚すれば、皇籍を抜けなければならず、お二人が結婚した時点で三笠宮家は廃絶となってしまうのだ。

三笠宮家の長女彬子さま(右)と次女瑶子さま(2025年9月6日撮影、写真:共同通信社)

 戦後の皇室制度は、男系維持を前提に設計されているため、現在30歳以下の男子皇族は悠仁さまお一人ということを考えれば、宮家の廃絶は時間の問題であり、制度の維持そのものが現実と乖離しつつある。

 今回の三笠宮家の再編は、単なる親子の確執や財政の話ではない。それは、「皇室とは何か」「家を継ぐとは何か」という根源的な問いを突きつける出来事でもあった。

 祭祀を継ぎ、家名を残す。二つの役割を担う宮家の存続は、ぎりぎりの判断で保たれたように見える。とはいえ結婚による皇籍離脱を防ぐには、制度改正のみで可能であることからも、速やかに手を打たなければ、皇室そのものの存亡に関わってくる。

 彬子さまの“宮家継承”は、女性皇族が皇室を守るもう一つの道を示した歴史的な一歩でもあり、女性宮家創設の嚆矢となるかもしれない。

皇室の構成(2025年1月31日時点/図:共同通信社)