神秘狩りの夜   作:猫又提督

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すみません。サボってました。


第25話

 教室に戻ってきた私達は何かが宝が埋まっているかもしれないビルの所在地を探すことになった。ビルの場所を探すヒントは、白い溶けた人間が現れるという謎の噂だけ。これでも何も情報が無いよりかはマシ、むしろ埋まっているだろう場所の情報まで手に入れたのだから上出来と言えるだろう。

 さてこの謎の人間だが、アビドスに住む彼女たちであれば知っているだろうと思っていた。しかし誰一人としてこの噂のことを知らなかった。

「なんでこんな心霊スポットみたいな場所にあるのよ」

「でもむしろこういう所の方がお宝ありそうな気がしません」

「ノノミちゃんは幽霊とか気にしないんだねぇ」

「まあいざとなればこれで……みたいな?」

 そう言ってノノミはガトリングを掲げて見せた。

「ん、脳筋」

「何か言いましたか?」

「何も」

「でも実際幽霊に銃弾なんか効くのかしら」

「効くだろう。殴れるのだから」

「え」

「何かおかしいことでも言ったか?」

「いや、殴れるんだったら幽霊の意味なくない? それ本当に幽霊?」

「半透明で、突然現れて、首を斬られているだとか首が無いだとか……そもそも生きているとは到底思えない姿……キヴォトスではこれは幽霊とは言えないか」

「いや……幽霊、かも」

「ともかく、カイザーが口にするほどです。ネット上であれば何かしらの情報があるはずです」

 そう言ってアヤネは板状のものを取り出した。スマホと似ているがスマホよりも大きい。彼女が弄ると表面に文字列が現れた。

「あ、すぐ出てきましたね。結構有名なんでしょうか?」

「でもそんな噂聞いたことも無かったけど」

「多分そういう界隈では有名ってだけで一般的にはあんまり知られていない」

「まあ誰も廃墟探索とか興味ないもんね」

 アヤネが文字列を押すと、一瞬それが消えまた新しく出て来た。今度は彩り豊かで、文字のほかにリアルすぎる絵もある。アヤネは板に指を置き滑らせた。すると文字たちも動く。確かセイアもスマホで似たような動きをさせていた。

「とある廃ビルの地下から這い出てくる化け物……こんな話がアビドスにあるとは思いませんでした」

「狩人さんが聞いた話ってこんな感じだった?」

「さてどうだろうな。私は日本語が読めないからここに何が書いてあるのか分からない」

「え、でも――」

「会話は問題ない。コミュニケーションは取れているだろう? まあそういうことだ。それに私はただ溶けた白い人間が出てくるとしか聞いていない。それ以上は何も聞けなかった」

「えっと……ではとりあえず写真があるみたいですし、それを見てみましょうか」

 文字が読めないことがそんなにおかしいのか、教室の中はぎこちない空気になった。自分が英国人だと言えば更にぎこちない感じになりそうだ。これは言うのをやめておこう。トリニティで学んだ。隠すのも方便だ。

 気まずい空気ながらアヤネは何とか話を進めた。写真というが、示されたのは真っ暗な写真だ。うっすらと輪郭が写っているがそれ以外に何も見えない。

「何も見えないが」

「そうですね。画面を明るくしてみましょう」

 アヤネが板を弄ると、暗かった写真は急に鮮明に写った。私は写された写真に息をのんだ。その写真はあまりにも鮮明で、まるで景色がそのまま閉じ込められたようであった。一方でホシノたちはこれが普通なのか、驚く様子は無かった。

「砂はあんまり積もってないね。これいつの写真?」

「えっと……このブログ自体は数か月前に記載されたみたいです」

「じゃあ写真もその近くぐらいですね。砂があまり積もってないですからそこまで遠くは無さそうです」

「でも近くに廃ビルなんてあったっけ?」

「なんかもうちょっと詳しい場所とか書いてないの?」

「そうですね……廃ビルは……古いオフィスビル街、にあるみたいです」

「オフィスビル街って……それだけじゃよく分からないわよ」

「でもそれぐらいしか書いてないみたいなんですよね」

「ん、所詮は個人ブログ」

「まあまあ、写真見てみようよ。もしかしたら特定のヒントとかあるかもだし」

 写真はビルの外観から始まった。暗いが先ほどよりははっきりと分かる。網のようなフェンスで囲われたその建物には等間隔に窓が空いているが、どの窓からも明かりは漏れていない。建物自体が冷酷に見えるので、全体的におどろおどろしいのだ。

 次に写真はビルの中に移る。撮影者はライトをつけながら写真を撮ったようだ。元々そこにあったのだろう内装が無造作に散らばっており、床は割れているのがよく見えた。その後も写真は内装を撮り続けた。天井から垂れる紐や、散乱する何かの破片。そんな惨状の部屋がいくつも続いているのだ。とある部屋に移った時、机に放置された何かの紙が写っていた。ホシノたちによればそれは新聞で、しかしその新聞が発行されたのは数十年も前らしい。すなわちこのビルが廃ビルになったのもそれに近しい時期だと。

 最後の写真は相変わらずビルの中だった。机や棚が大量に積み重なった不自然な壁だった。私はその写真を見て発掘拠点跡のバリケードを思い出した。

 写真にはそれぞれ簡単な説明があった。私はこの最後の写真に書かれた説明を読むように頼んだ。

「えっと『噂によれば件の化け物が出るのは地下室のようですが、見ての通り地下室に下りる階段はバリケードで塞がれているようです』だそうです」

「え、で、結局この人は地下室に下りてないわけ?」

「そうみたいですね。最後にカイザーが近々このビルを買い取る予定だという説明を書いて終わりです」

「何の役にも立ってない」

「いや、場所の特定に僅かながら貢献した。この者が行った場所が本物か偽物かはともかくだ。零と一は大きく違う」

「まあそうだね。でもいくら何でもこれだけじゃ分からないよ。砂があまり積もってないから砂漠化がそこまで進行してないっていうのは分かったけど、それでも範囲は広い。無謀な挑戦から多少現実的になったってだけだ」

「一応古いオフィスビル街というのも記されていたので、更に絞り込めそうですが」

「古いオフィスビル街なんて調べて出てくるのか分からない」

「私そんな場所一個も知らないんだけど」

「流石に古い場所は私にも分かりませんね」

「まあ、何もそのブログだけで特定しようとしなくてもいいからね。検索結果見た感じ他にも情報はありそうだったし」

「そうですね。他にも情報があれば特定が出来るでしょう」

「もしかしたら場所を書いているところもあるかもしれないし」

 私たちは噂の場所を手分けして探すことになった。それぞれがスマホを使って調べ始めたが私はスマホも持っていなければそもそも日本語も読めないので何もできなかった。五人が必死に調べている中私だけ何もしないというのも申し訳ないので、何か自分にもできないことが無いかと申し出たが……率直に言えば何もできないと言われた。納得は出来る。調べる手段が無くて文字も読めないんじゃ仕方ないだろう。仕方がないので五人が調べている様を肩越しに見させてもらうことにした。

 そういえばトリニティでも一緒のことをした。文字が読めないことなど今まで無視していたが不便だな。今更言語を勉強する気など全く無いが。

「あ、これ結構分かりやすいんじゃない?」

 セリカが見つけたのはさっきと同じようなブログらしいが、彼女曰くそう言った幽霊物を専門的に取り扱っているらしい。見てみればなんだか全体的に暗いし、文字は赤い。ちょっと読みにくい。

「噂について詳しく書いてるわ。このビルが廃墟になった後に裏社会組織の拠点になって、そこは怪しい実験をしてたんだって。で、いろんな人を攫っては地下室に閉じ込めてたんだって。そこで実験して出来た失敗作が例の化け物だって」

「裏社会の組織って?」

「さ、さあ?」

「実験てのは具体的になんでしょう?」

「分からないけど」

「裏社会の組織が地下でなんか怪しい実験ってなんか突飛すぎない?」

「いや私に言われても知らないわよ! 文句と質問ならこれ書いた人に言いなさいよ! 私だってこの話無理やりだなって思うわよ!」

「いや、別に突飛でも無理やりでもないと思うぞ」

 私がそう言うと五人は疑問の目で私を見た。セリカが代表して私に言った。

「何、これが本当にあったと思う訳?」

「その廃ビルであったかは知らないが、その話と同じようなことをした組織なら知ってるぞ」

「え、えぇ」

「まあ私が行った時には既に滅びていたが。いや、あれはビルゲンワースだから違うか。実験をしていたのはメンシス学派……だがビルゲンワースもしていたか。まあともかくその話には聞き覚えがある。むしろ似たような話をここで聞くとは驚きだ。偶然かはたまた――」

 誰も反応しないのでふと五人の方を見ると、心無しか引いているようだ。

「何か?」

「いや……なんか……すごいなって」

「ま、まあともかくそういうことならそのサイトを詳しく読んでみればいいんじゃないですか?」

「そうだね。読んでみよう」

 セリカのスマホだけでは全員が一緒に読むには小さい。それぞれのスマホで読みはじめた。私はアヤネの後ろから読ませてもらうことにした。読めないが。

 

「分かりました!」

 アヤネはサイトと地図をうんうん唸りながら見比べていたが突然声を上げた。突然のことだったのでセリカ達も一様に彼女を見た。アヤネはスマホを持つと何かの機械につなげた。すると壁に地図が大きく映ったのだ。どうやらアビドス全体の地図らしい。

「あのサイトを調べてみた所、ある程度の場所が絞れました」と言って、彼女は地図のとある場所を指す。「古いオフィスビル街、カイザーの土地の買い取り。そしてその一帯は完全にゴーストタウンと化しているという情報とその他諸々に加え写真から見える、あまり砂漠化の進行していない場所となると、恐らくこの範囲でしょう」

 彼女は地図の指したところを中心に丸を描いた。

「北ですね。確かにあの辺りはもう人がいなかったはずです。でもできればもう少し絞りたいですね。総当たりも可能ですけど時間がかかりそうです」

「あまり時間無さそうだものね」

「なんだ、何か時間が迫っているのか?」

「そりゃそうよ。だって……あれ、そういえばあのこと言ってないっけ」

 五人が顔を合わせる。やがてアヤネがハッとした顔をした。そして申し訳なさそうに私へ告げた。

「本当は今朝定例会議の時についでに伝えるつもりだったんですけど、襲撃ですっかり忘れてました。最初に伝えた百鬼夜行への臨時列車が実は明日運行されるんです」

「明日……三日しか経っていないではないか。流石に速すぎるのではないか?」

「まあハイランダーですから。あそこは特定の自治区を持っておらず、いわば線路が自治区なようなものです。列車の運行には絶対的な自信……というよりもプライドでしょうか。運行が止まればその分ハイランダーの信用も落ちてしまいますから、意地でも早く直すでしょうね。これぐらいなら特に驚くほどでもないと思います」

「ほう、よく分かった」

「なんかノノミ先輩詳しいわね」

「え、あ、いや、はは。まあちょっと詳しい話を聞く機会があったと言いますか――」

「あーそっか」

 はて私にはセリカが何を納得したのかさっぱりだ。いや、セリカだけじゃなくアヤネやシロコ、ホシノもそんな顔をしている。

「そういう訳で時間が無いんだよね。あの範囲でも十分絞れたと思うけどできればもうちょっと絞りたいね」

 ノノミの秘密を知りたかったのだが、聞く前に話を進められてしまった。しょうがないのでもう一方の質問を聞くことにした。

「その時間が無いことと臨時列車が出る事、何の関係があるんだ?」

「狩人と一緒に探索できなくなる」

「私と一緒にか?」

「当たり前でしょ。これも元は狩人さんの提案だし、言い出しっぺにはしっかりついて来てもらうから」

「仲間みたいに扱うものだな」

「仲間じゃない。一緒にヘルメット団撃退してくれたし一緒にお宝探ししてくれるじゃん」

「そうですよ。もう狩人さんは私たちの仲間です!」

「ん、一緒に宝を探してお金を稼ぐ。そしていずれは一緒に銀行強盗を――」

「それは止めようね」

「うふふ。こんなに盛り上がったのはいつぶりでしょうかね」

「そうか。仲間か……いいものだな。複数人で何かをするのも」

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