傍に立つ君は完璧で究極のアイドル   作:カミキヒカラナイ

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投稿が遅れて申し訳ございません。
有馬かなが重曹を舐めてお詫びいたします。



16.夢を語る星の舞台

「──この一ヶ月間、よく頑張りました。厳しいトレーニングを乗り越え、あなた達は目覚しい成長を遂げた」

 

 苺プロのトレーニングルーム。僕の前にはルビー、有馬(ありま)さん、MEM(メム)ちょさんの三人が直立不動の姿勢で立っている。

 

 本当に立派になった。一ヶ月前までは坂道ダッシュ三本で息切れを起こし、ダンスはバラバラで、歌も人前にお出しできるようなものではなかったというのに。

 今や片道二百メートル、高低差十メートルもある急斜面を百往復しても軽く息を弾ませる程度。ダンスも息ピッタリで、一糸乱れぬ見事なコンビネーションを見せてくれる。音痴もすっかり改善され、歌手レベルとは言わないがアイドル基準としては十分過ぎるほどのものに仕上がってくれた。

 

「今のあなた達はもうアイドルの卵ではありません。どこに出しても恥ずかしくない、立派なアイドルです。僕はあなた達を誇りに思います」

 

 アイも僕の隣でふわふわと漂いながらうんうんと頷いている。その表情はとても満足げだ。

 

「最後に聞かせて下さい。あなた達が、アイドルにかける夢を」

 

「誰かを勇気づけられるような、カッコよくてカワイくて素敵なアイドルになることですっ」

「アイドル業で名前を売って女優として返り咲くことです」

「若い時に叶えられなかった夢を叶えること! ……そう、これは若さへの逆襲!

 

「素晴らしい。若干二名下心が漏れ出ていますが、いずれにせよ素晴らしい。その夢に対するひたむきな姿勢こそがあなた達の魅力です。それぞれの夢の灯火を絶やすことなく、己の道を突き進むことをここに誓いなさい」

『はいっ!』

 

 

「今日限りを以て特別訓練を終了! 『新生B小町魔改造計画』の達成をここに宣言します!!

『やったねルビー! これでもうどんなストーカーにも負けないよ!』

 

 

「……今魔改造って言った?」

「魔改造以外の何ものでもないでしょ。オリンピックに出ても大抵の競技で金メダル総ナメできるわよ今の私達」

「アイドルって何だっけ……」

 

 今の彼女達ならばナイフの刃も臓器に届かせることなく腹筋で受け止められるだろう。仮に傷を負ったとしても、ちょっとやそっとの負傷ならあり余る生命力で容易に回復してのけるはずだ。

 

 とはいえ生命力とは無限にあるものではなく、生命活動を続けていれば寿命と共に目減りしていくものだ。僕がこの一ヶ月間で彼女らに譲渡した生命力はそう簡単に消費できる量ではないが、有限であることに違いはない。

 言うなれば僕が与えた生命力は外付けバッテリーのようなものだ。このエネルギーが失われるまで彼女ら本来の生命力は消費されず、その分寿命が引き伸ばされる。アイがそうしているように定期的に供給するのであれば話は別だが、そうしない場合は十年程度で元の状態に戻るのではないだろうか。

 

 まあ、十年も今のままの外見でいられるのならアイドルやる分には十分だろう。アイが「ルビーがアイドル引退するなんてヤダヤダ一生推していたい! いつまでも若くて可愛いままでいて〜!」とか我儘を言い出さない限りは追加で生命力を分け与える必要はあるまい。

 別に僕個人としては本人が望むのであればルビーを不老不死にすることに抵抗はない。しかしタレントとして世間に顔が売れている状態で老化しないというのはきっと生きづらいことだろう。やはり程々のところで歳をとっていくのが理想なのではないだろうか。

 

 僕? 呼吸する度に太陽面爆発規模で生命力が湧出してるような有様なので、とっくの昔に普通に年老いて死ぬことは諦めてます。多分自殺でもしない限り一生このままなのではなかろうか。

 

 まあ未来のことは未来に考えれば良かろう。差し当たって今考えるべきは、いよいよ明日に迫ったJIFのことである。

 

「さて、泣いても笑っても明日が本番。新生B小町の記念すべき初舞台です。故に今日は軽く流す程度のトレーニングに留め、明日に備えてゆっくり心と身体を休めるように」

『はい!』

 

 ここまで仕上がっていれば機材トラブルでもない限り失敗することなどないとは思うが、記念すべきファーストステージなのだからやはり万全の体制で臨ませてあげたいもの。今更直前ギリギリまで追い込まなければならないほど切羽詰まっているわけではないのだから、お昼過ぎには解散してゆっくり休むべきだろう。

 

『JIF経験者として言うけど、今のルビー達はメインステージに上がるような子達と比べても負けないぐらい仕上がってるよ! だからきっと大丈夫!』

 

 アイもこう言っていることだし、きっと大丈夫だ。

 僕もじきに芸能事務所に所属することになる身だ。こうして付きっきりで彼女達のコーチができるのはこれが最初で最後だろう。そう思って詰め込めるだけ詰め込んだわけだが、三人は見事にこれに応えてくれた。僕としても、ちょっと厳しかったかな、と思うところはあるが、こうして立派に成長してくれた姿を見るとやはりやって良かったと思える。

 

 やはり体力……! 体力は全てを解決する……! 元気があれば何でもできるって猪〇も言ってたしね。

 

「当日はいちファンとして観客席から見物させてもらいます。新生B小町のファーストステージ、楽しみにしていますね」

 

 アイと一緒に見守らせてもらうとしよう。

 新たに生まれ変わったB小町、その門出を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイドルを名乗るタレントの数が日本の芸能史上過去最多となった──そう言われた2010年以降においても、アイドルの数は増え続けてきた。今やアイドルグループは東京都内だけでも2000組以上存在すると言われており、アイドル業界は飽和状態を迎えつつある。

 

 アイドル戦国時代と呼ばれて久しい昨今、アイドル業界はまさに群雄割拠の様相を呈していた。マスメディアで常時取り上げられるような人気グループが存在する一方、量産型アイドルと呼ばれるような十把一絡げのグループが生まれては消えることを繰り返している。

 

 母数が増えればそこに格差が生じるのは必然である。大手がその豊富な資本に任せたマーケティングの暴力で次々と売れっ子アイドルをブレイクさせていく一方、そんな大手によって市場の端まで追いやられ、人気グループの影で細々と食い繋ぐような地下アイドルが雲霞(うんか)のように(ひし)めき合う。

 

 そんな現実を可視化したかのような光景が、新生B小町の眼前に広がっていた。

 

 ジャパンアイドルフェス……通称JIFの楽屋を訪れた三人は、楽屋とは名ばかりの多目的ホールに犇めく人の群れに圧倒されていた。

 考えてみれば当たり前の話で、全てのグループに個別の楽屋を提供するなど到底不可能である。何せJIFに参加するグループの数は200組を超えるのだ。一組あたりの人数はグループによってまちまちだろうが、少なくとも千人近い数のアイドルがこの舞台に詰め掛けていることは確かである。如何にJIFが日本最大規模のアイドルの祭典であるとはいえ、一度に収容できる人数には限界があった。

 

 その結果が目の前の光景である。これはJIFに限った話ではないが、この手の大人数規模のフェスの楽屋は全グループ共有というのが通例だ。出演者(アイドル)関係者(スタッフ)の別なく全ての人間が一つのホールに詰め込まれ荷物の置き場もない。あまりの人口密度にフル稼働している空調も追いついておらず、噎せ返るような熱気が充満していた。

 

「何ですかこの地獄みたいな光景……」

「これが私達に与えられた楽屋よ。びっくりした?」

「そりゃもう……」

 

 悪戯っぽく笑うミヤコに、引き攣ったような笑みで返すかなとMEMちょ。一方でルビーだけは興味が勝っているのか、うんざりとした顔を隠さない二人とは対照的に、キラキラと目を輝かせ(しき)りに周囲の様子を見回している。

 

「ステージ数が多いフェスだとこんなものよ。勿論、メインステージに呼ばれるような有名グループなら別室を用意してもらえるわ。でも地下アイドルやそこそこのアイドルの扱いはこんなもの……良い待遇を受けたかったら、売れないとね」

「それなら大丈夫! 私達ならすぐに個別の楽屋が貰えるような人気グループになれるよ! ね、シオンさん!」

 

 そんな威勢の良い言葉と共に、ルビーは同意を求めるようにスタッフとして同行しているシオンを見た。

 

「勿論。ルビーさん達ならそう遠くない内にかつてのB小町と同じステージに立てるよ」

「えへへ〜!」

 

 にっこりと微笑んで期待通りの返しをくれたシオンの言葉に、ルビーは喜色満面で笑み崩れる。

 まるで我が子を見守る慈母のような眼差しでニコニコとしているシオンの姿を、かなは不気味なものを見るような目で恐々と眺めていた。

 

「何アレ……コーチってあんなぽやぽやした雰囲気の人だっけ……? 私の知ってるシオンはもっとこう、オレ外道コーチ今後トモヨロシクって感じだったのに……」

「今までは敢えて厳しいコーチ役を演じてただけっぽいからねぇ。ていうか有馬ちゃんも『今ガチ』見てたんだからシオたんの素顔は知ってたんじゃないの?」

「見てたけど、あまりに鬼畜コーチぶりが堂に入りすぎてて、てっきりあっちの方が演技なのかと……」

「あ〜……」

 

 コーチとしての役目を終え、すっかりいつも通りの態度に戻ったシオン。その姿は今まで息をするように非人道的なトレーニングを強要してきた人物とはあまりに乖離しており、その落差に素のシオンと接したことのないかなは困惑を隠せなかった。

 

「何でもいいけど、飯食ったり準備したりするなら今の内にしとけよ。出番までまだ時間はあるが、ギリギリでやろうとするとバタついて大変だぞ」

「はーい」

 

 同様に関係者枠で同行していたアクアは勝手が分からず立ち尽くす三人を促す。楽屋ホールは広いが、腰を落ち着けられるような席数は限られている。早いところ席を確保しなければ本番前に気疲れしてしまうだろう。

 

「しっかし……目立ってるわねぇアンタら」

「そう?」

「そうか?」

 

 アクアに椅子を引かれて席に着いたかなは、無自覚に周囲の目を引き寄せている男二人にジト目を向ける。

 さもあらん。男性スタッフもそれなりにいるとはいえ、この場にいる人間の大半はアイドル……年頃の少女ばかりだ。そんな所にちょっとお目にかかれないレベルの美少年が二人もいれば注目を浴びるのは当然である。今こうしている間も、周囲のアイドル達は頬を赤らめてチラチラとアクアとシオンに視線を向けている。

 

「あ、あのっ! もしかしてシオンさんですか……?」

 

 すると、しばらく様子を伺っていたアイドルの一人が意を決したように近付き、恐る恐るそう問いかけた。

 急に声をかけられたシオンはきょとんとした顔で首を傾げる。どうして顔と名前を知られているのか全く自覚していない表情だった。

 

「え? えっと、はい。確かに僕は桐生シオンですけど……」

「きゃー! やっぱり!」

「本物だー!」

 

 途端、周囲にいた少女達は黄色い声を上げて色めき立った。

 彼女達は現役のアイドルであり、全員が十代から二十代の少女である。そしてシオンはティーン向けファッション雑誌で有名な読者モデルであり、若者をメインターゲットにした恋愛リアリティショー「今ガチ」で黒川あかね共々一躍有名になった新人タレントでもあった。

 

 そう、シオンについたファン層は丁度この場にいるような年代の少女がメインだった。読モ時代からのファンもいれば、「今ガチ」を通じて知った者もいる。比率的には後者の方が多いだろうが、いずれにせよ彼はここにいる少女達にとっての有名人だった。

 

「どうしてシオンさんがJIFに!?」

「まさかアイドルデビュー!?」

「やっぱりシオンさんって女の子だったんですか……!?」

「テレビで見るよりずっと顔が良い……これがカリスマ……!」

 

 途端に辺りが騒がしくなる。そのざわめきは周囲に伝播し、何事かと更に周囲のアイドル達の視線を集めた。

 まずいな、とシオンが思った時にはもう遅かった。彼の顔立ちはとにかく目立つ。持ち前の新人らしからぬオーラもあり、一度その存在に気付かれてしまえば後は早かった。ざわめきは燎原の火のように広がっていき、辺り一帯が騒然となる。

 

「……三人を見送ってから観客側に回るつもりだったけど、初めから別行動してた方が良かったかな?」

「……そうみたいだな」

 

 こんなところで注目を集めてしまうのはシオンにとって想定外のことだった。

 そしてこの場でシオンと同じぐらい目立っているアクアも同様に自分の世間からの評判というものに無頓着だった。「今ガチ」では最終的に引き立て役で終わったという点がその考えに拍車をかけていたが、実のところ序盤におけるシオンとの絡みによってアクアの顔はかなり世間に知られている。粒揃いだった「今ガチ」メンバーの中でもトップクラスのビジュアルは大いに世の少女達の関心を集め、“苺プロの星野アクア”は着実にその知名度を増しているのだった。

 

「仕方ないわね……アクア、ほとぼりが冷めるまで避難してなさい」

「分かった。……あー、申し訳ないが俺達は今日は仕事で来ているんでこれで失礼するよ。行くぞ、シオン」

「あ、うん」

 

 一ヶ月間ほぼ毎日のように苺プロにいたせいですっかり見慣れてしまっていたが、シオンが何の変装もせずその顔面を晒していればこうなるのは必然である。初舞台を控える三人のケアに掛かりきりでそのことを失念していたミヤコは、アクアにこの場を離れるよう指示を出す。

 目立ちまくるシオンの煽りを受けて注目を浴びてしまったアクアはその指示に一も二もなく頷いた。準備の邪魔をしてしまったことを周囲に詫びつつ、オロオロするばかりのシオンの手を引くと足早にその場を後にする。

 

「生で見るシオン様美しすぎ……」

「アクア君めっちゃカッコよくない!? 正統派イケメンって感じ!」

「待ってアクア君とシオン様が手繋いでる!」

「やっぱりアク×シオは実在したんだ!」

「アク×シオキテル……」

「アク×シオキテルネ……」

 

 一時は騒然とした楽屋だったが、騒動の原因が去ったことで徐々に落ち着きを見せ始める。ステージの準備で忙しくてそれどころではないという事情もあっただろうが、大事になる前に素早く姿を晦ませたのが功を奏す形となった。

 

「何しに来たのよアイツら……」

「来るだけ来て何もせず退散したねぇ」

「あれだけ目立ってちゃ仕方ないわよ。想定できなかった私のミスだわ。……さあホラ、さっきアクアが言ってた通り、出番直前はバタつくから今の内に諸々の準備を済ませておきなさい。あっちでお弁当配ってくれてるから」

「はーい! 私が取ってくるから先輩達は座っててね!」

 

 ステージが楽しみで仕方ないのか、ルビーは先ほどからずっとニコニコと満面の笑みを浮かべている。鼻歌でも歌い出しそうな様子で席を立ち、艶やかな金髪を揺らして小走りにお弁当を取りに向かった。

 動きに合わせて靡く髪は、まるで金糸を織りなすようにきらめきながらサラサラと揺れる。照明を受け黄金色に輝く髪が舞う度に、それは眩い光を放ち、周囲に華やかな輝きを齎しているかのようだった。

 

「ねぇ、あの子……」

「うわっ、かわいー。どこのグループの子だろ」

「髪キレー……」

 

 すれ違う度に思わず作業の手を止め、誰もが振り向きその横顔を目で追う。

 陽だまりのような金の髪、愛嬌に満ちた可憐な美貌、そして全身から放たれる喜色に溢れた華やかなオーラ。その全てが目を惹かれる魅力に満ちている。先程まではシオンがいたため目立っていなかったが、太陽と入れ替わるように空の主役へと躍り出る月の如く、静かに、だが煌びやかにその存在を周囲に知らしめていった。

 

「お待たせー! さあ食べよう!」

「ありがとう〜!」

「ありがとうルビー……あら美味しそう。無料だから安物かと思ってたけど、結構ちゃんとした物用意してくれてるのね」

「ねー、さすがJIF!」

 

 ルビーの姿を目で追っていた者達は、同席する二人を見て更に驚愕する。

 片や濡れ光るように艶やかな黒髪と宝石のような瞳が美しい少女。あどけなさを残す顔立ち、それと相反する凛とした表情からは内面の気高さが滲み出ているかのようだ。

 片や染めているだろうに枝毛の一つもない金髪を揺らす可憐な少女。愛嬌のある童顔の奥に成熟した女性の淑やかさを潜ませたような表情は不思議な魅力に満ちており、透き通る肌は白い花びらのように柔らかく瑞々しい。

 

 ルビーだけが飛び抜けて容姿端麗なわけではなかった。有馬かなとMEMちょ、その両名も他のグループであれば文句なしにエースを張れるようなビジュアルの持ち主である。

 そして目端の利く者は、彼女らがかつて一世を風靡した天才子役と、ずば抜けた容姿とトーク力で人気を博す有名ユーチューバーであることに気が付いた。

 

「MEMちょ……本物だ……!」

「後で一緒に写真撮ってもらえないかな……」

「ってことはあの三人がB小町?」

「例のコネ参加の子達?」

「いけ好かないって思ってたけど……あの容姿なら納得かな……」

 

 この楽屋ホールに押し込められたようなグループは、その大半がメジャーではない、俗にインディーズや地下アイドルと呼ばれるような小規模事務所によって運営されるアイドルグループである。大手の資本力によってある程度継続的な活動が担保されたメジャーアイドルと異なり、地下アイドルは弱肉強食と下克上の世界。より先鋭化された競争社会に生きる者達だ。

 自らの実力を以てのし上がる他ない彼女達にとって、このJIFという舞台は血の滲むような努力の末にようやく辿り着いた、まさに一世一代の大舞台である。そこへ急遽コネで割り込んできた、まだ碌に活動もしていないような新興グループの存在など面白いわけがない。

 

 しかし熾烈な弱肉強食の世界で戦ってきた彼女達だからこそ、真に強い者は芸歴やこなしたステージの数になど囚われないことを知っている。真に強き者、才能ある者は彼女らが血を吐くような思いでようよう踏破してきた道程など、一足飛びに乗り越えていくものなのだ。競争に敗れ落伍していった者達と同じだけ、そのような理不尽をこの場にいる彼女達は目の当たりにしてきた。

 

 そんな生き馬の目を抜くような地下アイドルの世界を今日まで生き延び、この大舞台に辿り着けた彼女達だからこそ見て分かる。あのB小町は“本物”であると。十把一絡げの木っ端とはオーラからしてものが違う。持って生まれた才能だけではあれ程の輝きを発することはできまい。

 パフォーマンスは見るまで分からないが、あのオーラは到底ステージ未経験の素人が身につけられるようなものではない。磨き上げられた容姿、香り立つような華のある挙措。ステージ上にあるわけではないにもかかわらず自然体のまま滲み出るそれは、骨の髄まで“アイドル”であることが刻み込まれている何よりの証左。積み重ねてきた鍛錬の密度がオーラとなって表れているかのようだ。

 

 上等である。今この瞬間、この場に集ったアイドル達はB小町を認め、その存在を歓迎した。かつての伝説の名を冠しているのは伊達ではないと。

 メジャーデビューが叶わず、それでもアイドルを諦め切れず今も地下アイドルという舞台で藻掻く彼女達だからこそ、眼前に現れたきらめくばかりの才能を前にしてもなお折れない。偶さか大手の目にとまっただけのメジャー組とは覚悟が違うのだ。

 新生B小町何するものぞ。生意気な新人に目に物見せてくれようと、アイドルたる彼女達は(きた)る己のステージに向けて闘志を燃やすのだった。

 

 それはそれとして、どんな化粧品を使っているのかは後で絶対に聞き出そうと固く心に誓った。

 

 

 

 

 そして他のグループからそのような闘志を向けられているなど知る由もないB小町の面々はというと──

 

 

「先輩どうしよう、めちゃくちゃ緊張してきたぁ……」

「どうしよう有馬ちゃん、さっきから手の震えが止まらないよぉ……」

「何でよさっきまで余裕そうだったじゃん!?」

 

 

 お弁当をペロリと平らげ、時間まで余裕綽々で雑談になど興じていたというのに、出番が近づいて「さあ出陣だ」とアイドル衣装に袖を通した途端にこれである。青い顔でガタガタと震え出したルビーとMEMちょに、かなは思わず全身全霊のツッコミを放ってしまう。

 

「二人共ついさっきまで楽しそうにニコニコしてたじゃない。特にルビー」

「本番が近づいてきたら段々……どーしよ〜……!」

「ほんっとしょうがないわねアンタ達は……」

 

 この場は既に舞台袖。見送ってくれたミヤコ社長にアクア、シオンはもういない。今この場で冷静なのはかなだけだった。

 

(ほんとーにこのぴよぴよ共は……あれだけ練習してこの調子じゃ、私がセンターから降りられるのは当分先ね……)

 

 かなとて全く緊張していないわけではない。大勢の人の前に立つことに対して今更動じることなどあり得ないが、アイドルとして舞台の上に立つのは全くの未経験だ。十七年の芸歴が全く通用しない未知の世界に飛び込むにあたり、流石のかなも緊張とは無縁ではいられない。それでもコイツらよりはよほどマシだが。

 

「コーチも口を酸っぱくして言ってたでしょ。『練習は本番のように、本番は練習のように』って。ありきたりだけど真理をついた言葉だわ。あの地獄の(しご)きで本番での動きは嫌ってほど身体に叩き込まれているんだから、後はその通りに動けばいいだけよ」

「でも〜……」

「デモもストもない! ほら深呼吸!」

 

 言われて律儀に深呼吸するルビーとMEMちょ。

 しかし、かなとて二人の気持ちは分からないでもなかった。ルビーにとっては十年来抱き続けてきた、MEMちょにとっては一度は諦めてしまった夢の集大成がこのステージ。JIFという大舞台である。

 二人は今まさにアイドルという夢への第一歩を踏み出す瀬戸際にいるのだ。この瞬間に至るまでの想いが強ければ強いほど、かかるプレッシャーは比類ないものになるだろう。かなとて銀幕デビューを目の前にしたら同様に緊張するだろうし、呆れつつも決して二人を馬鹿にするようなことはしなかった。

 

「ずっとアイドルとしてステージに立つことを夢見てきたんでしょ? せいぜい楽しみなさいな。ファーストステージをそんな真っ青な顔で終わらせたんじゃ後々後悔するわよ」

「うん……」

「それに、確かにJIFは最大級のアイドルイベントだけど、所詮は複数のグループが寄り集まって行う合同ライブ。いくつもの単独ライブを成功させてきた先代B小町の功績からすれば、こんな舞台は通過点よ通過点」

「JIFが通過点?」

「先代はドームでの単独ライブまで漕ぎ着けたんでしょ? なら、B小町を襲名した私達はそれを超えることを目指さなきゃ」

 

 その言葉にルビーはハッと息を呑む。

 そうだ。ルビーはずっとアイのようなアイドルになることを夢見てきた。そしていつかはアイの果たせなかった夢……ドームのステージに立つのだと。

 

 ならば、確かにかなが言う通りJIFなど通過点に過ぎない。ルビーは気合を入れるように手の平で己の両頬を叩くと、勢い良く顔を上げる。

 その瞳には、星の輝きが宿っていた。

 

「ありがとう、先輩! 行こう、MEMちょ! 記念すべきファーストステージ、やっぱり楽しまなきゃ損だよね!」

「ふえぇ、ルビーが立派だぁ〜! わ、私も気合い入れないと……!」

「ふん、ようやくその気になったかこのぴよぴよ共め。本当に世話が焼けるったら」

「よーし! 更に気合いを入れるために円陣を組もう! アイドルはステージ前には円陣を組むものって相場が決まってるからね!」

「おお!」

「やらないわよ。そういう熱血なの趣味じゃないから」

『え〜』

 

 すっかり顔色の良くなった三人は、笑顔を浮かべてステージに目を向ける。

 無論、全ての不安が払拭されたわけではない。今でも心臓の鼓動が鮮明に聞こえるほどの緊張を抱いている。死ぬほど練習してきた歌とダンスの振り付けが、いざ本番となると不安を募らせる。

 

 それでも、三人の顔に浮かぶのは笑顔だった。不安と同じだけの期待と興奮がある。舞台袖まで届くステージの照明を映す三対の瞳はキラキラと星のように輝いていた。

 

「B小町さん、お願いします!」

『──はい!』

 

 スタッフから登壇を促す合図が上がる。それに威勢の良い声を返した三人は、(かかと)を鳴らしてステージへの一歩を踏み出した。

 

 

 ──さあ、夢を見に行こう。夢を見せに行こう。

 ──これなるは夢を語る星の舞台。夢見る少女達を照らし出す、輝ける星の大海。

 

 

 まさしく、ステージ上から見える景色は星の輝きによって艷めく夜の海のようだった。押し寄せる人の海。揺れるサイリウムが波打ち際に煌めく夜光虫のように美しい。

 日は落ち、暗い海に一層輝くのは黄色のペンライト。それを彩るように赤と白の光が踊る。煌びやかなライトに包まれ、三人は一瞬、(まばゆ)い輝きに目を奪われた。

 

 目も眩むような煌びやかな空間の中で彼女達の心は静かな決意で満たされていた。ファンからの期待、家族の応援、そして自分と仲間への信頼。全てを胸に抱いて、三人は同時に力強くマイクを握りしめた。

 歌い上げるは「STAR☆T☆RAIN」──リズミカルなイントロと共に、星海を駆ける夜行列車が汽笛を鳴らす。

 

 夜空を焦がす舞台照明を背に、ステップを刻み歌声を響かせる。舞い踊る彼女達の瞳には煌めきが宿り、この光景を目に焼き付けんと目を見開かせる。

 アイドルのステージとはただ鍛え上げた歌と踊りを披露する場ではない。アイドルの本懐とはファンとの触れ合いにある。故にシオンは口を酸っぱくしてファンから目を逸らすなと言い含めてきたのだ。

 

 色とりどりのライトを反射し煌めく瞳を見開き、一瞬たりとも観客の視線を逃すまいという思いを込めた笑顔でファンを魅了する。一人一人と視線を合わせ、その反応を窺いながら適宜パフォーマンスに修正を加えていった。

 そう、アイドルのステージとはファンとの語らいの場なのだ。アイドルはそのパフォーマンスで以てファンに夢を見せ、ファンは応援と歓声で以てアイドルに愛を返す。そしてその愛を受けてアイドルはどこまでも輝きを増していく。

 

「うおおおッ、MEMちょおおお──ッ!!」

「マジかよ三人とも歌もダンスも上手すぎだろ! ホントに新人か!?」

「すげぇ、ただの襲名グループじゃなかったのかよ!」

「あの金髪の子ちょーカワイくない!?」

「センターの子のダンスエグいって! プロだろあれ!」

 

 ますます歓声が勢いを増していく中、三人は同時にそれを目にした。揺れ動く光の海の中で、やたら激しく暴れ回る三色のペンライトの輝きを。

 それこそはファンが推しのアイドルに捧げる愛情表現の究極。ただケミカルライトを振るだけでは足りないと、まるでダンスを舞うかのように激しくライトを振り回し、やがてそれは一つの芸術にまで昇華した。

 

 そのライト捌きを、人は「ヲタ芸」と呼んだ。

 そして片や真顔で、片や笑顔でヲタ芸を打つ見知った少年二人の姿に、ステージ上の三人は吹き出しそうになるのを堪えるのに必死になった。

 

『何やってんのあの二人は〜〜〜!?』

 

 そう全身全霊で突っ込みたい衝動を何とか抑え込み、三人は笑顔で舞い踊り続ける。

 馬鹿二人のお陰で未だ残っていた緊張による力みは良い塩梅に(ほぐ)れてくれた。それを狙ってのことなら大したものだが、恐らくは偶然だろう。

 もし思惑通りだとするなら業腹であるが、いずれにせよ三人のパフォーマンスは更にキレを増していった。歌声と踊りが一体となり、ステージは彼女達の情熱と才能で満たされていく。

 

 その瞬間、ステージの上で三人の心は一つになる。初めてファンのために歌とダンスを披露する緊張と喜び、自分の可能性を信じる確信。全てが渾然一体となり、新たに生まれ変わったB小町は、眩いばかりの輝きを放ちながら夢の舞台で舞い踊るのだった。

 

 

 奇しくもこの舞台の名は「スターステージ」。夢見る少女達の道行きを照らす祝福の星明かり。その名の通り星の如き熱量に満ち溢れたステージで、この日、人々は新たな超新星の誕生を目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるな、シオン。まさかお前がここまでキレのあるヲタ芸を打つとはな」

「アクア君も。そのライト捌き、一朝一夕のものじゃないね。流石は古参のB小町オタ」

「ふっ、それほどでもある」

『うおおおおお!! ルビーうおおおおお!! 世界一可愛いよおおおおお〜〜〜!!』

 

 場の空気にあてられている感は否めない。僕とアクアはペンライトを縦横無尽に振り回し、妙なハイテンションでヲタ芸を打っていた。そもそもどういう流れでヲタ芸をやることになったのかもよく覚えていない。

 ちなみにアイはさっきから涙と鼻水で顔面を凄いことにしながら奇声を上げ続けている。霊体のクセしてその体液はいったいどこから分泌しているのか甚だ疑問だが、まあ、深く考えるべきではないのだろう。

 

 何はともあれ、三人とも楽しそうに踊れているようで安心した。アイや僕基準ではまだまだ指摘できる部分はあれど、今日が初舞台の新人としては文句なしに百点満点のパフォーマンスだ。

 最初はインフルエンサーとしてファンを多く抱えるMEMちょさん目当てのファンが大半だったが、気が付けばルビーと有馬さんの色である赤と白のペンライトも増えてきていた。周りから聞こえてくる声も好意的なものばかりで、特に僕から見て二時方向にいるタオルを頭に巻いた男性など、先程からまるで夢を見るような表情で一心不乱に赤のペンライトを振り回している。

 

「……良かったね、アイ。ルビーは心から楽しそうにアイドルをやってるよ。流石はあなたの娘だ」

『ル゚ビ゚ー゚が゚楽゚し゚そ゚う゚で゚マ゚マ゚も゚嬉゚し゚い゚よ゚お゚お゚お゚お゚お゚〜〜〜!!』

「ごめん涙声が酷すぎて何言ってるか分かんない」

 

 まあ、ここまで喜んでくれたのなら無理を押してコーチ役なんてやった甲斐があったというものだ。僕としてもアイの愛娘であるルビーの初舞台は絶対に成功してほしかったので、取り敢えずは一安心といったところである。

 

「……くそっ、ルビーのやつ一丁前にアイドルのツラになりやがって……アイがそれでどうなったか忘れたのかよ……」

 

 ふと、歓声に交じってそんな声が聞こえてきたことに気が付いた。僕の聴覚は群衆の中にあっても一人一人の声を聞き分けられる。しかしそれを差し引いても、後悔と苦痛、そして憎悪を押し固めたかのようなその暗い独白はいやに耳に残った。

 何より、まるでアイやルビーのことをよく知っているかのような物言いが気にかかる。いったいどんな人物なのかと声の発生源を辿ってみると、そこにいたのはマスクとサングラスで完全武装し、控えめに赤のペンライトを振る圧倒的不審者の姿だった。

 

(いや、でもあの人はどこかで……)

 

 伸びるがままにされた、中途半端に染められたボサボサの金髪。細いフレームのサングラス。口元はマスクで覆われその表情は窺い知れないが、その姿に無視し難い強烈な既視感を感じた。

 

「……ねぇ、アイ」

『ずびびっ、なぁに?』

「あの人なんだけど、見覚えあったりする?」

 

 向こうはアイのことを知っている風だったし、もしかしたらアイも彼について何か知っているかもしれないと思い声をかけてみる。

 アイは僕の指差す先に目を凝らす。しばらく「うーん?」と訝しげに目を(すが)めていると……スン、と一瞬で感情が削げ落ちたかのような無表情になった。

 

『…………ねぇ、シオン。もうちょい近づいてもらっていい?』

「わかった」

 

 アイの声色はいつになく真剣だった。僕はヲタ芸を打ち続けるアクアの邪魔をしないようそっとその場を離れ、人混みを縫って件の人物の下まで歩み寄る。

 

「やっぱり血は争えないってことかよ……くそ、こんな気持ちになるんならB小町の名前に釣られて来るんじゃなかったぜ、こんなとこ……」

 

 なおもブツブツと独り言を呟く男の顔を間近で観察するアイ。生者から見えないことを利用し、彼女は真正面からサングラスの下の目をじぃっと覗き込んだ。

 

『………………夫人ほっぽって何してんのこのヒト』

「あ、アイ?」

 

 聞いたこともないような冷たい声を出すアイに、僕は思わず声を上げてしまう。

 すると、アイの名を呼んだ僕の声に反応した男が怪訝そうにこちらを向く。

 

 そして、男はサングラス越しでも分かるほどに限界まで目を見開かせた。

 

「あ──アイ!? そんな馬鹿な、なんでお前……ッ」

「え?」

「…………いや、違う……? アイ、じゃない……のか……? 他人の空似……?」

 

 まるで幽霊でも見たかのように顔を青褪めさせた男は、明らかに生前のアイをよく知っているかのような口ぶりだった。

 やはり僕の感じた既視感は間違っていなかった。目の前の男の人相はアイから聞いた“彼”の特徴と合致する。

 

『シオン』

「……はい」

『確保────ッ!!』

「り、了解!」

「へ? なん……おぶえ!?」

 

 素早く男の背後に回り、その首筋に手刀を落とす。うっかり叩き切ってしまわないよう慎重に力加減を調整し、一瞬で彼の意識を奪った。

 そして崩れ落ちる男の身体を抱え上げると、周囲に目撃される前にこの場から離脱する。ルビー達のステージを最後まで見れないのは残念だが、これもアイの意思だ。背に腹は代えられない。

 

 男の身柄を確保するまで、この間僅か0.3秒。恐らく一連の動作は誰の目にも映らなかったはずだ。

 

「……で、この人どうする?」

『昔よく実験で使ってた廃墟に行こう。あそこなら誰も近寄らないし』

「分かった。取り敢えず詳しい話はそこでしよう」

 

 空気を蹴って夜空を駆けながらアイと言葉を交わす。向かう先はアイや僕の能力の検証のために昔よく通った、廃墟となって久しい病院の跡地である。

 何があったのかは知らないが、アイがここまで怒るというのは相当だ。可哀想だが、多少強引にでも話を聞かせてもらうことになるだろう。

 

 

 ──“元”苺プロ社長、斉藤(さいとう)壱護(いちご)さん。

 

 




星野(ほしの)ルビー】
 B小町のCute担当。遂に念願叶ってアイドルデビューを果たす。認めよう、君の力を。今この瞬間から、君はアイドルだ──(ストラング並感)
 世界のバグによって魔改造を施された結果、母譲りの美貌に磨きがかかり更に手の付けられない完璧美少女になった。ジェネリックアイにして歩くガチ恋ファン製造機。

MEM(メム)ちょ】
 B小町のPassion担当。現時点における世間からの知名度ではグループ内トップ。自らの名声を餌にファンを誘き寄せ、物の見事にドルオタ沼に引きずり込む様はまさに食虫植物(ネペンテス)。おまんもドルオタ。

有馬(ありま)かな】
 B小町のCool担当にして全自動スチーム式加湿器。なんだろう、作者にその気がないのに勝手に湿るのやめてもらっていいですか?
 今話の投稿に二週間もかかったのは大体この子のせい。気付いたら6000字ぐらい使ってウジウジ悩んでる重曹ちゃんの様子を描写していて、「前話で一応は吹っ切れたはずだろお前ェ!」となり書き直す羽目になった。キャラが作者の手を離れるってこういうこと……?(多分違う)
 代わりに文字数の足しになったのがやたら闘争心が高くて三人が使ってる化粧品が気になって仕方がないモブアイドルの皆さんです。

【モブアイドルの皆さん】
 「あなた……『覚悟して来てる人』……ですよね」とか言っちゃうタイプの覚悟ガンギマリ地下アイドルの皆さん。これは決して普遍的な地下アイドルの姿ではないが、JIFに参加できるぐらいの子達が野心の一つも持たないなんてあり得ないよね、という理屈のもとこうなった。この後まなちゃんとは違ってB小町のステージを見て逆に燃え上がることになる。
 見て! B小町の三人が踊っているよ。かわいいね。
 三人があまりに輝くもんだから、モブアイドルの皆さんの闘争心に火が点いてしまいました。
 お前達のせいです。あ〜あ。

星野(ほしの)アクア】
 ヲタ芸のヤベー奴。こっちの世界線では重曹ちゃんが曇ってないので、ただ本当に衝動の赴くままヲタ芸を打った。アクアが楽しそうで何よりです。

桐生(きりゅう)紫音(シオン)
 後方腕組みコーチ面してヲタ芸を打っていたらとんでもない人物を発見してしまった。
 ちなみにヲタ芸はアクアの動きをその場でラーニングして踊っていた。超人的な動体視力により筋肉の動きを見極め、一秒先の動作を正確に予測。結果として後追いでありながらアクアの動きに並び立ち、一糸乱れぬ息の合ったヲタ芸が完成した。

 この後イケメン二人が完璧なヲタ芸を打つ動画がSNS上にアップされ、滅茶苦茶バズることになるのだがそれはまた別のお話。

星野(ほしの)アイ】

ミ ツ ケ タ


斉藤(さいとう)壱護(いちご)
 かつてアイをスカウトし彼女をアイドルの世界へと導いた苺プロの元社長……にして若妻(ミヤコ)をほったらかしてどこかに消えた人間のクズ。
 この世界線ではB小町の名前に釣られホイホイ娑婆(シャバ)に出てきてしまった。そこで聖徳太子の2000倍の聴力を持つバケモンの近くでうっかり独り言を漏らしてしまったがためにとびっきりにヤベー幽霊に捕捉されてしまう。
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