「退職代行モームリ」への家宅捜索 容疑となった「非弁行為」とは
本人に代わり退職意思を伝えるサービス「退職代行モームリ」の運営会社が、報酬を得る目的で法律事務を弁護士にあっせんした疑いがあるとして、警視庁が22日、弁護士法違反容疑で強制捜査に入った。あっせんを受けたとして、同社と提携する弁護士事務所も捜索を受けた。 【独自取材】「もちろん、法令は順守してやっていく」アルバトロスの谷本慎二代表が記者に語っていたこと 疑われているのは「非弁(ひべん)」と呼ばれる行為で、同社代表は家宅捜索前の3月、朝日新聞の取材に否定していた。 弁護士以外の人が、報酬目的で、(1)法的な争いを代理人として交渉したり、(2)第三者にあっせんしたりするのを非弁行為といい、弁護士法72条が禁じている。 ■東京弁護士会も注意喚起 退職代行サービスへの関心の高まりを受け、東京弁護士会は昨年11月、「退職代行サービスと弁護士法違反」とする注意喚起文を公表した。 この文書によると、例えば「これまで支払われていない残業代」や「パワハラの慰謝料」や「退職金」といった問題について、退職代行業者が本人に代わり、会社と話し合うと非弁行為になる可能性があるという。 なぜ非弁行為は禁止されているのか。 法律知識が不十分な者が間に入れば、本来の権利を主張できず、不利益が生じる恐れがある。 日本弁護士連合会は「業際・非弁・非弁提携問題等対策本部」で非弁行為の問題などに取り組む。副本部長の向原栄大朗弁護士は「外科手術で医師だけが人の体を切る行為を許されているように、法律事務もトラブルを誘発しやすい危険行為だ」と説明する。 今回、運営会社の家宅捜索容疑となったのは弁護士法72条のうち(2)の部分だ。警視庁は、弁護士でないのに運営会社側が、報酬を得る目的で、法律事務を弁護士にあっせんしていたとみている。 ■専門家「法と証拠に基づく判断、ゆがめる恐れ」 向原弁護士は「弁護士が、顧客の紹介を受けて対価を払う行為は許されない」と指摘。依頼者の要望に沿わずに、紹介者の言いなりになりかねないとして、「法と証拠に基づいた判断をゆがめる恐れがある」と話した。(根津弥)
朝日新聞社