「発掘!あるある大事典☆」捏造問題で、関西テレビの社外調査委員会が23日公表した報告書の要旨は次の通り。
【調査の目的と範囲】
今年1月7日放送の「納豆ダイエット」を中心に、過去の放送分にさかのぼって精査。捏造など不適切な制作があった番組例と問題点を記した。
【疑惑の調査結果】
納豆ダイエットの専門家コメントやデータの捏造は、制作会社アジトで以前から全社的に行われていた実験データの改ざんなど、不適切な番組制作の延長線上で引き起こされた。
原意を意図的に無視したボイスオーバー、実験データの改ざん、実験などの不適切な取り扱い、演出の行き過ぎなど、調査委が把握した納豆ダイエットの捏造を除く、不適切な放送回、不適切と考えられる放送回は次の通り。
アジト担当分9件(うち捏造3件、改ざん4件)▽有酸素運動の新常識(2005年10月16日放送)▽2005ダイエット総決算SP(同12月11日)▽衝撃!味噌汁でヤセる(06年2月19日)▽寒天で本当にヤセるのか(05年6月12日)▽毒抜きで体質改善(同8月7日)▽チョコレートで本当にヤセるのか(06年8月20日)▽みかんorリンゴ(同10月22日)▽夢診断でわかる!本当のあなた(05年4月17日)▽カロリーの新常識(06年4月30日)
アジト以外担当6件(「捏造」そのものと考えた放送回はない)▽冷え人間は太るし老ける(05年3月20日)▽ワサビで10才若返る(06年3月26日)▽低炭水化物ダイエット(05年1月9日)▽体脂肪を減らす救世主(同2月20日)▽ダイエット緊急企画(06年1月15日)▽足裏刺激でヤセる(同10月8日)
【原因と背景】
背景には「あるある」を取り巻く制作環境、日本放送界の構造上の問題がある。要因は(1)大阪局による東京制作現場でのハンドリングの難しさ(2)関西テレビ制作部門の評価のされ方(3)制作スタッフ育成(4)制作会社主導の番組立ち上げ(5)生活情報番組の特徴と内在するリスク(6)番組批判に対する過信(7)視聴率重視の制作態度(8)完全パッケージ方式の制作委託(9)再委託契約におけるピラミッド型の制作体制(10)制作費削減措置による影響(11)東京支社プロデューサーの過重な負担-などがある。
【関係者の責任】
責任はそれぞれの役割に応じ、番組の制作・放送の関係者と関係企業が負うべきだ。健康情報番組の不祥事が相次いでいたが、関西テレビの経営幹部には危機意識が薄く、再発防止の仕組みを構築するなどしなかった。不祥事発生の根本には、こうした背景的・構造的な要因がある。
【関西テレビの責任】
一連の放送は、放送倫理と放送法の精神にもとる行為。関西テレビ取締役と「あるある」制作担当者らの社会的責任は極めて大きい。放送責任は全面的に関西テレビが負うべきだが、事実に反するとの認識がなく、放送法の番組編集準則に違反したとまではいえない。
【再発防止策】
内部統制体制の強化・確立のため(1)取締役会議による番組制作ガイドライン制定・公表(2)社外取締役の選任、監査役の権限強化(3)倫理行動憲章の制定-などを実施。報道、番組制作のコンプライアンス確立のため(1)考査部門の増強(2)制作部門の増強(3)制作会社との公正な契約の締結(4)教育・研修の充実-を実施する。
【委員会の提言】
視聴者への説明責任の履行・情報開示のため検証番組を制作し、この報告書と改善策を開示。
視聴者との回路作りのため、苦情や意見を受け付け、制作者の良心を擁護する「放送活性化委員会(仮称)」を設置し、放送倫理と番組水準の向上を示す活動をする。
新たな番組制作による新生・関西テレビを表明するため、問題となった「科学」「健康」「暮らし」番組の在り方を検証するドキュメンタリー番組などを作成する。
不祥事の背景には、放送人としての職業意識、当事者意識の希薄さ・欠如がある。放送界全体の問題であることも否定できない。これを機に充実した放送文化を担う中核的放送人の育成の場を作り上げる責務がある。
(注)☆は、ローマ数字2