兄からめちゃめちゃよそよそしい連絡が来た。そこには「圭吾君、お疲れ様です！本日、誕生日で44歳になりました🎂そして昨日、新しく立ち上げた会社のクラファンをスタートしました。よろしければ、誕生日プレゼント代わりに、圭吾君のＳＮＳで『兄がこんなことをやってるよ〜』と紹介して頂けると嬉しいです😊お母さんからは、パチンコで勝った五千円を寄付してもらいました笑。どうぞよろしくお願いいたします🙇🏻」と書かれてあった。嘘臭い。何が圭吾君だ。何が『😊』だ。何が『笑』だ。私の誕生日には何もしなかった癖に、現金な兄だ。だが、私は現金な兄が好きだ。

我々の両親は中卒で、新潟で床屋をやっている。中卒の親は馬鹿だが、兄は「東大に行きたい」と思って、死ぬほど勉強して、東大に合格した。変な兄の変な影響を、弟の私はしっかりと受けた。東大に入学して両親を喜ばせた兄は、東大を卒業後変な会社を立ち上げて両親をガッカリさせた。講習会を開いても誰も来ない。参加者０人の会場に、兄はせっせと足を運んで動画を撮り続けた。隙間時間に牛丼屋で働き、残りの時間は諸々の勉強に充てた。兄の尊敬点は、一人で戦ったこと。理解者皆無の状況の中、兄は何も諦めなかった。兄には根性がある。坂爪家には、ど根性がある。

コミュ障の兄に友達はいない。実家には無数の爬虫類がいる。アフリカや南米の蛇や蛙やイグアナが蠢く実家は、兄の魔窟と化している。兄の唯一の友達は爬虫類で、兄の顔も段々爬虫類に似てきた。弟の私は哺乳類を愛したので、愛くるしい顔になった。爬虫類を愛した兄は見るも無惨なものになったが、私自身も、亀や蛙や蜥蜴は好きだ。土偶にも似たふてぶてしさが好きなのだが、兄もふてぶてしい。兄は生きる。壁を這ってでも生きる。生き延びようとする意思や態度を尊敬する。身近になにか凄いことを成し遂げた男がいると、後に続くもののハードルが下がる。俺もいけるんじゃないかと勘違いできる。勘違いできる要素が圧倒的に少なかった中、実行した兄を尊敬する。

社会課題解決のために兄は立ち上がった。だが、弟の私には「なにかのため」と言うものがない。私は「なにかのため」に動きたくない。道徳も教養も人格形成も要らない。誰にも理解されなくていい。誰にも応援されなくていい。忖度しない。迎合しない。大衆迎合じゃない。誰一人からも理解されなくて大いに結構。天下無敵の唯我独尊。男なら素戔嗚尊を感じるか感じないかだけが問題であり、女なら惚れるか惚れないかだけが問題である。ルパンと五右衛門と次元のように、涼やかで爽やかな気持ちのいい男たちでいたいだけだ。私は私の道を行く。同様に、兄も兄の道を行く。坂爪家のルールは「やりたければやればいい」である。私が兄を支持するのは、そうしたいと思ったから。それ以上でもそれ以下でもない。有り金を兄に渡した私は、天下無敵の無一文となった。あとはもう、運次第だ。運があれば、誰かが現れて生かされるだろう。運がなければ死ぬだけだ。

爬虫類を飼いまくっている兄に兄の本質を見る。兄は「いいことがしたい」のではないと思う。社会的な課題に興味があり、興味を持ったテーマに熱中している時間が好きなだけなのだと思う。なんでもいい。やりたければやればいい。私は好きなように生きる。だから、お前も好きなように生きろ。どうせ死ぬんだ。俺と一緒に死んでみないか。死ぬ前にデカい花火を打ち上げてみないか。真面目に生きるのも一つのスタイルなら、くだらないことに命を張ることも、立派なスタイルだ。宇宙エネルギーとの合体。これだよ。最近、顔面占いに加えて名前占いってやつをはじめたんだ。あなたの顔面と名前を見て、独断と偏見で行く末を占う。俺の占いを受けてみないか。金が要るんだ。あなたのために、命を捧げる。世のため。人のため。そしてもちろん、あなたのため。人々の幸福に寄与する。笑ってくれ。人生はギャグだ。

readyfor.jp

夜の世界で孤立している人たちに、AIの力で「明日の選択肢」を届ける - クラウドファンディング READYFOR

坂爪真吾／YOLUMINA（ヨルミナ）

医療・福祉

支援する

• ¥ 2,000,000
• 23 人
• 残り 58 日

達成率: 20%