「戦後80年」をどう演出するかは、対日戦争の「勝利」を統治の正統性の一つとする中国共産党政権にとり、大きな政治的意味を持つ。ただ、今年は同じく政治的に重要な対米関係の処理があり、「戦後70年」とは趣を異にしている。
簡潔で控えめだった習近平氏の演説
中国は9月3日に北京の天安門前で軍事パレードを行い、軍の最高指揮官でもある習近平国家主席が演説した。パレードでは米国に対抗する最新兵器とロシア、北朝鮮の首脳の参加が注目を集めたが、習氏の演説は簡潔で控えめだった。
確かに「今日、人類は再び平和か戦争か、対話か対抗か、ウィンウィンかゼロサムかの選択に直面している」という表現で対中圧力を強めるトランプ米政権を暗に批判し、「全軍の将兵は国家の主権と統一、領土の一体性を断固守る」というくだりは台湾への武力行使を辞さない姿勢を想起させはした。
だが、2021年7月の党創建100年の祝賀大会で、同じ場所に立った習氏が、中国を抑圧する「外部勢力」は「人民が血肉で築いた鋼鉄の長城に頭を割られて血を流す」と力を込めたのとは対照的だ。戦後70年の軍事パレードの演説では「日本の軍国主義侵略者を徹底的に打ち負かした」と誇ったが、今年は「軍国主義」の言葉もなかった。