21日の首相指名選挙で、自民党総裁の高市早苗氏(64)が日本では女性初の首相に選ばれた。
女性の社会進出を阻んできた「ガラスの天井」が破れたが、高市氏のこれまでの保守的な発言に、ジェンダー平等を訴えてきた人たちからは「彼女は女性全体の代弁者ではない。素直には喜べない」との声が漏れる。
「女性初の首相」への懸念とは何か。なぜ女性が首相の座を勝ち取ったのか。
「タカ派で、フェミニストではない女性。そこが自民支持層に受けた」と分析する、フェリス女学院大の諸橋泰樹名誉教授(69)=女性学=に聞いた。【聞き手・木村敦彦】
――高市氏が女性初の首相になったことで、ジェンダー平等が前進する期待はできますか。
◆期待はできません。現在の日本社会では、形式的にも男女の平等ができておらず、(世界各国の男女の格差を示す)ジェンダーギャップ指数は148カ国中118位です。
女性の総理大臣が誕生する意義が大きいのは確かですが、当然ながら女性ならば誰でもいいわけではない。やっぱり中身の問題、質の問題があります。
女性だから革新的な思想をもっているとかリベラルだとか、そんなことはまったくありません。
女性の総理は歓迎かと聞かれたら「イエス」と答えます。でも、高市さんだと保留の「バット(but)」がついてしまいます。
――いわゆる「ガラスの天井」を破ったという意義はありますか。
◆それはあると思います。女性のロールモデルの一つにもなるでしょう。
「女性の総理が生まれるのはいいことだ」と世間に意識形成されると思う。ジェンダーギャップ指数も少し上がるでしょう。
しかし、彼女は女性であることを時に押し出しながらも、あまりジェンダーに興味がないというか、アンチジェンダーという人に見えます。自分を女性のロールモデルとして位置づけてアピールするかは疑問です。
――逆に、ジェンダー政策が後退することへの懸念は。
◆もちろん…
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