伝説的ベーシストのアンソニー・ジャクソンが73歳で死去、矢野顕子や上原ひろみとも共演

アンソニー・ジャクソン、1998年撮影(Photo by Paul Bergen/Redferns)

アメリカの伝説的ベーシスト、アンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson)が10月19日、73歳で死去した。エレクトリックベースの可能性を拡張した革新的奏者であり、6弦ベース「コントラバス・ギター」の考案者としても知られる。

訃報は愛用楽器の製作元Fodera Guitars社および長年の共演者アル・ディ・メオラにより公表された。Fodera社は「最も先見的で影響力のあるベーシストの一人、彼のレガシーは、FoderaのDNAに刻み込まれています。あなたの貢献によって、ベースの世界は永遠に豊かになりました」、アル・ディ・メオラは「6弦コントラバス・ギターにおける彼の天才的な創造力は、現代音楽の形を根本から変えました。晩年のアンソニーを愛情深く支えてくださったダネット・アルベッタさんに、心から感謝申し上げます。あなたの献身が、彼の人生に確かな変化をもたらしました」とそれぞれ追悼している。

ジャクソンは1952年6月23日、米ニューヨーク生まれ。70年代にセッション・ベーシストとして頭角を現し、ビリー・ポールやオージェイズとの共演で一躍注目される。以降、数百枚ものアルバム、何千件ものセッションに参加。ロバータ・フラック、チャカ・カーン、リー・リトナー、スティーリー・ダン、チック・コリア、アル・ディ・メオラ、ミシェル・カミロらジャンルを超えた名アーティストと共演を重ねた。

また、彼が考案した6弦ベース「コントラバス・ギター」は、従来の4弦に低音B弦と高音C弦を加えることで表現力を飛躍的に拡張し、多弦ベース文化の礎を築いた。スラップなどの派手なプレイに頼らないグルーヴ重視の演奏スタイル、アンサンブルを支える姿勢は多くの共演者から称賛された。

日本との関係も深く、1977年には深町純や日野皓正のアルバムに参加し、その後も渡辺貞夫、渡辺香津美、今田勝など多数の日本人アーティストと共演。2000年代には矢野顕子のツアーに参加し、2010年代には上原ひろみとの「ザ・トリオ・プロジェクト」に参加。ドラマーのサイモン・フィリップスと共に超絶技巧を支える土台を務めた。

2017年以降は脳卒中とパーキンソン病で活動休止。同年に上原ひろみ、サイモン・フィリップスとのトリオで公演を行ったのを最後にステージを離れ、闘病の末この世を去った。


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ローリングストーン誌が選ぶ史上最高のギタリスト250人をカウントダウン形式で一挙紹介。あらゆるジャンルの名手をピックアップした壮観極まりないランキングをお届けする。

「ギターは単なる楽器ではない。私の身体の一部であり、私自身のアイデンティティを特徴づける存在」と、ジョーン・ジェットはかつて語っている。楽器の中でもギターは最も普遍的な存在であり、音楽の中心にあって豊かな表現を可能にしてくれる。手軽に手にできる楽器である一方で、一生かけてもギターの持つ可能性を追求することは難しい。だからこそ、偉大なギタリストと呼ぶ理由を探る作業は、とても興味深い。

ローリングストーン誌では、2011年に『歴史上最高のギタリスト100人』のランキングを公開している。当時のランキングは、主にベテラン・ロッカーを中心とするミュージシャンが選んだギタリストで構成されていた。今回は、ローリングストーン誌のエディターとライターが、250人のギタリストを選出している。

ギタープレイヤーは、バンドの中のリードシンガーと同等のアイコン的な扱いをされることが多い。ただし、ジミー・ペイジ、ブライアン・メイ、エディ・ヴァン・ヘイレンのような伝説的ギターゴッドは、ごく稀な存在だ。今回のランキングは、日々進化するギターの歴史を網羅する目的もある。例えばリスト中で最も古い存在は、著名なフォーク・ミュージシャンのエリザベス・コットンで、1893年に生まれている。逆に最も若いのは、インディー・ロックの天才リンジー・ジョーダンで、1999年生まれだ。最新ランキングは、ロック、ジャズ、レゲエ、カントリー、フォーク、ブルーズ、パンク、ヘヴィメタル、ディスコ、ファンク、ボサノヴァ、バチャータ、コンゴルンバ、フラメンコなど、実に幅広いジャンルを網羅している。リストには、パット・メセニー、イヴェット・ヤング、スティーヴ・ヴァイら天才ギタリストから、ジョニー・ラモーンやポイズン・アイヴィ(ザ・クランプス)といった伝統のスタイルを重んじるギタリストが並ぶ。また、プリンス、ジョニ・ミッチェル、ニール・ヤングといった大スターもいれば、メンフィス・ソウルのティーニー・ホッジズやスムーズ・ロックの名手ラリー・カールトンら各ジャンルを支える大御所もいる。

さらに、デュオとして才能を発揮したギタリストもいる。ブリーダーズのキム・ディールとケリー・ディール、アイアン・メイデンのエイドリアン・スミスとデイヴ・マーレイらが、それぞれリストに入っている。ランクインの候補者として選択される唯一の条件は、ギタリストであることだ(バラライカの演奏家は、今後ランクインする可能性があるかもしれない)。

ランキングを作成するにあたり、テイストよりもヘヴィさ、上品さよりもフィーリング、模倣より創造性、テクニックよりも冒険心やオリジナリティを重視した。また天賦の才能を、素晴らしいギタープレイで表現しただけでなく、名曲や革新的なアルバムという形で残したアーティストを中心にセレクトした。

モダン・ブルーズ界の期待の星ゲイリー・クラーク・ジュニアが言うように「少しなら道を外れてもいいが、森の中に迷い込みたくはない。とはいえ少しはフラフラと冒険してみるのが好き」というギタリストたちが揃った。

Translated by Smokva Tokyo

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