中国着ぐるみコスプレ最前線②:「仮面を付け仮面を外す」ケモノ着ぐるみ文化
本稿は、中国で急速に拡大する着ぐるみ文化の第二回目の分析です。
「顔を出さないことで本当の自分をさらけ出す」
そんな文化が中国の若者の間で広がっています
前回取り上げた「美少女着ぐるみ」に続き、今回は「ケモノ着ぐるみ」を手がかりに、北京で行われたイベントのレポートを通じて「顔を隠し交流する」中国若者世代の新しいコミュニケーションを紹介します。
本稿では原文の印象を損なわないよう、専門用語をできるだけそのまま使います。
毛毛:マオマオ、ケモノ着ぐるみの愛称
獣装:ケモノ着ぐるみ
獣圈:ケモノ着ぐるみ愛好者のコミュニティ、福瑞圈=フーリー圈(英語 furry の音訳)とも言う
獣展、獣聚:ケモノ系イベント
ケモノ着ぐるみの若者たちは顔を出さないコミュニケーションを享受する
顔を出さないパーティー
これは「できるだけ顔を出さない集まり」だ。参加者の多くは、ふわふわした獣の衣装の中に自分を隠している。まるで特別な鎧をまとうように。
北京市の五つ星ホテルで開催された第2回大型「獣展」は、7月末の猛暑に行われた。
会場にはハンディ扇風機を手にした「毛毛」たちがあちこちをうろついていた。冷房が十分に効いたホテルであっても、約10〜15kgもある着ぐるみを着込み、獣の頭をかぶった人々が汗だくになっている様子は想像に難くない。
それでも彼らはできる限り「キャラ設定」を保とうとする。獣の頭には、どれも共通してかすかに微笑んだ表情が浮かんでいる。
いや、正確にはほとんど表情がないのだが、着ぐるみの中の人が時おり見せる小さな仕草によって、まるでこちらに親しげに視線を向け、同時に周囲の反応を慎重に観察しているように感じられる。
この「獣展」はすでに完全に2000年代生まれ、いや2010年代生まれの若者たちの主戦場となっている。
会場で活発に動き回っているのは主に高校生たちで、大学生は少数派だ。40〜50歳前後の保護者に連れられてやってきた10後(2010年代生まれ)の「毛毛」たちの姿も多く見られた。
もともと「獣圈」は、海外から輸入された二次元系のマイナー文化にすぎなかった。2010年前後、アメリカや日本などで誕生し広まったとされる。
初期の「獣圈」は、海外ネット上でソフトエロティックな要素を帯びた文化として人気を集めていた。
「獣装」を身にまとうことで、着ぐるみの下の人間が身体のラインや魅力を極限まで演出できる、そんなフェティッシュ性を帯びた側面が強かったのだ。
しかし現在では、獣文化は若者たちの手によって次第に漂白され、より安全なコミュニケーションツールへと変化している。
若者たちはこうした体験に夢中になっている。獣装を身にまとい、擬人化された動物キャラクターに「変身」することで、顔を出さずとも安全な距離感の中で交流を楽しめるのだ。
2023年にパンデミックが終息し、オフライン活動が再開されて以降、「獣圈」は若者文化の中で急速に存在感を高めている。
オーストラリアに留学している獣装の制作者・君君(ジュンジュン)は、この界隈の古参だ。2014年にはすでにネットを通じてさまざまなスタイルのケモノ文化に触れていたという。
一般的に、「獣圈」のデザインは大きくアメリカ式・日本式・写実式の3種類に分けられる。
アメリカ式:がっしりとした骨格と力強い筆致、リアルな動物の頭骨比率に近く、筋肉の線が厚く勇ましい印象を与える
日本式:丸く短い頭部、柔らかく愛らしい内股立ちの姿勢、まるでデフォルメされた人間の赤ん坊のような顔立ちで、親しみやすさがある
写実式:最も稀なスタイルで、現実の動物を完全に再現するもの。高度な画力が求められ、制作も極めて難しい
00年代生まれの若者たちのあいだで特に人気なのは可愛らしい日本式スタイルであり、これは現在の中国国内における獣圈の主流でもある。
「この文化は、まるで一瞬で爆発的に広まったと感じました」とジュンジュンは語る。
彼女は2022年のクリスマスに一時帰国して漫展(アニメイベント)を訪れた際、会場には獣装を着た人が一人もいなかったという。
ところが、翌2023年4月に再び帰国したときには、同じ規模の漫展で5〜6人の獣装の参加者を見かけた。2023年はまさに「獣展爆発元年」と呼ぶにふさわしい年だった。
それ以前、国内で「大型展」と呼べるのは上海の「极兽聚」くらいで、中小規模の獣展が数回開催されて終わることがほとんどだった。
しかしここ2年ほどで、新たなイベントが次々と登場。「獣聚総合サイト」によると、2025年夏だけで7月に13件、8月に14件の獣聚が予定されており、そのうち13件はすべて新規の主催者による開催だという。
この「獣展ブーム」は南から北へと広がっている。広州・仏山・成都から始まり、上海・長沙、そして天津やハルビンなど東北地方にまで波及した。
北京では、2024年8月に主催者の尘香(チェンシャン)が獣展である「万萬吉(ワンワンジー)」の第一回イベントを成功させた。
これは本人にとっても予想外の大成功であり、子どもだけでなく親たちからの反響も非常に大きかった。
その後、2025年の千人規模の大型イベント開催に向けて、彼は各地のショッピングモールで100〜200人規模の小型獣聚を9回も追加で開催している。
他の地域では獣展の参加者は主に20〜30代の若者が中心だが、北京の獣展界隈はすっかり「親子で楽しむ交流イベント」のような場になっている。
「万萬吉(ワンワンジー)」の会場で、筆者は二人の親の会話を耳にした。
「楽しい?にぎやかでしょう?」
「娘を連れて友達を作らせに来たの。みんなで写真も撮れていいわよね」
会場で見かけた最年少の参加者はわずか4歳。
彼女の母親はもともとコスプレ界隈の人で、娘のために自分の手で小さな獣装を仕立てたという。
展示会を歩いていると、観客の間から小柄なキツネの着ぐるみがひょっこりと現れ、筆者の前に一枚の紙を差し出した。
それは「友達になってください」と書かれた北京市海淀区の学校の生物テスト用紙だった。彼女が自作した「友達カード」なのだ。
手にはまだ何十枚もの余分なプリントを持っており、筆者がQQを追加したあと、そのテスト用紙を返そうとすると、彼女は手を振って「返さなくていいよ」と合図し、風のように去っていった。
北京の保護者たちの目から見ると、獣圈は「安全で健全な若者同士の変身・交流イベント」のような存在になっている。
子どもたちは思い思いにランダムダンスのステージへ上がり、カメラマンの前でカッコ良かったり、可愛らしいポーズをとり、他の毛毛たちのパフォーマンスに拍手を送り、歓声を上げる。
主催者の尘香(チェンシャン)は語る。
「私たちは、いわば『獣装の投資家』である親たちの承認を得られたということです。なぜなら、子どもたちが獣装を買ってイベントに参加するには、必ず親の同意が必要だからです」
尘香にとって、これは北京で展示会を開催して最も成功した点だった。親の同意を得ることは、この文化における最大のハードル=資金問題を解決することを意味するからだ。
筆者注:
中国はお小遣い制でない家庭が多い。子どもが親に「学業に必要なもの」、「友人との交友に必要なもの」を要求し認められたら親が購入するパターンが多い。つまり獣装は子どもの交友ツールとして親に認められている。
彼は確信している。今後、獣装文化はさらに多くの新世代の子どもたちを惹きつけていくだろうと。
『贅沢品』のハードルはますます下がっている
おおよそ2023年頃まで、獣圈文化はずっと二次元のマイナーな領域をさまよっていた。理由は単純で、多くの人にとってそれは「金食い趣味」の代名詞だったからだ。
「お金がなければ、どうして獣圈なんて始められる?」というのが一般的な印象だった。
「獣圈の核心は自分自身を『擬人化動物キャラ』に投影すること。この文化は『反・工業化』、『反・商業化』なんです。つまり、一人ひとりが唯一無二で、ハンドメイドであることが大切なんです」とジュンジュンは語る。
こうしたオーダーメイドの性質が、結果的に参入コストを押し上げ、多くの潜在的なファンを遠ざけていたのだ。
Bilibiliの配信者である瑞狩(ルイショウ)は一連の「獣圈入門」解説動画を公開している。彼によると獣圈に入りたいなら、まず「自分だけのキャラクター設定」を持つ必要があるという。
「たとえば自分が作りたいキャラクターを言葉で想像し、どんな動物なのか、何色をしているのか、どんな模様があるのか。そうした設定をまとめて、イラストレーターに依頼し、正面・側面・背面などのデザイン稿を仕上げてもらうんです」
イラストレーターに依頼して「自分だけのオリジナル獣キャラ」を描いてもらう場合、費用はおおよそ1万円〜数万円に及ぶこともある。
イラストは獣キャラデザインの基礎であり、絵師の地位はこの界隈で非常に高い。ある「絵師界の大物」ともなると、まるで芸術家のように予約制・納期順の受注方式を取っており、たとえお金があっても順番待ちになることが多い。
もちろん、もう少し手軽な「近道」もある。絵師たちは時折、すでに完成したキャラクター設定をデザインして販売することがあり、購入者はその権利を買い取ることができる。
この方式では、買い手がそのキャラを「正式に引き取る」ことになり、絵師は二度と他人に同じキャラを販売できない。
こうした販売形式は、専門のスタジオが不定期に発表しており、ときにはオークション形式で競り落とす場合もある。価格は安いもので約4,000円ほどから、高額なものは値段がつけられないほど多様だという。
次に続くのが「獣装」の工程である。
すでに完成しているキャラクター設定を、実際に着られる「獣装」として立体化するプロセスを、獣圈では「バーチャルキャラの実体化」と呼ぶ。
もっとも、この「実体化」を行う人は必ずしも多くない。獣キャラデザインと比べると、そこまで必須というわけではない。
「獣装というのは、どちらかというと周辺的な贅沢品に近いんです。普段の場面ではほとんど使わない。サークルの集まりや写真・動画制作など、特別な目的があるとき以外は、持っていなくてもまったく問題ないですよ」と瑞狩(ルイショウ)は語る。
では「獣装を持っていなければ本物のファンとは言えないのか?」
これは長年、界隈内で論争が絶えないテーマだ。
2023年初頭、一部の極端なユーザーが「完全体の獣装を持ってこそ、この世界の入場資格を得られる。獣装がある者こそ上位の人間だ」と発言したことが波紋を呼んだ。
獣圈の「序列意識」は昔から存在する。かつて中国国内では獣装制作スタジオの成熟度が低く、ハンドメイドの価格は非常に高額だった。
トップクラスのスタジオでは1着3万元(約60万円)からの価格設定で、なかでも日本の老舗スタジオ「アトリエあまのじゃく(通称A家)」は1着200万円にも達することがあり、「A毛大佬(A家の毛毛を着る富豪)」と呼ばれステータスの象徴とされた。
財力による階級構造は、どの文化圏にも少なからず存在する。初期の獣展では、同じ価格帯の獣装を着た来場者を同じ階に配置したり、特別な控室を設けたりする主催者まで現れたが、当然激しい批判を受け、今では誰もそんなことをしなくなった。
現在では、個人の獣装職人や中小規模の工房が増え、価格は大幅に下がっている。
ジュンジュンはオーストラリア滞在中に3Dモデリングと素材調達を独学し、手作業で獣装を制作できるようになった。彼女の制作費はおよそ10万円程度まで抑えられるという。
さらに、すべての参加者が「全身フル装備」で登場するわけでもない。
胴体なしで「頭としっぽだけ」を作る半装タイプも多く、あるいは約2万円の「頭部だけの獣頭」から参入する人も少なくない。
ここ数年で獣スタイルがあらゆる領域に広まり、その結果、獣圈の古いルールも曖昧になってきた。つまり、この文化の参加ハードルが明らかに下がったのである。
いまや「獣圈」の定義そのものが拡大している。もはや「キャラクター設定」や「獣装」の制作だけに限らず、獣系キャラクターを登場させる二次元作品、たとえばアニメ『羅小黒戦記』や『有兽焉』、ゲーム『三相奇談』『動物迷城』などこうしたケモノ系IPや関連グッズ、イラスト、フィギュア作品までが、すべて獣圈文化の一部とみなされるようになっている。
最近では、単に「モフモフの擬人化動物キャラが好き」という一般のファンも、自らをケモノ好きと呼ぶことが増えている。
2000年代生まれの大学3年生、梵铭(ファンミン)は、オリジナルグッズブランドを主宰しており、自作のケモノキャラをモチーフにしたアクリルスタンド、缶バッジ、キーホルダー、スマホケース、ミニ色紙などを販売している。
「この界隈のトレンドは絶えず変化している」と彼は言う。彼の記憶では、2016年に中学生だった頃、Bilibiliで見かけたケモノ関連コンテンツは手書きMADが中心だった。
それから数年後、獣装がブーム化し、多くの毛毛によるダンス動画が登場。
そして今や、ケモノ文化は「IP化」=「コンテンツ事業化の方向」へと進み、オリジナルIPを企画・開発するスタジオも次々と生まれている。
このように、ケモノ文化は単なる趣味領域から、クリエイティブ産業の新しい枝葉へと進化しつつある。
2024年5月、梵铭(ファンミン)は初めて広東省・仏山で開催された「Hi Furry」獣展に出展者として参加し、自らのオリジナルグッズを販売したところ、売上は20万円を超えた。
この経験が、まだ在学中の彼にとって大きな自信となり「この新しい業界には将来性がある!」と確信を深めるきっかけになった。
多くの若者にとって、ケモノ文化は抗いがたい魅力を持っている。
「二本足で歩くふわふわの動物を、誰が拒めるだろう?」
瑞狩(ルイショウ)は冗談まじりにこう語る
みんな経済は下り坂だって言うけど、なぜか俺たちのこの小さなコミュニティでは、どのグッズもどんどん値上がりしてるんだよ。まるで世の中の流れに逆行してるみたいだ(笑)
仮面をつけて、仮面を外す
瑞狩(ルイショウ)は遅れてこの世界に入ったタイプの人間だ。90年代生まれで、現在は武漢で市場調査データアナリストとして働いており、すでに12年の社会人経験を持つ。
2019年、彼はBilibiliでたまたまケモノダンス動画を見かけ「自分もキャラ設定を依頼して、獣装を作り、動画を投稿してみたい」と思い立った。
彼のオリジナルキャラクターは、ゲーム『モンスターハンター』に登場するアイルーを原型に、武漢在住のイラストレーターにデザインを依頼して完成させたものだ。
現実の彼の趣味はゲームと二次元文化。職場では同僚たちがサッカーや車の話ばかりしていて、会話に入りづらく、彼はいつも仕事が終わるとひとりで帰宅し、ゲームをして過ごす日々を送っていた。
だからこそ、最初に獣圈に興味を持ったのは「同じ趣味の仲間とつながりたい」という素朴な願いからだったという。
入る前は正直、不安もあった。
「この年で、こんな可愛い世界に入るのは場違いなんじゃないか。若い人たちにどう思われるだろう」
でも、いざ飛び込んでみれば、そんな心配はまったくの杞憂だったと彼は笑う。獣圈は、強い「社交性」と「帰属意識」を持つ世界だ。
自分だけのキャラクター設定を創り上げた瞬間、その人はもうこの世界の一員になる。多くの人がこのコミュニティに入る理由は、ただ仲間を作りたいからだ。
瑞狩(ルイショウ)はこう語る
この世界は他の趣味コミュニティとは違うんです。たとえば「写真サークル」なら技術を語り合ったり、機材を交換したりする。「ゲームコミュニティ」なら攻略や二次創作、キャラ考察が中心ですよね。
でも獣圈は違う。ここでは「交流することそのもの」が目的なんです。みんなが共有しているのは、ケモノ的な美意識そのものなんですよ。
キャラクターを作るとき、人々はそこに自分の理想の姿や最も美しい部分を投影する。
瑞狩は続ける
この世界の仲間たちは、「もうひとつの世界の自分」を想像するのが好きなんです。
その「自分」は、かっこよくて、かわいくて、勇敢で、異世界で冒険し、物語を生きている。そうした「もうひとつの自分」になりきる感覚が、たまらないんです。
コミュニティでは、こんな言葉がよく使われる。
「一見、仮面をかぶっているようで、実は仮面を外している」
獣装を身につけた瞬間、その「着ぐるみの中の人間」はまったく別の自分を見せ始める。それはむしろ、より「本当の自分」かもしれない。
瑞狩(ルイショウ)はこう語る
マスクをかぶると、不思議な安心感があるんです。誰にも自分の表情を見られない。だからどんなポーズをしても「きっとみんな自分を好きになってくれる」って思える
獣圈のチャットグループは常に活気に満ちている。大きなイベントが終わったあとはいつも「未読99+」の通知が並び、他の小規模な集まりやサークルでも、同じように会話が途切れない。
グループ内では、みんな思い思いにおしゃべりしている。ゴシップ、勉強や仕事の悩み、同級生やルームメイトとの衝突、上司や先生への愚痴、恋愛や浮気の話…
「着ぐるみの中の人」の正体はさまざまだ。学生、会社員、あるいは名門大学の修士・博士課程の人間であることもある。
だが、一度この「着ぐるみ」をまとえば、現実世界の自分とは一時的に切り離される。そうすると、みんなが前よりも素直に話せるようになるのだ。
獣圈は誰もが安心して悩みや愚痴を共有できる、そんな「合理的な吐露の場」をつくり出している。
梵銘(ファンミン)は言う
キャラ設定というのは、一種の着ぐるみなんです。それを通して別の自分、あるいは「なりたい自分」を演じることができる。
他の二次元コミュニティと同じように、この世界にも時々騒動は起きる。
たとえば、どのイベントが開催日を奪い合ったとか、一緒に踊る動画を投稿しようと約束したのに一方が反故にして別チームで出したとか…
だが、結局のところそれらはすべて、現実の人間同士の関係で起こり得る衝突にすぎない。
そして多くの人がこの獣圈に入るのは、まさにその「人とつながる」体験を求めてのことなのだ。特に2010年代生まれの子どもたちの間では、その傾向がいっそう顕著である。
贰仟(アールチエン)は15歳の少女で、イベント主催者の尘香(チェンシャン)の姪にあたる。彼女はこれまでにさまざまなタイプの獣装を購入しており、どんなイベントでも欠かさず参加する常連でもある。
万萬吉(ワンワンジー)の開催準備中、尘香は多くの保護者たちと話をした。
彼らは口を揃えてこう言う。
「この獣圈のおかげで、うちの子どもが自分の殻から出て、外に出て人と関わるようになったんです」
彼らの中には獣装を購入したことで対人恐怖症を克服したという人もいた。こうした子どもたちは、カメラの前で本当の自分を見せることを極端に嫌う。
尘香は言う。
彼らには「表現したいという強い欲求」があるんです。
でも、その「表現」とは、自分が美しいと思うものだけを外側に出し、本当の自分はその内側に隠すという形なんです
そのため、尘香はイベントの中で「段階的に『着ぐるみの中』から外へ出るためのプログラム」をいくつも用意した。
4日間にわたる獣展の中で、初日の終了後にはアニメ映画『羅小黒戦記2』の貸切上映を企画。さらに全参加者を招待してカラオケ貸切パーティーを行い、翌日には全員で水鉄砲大会を開くという趣向もあった。
これらの活動は多くが「獣装を脱いで参加する」ことを前提にしていた。
尘香は言う
こうやって少しずつ「コミュニケーションの楽しさ」を見つけていくんです。そしてイベントの最も理想的な結果は、翌日には「自分自身の本質と価値」を見いだせるようになること。「自分には何もない」と感じるのではなくね
筆者がすべての取材対象者に「今後も獣圈は人気を保つと思いますか?」と尋ねると、全員がためらいなく「もちろん」と答えた。
その中でも最も熱心だったのは、若い創作者の梵銘(ファンミン)だった。
この世界を見る人、獣装を買う人はこれからどんどん増える。だって「心理的負担なく、自分を演じられる場」なんて、拒む理由がある人のほうが少ないでしょ?
以上が、ケモノ着ぐるみ文化を通して見た中国の現在でした。
このような中国の「着ぐるみ」観がなぜ生まれたのか、このブームで何が新しく生まれようとしているのか、次回も着ぐるみ文化を掘り下げたいと思います。
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