世界的な不況であっても「一人も解雇するな、1円も給料を下げるな」という信念を貫き、「経営の神様」と称された松下幸之助氏。彼の精神を引き継ぐパナソニックが、構造改革の名の下に、1万人の人員削減をする方針を発表した。
近年は業績が悪化していなくとも人員削減をする「黒字リストラ」が当たり前になりつつある。余力のあるうちに手を打とうというわけだが、その目論見が成功するかどうかは残された社員たちにかかっている。しかし、彼らは「会社のために頑張ろう」という前向きな気持ちでいるのだろうか。
●リストラ“されなかった”社員に目を向けると……調査が示すもの
企業の人員削減と聞くと「辞めていく人たちへの対応」に注目が集まりがちだが、実は会社に残った社員の心にも目を向ける必要がある。1980〜1990年代の米国では「ダウンサイジング」の名の下で大規模なレイオフ(一時的または恒久的な解雇)を行う企業が急増した。製造業からサービス業への産業構造の転換、グローバル競争の激化といった環境変化に対応すべく、IBMやゼネラルモーターズ、P&Gといった大企業が相次いで大量解雇を行い、社会に衝撃を与えた。
こうした状況の中で「レイオフ・サバイバー」(会社に残った社員)についての学術的な調査が行われるようになる。調査では、解雇を免れた社員が経験する心理的な問題や、それが組織全体に与える影響が浮き彫りになった。例えば、会社に残る個人が受ける影響としては、以下のようなものが挙げられる。