We are…Lethal Protector !! 作:ヌルノルヌール
今回から原作シーズン1へ入って行こうと思います〜
早くプロキシ先生達とも絡ませたいからねぇ
#9 JUST ANOTHER DAY
画面の中で、スタジオの熱が高まっていた
赤い“緊急特番”の帯が何度も流れ、BGMはやたらと不穏で仰々しい効果音と共に、ホロウが崩壊するスローモーション映像がループされる
その映像の中に必ず映り込むのは一体の黒く巨大な異形の姿――「
ワイドショーらしい偏った編集、過剰なテロップ、過激な意見のぶつけ合い、今やヴェノムの存在は、この街の世論を真っ二つに割っていた
『いい加減、ハッキリさせるべきです!!“黒衣の怪物”の処遇についてを!!』
中年男性のコメンテーターが、椅子から立ち上がって机を叩く
少し小太りな体を揺らしながら、額に汗を浮かべ、声を張り上げた
彼の後ろには、ヴェノムの不気味な静止画がいくつも貼りつけられている
『やつは許可なくホロウを出入りし、暴力行為を日常的に行い、挙句の果てには治安官の職務を妨害している!!あんな得体のしれない生物は即刻、駆除すべきです!!』
フロア全体がざわつき、観客の反応を求めるかのようにカメラはわざとらしく頷く人々の顔を抜いていく
だが、それに冷静に反論したのは向かいに座る女性司会者だった
『しかし、彼のおかげで多くの人が救われたのもまた事実です』
毅然とした声色で語る彼女の前には、スクリーンが展開される
“強力エーテリアス撃退”、“治安官狩り事件の解決”、“交通事故現場から子どもを救出”…
そこには、ヴェノムが人々を救う数々の実績と、実際の映像が映し出されていた
『解決が困難であった“治安官狩り”や“大規模ホロウに巻き込まれた多くの人々の救助”も、彼の力がなければ不可能だったはずです』
だが、男は食い下がらない
『それもまた、あの化け物の作戦のうちであったら? 油断させておいて着々と準備を進めているのかもしれませんぞ!!』
唾を飛ばしながら、彼はさらに声を張る
『この新エリー都中を同じ化け物だらけにする可能性だってある!!皆さん、騙されては行けませんぞ!!』
朝から繰り広げられる過熱した討論
だが、そんな世論を揺るがす議論の渦中である“黒衣の怪物”はというと
「ふふん、ふん、ふふふん♪ アチッ、アチチ!!」
エドワードの体から顔と触手を出して、キッチンでなぜか上機嫌に料理をしていたのだった
ガスコンロの火の前では、黒い粘体のような触手が何本も同時に動いている
鍋を混ぜ、フライパンを回し、泡立て器を振り、皿を積み、シロップの瓶まで持ち上げる
いや、それだけにとどまらず、冷蔵庫から浮遊する牛乳パック、空中で飛び交う卵、投擲のような勢いで飛ぶベーコン
室内は、もはや料理というより一種のアトラクションのようだった
部屋中を縦横無尽に駆け巡る調味料と調理器具、そして飛び散る粉と煙の匂い
あまりの異様な光景に、レインは思わず目を丸くしながらエドワードに話しかけた
「うわっ、ちょっとエディ……大丈夫なの? 勝手に厨房でその……錬金みたいなのしてるけど」
エドワードはソファの背にもたれて、テーブルの前に座っている
心なしかどこか死んだような目をしながら書類に目を通していた
「残念ながら錬金じゃなくて料理なんだよ。毎朝俺が作るから、代わりに作ってくれるんだってさ。気持ちは嬉しいんだけどな、気持ちは」
「粉煙の中から瓶が飛んできてるんだけど…?」
レインもテーブルの反対側に腰を下ろし、遠巻きに様子を見つめていた
ふたりとも、どちらかと言えば料理そのものよりも、部屋の状態のほうを心配しているようだった
「オレはなんでも出来るからな!」
粉煙のなかからヴェノムが顔を出し、エドワードの体から伸びる触手をまるで腕のように振るい、誇らしげに両手(?)を広げた
「料理の腕も天下一品! サイコーのパンケーキを作ってみせるぞ!」
「……あれ、パンケーキ作ってたんだ」
ふたりの視線が、フライパンの上で跳ねる生地へと集まる
一瞬しか見えなかったがなんだかすごく黒かったように見え二人は思わず身震いをした
「にしても、大人気だね。お二人さん」
「最近目立つ行動をしすぎたって反省中…とというかなんで普通にお前が俺ん家いんだよ、レイン」
「君たちのおかげで資金は潤ったし、
レインは頬杖をつきながら、少しだけ悪戯っぽく笑った
「やっぱここがいちばん安全だしね。なんたって、噂の“黒衣の怪物”様がいるんだもん」
「お前なぁ……」
エドワードが頭を抱えるのと同時にキッチンから勢いよく2本の触手が皿を持って粉煙突き抜けてきた
「ジャジャーン!! できたぞ!! パンケーキ!!」
ヴェノムの声が響き、テーブルの上にふた皿が置かれた
エドワードの方にはチョコたっぷり、レインの方にはきらきらと光る蜂蜜がかかったパンケーキが載っている
「エディのはチョコたっぷり、レインのにはハチミツだ!」
ヴェノムの声には、どこか誇らしげな響きがあった
だが、ふたりは一瞬だけ固まった
出てきたパンケーキは……おぞましい異形でも、ねばねばした粘体でもなく……普通だった
「……めちゃくちゃ普通のパンケーキ出てきたんだけど」
「レイン、料理じゃなくて、やっぱ錬金だったわ」
「言っただろう?オレの腕は天下一品!」
ふたりは、呆れと感心が入り混じったような複雑な表情で、目の前のパンケーキをじっと見つめていた
しばしの沈黙ののち、ふたりは視線を交わし、そろりとフォークに手を伸ばしてパクッと口へ運んだ
「……美味し! この前食べに行ったのと同じくらい美味しい!」
レインが素直に感想をもらすと、エドワードも戸惑いを隠せない顔で続ける
「こういうのってさ、見た目は良くても味が残念みたいなパターンじゃないのか……?」
「なんだ? 文句あるなら食うな」
むっとしたようにヴェノムが返し、エドワードが苦笑いしながらフォローを入れると、ヴェノムはどこか誇らしげに笑っていた
「いや、悪かった。すげー美味しいよ、ありがとう」
「ハハハ!分かればよろしい。ソレ食ったらホロウに行くぞ!!」
「……その前にさ、部屋の片付けしてくんない?」
部屋の中は、料理を作る過程で飛び交った食材や調味料の名残で、床や壁が小さな戦場のような有様だった
「ホロウに入るなら、最近どのホロウにも治安局がよく出入りしてるから気をつけてね」
レインがパンケーキを味わいながら、気軽に忠告を挟む
「市政選挙の近いブリンガーさんが『我々が黒衣の怪物を退治してみせます!』って息巻いてるから」
「げっ、面倒なことになってんなぁ…」
エドワードが額に手を当てながら呟く
「さっきオレ達が目立ってると言ってたがそんな派手なことをした覚えはないぞ?」
首を傾げるヴェノムに、エドワードは呆れを通り越して諦めの顔を見せ、最近の出来事を指折り数えながら話して行く
「赤牙組が子供さらってるって聞いて、カンバス通りで大暴れしてあいつらの拠点ひとつ潰したのがまず一つ」
「あったなそんなこと。でもアレは猫が良いところを全部持って行っただろう?悪いのは猫だ」
「…水路で鉢合わせたクソ強いネズミのシリオンの姉ちゃんとドンパチして暴れたので二つ」
「オレ達を見た途端に蹴りを入れてきたあの女が悪い。しかし、ヤツはそれなりの強さだった。探し出してまた戦うのも悪くない…!」
「………喫茶店で暴れてたサメメイドと黒服たちの抗争に巻き込まれて店倒壊……ああ、思い出したら胃が痛くなってきた……」
「店が壊れたのは黒服の手榴弾のせいだろう、オレ達もサメメイドも悪くない。治安局の連中による印象操作がほとんどだ!オレ達被害者、もう少ししたら訴えてやろう」
「1000%負ける裁判なんかしたくねーよ、全く」
エドワードは苦笑いしながらパンケーキを頬張り、2人の言い合っている様子を見てレインが笑う
「ははは……ん? もうこんな時間か。じゃ、私いってくるね」
レインは残りのパンケーキを全部口に頬張り、机の上にあった茶色の封筒を持って玄関へと走っていく
「なんだ、どこか行くのか? パンケーキおかわりあるぞ?」
「もぐっんぐっ…帰ってきてから食べるよ。依頼の内容と資料渡しに行くだけで、そんなに時間かかんないし」
「なんで帰ってくる前提なんだよ……あ、ほらこれ!」
エドワードはポケットから何かを取り出し、レインの手に握らせた。
「……鍵?」
「俺たちがパトロール行ってたら入れないだろ? だからスペア渡しとく。そのまま持ててもいーぞ」
「……ふふ、ありがと。じゃあ、いってくるね」
くるりと背を向けて出ていくレインの背中を見ながら、ヴェノムがぼそりと呟く。
「素直じゃないな、オマエは。いつでも来いくらい言ってやったらどうだ?」
「うっせーよ。ほら手伝ってやるから……って」
ニヤニヤからかうヴェノムを睨みつけてエドワードは立ち上がり、散らかった部屋の片付けの手を貸そうとする――が、すでに部屋は驚くほど綺麗に片付いていた。
「もう綺麗になってる…だと…?」
「オレはマルチタスクが得意だ。話しながらだって作業できる」
ヴェノムの声には、どこか誇らしげな響きがあった。
「準備はいいな? エディ!」
「……ああ、いいぞ」
エドワードが立ち上がり、カーテンをさっと開ける。
窓の外から差し込む朝日とともに、ひんやりとした風が部屋に吹き込むと同時にドロリと黒い液体が彼の足元から湧き上がり、勢いよく全身を包み込んでいく
服を飲み込み、肌を覆い、彼の体が「
「おはよう、新エリー都!!」
ヴェノムの声が、空に向かって高らかに響いた。
「今日も今日とて、悪党退治と行こうか!!」
バッと大きく両腕を広げると、彼の体はビルの窓枠を蹴って宙へと跳躍した
真っ青な空。雲ひとつない朝の街に、黒い巨体が弧を描いて飛び出していく
「お、おいアレって……!」
「カメラ! カメラ回せ!!はやく!!」
道行く人々が驚きの声を上げ、カメラを構える手が次々と空を仰ぐがそんなことも気にかけず、壁から壁へ、屋上から屋上へと次々に跳躍を繰り返し、ヴェノムはその異様な体をしならせて、スピードを緩めることなく疾走する
そして、そのまま——“ホロウ”へと飛び込んでいった
猫又、エレン、ジェーンとは顔見知りになってます。隙を見てそこの話も書いていこうかなぁ
あのすごい戦闘シーンも頑張って表現できるようになりたいなぁとおもいながらのんびり書いてきます
レインは鍵閉めててもハッキングやらピッキングやらを駆使して勝手に入ってきてます