10歳が“客待ち”していた——ラオスで広がる児童買春の闇、日本人も関与 現地潜入ルポが見た貧困の連鎖
「ニューヤング」——それは“もっと幼い子を”という合図だった。
ラオスの首都ビエンチャンにある一軒のホテル。家族連れが宿泊するその敷地の奥で、10歳前後の少女たちが“客待ち”をしていた。
フリージャーナリストの泰梨沙子(はた・りさこ)氏が潜入取材で見たのは、貧困と搾取が渦巻く東南アジアの現実、そしてその現場に姿を見せる日本人の影だった。8bitNewsで始まった新番組「DEEP Mekong ー泰梨沙子の東南アジア解説ー」で詳報した。
■「普通のホテル」と「売春宿」が一体化した空間
泰氏が取材協力者とともに宿泊したその施設は、外見こそ一般的なホテルだが、奥に進むと様相が一変する。
「最初は15歳前後の少女がいる部屋に通されました。誰も選ばないでいると“ニューヤング”と言われ、さらに奥へ案内されたんです」
そこにいたのは、10歳前後と見られる少女たち。体つきや表情にはあどけなさが残り、明らかに“子ども”だった。
「村から売られてきたばかりの子もいました」と泰氏は語る。
現地の支援団体によると、こうした児童買春の主な客層は中国人や韓国人だが、日本人の存在も目立つようになっているという。
実際、泰氏が取材した日は「1日で5人以上の日本人を確認した」と話す。
SNSでやり取りされる“現地ガイド情報”が、日本人旅行者を特定の売春スポットへと誘導している実態もある。
■貧困が生み出す「供給」——借金、少数民族、教育の欠如
ラオスで売春に従事する少女たちの多くは、親の借金の肩代わりとして売られている。
「飲食店で働ける」と言われて連れて来られた子が、気づけば客を取らされていたというケースも少なくない。
貧困の背景には、ラオス国内で社会的に周縁化されてきた少数民族の存在がある。彼女たちはラオス語を十分に話せず、読み書きもままならない。教育を受ける機会を失い、都市での就労が難しい。その結果、「お金になる唯一の手段」として性産業へ追い込まれる構造が続いている。
■子どもを保護し、学校へ——現地で闘う日本人女性
そんな現場で奮闘する日本人もいる。
ルアンパバーンでゲストハウスを運営する国谷梨恵子さんは、コロナ禍でゴミを漁る子どもたちを見かね、保護を始めた。
今では寝床や食事を提供し、通学の支援も行う。
「最初は鉛筆の持ち方も知らない子がほとんどでした。でも、学校に通い始めてから“将来はいい仕事に就いて恩返ししたい”と話す子も出てきたんです」
子どもたちは最初、「10分待って」と言われても信じられず、すぐに食べ物を探しに走ってしまった。しかし半年後には、30分待てるようになった。
「“約束を守る大人がいる”と知ることが、子どもたちの心を取り戻す第一歩でした」と国谷さんは語る。
■善意が搾取を助長することも——観光客への警鐘
路上で物売りをする子どもに同情し、つい現金を渡してしまう——。
だが国谷さんは「それは逆効果です」と警鐘を鳴らす。
「子どもが売れば余分にお金をもらえると親が学習し、さらに子どもを働かせる。もらったお金はドラッグや酒に消えるだけです」
もし支援したいなら、正当な価格で商品を買うか、その場で食べ物を渡すこと。“優しさ”が搾取の構造に組み込まれないよう、観光客にも知識と覚悟が求められる。
■「この仕事には未来がない」——17歳少女の告白
泰氏は9月、ラオスの都市部で働く17歳の少女にも話を聞いた。
「家が貧しく、自分で働こうと決めた」と語る少女は、月4〜5万円を稼ぎ、その半分を実家に仕送りしている。しかし、その表情には緊張と疲弊がにじんでいた。
「病気が怖い。警察も怖い。でも、やめられない。……この仕事には未来がない」
取材の最後、少女はそうつぶやいた。
ラオスでは売春そのものが違法で、18歳未満の摘発も強化されているが、貧困が“選択”を追い込む現実は変わらない。
■「需要がある限り、供給は止まらない」
「児童買春は“需要”によって成り立っています。買う側がいる限り、貧困は子どもを商品に変えてしまう」。
泰氏はそう語る。
欧米では国外での児童買春に対して域外処罰制度が整い、アメリカではラオスで児童を性的に搾取した教師に懲役12年が言い渡された。
一方で、日本の法制度と捜査体制はまだ追いついていない。
泰氏は「日本も“加害の側”としての自覚を持ち、制度を整えるべき」と訴える。
■沈黙を破る女性記者として
泰氏が現場取材を続ける理由を尋ねると、迷いのない言葉が返ってきた。
「大手メディアが報じないからです。報じても一度きりで終わってしまう。でも、問題は続いている」
記者や特派員の多くが男性で占められるなか、女性ジャーナリストとして“女性の視点で伝える”意義を感じているという。
「恐怖もありますが、声を上げなければ、誰もこの現実を知らないままです」。