撮り鉄が無断で民家の敷地に
115系は旧国鉄時代に製造された電車。しなの鉄道ではJR東日本から譲り受け、クリーム色と青色の「横須賀色」や、緑にオレンジの「湘南色」など6編成を走らせている。同社では、多くの人に115系に親しんでもらおうと10年以上にわたり、列車の運行日・時間・運行経路を示した「運行予定表」を公式サイトで毎月公表してきた。だが、8月上旬、重大なマナー違反が勃発。撮り鉄が走行中の115系を撮影しようと、民家の敷地に無断で侵入した上、庭先の木を切ったのだ。
「社内で協議し、残念ながら運行予定表の公表を終えることにしました」(しなの鉄道)
撮り鉄の心理は、「いい写真を撮りたい」に尽きる。しかし、写真への情熱は時に、マナー違反や迷惑行為に繋がる。
関東地方のあるローカル線の関係者は、「マナーを守らない撮り鉄はお客様ではありませんよ」と憤る。線路内に入った撮り鉄に注意すると、「あんたは警察か」と逆ギレされたという。
鉄道を愛するものとしての気品を
迷惑行為をする撮り鉄は、一部に過ぎない。しかしなぜ、ここまでマナーが崩壊したのか。
全国の鉄道を取材するフォトライターの矢野直美さんは、「撮影以外のことがないがしろにされていると感じます」と話す。
「いい写真を撮りたいという思いは、誰もが持っています。しかし、本当に鉄道を愛しているのであれば、運行の邪魔をしたり、周囲に迷惑をかけたりする行動はしないはずです。撮影さえできればいいとルールやマナーを破りがちになっているのではないでしょうか」
矢野さんは、鉄道写真は「紳士淑女の趣味」だと言う。ホームに三脚や脚立を立てない、線路内や個人の私有地に立ち入らない、運転士に向けてストロボをたかない――。鉄道を愛する者としての気品を持ち、互いに敬意を払いながら、こうしたルールやマナーを守って撮影するものだと。
「それは、自分の命を守るためでもあります。そして、迷惑行為が増えると規制は厳しくなり、撮影環境はますます悪化します。鉄道があるから写真を撮れるのであって、写真を撮るために鉄道は存在するわけではありません。そのことを忘れずに、鉄道写真を楽しんでほしいと思います」
この呼びかけが、鉄道を愛する全ての人に届いてほしい。
(AERA編集部・野村昌二)
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