<1>1998年毎日王冠 勝ち馬:サイレンススズカ 「どこまで行っても逃げてやる」

ありがたくて光栄なのですが、今考えると力みすぎですよね(笑い)。あの時の自分に言ってやりたいことはありますが、当時としては精いっぱいやったつもりです。「どこまで行っても逃げてやる」というフレーズは多分、準備していなかったと思います。どんなレースになるか分からない面もありましたから。G2なのに13万人が入ったレースで、あの時の空気は忘れられません。

1998年毎日王冠 1番人気に応え逃げ切り勝ちを決めた武豊とサイレンススズカ
1998年毎日王冠 1番人気に応え逃げ切り勝ちを決めた武豊とサイレンススズカ

<2>2008年天皇賞・秋 勝ち馬:ウオッカ 「大接戦ドゴォーン」

よくしゃべってたなって感じです。のどがカラッカラになって、なんでしゃべれていたのか分かりません。ウマ娘方面では「ドゴォーン」と言われているゴールになっているみたいですね。ゲームをやらないのでどんな遊ばれ方をしているのか分からないのですが。そうやって取り上げて頂いてうれしいですよ。無我夢中であり、必死であり、いっぱいいっぱいでした。私の原体験はテスコガビーのオークスと、カブラヤオーのダービーで、逃げ馬が好きでした。でも実は、差し返す馬も好きというのが心の片隅にあったので、ダイワスカーレットも(実況中に)追うことができました。一瞬一瞬で流れが変わり、実況で発する言葉の正解か不正解かが0・01秒で変わる世界。あれはその究極でしたね。あの時の私はどうだったのでしょうかね。んー、答えになってないですね。

2008年天皇賞(秋) 逃げたダイワスカーレット(右上)を直線追い込んだウオッカがハナ差で抑え制した
2008年天皇賞(秋) 逃げたダイワスカーレット(右上)を直線追い込んだウオッカがハナ差で抑え制した

<3>2025年安田記念 勝ち馬:ジャンタルマンタル 在職中最後のG1実況

「BS-」担当になって以降、日曜の現場実況は限定的になりました。近年は、年間の最初のG1フェブラリーSと、最後の日曜G1有馬記念の担当に。定年前ラストG1だからと、久々の安田記念でした。その日は非番の後輩アナたちも駆けつけてくれました。あとは地上波の中継を一緒に長くやってきたディレクターが、泣かせるビデオを作ってくれました。レース前、実況席から切り替わる直前、短い盛り上げ映像を流すのですが、私が最初に担当した安田記念(96年トロットサンダー)をはじめ、ウオッカが苦しいところから抜けた09年とか担当したレースをまとめたものを私に内緒で流したもので。ラスト実況だとは一切触れていなくても、私には(作り手の気持ちが)伝わり、マイクのスイッチを上げてもぐっときて一瞬話せなくなるくらい危なかったです。

2025年安田記念 ジャンタルマンタルとガッツポーズする川田騎手
2025年安田記念 ジャンタルマンタルとガッツポーズする川田騎手