仏ルーヴル美術館で強盗、「かけがえのない」宝飾品などが被害に

ディスプレイケースに並べられた華やかなイヤリングとネックレスのセット。複数の大粒のエメラルドをダイヤモンドで囲んでいる

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画像説明, 盗品には、ナポレオン1世の2番目の妻だったマリー・ルイーズ皇后の、エメラルドのネックレスとイヤリングのセットが含まれていた

仏パリのルーヴル美術館で19日、白昼堂々の強盗事件が発生し、「かけがえのない価値がある」とされる宝石が盗まれた。捜査当局は現在も、犯人らの行方を追っている。

フランスのローラン・ヌニェス内相は、容疑者らが19日朝、ルーヴル美術館が開館した直後に犯行を実行し、数分で盗みを終えたと説明した。

強盗団は、機械式のはしごを使って2階の窓に到達したとみられ、その後、展示ケースを破壊して、スクーターで逃走したという。

今回狙われたギャラリーには、フランス王室の宝飾品が収蔵されている。関係者によると、盗まれたのは9点。そのうちの1点、ナポレオン3世の妻が所有していた王冠は、犯人らが途中で落としたと見られ、現場付近で発見された。

ルーヴル美術館はこの日、来館者を避難させ、終日閉館にした。

内務省によると、宝飾品は現地時間19日午前9時30分頃、「ガレリア・ダポロン(アポロンのギャラリー)」から盗まれた。

パリ地検はBBCに対し、窃盗団がバッテリー式のディスクカッターを使用して建物に侵入したと述べた。

検察によると、犯行には4人が関与し、そのうち2人が建物内に入り、内部で警備員を脅したという。

また、セーヌ川の間近にある窓に、車両に搭載された伸縮式のはしごが設置されていた。これは強盗団が残していったものとみられている。

ルーブル美術館の外に数人の警察官が立っている。警察車両も停まっている。美術館の隣に小型のはしご車があり、2階の窓に向かってはしごが伸びている。このはしご車を囲むように三角コーンが置かれている

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画像説明, 強盗団は、このはしごを使って2階の窓から侵入したとみられている

フランス文化省によると、強盗団は現場を離れる前に車両に火をつけようとしたが、美術館職員の1人によって阻止されたという。

この事件による負傷者は確認されていない。

盗まれた9点はすべて、19世紀のフランス王室に由来するもので、数千個のダイヤモンドやその他の貴石がちりばめられている。

その中には、ナポレオン3世の妻ウジェニー皇后が所有していたブローチや、エメラルドのイヤリングが含まれていた。

ウジェニー皇后の王冠は、現場付近で発見された。強盗団が逃走を急ぐ中で落としたものとみられている。

ルーヴル美術館の空撮写真に内外の位置関係を示した図。セーヌ川に沿いに立てられたルーヴル宮殿の、川に近い一角に、今回強盗が発生したアポロン・ギャラリーがある。モナ・リザの展示場所とルーヴルのピラミッドの場所も示されている

ルーヴル美術館のウェブサイトによると、この王冠には金色のワシがあしらわれ、1354個のダイヤモンドと56個のエメラルドがちりばめられている。捜査当局は損傷がないか調べている。

犯罪者が宝石類を好んで盗むのは、個別の石にばらして現金化しやすいからだと考えられている。それに対して、美術品は識別されやすく、盗んでも金銭に変えにくいとされている。

ヌニェス内相は、盗まれた品々には商業的価値を超えた、計り知れない文化的・歴史的価値があると述べ、「かけがえのない」、「計り知れない遺産的価値を持つ」ものだと強調した。

大粒のエメラルドを多数のダイヤモンドで囲ったネックレスとイヤリング

画像提供, Louvre Museum

画像説明, ナポレオンの2番目の妻マリー・ルイーズ皇后が持っていた、ネックレスとイヤリング
大粒の真珠とダイヤモンドのティアラ

画像提供, Louvre Museum

画像説明, ナポレオン3世の妻、ウジェニー皇后が身に着けていたティアラ
リボン型のブローチ

画像提供, Louvre Museum

画像説明, ウジェニー皇后所有の、ダイヤモンドをちりばめたリボン型のブローチ
大粒のサファイアとダイヤモンドのネックレス

画像提供, Louvre Museum

画像説明, ルイ・フィリップ1世の妻マリー・アメリ王妃が身に着けていた品々も盗まれた
大粒のサファイアをダイヤモンドで囲んだドロップ型イヤリング

画像提供, Louvre Museum

画像説明, マリー・アメリ王妃所有のこのイヤリングの片方も紛失した
ダイヤモンドとサファイアをちりばめた銀の王冠

画像提供, Louvre Museum

画像説明, マリー・アメリ王妃の王冠は盗まれたが、ウジェニー皇后がかぶっていた別の王冠は、強盗団が逃走中に落とした様子

世界で最も来館者数の多い美術館のルーヴル美術館には、19日にも観光客が次々と訪れた。事件発生と閉館を知らずに来館した人々に対し、警察が退館を促す様子が確認された。

アメリカ人のジム・カーペンターさんとジョーン・カーペンターさんは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を鑑賞しようとしていたところ、警備員に「ギャラリーから追い出された」のだと話した。

ジョーさんはロイター通信に対し、2人は「ガレリア・ダポロン」の前を通され、非常口から退館させられたと述べた。

ジムさんによると、美術館内は「とても混乱していた」。2人が状況を尋ねた際、警備員からは「技術的な問題が発生している」と説明されたという。

ジョーンさんは「美術館から全員を一斉に追い出すみたいな対応だったので、何かあったんだとすぐに分かった」と話した。

ジムさんは「でも最高だった。長い旅行の最終日で、今日が一番刺激的な日になった」と付け加えた。