透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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アリスク、ティリス民により壊される

「アズサ、準備は良いか?」

 

「問題ない。――サオリは説得出来るだろうか」

 

きっと大丈夫だろう。私の尋問は今の所成功率百パーセントだ。安心安全を心掛けているのでケガをさせる事も無い。私はアズサの後ろを透明化の魔法と隠密を使い尾行する形で付いていく。しばらく付いていくと長い黒髪に黒いマスクをした子が待機していた。あれが錠前サオリだろう。――しかしサオリの付近にも人の気配が複数ある。身を潜めて待機しているようだ。見張りか何かか?ちょっと面倒だな。どちらから片付けるべきか。

 

「――首尾は?」

 

「問題ない」

 

「そうか。そろそろ襲撃の日時も決まる筈だ。それまで引き続き作戦を続行しろ」

 

「――了解」

 

まぁ、目新しい事は特に喋らないか。まずは孤立して確実に処理出来る錠前サオリからやるか?――いや、見張りに逃げられても面倒だ。そっちからの方がいいな。そう考え私は迂回するように見張りの背後へと回る。どうやら見張りは二人だけのようだ。サオリと同じ髪色の子と浅葱色の髪色の子だ。こちらにも気付いていない。

 

「――――スウォーム」

 

「――あがっ!?」

 

「――いっ!?」

 

木刀とラッキーダガーを装備し二人を同時に攻撃するが、スウォームだと一撃で気絶まではいかないようだ。そこそこタフなようだが、不意を衝かれた事で相手の体勢はまだ整ってないうえにこちらの攻撃は連発可能だ。そのままスウォームをもう一度放つと二人は気絶した。

 

「――!?ミサキ、ヒヨリ!何が起こって――まさか、裏切ったのか!アズサ!」

 

サオリは二人の位置に視線を一瞬外した隙にアズサは銃を構え、サオリの言葉に答える事無く射撃する。

 

「ぐっ――くそっ!」

 

サオリはすぐさま体勢を整え被弾しながらも近くの物陰まで隠れ身を潜める。対するアズサも遮蔽に隠れる形でお互い睨み合う形となった。

 

アズサも中々優秀だな。見張りを先に鎮圧した私を見て自分のすべき事を瞬時に理解したうえでサオリの制圧にかかっていた。出来れば相手に何もさせる事無く沈黙させるのが好ましかったが、相手はアズサに戦う方法を教えた師匠のような存在だ。そこまで望むのは贅沢だろう。

 

私は二人が争っている間に気絶させた二人を絞首台に拘束する。直に目を覚ますだろう。今も戦っている二人はどうするか。アズサに経験を積ませるという意味ではしばらく観戦していても良かったが、これから尋問をする必要もあるので時間が惜しい。アズサには悪いが私が終わらせてしまおう。

 

「アズサ!何故アリウスを裏切った?しかもミサキとヒヨリを一瞬で黙らせるような実力者といつ接触していた?」

 

「――」

 

「だんまりか。まぁいい。ならばその体に思い出させてやる。全ては虚しいという事を」

 

随分とお喋りが好きな子だな。そんな呑気に喋っているから私に背後を取られる事になる。

 

「ふむ、アズサにご執心なのは構わないが、私の事は良いのか?」

 

「――なっ、いつの間に背後に!?」

 

「――斬撃無双」

 

「がぁっ!?」

 

ふむ、斬撃無双であれば一撃で沈むか。殴った回数で生徒達の体力が何となく分かるな。そこら辺の生徒であればアビリティを使わずとも大体一撃で気絶し、それなりに優秀な子であれば斬撃無双で一撃。対してヒナは何度も攻撃して最後に斬撃無双を叩きこむことでようやく気絶した事を考えると、やはりヒナは特別優秀な子なのだというのが分かる。

 

「ごめん師匠。私じゃやりきれなかった」

 

「いいや、アズサは十分やってくれた。見張りが居る事を想定していなかった私の不手際なのに拘わらず君は私の動きに合わせてくれたのだからな」

 

おかげでサオリの視線がアズサに向いた事でだいぶ動きやすかった。それに私がここに来る前に、敵との戦闘中の会話はこちらが生殺与奪を握った後にしろという事を軽く話していたのだが、アズサはそれをしっかり守ってサオリとの会話はしないようにしていた。逆にサオリは呑気にアズサに話し掛けていたせいで私に背後を取られていたのだから、如何に戦闘中の会話が無駄なものかアズサもはっきりと実感できたことだろう。

 

「うん。でも、会話してなくても師匠の隠密を見破れるかはいくらサオリでもちょっと怪しいと思う」

 

まぁ確かにそこらの生徒に見破れるものではないだろうな。それこそアスナくらいの直感を持っていたりしない限りは。このままサオリの事も拘束し、気絶した三人を横並びにする。そしてしばらく待っていると三人がおおよそ同時に目を覚ました。サオリを一番最後に気絶させたはずだが、他二人と同じタイミングで目覚めるという事はサオリの能力はこの三人の中で一番高いという事か。

 

「くっ……これは一体なんだ……!?う、動けない――!」

 

「やられたね。――ここで終わるならそれはそれで良いけど」

 

「うわぁぁぁぁあああん!もうおしまいです……こんな事になるなら最後に美味しいものをたらふく食べたりしてみたかったです……」

 

ふむ、中々に壮観だ。さて、どれから始めようか。この三人ならカタコンベの道順は全員知っているだろう。なので正直誰からでもいいのだが……。

 

「そうか……さっきは顔もロクに確認出来なかったが、お前だったのか……」

 

ん?サオリが何やら私に反応している。私の顔を知っているのか。べアトリーチェから情報を共有されていたか?

 

「お前がここにいるという事は……アズサだけでなく羽沼マコトも裏切っていたのか」

 

「さてな。それよりも聞きたい事がある。答えてもらうぞ」

 

「きっとこれから拷問が始まるんですよね……訓練はしてましたけど、苦しいんですよね……辛いんですよね……」

 

「サオリ、諦めろ。もうアリウスは勝てない」

 

「何を言っているアズサ。私達を捕らえたくらいでアリウスが止まるとでも思うか?」

 

「違う。もう既にトリニティもゲヘナも知っている。――アリウスが調印式の日に襲撃してくる事も、巡航ミサイルを撃ってくる事も」

 

「何故お前がそれを――。いや、そいつの仕業か」

 

「じゃあ何?ゲヘナとトリニティは既に手を組んだって事?これじゃあ本当に勝ち目なんて無いんじゃないの?」

 

「拷問もされて、トリニティとゲヘナは手を組んで……うわぁぁぁあああん!私達はもうおしまいです!このまま惨たらしくいじめられて死んじゃうんですぅううう!」

 

さっきからやかましいなこの子。

それはそうと、こちらから余計な情報を与えるべきではない。アズサもサオリ達を説得したいのだろうが、それでもこちらが握っている情報を話すにはタイミングが早い。

 

「アズサ。まだこちらの持つ情報を話すには早すぎる」

 

「――っ。ごめん師匠、ちょっと焦りすぎた」

 

今は拘束して相手は逃げる事が出来ないので構わないが、これでもし逃げられるような事態になってしまえば今与えた情報を持ち帰らせてしまう事になる。なのでこちらから与える情報は厳選して与える必要がある事をアズサに伝える。アズサは呑み込みが早いのでこれくらいはすぐに覚えるだろう。

 

「――今はそいつから学んでいるのか」

 

「うん、まだ会ったばかりだけど。それに先生もいる」

 

「同じアリウス同士、積もる話があるであろう事は察してあまりあるが、こちらとしても聞きたい事がある。それが終わったらゆっくり話をさせてやるから、大人しく答えてくれると助かる」

 

「無駄だ。私達は拷問に対する訓練も受けている。簡単に吐くとは思うな」

 

「それは重畳。こちらとしても実験が捗るから助かるよ」

 

実際拷問の訓練を受けた者が私の尋問を受けた場合どの程度耐えられるかは知りたいところだ。とはいえ――

 

「お前達、産んだ事はないだろう?」

 

「「「――は?」」」

 

私の言葉を完全に理解し切れなかったのか若干惚ける三人を見やりながら鞭を取り出しサオリをひっぱたく。

 

「――んっ。……なんだ?鞭で叩くだけか?」

 

「リーダー……な、なんで……」

 

「リーダーが卵を産んじゃいました!意味が分からないですぅぅううう!」

 

サオリは卵を産んだ事を自覚していないようだ。流石に気付いていないなんていう事はない筈だが、これはどういう事だろう。

 

「卵?――本当だ。人も卵を産むのか。だがこれに一体何の意味が……」

 

「……いや、普通産まないから」

 

「そうなのか?だが私は現に今――」

 

サオリお前……アズサと同じタイプか?アズサも卵を産んだと言った時同じような反応をしていた。サオリがアズサと同じ、ではなくアズサがサオリと同じと言った方がこの場合は正しいか?まぁそんな事はどうでもいいので次は媚薬を投げつける。

 

「んっ♡」

 

「リ、リーダーがお乳を出してます……!こ、こんな訓練今まで受けたことないですよぉ……」

 

「なんなのこいつ……。シャーレの先生以上の警戒対象とは聞いてたけど、滅茶苦茶すぎる」

 

二人が私の行動を見て困惑している。当然だな。しかし私はベアトリーチェにそこまで警戒されてるのか。光栄なこった。

 

「ふーっ♡ふーっ♡――なんだ、この感覚っ……♡お、おかしくなる……」

 

「どうしたのリーダー。様子が変だよ?訳の分からない効果だけじゃない。……もしかして、毒?」

 

「命に別状はないから気にするな。――さて、そろそろ質問といこうか。カタコンベの正しい道順を教えてくれ。私はベアトリーチェの元まで行きたいんだ」

 

「な、何故だ……?♡」

 

「ベアトリーチェを殺す為だ。奴は私に敵対の意思を見せた。生かす理由はない」

 

「「「――!?」」」

 

正しくは風紀委員会を危険に晒そうとしているからだが、同じ事だ。

 

「彼女を殺す……?本気で言っているのか?♡」

 

「アリウスを襲撃の前に潰そうって事ね……」

 

「いや?お前達アリウスに興味はない」

 

「は?じゃあなんで」

 

言った通りだ。あくまで私の目的はベアトリーチェを殺す事。副目的としてトリニティに恩を売る事だ。――少々寄り道が過ぎてナギサに対する愛着が湧きすぎて想定以上に色々と動いてしまってはいるが、私の目的の中にアリウスをどうこうするというのは存在しない。

 

アズサがサオリ達を説得したがっているので私も今はそれなりに穏便に事を進めているし、先生がアリウスを助けたいという思惑もあるが、ここでその情報を与える必要は無い。

 

「という訳で邪魔さえしなければ害を与えるつもりはない。実際、君たちは特にケガはしていないだろう?――まぁ、少しばかり貴重な経験をしている子は居るが」

 

という訳でそろそろサオリには情報を吐いてもらいたいのだが……。

 

「――彼女を殺して何になる?♡この世界はどこまでいっても、虚しいものだ♡何故そのような意味のない事をする……♡」

 

めんどくさっ。この虚無主義とも言える思想教育を施したベアトリーチェに初めて本気で殺意を抱いたぞ。今までは害虫駆除程度の認識だったが、まさかこんなところで手間取らされるとはな。よもやこれが狙いだったのか?――こうして話してると、たとえ虚しくても抵抗を諦めなかったアズサの精神の異常性が明らかになるな。私としてはそちらの方が好みだが。

 

「一つ聞きたいんだが、全てが虚しいと悟っているのなら、今こうして抵抗する事自体が虚しい事ではないか?」

 

虚しいと思うのならば、こうして捕まってしまった以上それすらも虚しいものとして受け入れてさっさと情報を吐いてしまえばいい。だというのにサオリは一度しか媚薬を受けていないとはいえ、私に対する好意も少し高まっているはずなのに未だに抗い話そうとはしない。

 

「わ、私達は……♡アリウスはゲヘナとトリニティに対して……復讐、を……♡しなければ……♡」

 

「それもまたおかしな話だ。アリウスがこうして歴史の隅っこに追いやられた事も全ては虚しい事なのだから受け入れるしかあるまい。何故虚しいと謳いながら動き続ける?君は矛盾しているぞ?君の理屈だと虚しいのなら復讐もまた無意味という事になるはずだが?何故そのような無意味な事をする?」

 

「そ、それは……」

 

全てが虚しいと断ずるのであれば、アリウスが追いやられたところで憎しみが浮かぶはずがない。全ては虚しいのだから復讐に突き動かされる事もない。

 

「サオリ――いやアリウスはばにたすなんとかかんとかという言葉と、トリニティに対する憎悪しか教わる事が無かった。だから、お前たちはそれをバカの一つ覚えみたいに復唱する事しか出来ない」

 

「や、やめろ……」

 

「所詮お前達はベアトリーチェの消耗品の道具でしかない。全てが虚しいと教えておけば、お前たちが反抗する勇気は持てなくなる」

 

「やめてくれ……」

 

「トリニティとゲヘナに対する憎悪を植え付けておけば、お前たちの意思を簡単に一つにまとめる事が出来る。そうして、立派な操り人形の出来上がりという訳だ。良かったなサオリ、お前たちは――」

 

「やめろ!!!」

 

あ、やっと怒った。

 

「だからどうしろと言うんだ!結局私達は彼女に逆らう事は出来ない!姫だって今はもう一緒に行動出来ていないし、約束すら守ってくれるのか分からない!だがそうするしか他に手は無いのだからどうしようもないだろう!あぁ、お前の言う通りだ!私は彼女の操り人形で言われた通りの事しか出来はしない!――これで満足か!?」

 

「「リーダー……」」

 

「――アズサ、姫とは一体だれか分かるか?」

 

「え、えっと……アツコの事だと思う。スクワッドであるサオリ達と一緒に行動していたんだけど……言われてみると一緒に居ない」

 

なるほど。姫というのは文字通り王族の血筋を引いているのか?だとすればベアトリーチェからしても特別な存在なのかもしれないな。そしてサオリは姫と共に行動していたが今は離れ離れとなっている、という状況か。中々良い情報を吐露してくれたな。その辺りからつついてみるとしようか。

 

「サオリはちゃんと自分の意思で、感情で怒れるじゃないか」

 

「何を……?」

 

感情を発露させてからは顔を伏せていたが、私が声をかけた事で少し顔を上げる。そのままサオリの頬に手を添えて私と目を合わせるように顔を上げさせる。

 

「君は決して人形ではない。虚しいと思いつつもこうして今まで動いていたのは、サオリにも護りたいものがあったからだろう?――違うか?」

 

「わ、私は……」

 

「ベアトリーチェの支配下の中で取れる手段は限られる。それでも自分なりに足掻いていたのだろう。アズサがそうやってアリウスを裏切り、トリニティすらも騙していたように」

 

「アズサも……?」

 

それっぽい事を言ってはいるが、サオリがどういう意図で今まで行動していたかなど全く知らないので、これで的外れだったら恥ずかしい思いをするところだったが、サオリの様子を見るに大きく予想は外れてはいなさそうだ。わざと感情を発露させたのは正解だったな。おかげで姫という今までに無い手札を得る事が出来た。

 

「お前に……貴方に話せば姫は、アツコは助かるのか……?」

 

助かるとはまた奇妙な言い草だな。姫と呼ばれているのだから特別扱いされているのかと思ったが……これではまるで人質のような言い方だ。気にはなるが今聞くべき事では無いな。

 

「サオリがそう望むなら、助けてやる」

 

「…………。分かった、教え――」

 

「リーダー落ち着いて。この人も彼女と同じ大人だよ。どうせ騙されて終わり。姫も結局彼女の元に戻されてるんだから」

 

「――!すまないミサキ。何故かこの人は信用したくなったんだが……」

 

サオリは媚薬のおかげで私の好意もあるので口も軽くなっていた。しかしミサキの一声によって踏みとどまってしまった。しかもあの害虫の信用が無いせいで口を閉ざされるとは……。つくづく私の邪魔をしたいらしいな。

 

「で、でも、結局話さない限り私達は一生このままなんですよね?ずっと吊るされて、ご飯も食べられなくて、雑誌を読むことすら許されなくて……うわぁぁあああん!やっぱり私達はこのまま餓死しちゃうんですぅぅぅうう!せめて餓死以外の方法で死なせてください……お腹が空くのはいやです……あっでも痛いのもいやです……」

 

なんなんだろうなこの子……。確かにばにたすなんとかかんとかの影響を受けてはいるのだろうが、方向性が少しズレているというか……。まぁちょっとばかり試してみるか。

 

「確か君はヒヨリだったか?ここに取り出したるは私手作りのハンバーガーだ。――食べた事はあるか?」

 

「ハ、ハンバーガー!雑誌で見た事があります……!」

 

「そうか。もしちゃんと私に情報を渡す事が出来たらこれを食べさせてやるぞ?」

 

「えっ、ほ、本当です、か……?」

 

「無論だとも。まずはお試しだ。一口だけ食べさせてやる」

 

そういってヒヨリの口元にハンバーガーを宛がい、一口だけ食べさせる。

――いや一口がでかいな!?思った以上に持っていかれたぞ。対するヒヨリは頬をパンパンにさせながら幸せそうに咀嚼している。

 

「おいひぃでふ……こんなおいひぃもの、ふぁふぃふぇふぇたべまひた……!」

 

幸せそうに食べるヒヨリをどこか呆れたような目で見ているミサキが少し面白い。

 

「それは何よりだ。情報を吐けばお腹一杯に食べさせてやるぞ?」

 

「お、お腹一杯……!」

 

「はぁ……こうなるか。やっぱ大人は汚いね」

 

「的確にヒヨリの弱点を見抜いてそれを利用しているのか……流石の洞察力だ。師匠」

 

「アズサ。悪い事は言わないからこの大人についていくのだけはやめた方がいいよ」

 

ミサキになにやら失礼な事を言われてしまうが、ベアトリーチェよりは百倍マシだと思う。この程度の飴すら用意しないのは本当に意味が分からない。見識が狭すぎて恐怖で支配する事しかやり方を知らないのだろうな。

 

だがおおよそのベアトリーチェの人格は見えた。恐怖で人を抑えつけるところからして、自分が上に立たなければ気が済まないタイプだ。アリウス、あるいはゲマトリアでも自分が一番の支配者であると思い込んでいるのだろう。だがこうしてずっと裏からこそこそと動く事しか出来ない性格からして本人は非力、あるいはその性格の本質は臆病で小心者。臆病だからこそ自分が上に居ないと安心出来ない典型的な小物といえる。

――そりゃ黒服も遠回しに私に情報を売るわ。こんな小物に自分たちが道連れにされたら堪ったものではないだろう。

 

「さて、心は決まったか?ヒヨリ」

 

「うぅ……ハンバーガーは美味しかったです。ありがとうございました。で、でも仲間の情報を売るわけにはいかないので……これが最後の晩餐なら悪い気はしませんし……えへへ」

 

――ダメか。彼女達の仲間意識は思った以上に高いらしい。だが驚いたのは私だけではなかったらしい。その言葉を聞いたミサキとサオリは驚いた表情を浮かべている。

 

「ヒヨリなら絶対情報を話すと思ったのに……」

 

「あぁ……。私も正直もうダメだと思った」

 

「ひ、酷いですぅ!私ってそんなに食い意地張ってるように見られてたんですか!?うわぁぁあああん!どうせ食い意地張った私なんて仲間にすら信じてもらえないんですぅぅぅうううう!」

 

面白過ぎるなこの子。でも気が抜けるからこれ以上場を面白くするのは勘弁して欲しい。残るはミサキなのだが、この子は彼女達の中で一番冷静、というより冷めている。この中で一番思想教育の影響を受けているのは彼女だろう。

 

「なに?」

 

「一応聞く。情報を吐く気はないか?」

 

「――別に教えても良いよ」

 

「なっ!ミサキ!?」

 

「えぇ!?さっきは私が裏切っても当然、みたいな態度だったのに自分が裏切るんですか!?」

 

――ヒヨリの気持ちはちょっと分かるが、少し黙っててもらおうか。この子が喋ると気が抜ける。口を閉じていてもらうためにもう一口ハンバーガーを差し出す。すると素直に口を開けてまたもや頬をパンパンにさせている。

 

「おいひぃ……」

 

「……はぁ。さっき貴方が言ってたでしょ。虚しいのなら抵抗する事すら云々って。あれを聞いた時にちょっと納得しただけ」

 

「ミサキ……」

 

「ふむ。だがサオリが喋ろうとした時に止めたのはミサキ、君だぞ?」

 

本当に心の底から納得したのなら止める事は無かった筈。それでも止めたのはベアトリーチェという大人の影が私にもちらついてしまったからというのもあるのだろうが、サオリを止めた時にはアツコという姫の存在を出していた。ミサキにとってもアツコという子はそれなりに大きな存在なのではなかろうか。だがベアトリーチェも信用は出来ず、私という存在も信用出来なかった結果、こうしてどっちつかずの状態が続いてしまっているのではと思う。

 

「――全ては虚しいものである。ただそれだけが、私達の納得出来る真実。なら、いつまでもこんな虚しい世界に生き続ける必要なんてない。――もし貴方がベアトリーチェをどうにか出来たとしても、私達は帰る場所を失う事になる。既にゲヘナとトリニティには私達の作戦はバレてる。ベアトリーチェを倒した後は私達が追われる事になるよ。そうなったら次こそアリウスは地図上から消える事になる。そんな見え透いた未来に姫を巻き込むの?もうどう足掻いても私達は終わりだよ。こんな訳の分からない大人がゲヘナに居て既にトリニティと手を組んでるから勝ち目があるかも分からない」

 

そうならないように先生は動くと思うが、彼もまた大人だ。今その存在を引き合いに出したところで信用はされないだろう。

 

「彼女も私達の帰還が遅い事にそろそろ勘付くよ。逃亡したと思われるか、あるいは捕まったと判断するかは分からないけど、どの道今更戻ったところでロクな目に遭わない」

 

確かに小物のごとき性格をしたベアトリーチェならばその辺も神経質そうだな。だがアツコが彼女達にとって人質として機能しているのなら、逃亡したとは思われないだろう。

――アツコがこちらに居る以上逃げる事は出来ない。だとかそんな事を考えているだろう事が目に浮かぶ。

 

「それはそうだが、ここで情報を吐いてしまえばそれこそアツコの安否がどうなるか分からなくなる」

 

「……じゃあどうするの?ヒヨリの言う通りこのままずっと吊るされる?」

 

「それは……」

 

……めんどくさくなってきたな。そもそも何故私はこんなに言葉を尽くそうとしているんだ?ナギサの事もあってこの子らも哀れに思ったからか?私を師匠と呼んで慕ってくれるアズサがいるから彼女に気を遣ってか?

 

どちらもある。だがそれ以上に、虚無主義に塗れたペットなど正直要らないからだ。

折角ペットにしても虚しい虚しいと連呼された日にはこちらの気が滅入る。そんなメンタルではノースティリスでは到底生きていけない。

 

だからこそアリウスに身を置いていてもくだらん考えに染まり切らなかったアズサは非常に好ましく思っているのだが、アズサという存在が異端である事もまた事実。それをミサキ達に求めるのは酷というのも理解している。だがこのままでは埒が明かないのもまた事実。

 

ならばどうするか。――アズサには悪いが、この子達には劇薬が必要だ。

 

「すまないアズサ。なるべく穏便に済ませたかったが、私にはこれが限界のようだ」

 

「――大丈夫。師匠でだめなら諦めもつく」

 

「違うぞアズサ。穏便に済ませるのは無理だが、決して諦めるわけではない」

 

「え?じゃあどうするんだ?」

 

私は鞄からありったけの媚薬、産卵薬、そして鞭を取り出す。虚無主義が鬱陶しいなら、劇薬をもってその考えを頭から消し去ればいい。そして私のペットとする。そうすれば情報も手に入り、ペットも手に入るという一石二鳥の算段。だが、師匠と呼んでくれるアズサからの好感度が落ちる可能性のある事を目の前でしたくはなかった。

 

「先に謝罪しておく。すまない。これから君には本来見せるべきではないものを見せる事になる。もし目を覆いたくなったらここから離れてくれて構わない」

 

無論ケガをさせたり本当に拷問をしたりするわけではない事を伝える。

 

「えっと……よく分からないけど、師匠が必要だと思うのなら私は止めない。それに、多分だけどセイアにした事をするんでしょ?なら問題ないと思う」

 

うんまぁ、セイアが調教を受けてもなお私に好意を向けてるからそこだけ切り抜けば確かに問題はないように見えるかもしれないが……。サオリとアズサはアリスみたいに無垢なんだよな。だからその辺の知識がなさそうでな……。私がわざとサオリを挑発した時にちょっと困惑してたくらいで、サオリに媚薬を投げた時はそこまで大きな反応は無かったし。

 

「――サオリ、ミサキ。お遊びはここまでにしよう」

 

「「……」」

 

「ここからは尋問という生ぬるい言葉で済ませるような事はしない。精々抗って見せろ」

 

 

 

 

「――あ、あれっ。もしかして……わ、私の事忘れられてます……?」

 

いや……なんかヒヨリは別にいいかなって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ♡こ、これ……!♡おかしいっ♡なんで♡貴方を見るとこんな……♡私まで卵産んでるし……♡」

 

「ふーっ♡また、この感覚……♡一体なにが……♡」

 

「リ、リーダー!?ミサキさん!?大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、二人揃って鞭で叩かれて喜ぶようになったな?」

 

「そ、そんな訳……!んあっ!♡こ、こんな事で喜ぶわけが♡あぁっ!♡」

 

「や、やめろ♡ミサキに手を出さないでくれ……わ、私が受けるから……♡あっ♡」

 

「欲しがりか?サオリ。かわいいところもあるじゃないか」

 

「わ、私がかわいい……?♡そ、そんなはず……♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁあああん!リーダーとミサキさんがどんどんえっちになってますぅぅぅ!」

 

「やかましいぞヒヨリ。お前も喉が渇いただろう?飲んでおけ」

 

「え、どうしてですか!?いらないで――んぐぅ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、師匠……?こ、これは一体……」

 

「はーっ♡はーっ♡も、もう終わり……?♡たいしたこと、ないね……♡」

 

「ふーっ♡こ、こんなの……訓練でも受けた事……なかった……♡」

 

「ど、どうして私まで……んあ♡――この卵って、食用だったりしますか……?♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「はーっ♡はーっ♡」」」

 

「ふむ、こんなところか」

 

辺りには三人の乳と卵が散乱している。産卵だけに。こんなくだらない事を考えるくらいには心地よい達成感を感じている。

 

「サオリ、ミサキ、ヒヨリ。お前たちは誰のものだ?」

 

「わ、私達は……貴方のものだ……♡そう、させられた……♡」

 

「最っ低……♡」

 

「餌付けされた挙句、手籠めにされました……♡」

 

素晴らしい成果だ。三人同時に調教など初めてだったが、案外やれるものだな。アコやトキによって鍛えられたおかげだろうか。不本意だが彼女達には感謝すべきかもしれない。

 

「私のペットとなった以上、虚しさからは程遠い生活を送らせてやるし、無体な扱いはしない。そこは安心してくれていいぞ」

 

「女の子をこんな扱いしといて……♡なにをいまさら……♡」

 

「で、でも、これで姫ちゃんは助かるんですよね……?♡」

 

無事に価値観を破壊したうえでペットにもしたので、彼女達の望むことは大抵の事は叶えるつもりだ。例え既に死んでいようと生き返らせる事が出来るので問題はない。

 

「えへへ……姫ちゃんもこっち側に連れてこないとですね……♡」

 

「そ、それは……さすがにだめだ……♡こんな事……姫には……♡」

 

「で、でも仲間外れはよくないですよ……♡」

 

アツコという子が彼女達のこの姿を見たらどう思うだろうか。恨まれないか少し心配だが、まぁそこはヒヨリの言う通り調教して有耶無耶にしてしまおう。やはり調教は万能だった。変に言葉で説得しようとせずさっさとこうして破壊すべきだったのだ。初心忘るべからず。

 

「……師匠」

 

「ん?アズサか。どうかしたか?」

 

「私も受けてみたい。サオリ達はなんだか幸せそうな顔をしている。少し羨ましい」

 

――ふむ。アズサの様子を見るが少し顔が赤くなっている。流石に何かおかしい事には気付いたようだが、具体的に今の状況を分かっているわけではなさそうだな。だが確実にアズサの中で何かが壊れ始めている。こちら側に来たという事だろう。つまりペットに出来る可能性が上がったというわけだし、良しとしよう。

 

「あぁ、アズサはまた今度な。今日のところは彼女達を先生達の所へ連れて行こう」

 

「分かった、約束だ」

 

散乱している卵と乳を回収する。当たり前だが全員分の有精卵は手に入れた。

 

アリウススクワッド『錠前サオリ』『戒野ミサキ』『槌永ヒヨリ』の有精卵ゲットだ!ブラボー!こんな結末があるとは……。




途中まではナギサと同じく言葉で説得するルートを作ってたんですよ。あまりペットを増やし過ぎても扱いに困るよなって思って。でも気付いたんです。最近有精卵手に入れてないなって。そう思うとね、不思議な事に指が勝手に動き出したんです。

これヒナちゃの情緒だいじょぶそ?
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