前の話
一覧へ
次の話

第11話

第一章「逃げ惑う命」第五話 キミノタメ
114
2024/12/22 13:30 更新
岡田ユウ
ゾーヤ、その手を離しちゃだめだよ...!
ゾーヤ
うん。
岡田ユウ
...行くよっ!
岡田はゾーヤの手を握ったまま、2階の廊下を走る。
鬼は足音に反応して音の鳴る方へ走り出した。
岡田ユウ
...あそこに逃げ込もう!
岡田達は奥の部屋へと駆け込んだ。
岡田ユウ
はぁ...はぁ...
ゾーヤ
鬼がずっとここに引きつられていれば、他のみんなは安全だけど...
ゾーヤ
ボクらは部屋から出れないね。
岡田ユウ
後少しの辛抱だ...あと5分耐えきれれば...
この鬼ごっこの攻略法を段々と理解してきた...!
鬼は音に敏感だから、音の鳴る方向に行く習性がある...
俺がゲーム終了まで鬼を引きつけていればいいだけの話だ...!
ゾーヤ
...
ゾーヤ
...何も、ビターのガトーショコラみたいなことが起きなければいいんだけれど。
...
ユリ
ユリ
あーあ、見破られちゃったかぁ。
ユリ
ユリ
...まぁいっか!
ユリ
ユリ
まだこっちにも策略はあるし。
人間は単純で、わかりやすい。
目の前の巨大な壁を越えようとしても、結局は無意味。
いくら努力しても、いくら足掻いても無駄だってね。
...でもそれはただの人間が考えること。
冷静的な判断力を持ち合わせた人間は目の前の壁を普通には越えようとしない。
そう、別の道を探り出す。
例えるなら...目の前に扉があって、その扉を通れば脱出できる。
でも目の前の扉を、障害物や妨害する人のせいで通ることができない。
普通の人なら根性論で押し切ろうとするけど、結局どうすることもできずに終わる。
でも、冷静な人間は目の前の扉を通らず、もう一つの扉「裏口」を探ろうとする。
裏口さえあれば、脱出することはできる。
そう考える人もいる。
...でもそれはあくまでも「可能性」の話。
たとえそう考えたとしても、裏口自体が無ければただの無駄な考えになるし、たとえあったとしても、その裏口も対策済みなら意味がない。
...鬼を引きつけていればいいと思ってたら大間違い。
だって、鬼はありとあらゆる音に感知する。
なら、そんなつまらない作戦も無駄にできる。
...彼は、冷静に見せかけた単純な人間なんだね。
...
岡田ユウ
...よし、先生が合図したら行くよ。
ゾーヤ
うん、わかった。
岡田ユウ
...
岡田ユウ
──今ッ
ピピーッ!
その時、先程も聞いた覚えのあるホイッスルの音がどこかからかした。
岡田ユウ
え...?
ゾーヤ
今のって、ホイッスル...?
まさか...一体誰が...
岡田ユウ
...っ!
岡田ユウ
鬼は...!
岡田は慌てて部屋から出たが、もう既に手遅れだった。
2階の廊下には、鬼の姿が見当たらない。
岡田ユウ
...ぁ...あぁ...
ゾーヤ
...センセイ、行かなきゃ...
ゾーヤ
このままだとみんなが危ない...!
岡田ユウ
...ッ!
岡田は己の不甲斐なさに打ちひしがれていたが、ゾーヤの言う通り、みんなが危ないと感じ走り出す。
...
シンタ
な、なんださっきの笛...
ヒカル
...ルミ先生のホイッスルと同じ音...
マリア
しかもこの階からだねー。
アキ
そ、それよりも...ここにいるのってマズくない?
ワタル
どうしてなのら?
カナタ
...一階から音がしたら、アイツが──
その時、大きな足音と共に、威嚇をするような唸り声が聞こえた。
[グルルルル...!]
ヒカル
...みんな...
ヒカル
...逃げるよッ!!!
[グルァァァッ!!!!!!]
シンタ
うわぁぁぁぁぁぁ!!!
ワタル
おっかねぇのら...!!!
ダイヤ
〜〜!!!💦
カナタ
アイツマジでしつこいなぁ...
カナタ
──あっ
カナタは床にあった石につまずき、転んでしまった。
カナタ
(ヤバ───
 
 
 
ダイヤ
──ッ!!!!
カナタ
ッ!
カナタ
だ、ダイヤ...!
ダイヤは咄嗟にカナタの手を掴んで走る。
ダイヤ
〜〜!!!
カナタ
...
ヒカル
みんな!バラバラになって部屋に隠れよう!
シンタ
わ、わかった...!
...
シンタ
...はぁ...はぁ...
ワタル
...ち、ちかれたのら...
 
マリア
...ひーちゃん、大丈夫?
ヒカル
う、うん...アタシは大丈夫だよ...
 
カナタ
...ダイヤ、その...
ダイヤ
ー!(👍)
カナタ
...
カナタ
...あ、ありがとう。
...
アキ
...
アキ
...マズいわね...逃げ遅れちゃったわ...
アキ
...まぁ、ここで大人しくしてれば大丈夫よね。
ピピーッ!
アキ
...え?
突然、アキのいる部屋からホイッスルの音が鳴った。
ヒカル
ッ!今のって...!
カナタ
またホイッスル...?
[グルァァァァ!!!!!!]
ダイヤ
...ッ!!
ダイヤは突然部屋を飛び出していった。
カナタ
だ、ダイヤ...!?
 
ダイヤ
...ッ
アキ
...ッ!
アキ
だ、ダイヤ!
ダイヤ
ッ!!!
アキ
ダイヤ...助けッ──
 
 
 
「ガッシャーンッ!!!」と、建物の壊れる音がした。
...アキのいた部屋に鬼が入ってしまった。
先程までアキの声は聞こえていたのに、今は鬼の唸り声しか聞こえていない。
...やがて、鬼は別の階へと去っていった。
カナタ
...だ、ダイヤ...?
カナタはダイヤが入っていった部屋に様子を見に行くと...
カナタ
...ッ!
そこには、ぐちゃぐちゃになった部屋の残骸と、縮こまって震えたダイヤの姿しかなかった。
ダイヤ
...ッ...ッ!
カナタ
...まさか、アキは...
いくら部屋を探っても、アキの姿は見当たらない。
ユリ
ユリ
...あーあ、食べられちゃったね。
カナタ
...ッ!?
カナタ
き、きみはさっきの...
ユリ
ユリ
あ、こうやって直接話すのは初めてだよね!
ユリ
ユリ
初めましてカナタくん。そして...
ユリ
ユリ
ダイヤくん。
ダイヤ
...ッ!!
ユリ
ユリ
アキちゃんのことは心配しなくても大丈夫だよ。
カナタ
...ほ、本当?
ユリ
ユリ
うん、だって...
ユリ
ユリ
私のお友達になったからね。
カナタ
...ッ
コイツのいう、お友達がなんなのかは知らないけど...
この感じだと、アキは...
もう...いない...
ユリは手に持っていた白く純白なユリの花をカナタに見せた。
ユリ
ユリ
たった今、アキちゃんは私のお友達になって...
そのユリの花はだんだんと黒く染まっていった。
ユリ
ユリ
無惨に、美しく散ったよ。
ダイヤ
ッ...!
ユリ
ユリ
それじゃあ、あとの残り時間も思う存分楽しんでね!
ユリはそのまま消えていった。
カナタ
...こんなのを...
カナタ
...現実だと...信じろとでも...言うのか...?
その部屋には、とても濃く恐ろしい恐怖と、微かに香る血のような匂いだけが残っていた。
作者
お久しぶりの投稿、お待たせしました...!
作者
コメントに感想等、是非よければお願いします!

プリ小説オーディオドラマ