ルミ先生が喰われた...目の前で...!
確かに...喰われた.....?
俺が...何もしなかったから...
俺の決断が遅かったから......
俺は...何をしているんだ......
岡田はゾーヤに呼ばれ、咄嗟に我に帰った。
...そうだ、これはまだ鬼ごっこ中なんだ...
今は鬼ごっこに気をつけなきゃ......!
[ガルルルッ...!]
...確かに、ルミ先生は私達の目の前で食べられた。
でも、そんな話は現実的にあり得るのだろうか?
ライオンはライムにどう伝えればいいのかわからないまま、ライムの手を引っ張って走り続ける。
ダイゴロウは恐怖のあまりに足が動かない。
ハヤテは咄嗟にダイゴロウの手を掴んだ。
間一髪で逃げ切れたが、ダイゴロウは泣きじゃくっている。
[グルワァァァア!!!]
岡田の指示に従い、子供達は物陰に隠れた。
だが、このまま耐えればいずれかはワープする...!
あとせめての辛抱...耐え切れ!!!
あれはお助けアイテム...!
あいつが廊下を往復しているせいで移動ができない...
...いや、待てよ?
むしろ逆じゃないか...?往復しているなら、いずれはタイミングを掴めるし、その間に行動できる...
...そうだ、見極めろ。
まだ行く時じゃない...
まだだ...まだ...
...っ今だ!!!
よしっ...!アイテムを取った!!!
な、なんなんだこの子...神出鬼没にもほどがある...
岡田は思わず質問した。
目の前で喰われてしまったのは岡田でも見たと言うのに。
岡田は現実を受け入れられていないのだ。
ユリは、血のついたルミ先生のネックストラップを岡田に渡した。
岡田は全てを察した。
これは夢ではないこと、自分の置かれている状況のこと、そして...
──ルミ先生はもういないことを。
岡田の息が荒れる。
岡田は感じていた、知人の死を。
死がこんなにも恐ろしいことなんだと、岡田は感じた。
ルミ先生はあの時確かに岡田にそう言った。
ルミ先生は、託そうとしているのだ。
子供達の安全を、岡田に託そうとしているのだ。
ルミ先生は信じているのだ、岡田ユウを。
そうだ、俺は保育士だ。
ルミ先生がいない今、子供達は誰が守るんだ?
それは、託された者だ。
ルミ先生の託したこの命は...
岡田は正気を取り戻した。
岡田は廊下の先にあるエレベーターを見つけた。
エレベーターはちょうどドアが空いており、ボールを投げてでも入れられそうな距離だ。
岡田はボールを投げた。
予想は的中、ハナはエレベーターに突っ込んで行った。
...これ以外に手段はないか...
岡田はゾーヤの手を握る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。