日本の歴史ある寺社が中国人の「BBQ会場」にされている…跡継ぎなき宗教法人を狙う外国人の「本当の目的」
配信
■中国SNSに飛び交う虚偽の「寺社売買情報」 その宍粟市に隣接する、兵庫県姫路市。記者はさらに足を延ばした。 「何なんですか、これは……。こんな情報知りませんし、もちろん、この寺を売るつもりなんて全くありません」 同市内のとある寺。その寺で記者が再び、あるスマートフォンの画面を見せると、住職は驚きを隠せず、顔を大きくゆがめた。 見せたのは、やはり中国の人気SNS「小紅書(RED)」に投稿された動画。そこには、住職が運営する寺が、まるで売りに出されているかのように宣伝され、外観や本堂の写真、寺の看板までもがはっきりと映し出されていた。 さらには「宗教法人付きのお寺!! 土地1917平方メートル、建物115平方メートル。さまざまな優遇政策が受けられます!」などと嘘の宣伝文句までもが並び、発信者は「京都に住んでいます。日本の不動産業界で10年以上の経験」という触れ込みの人物だった。 物件概要の備考欄には「インター至近、バス停至近と便利です。本堂などもとても美しいです」といったことまで書かれている。この投稿含め、この寺に関する虚偽の売買情報は、SNS上に少なくとも3件確認した。 一連の情報を住職に伝えると、慌てて本堂に戻り、すぐにペンと紙を取って戻ってきて、こちらが見せた情報を熱心にメモし始めた。その後、寺は顧問弁護士を通じ、何とか事なきを得たという。だが、これでは終わらない。今、多くの日本の寺社が真偽不明な情報も含め、中国に狙われている。 ■岩倉具視も身を寄せた寺院もデマの被害に 「中国のSNSで、当寺院が売りに出されているという投稿が拡散されていますが、そのような事実は一切ありません」 京都市・左京区岩倉――。その静かな地にたたずむ、約800年の歴史を誇る「実相院(じっそういん)門跡(岩倉実相院)」は、もともと天台宗寺門派に属し、住職は代々、摂関家や皇族が務めてきた。皇室とのつながりも深く、幕末には岩倉具視が一時身を寄せ、密談の場になったことでも知られる。現在は、磨き上げられた黒床に、新緑や紅葉が映り込む「床みどり」「床もみじ」などが有名で、観光シーズンには多くの来訪者でにぎわう。 そんな由緒ある寺にも2024年春、中国のSNS上に売買情報のデマが流れ出し、寺には問い合わせが相次ぎ、混乱を余儀なくされた。寺側は急遽、公式ホームページにも「売却の事実はない」とする声明を掲載。事態の鎮静化に追われた。だが、残念ながら今なお中国のSNS上には、実相院の外観や境内を写した写真や動画を使い、「販売中」とする投稿が散見される。 背景には何があるのか。記者は宗教法人の売買ブローカー「日本霊能者連盟」がある大阪市浪速区へと向かった。
- 234
- 387
- 124