アヒルの首にザリガニ、日本人に馴染みのない食材がズラリ…世代交代の「アメ横」で起きている「中国化」の波
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■「年末のニッポンの風物詩」は風前の灯火 その天天楽が入居するのが、まさにアメ横のシンボル的存在「アメ横センタービル」だ。1983年に建てられた。地上の喧騒をくぐり抜け、そのビルの階段を地下に向かって下りると、さらにディープな日本の中の「中国」が待ち受ける。 中国の食材店が所狭しと並び、生肉、生魚、香辛料の匂いが入り交じった中国独特の市場といった空気が、辺りに立ち込める。鶏や豚など、さまざまな部位の肉までもがむき出しのまま並べられ、生きたカニは陳列棚から逃げ出し、通路をさまよい歩く。聞こえてくるのはすべて中国語。中国の市場そのもので、まるで自分が「よそ者」であるかのような錯覚にさえ陥ってくる。センタービルもいつしか、こんな中国に置き換わっている。 アメ横商店街の目の前には、成田空港とを特急約1時間で結ぶ京成上野駅や、上野公園、動物園、博物館などがあり、訪日中国人の客足は絶えることがない。一方、「日本人は上野で観光してもアメ横商店街を素通りする人も多いが、中国人客の多くは、ここで食べたり飲んだりしてくれる」と、星野会長は話す。 売り手も買い手も、多くは中国人に。アメ横ももはや完全に日本人だけのものではなくなりつつある。年末のニッポンの風物詩も、このままでは自然と消えてなくなる可能性さえあるのかもしれない。 ---------- 日本経済新聞取材班(にほんけいざいしんぶんしゅざいはん) 日本経済新聞社データ・調査報道センターの記者で構成する取材班。中村裕、浅沼直樹、岩崎邦宏、綱嶋亨が取材・執筆を担当した。本書の基になったデータ・調査報道シリーズ「ニッポン華僑100万人時代」は、第2回国際文化会館ジャーナリズム大賞を受賞。 ----------
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