アヒルの首にザリガニ、日本人に馴染みのない食材がズラリ…世代交代の「アメ横」で起きている「中国化」の波
配信
■「魚屋は間違いなくアメ横からなくなる」 アメ横で海産物を扱う「浜屋食品第三店」。ここで40年も働いてきたという阿部朗さん(67)も、変わりゆくアメ横に少し寂しげだ。 ――アメ横では、中国人が経営する店がとても増えていますが。 「時代の流れだ。それしか、俺には言いようがない。中国人がどんどん店を広げていって、いずれこの辺りは、全部のお店がそうなっちゃうんじゃないか。俺は今でも中国人の店主とは付き合いはないけど。20代でここで働き始めた頃は景気が良くて、魚もよく売れたが、もう、ああいう時代は二度と来ないだろうな」 ――アメ横といえば、年末に正月用食材を買うといったイメージも強かったですね。 「今は年末だけ魚を売って、普段は飲食をやっている店が多い。訪日外国人客は、魚は買わないから。買うのは果物ぐらいだ。それが今のアメ横だ。この先、どうなるか分からない。日本人の客もどんどん歳を取っていくし、魚屋は間違いなくアメ横から姿を消し、なくなるだろう。寂しいけどしようがない」 ■世代交代のタイミングで中華系飲食店に入れ替わり 商店街の星野会長によると、アメ横における「魚屋から中華系の飲食店へ」の入れ替わりは、時代の流れと同時に、深刻な後継者不足が背景にある。「戦後の闇市から始まったアメ横の店は現在、2代目から3代目へと経営者の世代交代の時期を迎えている。このタイミングで日本人オーナーの多くが店を手放し、中華系の飲食店などにドンドン入れ替わっているのが現状だ」と話す。 さらに「どこの店も後継者がおらず、賃貸に出そうと募集をするのだが、ここは家賃が数十万〜100万円と高い。日本人でまず借りたいという人はいない。そこに手を挙げて来るのが中国人だ。この10年ほどで中華系の飲食店が増えてきたのは、そういう理由だ」と明かす。
■アメ横のシンボルビルにディープな「中国」 代表的な店がある。アメ横通りの入り口近く、一等地ともいえる場所に店を構えるのがガチ中華店「天天楽」だ。経営者は中国人女性。周辺でもさらに二つの中国系飲食店を経営するが、その経営者の妹を手伝うため、天天楽の店頭に立つのが、姉の李増田(リーゼンティアン)さん(50)だ。中国東北部、黒竜江省ハルビン市の出身。日本に来て、ここでずっと妹を支えながら、商売を続けてきたという。李さんに最近のアメ横事情を聞いた。 ――お客さんは中国人が多いようですね。 「うちの客の4割は中国人です。3割が東南アジア系で、残りの3割が日本人です」 ――ここはどんな料理を出す店でしょうか。 「私の出身地のハルビンの料理がたくさんありますよ。あと中国人客に人気なのが油条(ヨウティアオ)(中国式揚げパン)や煎餅果子(中国式クレープ)です。店は朝9時から夜9時まで、毎日休まずやっています」 ■家賃は3店舗で月410万円、それでも儲かる ――ここの家賃は今、どれくらいでしょうか。 「(妹が経営する)3店舗合わせて、月410万円になります。それに対して、毎月どれぐらい儲けがあるのかは正直、妹にしか分かりません。日本の夏は暑すぎて、客が減ったりするのは大変ですけど、同じ仕事をしていても、中国より日本の方が儲かるのは間違いないですね」 ――このお店は、どういう経緯で開いたのですか。 「店を開いたのは14年前です。妹が日本の大学に留学し、卒業してからこの店を開きました。店は不動産会社の友人に探してもらいました。私は妹を手伝おうと思い、2012年に日本に来たのです」 ――今後はどうしますか。このままずっとここで? 「私も妹もこれからも日本に長く住みたいと思っています。日本は生活が便利だし、食べ物も安心安全だし。ハルビンは冬が寒すぎます」
- 15
- 35
- 4