回覧板に“室外機の盗難に気を付けましょう”… 住民の5人に1人が外国人「群馬県大泉町」を現地ルポ “共生社会の最前線”で何が起きているのか
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小学生の約22%が外国人
「リトルブラジル」とも呼ばれる同町の歴史を、観光協会の担当者が振り返る。 「戦時中から軍需産業の工場があった大泉町は、戦後もスバルや三洋電機(現・パナソニック)といった企業の工場に支えられ発展してきました。90年代には人手不足が深刻になり日系ブラジル人の受け入れを進めたことで、早くからその生活を支えるコミュニティや飲食店が立ち上がった。彼らの多くは永住者や定住者といった在留資格を持ち、安定して日本に滞在し続けることができます」 そのため30年来、大泉町で暮らす日系ブラジル人も珍しくない。当然、子供や孫も生まれ、教育委員会によれば同町の小学生1944人のうち、約22%の433人が外国人だという。 教育現場の関係者いわく、 「そういった2世、3世の子供たちはポルトガル語がほとんど話せず、親と十分にコミュニケーションが取れない場合もあります。しかし、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)労働に従事してきた上の世代からは“ちゃんとクーラーの効いた場所で働きたければ、高校・大学を出て資格を取りなさい”と言われており、世代が下がるほど職業選択でも日本人と変わらない方が多くなっています」 一方、日系ブラジル人2世の男性はこうも話す。 「大泉は同胞のコミュニティが大きいうえに、町役場にも通訳がいて、ポルトガル語の広報もある。なまじ環境が整いすぎているので、30年も住んでいるのに日本語は“通訳”の一語しか分からないという日系人もいます。また、90年代に来日し、65歳以上になる日系人も出てきました。彼らの多くは年金を納めておらず、困窮して生活保護を受ける人も珍しくありません」
“新参者”に眉を顰めるブラジル人
新たな問題にも直面している大泉町だが、同町には日系ブラジル人との長い歴史がある。違法駐車が頻発するなどの問題で中止になったものの「サンバ・パレード」をはじめとしたブラジル文化が観光資源となり、町を盛り上げてきたのも事実だという。 しかし、曲がりなりにもそうして「共生社会」を体現してきた大泉町で昨今、また別の「外国人問題」が持ち上がっている。 ある町議が嘆く。 「ブラジルやペルーといった昔からいる南米系の人たちとは別に、ここ5年ほどでベトナム、カンボジア、インドネシアなどアジア諸国の人が増えているのです。技能実習生として来日し、2〜3年で帰国する人が多い。そのため南米系と違って強固なコミュニティがあるわけではなく、職場と家を往復するだけで地域とはほぼ関わらない。問題なのは、彼らによる犯罪が目立って多いことです」 確かに今年に入ってから大泉町の外国人が起こした事件を探すと、 〈カンボジア国籍の男が、刃物を振り回し逮捕〉 〈ベトナム国籍の男3人が、窃盗で逮捕〉 といった物騒な記事がいくつも見つかる。こうした新参者に眉を顰めるのは、日本人ばかりではない。 古参のブラジル人もまた、現状を憂える。 「私は日本に来て40年になりますけど、本当にアジア人が増えたと思います。例えばこないだは回覧板に“室外機の盗難が相次いでいるので気を付けましょう”と書いてあって、こんな時代になったのかと悲しくなりました。盗んだ室外機や銅線を買い取る中国人の業者もいるようです。また、特にベトナム人は気性が荒い。よく仲間内で喧嘩している印象です。彼らは日系ブラジル人と比べると日本語が拙く、会話にも困ります」 有料版の記事【【現地ルポ】人種の“サラダボウル”は夢のまた夢? 住民の5人に1人が外国人「群馬県大泉町」の町民が見た“共生社会”の内幕】では、在留外国人と地元住民の軋轢に加え、不法就労の実態、そしてそれらを手引きする悪徳ブローカーの存在について、詳しく報じている。
デイリー新潮編集部
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