映画『かもめ食堂』の舞台となったレストランが閉店…中国人オーナーに交替で家賃値上げ、ウナギの煙がキッチンに充満、北欧で日本食を10年追求した店主の決断
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小川さんが苦労した日本とフィンランドの違い
――「Ravintola KAMOME」を経営されるなかでの苦労について教えてください。 スタッフの確保と、フィンランド特有の労働ルールの遵守が大変でしたね。フィンランドではアルバイトでも社員でも、あらかじめ週の労働時間や、どういった業務に従事してもらうのかといったことを具体的に示して契約をします。そして、もしスタッフが体調不良などで欠勤したとしても、契約した出勤日数分の給与は全て支払う必要があるんです。 例えば日本だと、お店が暇になったらスタッフには早めに退勤してもらい、出勤時間分の給与のみ支払うケースもよくあると思いますが、フィンランドではお店の都合で早めに退勤してもらった場合、あらかじめ契約したその日の出勤時間分の給与はスタッフに支払わなければならないということになるんです。 スタッフが突然欠勤するなどの不測の事態に備えて、常に複数のスタッフを雇わなければならず、そのコスト負担やスタッフの管理が経営するうえで結構苦労したところです。 あとは労働契約が終わったら基本的にスタッフは業務の引き継ぎなどをすることなく、突然辞めてしまいます。スタッフから「余っているからどうぞ使ってください」と持って来てもらった食器類などを、店での提供用として使っていると、そのスタッフが辞めるときに全て引き上げられてしまうということがあって……。 スタッフの善意に甘えているとしっぺ返しをくらうと学んだので、その後は個人のものは店に持ち込み禁止にしたんです。こういった日本文化との違いに慣れていくことも大変でした。 ――いっぽうで楽しかった思い出などはありますか? 「Ravintola KAMOME」を改装するときに、うちの店の看板デザインやキャラクターデザインを担当してくれた日本人のデザイナーの大田さんや、当時のシェフやスタッフとお店の世界観やメニューを作り上げていく体験は楽しかったですね。また多くの皆さんにご飯が美味しかったと言っていただき、営業最終日を迎える際にも、皆さまから暖かいメッセージをたくさんいただけたことはとても嬉しかったです。
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