自民党の危機に“キングメーカー”麻生太郎氏はどう動く?元担当記者「麻生さんが公明党の離脱に動いてはいないが、ここからどうするか力量が問われる」
自民党が今、大きな危機に立たされている。4日に高市早苗氏が新総裁となったが、長く手を組んでいた公明党が26年間続いた連立を解消。そもそも少数与党となっていたところ、さらに過半数から遠のく中、日本維新の会との連立協議を進め、維新が求める議員定数削減に応じる方針だという。そんな中“キングメーカー”として存在感を増しているのが、1年ぶりに副総裁に復帰した衆議院議員・麻生太郎氏だ。 【映像】39歳で初当選、46年前の若かりし麻生太郎氏 自民党の党4役のうち、麻生氏の義弟・鈴木俊一氏と総務会長の有村治子氏の2人が麻生派から就任。「第2次麻生政権」と指摘する声も出始め、また総裁選でも麻生氏の発言が、大きく影響したと見る識者も多い。党内で唯一残る派閥を率い、85歳となった今も多大な影響力を持つ麻生氏について、麻生派・河野太郎氏、麻生政権時の担当記者に話を聞いた。
■総裁選で高市氏を支持、麻生氏の影響力は
麻生氏は1979年に衆院選で初当選。2008年には総理大臣にも就任し、安倍晋三元総理の朋友とも言われた。1999年、河野氏の父・洋平氏が党内で立ち上げた大勇会(河野グループ)の流れを汲む形で、2006年に為公会(麻生派)を設立し、2017年には志公会(麻生派)に。現在、党内では唯一残る派閥として国会議員43人が所属している。総裁選で、麻生氏自身は高市氏を支持。麻生派の中には河野氏が小泉純一郎氏を推したように、他候補を支持した議員もいた。 河野氏は、現在の麻生派の影響力について「鶴の一声で政治が動く時代ではない。昔、田中角栄さんが“闇将軍”と言われていたような時代とは違うし、もう終わった。今回、麻生派でも小泉さんを支持したグループは20人いて、他にも小林(鷹之)さん、茂木(敏充)さん、林(芳正)さん、もちろん高市さんを推した人もいた。『麻生さんが推すから乗ります』という人は、そこまで多くなかったのでは」と語る。 高市氏と小泉氏の決選投票になった際も「小泉さんを推す人に、麻生さんから電話は来なかったし、仁義を切って『この人を推す』という人には、あえてどうこうしようという人でもない」と説明。麻生氏自身は「党員票で多かった人に入れる」と側近に伝えていたとされるが、「党員票が高市さんに強く出たことで、それを見た議員が決選投票で党員の逆に行きづらかったのでは」と、麻生氏の動向がそこまで影響しなかったのではと述べた。 それでも高市氏が総裁就任後、党4役のうち麻生派が2人選ばれたことには、やはり麻生氏の影響力の大きさを指摘する声は多い。2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏も「表向きの綺麗事で『麻生さんの影響力はない』は、いくらでも説明がつく。でも実態として見たら、麻生派の人たちが人事でバンバン入った。さらに安倍派で、裏金でいろいろあったはずの萩生田さんまで登ってきた」と、麻生派の強さを突く。 また、自民党と公明党の連立解消についても「高市さんと公明党の斉藤代表が話した時、裏金問題について高市さんは『持ち帰らせて』と言った。自分自身で決められる総裁なのに、そうしなかったのは麻生さんに相談しないと物事が決められないからではないのか。麻生さんはもともと、公明党と切れた方がいいと言っていたから、麻生さんの意図が通ったように見える」とも語った。 これに河野氏は「持ち帰って麻生さんに相談するということでもない。また麻生さんは公明党と切ろうとは思っていないし、自公の連立の上に、第3党として(組む相手を)国民民主党や日本維新の会のどっちだろうという議論を考えていたはず。いきなり公明党を切って、どこかと組むなんて麻生さんが考えていたとは、到底思えない」と否定した。 麻生政権時に官邸キャップを務めた政治ジャーナリスト・青山和弘氏は、麻生氏の“公明党嫌い”はあるという。麻生氏は、岸田政権時に副総裁だった際、安保関連3文書を閣議決定したことをめぐり、公明党幹部を名指しして「一番動かなかったガンだった」などと発言したことがある。青山氏は「(麻生氏が)公明党嫌いなのは間違いない。特に麻生さんの持論としては、国土交通大臣を公明党にずっとやらせておくのはよくないという論を持っている」。 とはいえ、与党として機能する上で、公明党を切るという選択まではなかったとし「麻生さんが公明党をここで連立から離脱させようと動いたことはないと思う。ただ、最後の段階になって『もうしょうがないな』と思っていた可能性はある。こうやって維新に(連立を求めに)行くことで、ある意味すっきりしたという考えもある。公明党が離脱しても、ここからどうやって自民党の政治をうまく前に進めさせるのか。もちろん高市さんでもあるが、やはり麻生さんの力量が問われることになる」と解説した。