巨額の貿易黒字を稼いでいた日本も、様変わり…円安が「サッパリ景気に効かなくなった」ワケ【経済評論家が解説】
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過去の日本経済は「円高ドル安で景気が悪化」「円安ドル高で景気が拡大」との傾向が顕著でした。しかし近年では、状況は大きく異なっています。大きな理由として、輸出企業の方針変更があげられます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額〈2025年最新版〉
かつて、円安が「景気拡大要因」だった理由
かつての日本経済は、円高(=ドル安)になると景気が悪化し、円安(=ドル高)になると景気が拡大する傾向が顕著でした。円高になると輸出企業が儲からないからと考えて生産を減らすので、雇用が減り、失業が増える一方、円安になると輸出して儲けようと生産を増やすので、雇用が増えて失業が減ったのです。 円安で生産が増えると、部品調達が増えるので、部品企業の売上が増え、雇用が増えます。輸出と関係ない居酒屋なども、増産のために雇われた「元失業者」が給料をもらって飲みに来るので、儲かるようになりました。
輸出企業が地産地消に注力するようになった
しかし最近では、輸出企業は円安になってもあまり輸出を増やしません。「輸出を増やすためには工場を建てる必要がある」「工場が完成したころに円高になっていて、輸出ができなければ、工場が無駄になってしまう」「そんなリスクを負うくらいなら、売れる場所に工場を建てて現地生産するほうが安心だ」と考えているからです。 もしかすると、人口が減って経済が縮小していく日本よりも、人口が増えて経済が拡大していく国に工場を建てたほうがいい、という発想もあるかもしれませんし、もしかすると少子高齢化で労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多い)の日本では工場労働者を集めるのが大変だから、労働者が集まりやすい場所に工場を建てよう、という発想もあるのかもしれません。 いずれにしても、日本からの輸出は日本で作る必要があるものが主となっていて、円安だから輸出を増やして儲けよう、という輸出企業は少数派になっているのです。 結果として、日本の貿易収支はほぼゼロで、原油価格によってプラスになったりマイナスになったりする状況です。かつて、巨額の貿易黒字を稼いでいた日本ですが、様変わりしているのですね。
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