維新、連立ありき「条件」すり替え 企業献金規制、置き去りか 定数削減、公明は反発〔深層探訪〕
日本維新の会が国会議員の定数削減を自民党と連立を組む「絶対条件」に位置付けたのは、連立政権入りを優先させたためだ。「身を切る改革」は維新の党是だが、当初「条件」に想定していた企業・団体献金の規制強化に自民が難色を示したことから方針を転換した。野党は「政治とカネ」の問題が置き去りになると批判し、勢力減少に直結しかねない公明党などは反発している。 【ひと目でわかる】内閣支持率の推移 ◇「たたき売り」 「本気で改革を進めることができるのか、その姿勢を示すのが議員定数削減だ」。維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は17日のフジテレビ番組でこう強調。政権入りの「絶対条件」だと語った。 維新の藤田文武共同代表は16日、自民の高市早苗総裁と初めて行った連立政権に向けた政策協議で、企業献金の禁止を主張。高市氏らは強く反対した。これを受けて吉村氏は同日夜、定数削減を自民にのませるよう党内に指示。維新幹部は「企業献金禁止は自民が硬かったから、代わりに定数削減が出てきた」と認めた。 確かに、維新は定数削減などの「身を切る改革」を繰り返し唱えてきた。地盤の大阪府議・市議の定数を大幅に削減し、「有言実行」してきたとの自負がある。 だが、維新は「政治とカネ」の問題への対応も重視してきた。自民の派閥裏金事件を踏まえ、先の通常国会のテーマだった企業献金を巡る議論では、立憲民主党や国民民主党より厳しい全面禁止を主張していた。 維新は昨年の衆院選と今年7月の参院選で党勢の衰えが鮮明となった。連立入りで「副首都」構想や社会保障改革を実現し、反転攻勢につなげる狙いがある。ただ、党内からは「衆院議員は前のめりだが、参院はほとんどが慎重ではないか。政策もバナナのたたき売りのようだ」との声も出ている。 ◇「維新はだまされる」 連立ありきの方針転換に、野党からは批判の声が上がった。立民の野田佳彦代表は記者会見で、首相在職中だった2012年の党首討論で定数削減を条件に衆院を解散したが、政権復帰した自民が約束を守らなかったと指摘。「維新はだまされる」との見方を示した上で、「そんなことで連立政権を組むのはやめた方がいい。政治資金の問題で結論を出すのが先だ」と促した。 安住淳幹事長はTBS番組で「政治資金と定数削減は全然違う話だ。すり替えては駄目だ」と断じ、国民民主の玉木雄一郎代表は読売テレビ番組で「企業献金の議論が置き去りになる。定数削減でごまかさずに維新らしさを貫いてほしい」と注文した。 そもそも、定数削減を含む選挙制度改革は各党の消長に大きく影響するため、与野党が合意を重視しながら議論してきた経緯がある。自民の逢沢一郎党選挙制度調査会長はX(旧ツイッター)に「地方の定数がさらに少なくなる。いきなり定数削減は論外だ」と苦言。17日の会見で「真剣な議論が進んでいる状況を受け止めてほしい」と求めた。 維新は衆院(定数465)の1割程度を、比例代表を中心に削減する方針だ。比例が主戦場の公明党や共産党は「比例だけ削減するならあまりに乱暴」(斉藤鉄夫公明代表)とけん制。自民のベテラン議員は「公明と完全に敵対することになる」と懸念した。